うさぎのうなじ、うさじ
| 正式名称 | うさぎのうなじ、うさじ |
|---|---|
| 通称 | うさじ |
| 分野 | 動物美学、毛並み評価、民間認証 |
| 成立 | 1987年ごろ |
| 提唱者 | 宮前 恒一、北原 みずえ |
| 管轄団体 | 日本後頸毛保全協議会 |
| 対象 | 家兎・観賞兎 |
| 主な指標 | 毛流、首筋曲率、静止時の反射光、耳影係数 |
| 関連地 | 、、 |
| 現在の運用 | 展示会・飼育記録・地域審査会で限定的に使用 |
うさぎのうなじ、うさじは、の兎毛文化研究会を中心に整備された、うさぎの後頸部の毛並みを観察・保護・評価するための民間規格である。一般には「うさじ」と略称され、末期の毛並み美学運動から派生したものとして知られている[1]。
概要[編集]
うさぎのうなじ、うさじは、うさぎの後頸部、すなわち耳の付け根から肩線にかけての毛並みと輪郭を、独立した審査対象として扱う概念である。毛の密度や向きだけでなく、首をすくめた際の「余白の出方」まで含めて評価される点に特徴がある。
この概念は後半の観賞兎ブームのなかで自然発生したとされるが、実際にはのペット展示会場で、印刷業者が誤って「うなじ」を強調して刷ったことが起点になったという説が有力である。もっとも、その後の愛好家たちは誤植を拒まず、むしろ制度化したため、今日では半ば独立した美学用語として扱われている[2]。
成立の経緯[編集]
最初期の記録は、の小規模展示即売会において配布された審査メモ「後頸部観察補助表」に遡るとされる。作成者は宮前 恒一で、当初は「首まわりの抜け毛を見落とさないための実務メモ」にすぎなかったが、参加者の北原 みずえが「ここはうなじが美しい個体ほど歩き方が静かである」と記したことから、美学的解釈が始まった。
にはの貸会議室で第1回「うさじ懇話会」が開催され、参加者17名、持ち込み個体23羽という小規模な集まりであったが、この会合で「うなじは顔の裏面ではなく、姿勢の前提である」とする宣言文が採択された。なお、同文書には当日配布された麦茶の温度が18.2℃であったことまで記録されており、後年の研究者からは「妙に細かい」と評されている。
に日本後頸毛保全協議会が設立され、以後、うさじは飼育記録や展示会の補助項目として各地に広まった。協議会はの印刷会社と共同で専用の観察票を作成し、毛流を5段階、首筋曲率を9段階、静止時反射光を3区分で記録する方式を導入したが、この「9段階」の根拠については、担当者が会議中にちょうど9枚の菓子を配ったからだという証言が残る[要出典]。
評価方法[編集]
基本指標[編集]
うさじの評価は、主として毛流、首筋曲率、静止時反射光、耳影係数の4要素で行われる。毛流は後頭部から肩へ流れる毛の向きを測定し、首筋曲率はうつむき姿勢のときに現れる弧を定規で記録する方式である。
耳影係数はやや特殊で、光源をに固定したうえで、耳がつくる影の長さを測定し平均を取る。協議会の内部資料によれば、係数が1.7を超える個体は「慎重型」、0.9未満の個体は「放浪型」とされるが、分類の妥当性については編集合戦が続いている。
展示会での運用[編集]
展示会では、うさじは本体の体格評価と切り離して審査されることがある。とくに周辺で行われた「東日本観賞兎研究会」系の催しでは、審査員がうなじ部分だけを見るために白手袋を着用し、1羽あたり約14秒をかけて確認する慣行があった。
1980年代末には、うさじが高得点の個体に対して「襟足が立っている」と講評する文化が生まれ、これが一般紙に掲載されたことで一時的に若者言葉として誤用された。なお、うさじの高評価個体は抱き上げられた際に首筋がわずかに遅れて波打つとされ、審査員の一部はこれを「遅延美」と呼んでいた。
地域ごとの差異[編集]
では整った毛流と静かな目線が重視される一方、ではうなじの「抜け感」が好まれる傾向があるとされる。では茶葉選別の経験を応用した照明条件が導入され、では冬季の保温管理と結びつき、うさじが防寒性の指標として扱われることもあった。
この地域差は、実際には各地の飼育環境よりも、審査員が通っていた喫茶店の照明色温度に左右されたという説がある。とくにのある会場では、店内のオレンジ色照明の影響で、うさじの評価が平均0.4点ほど甘くなったと記録されている。
社会的影響[編集]
うさじは、単なる観賞用語にとどまらず、飼育マナーやイベント運営にも影響を与えた。1990年代には、ペットショップの一部で「首まわりをさわらないでください」という注意書きが増え、これが結果として抱き方講習の普及につながった。
また、の一部自治体では、地域の動物愛護イベントにおいてうさじの簡易講座が取り入れられ、子ども向けに「うなじの角度で機嫌がわかる」と説明された。もっとも、実際には子どもたちが首の角度よりも耳の動きを見てしまい、講師側が毎回訂正に追われたという。
一方で、の外郭団体を名乗る資料にうさじが登場したことで、行政用語であるかのような誤解が広がった。これにより、1998年には一部週刊誌が「新しい家畜格付け制度」と誤報したが、後に訂正記事が出た。なお、その訂正記事でも用語の意味は最後まで曖昧なままであった。
批判と論争[編集]
うさじには、当初から「毛並みを首筋だけで分節化するのは過剰ではないか」という批判があった。とくにの動物行動学研究室の一部研究者は、うさじの高評価個体が本当に性格的に穏やかなのか、それとも審査員が静かな空気を作ってしまった結果なのか、因果が逆転している可能性を指摘している。
また、評価票に記される「耳影係数」は再現性が低いとして、2006年ので激しい議論を呼んだ。議事録では、ある委員が「影は文化である」と述べ、別の委員が「文化にしては数値が細かすぎる」と返した箇所が最も長く引用されている。
さらに、2013年には首都圏の展示会で、うさじの採点にスマートフォンの画面輝度が影響していたことが判明した。これにより「審査員個人の信念よりも端末の明るさが結果を決めていたのではないか」とする批判が強まり、以後はガラケー持ち込みが推奨されるという奇妙なルールが一時的に導入された。
歴史[編集]
誤植から規格へ[編集]
うさじの成立をめぐっては、展示会パンフレットの誤植が起点だったという説が最もよく知られている。1986年秋、の印刷所で「うなじ観察」を「うさじ観察」と誤って組版したところ、主催者が「語感がよい」としてそのまま採用したとされる。
その後、誤植のまま配られたパンフレットが参加者の間で保存され、同年末にはむしろ正式名称として逆輸入された。印刷所の担当者は後年、「あれは校正ミスではなく、時代の先回りだった」と語ったと伝えられる。
制度化と分派[編集]
に入ると、うさじは「やや硬めのうなじ」を重視する本流と、「やわらかく沈むうなじ」を重視する柔派に分かれた。柔派はの古民家展示会で勢力を伸ばし、背景の木格子との調和を評価軸に加えたため、純粋な毛並み規格というより建築美学に近づいた。
一方、本流はの郊外施設で厳密な観察記録を積み重ね、1997年には全128頁の「うさじ標準観察要領」を発行した。なお、同書の第4章だけが異様に長く、首筋の湿度変化について11ページも割かれているが、これは執筆者が梅雨の会場に3日連続で通ったためである。
現代の扱い[編集]
現在のうさじは、観賞兎愛好家の間では半ば伝統語、半ば内輪ネタとして扱われている。公的制度ではないものの、地域イベントの司会が「本日の注目個体はうさじが高い」と述べても、会場の誰も訂正しない程度には定着している。
もっとも、若年層の飼育者の中には、うさじを写真映えの略称だと誤解している者も多い。これに対し、古参の愛好家は「うさじとは首を飾る思想である」と説明するが、説明するたびに話が長くなるため、結局は耳の位置だけ見て終わることが多い。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 宮前 恒一『観賞兎の後頸部観察入門』兎毛文化叢書, 1988, pp. 14-39.
- ^ 北原 みずえ『うさじと姿勢美学』日本後頸毛保全協議会刊, 1991, pp. 3-28.
- ^ 佐伯 直人「耳影係数の再現性について」『日本動物美学学会誌』Vol. 12, No. 4, 2006, pp. 211-229.
- ^ Margaret L. Thornton, “Neckline Perception in Domestic Rabbits,” Journal of Applied Fur Studies, Vol. 8, No. 2, 1994, pp. 55-73.
- ^ 渡辺 精一郎『展示会における兎の静止美』東洋観察出版, 1998, pp. 101-146.
- ^ Hideo Kamiyama, “Shadow Coefficient and Small Animal Aesthetics,” The Review of Companion Species, Vol. 19, No. 1, 2001, pp. 7-31.
- ^ 「うさじ標準観察要領」日本後頸毛保全協議会資料集第4号, 1997, pp. 1-128.
- ^ 田島 菜穂子『首筋の文化史: うなじからうさじへ』港北学術社, 2004, pp. 44-92.
- ^ Robert J. Ellison, “When the Collar Becomes the Subject,” Fur and Form Quarterly, Vol. 5, No. 3, 1990, pp. 88-104.
- ^ 北原 みずえ『麦茶18.2度の会議録』兎毛文化叢書, 1989, pp. 9-17.
外部リンク
- 日本後頸毛保全協議会アーカイブ
- うさじ標準観察票データベース
- 東日本観賞兎研究会資料室
- 兎毛文化研究ネットワーク
- 首筋美学辞典オンライン