これはゲームではない。
| タイトル | これはゲームではない。 |
|---|---|
| 画像 | (架空) |
| 画像サイズ | 240px |
| caption | 起動画面に表示される注意書き |
| ジャンル | コンピュータRPG(メタ警告体験型) |
| 対応機種 | NTX-Station、NTX-Station Lite |
| 開発元 | 夜間校正制作社 |
| 発売元 | 株式会社記録主任社 |
| プロデューサー | 海東(かいとう)シグマ |
| ディレクター | 梶野(かじの)レイカ |
| デザイナー | 蛭田(ひるた)オルガ |
| プログラマー | 佐倉(さくら)ミツヒ |
| 音楽 | 作曲:神楽坂(かぐらざか)リュート |
| シリーズ | 混同防止シリーズ |
| 発売日 | 2012年9月17日 |
| 対象年齢 | C(15歳以上相当) |
| 売上本数 | 全世界累計 184万本(初年度で112万本) |
| その他 | プレイヤーデータに「自己申告ログ」を付与する仕様を採用 |
『これはゲームではない。』(英: This Is Not a Game.、略称: NOT-A-G)は、にのから発売された用。通称は「禁止のラベル」とされ、の第1作目。
概要[編集]
『これはゲームではない。』(This Is Not a Game.)は、プレイヤーに向けて「これはゲームである」という認知そのものを揺らすことを目的とした、であるとされる[1]。起動時には必ず注意文が表示され、以後の進行に応じて、注意文の“文体”が変化していく仕組みが採用された。
本作は、物語上の冒険を進めながら、UIやセーブの挙動が「現実の手続き」に見えるよう再設計された点で知られる。とくにの起動レイヤに「禁止のラベル」を貼る演出は、発売当初から“ゲームなのにゲームでない体裁”として議論の的になった[2]。
編集方針として、夜間校正制作社の社内では「タイトルの否定形は、誤読を誘う安全弁である」と記録されており、タイトルの末尾の句点が信頼性評価に影響した、という社内資料も残されている[3]。ただしこの資料の真偽は、後年の監査で一部否定されたという指摘もある[4]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
プレイヤーは、職業ではなく“申請者”として操作する形を採用している。具体的には、町で依頼を受けるたびにが発行され、探索・戦闘・会話のいずれも「番号に紐づく手続き」として進行する仕組みである。
戦闘は通常のRPG同様のターン制が核である一方、行動選択のたびに「これはゲームではない」という文言が短く折りたたまれ、最終的に「これは――」で途切れる状態へ遷移する。システム上のトリガとして、プレイヤーが同一地点で3回連続セーブを行った場合に発火する“遮断イベント”があり、遮断が起こるとHP表示が「健康」表記へ切り替わる[5]。
アイテムは攻撃力や回復量ではなく、使用後に“文面”が変化する文書として設計されている。たとえば回復系の道具であるは、使用時に「封緘しました(署名)」の文字列を要求するため、プレイヤーが別の入力をした場合にのみ回復が進む仕様が採用された[6]。
対戦・協力はオンライン対応も含むが、通常のランキングよりも「自己申告ログ」の交換が中心になっている。協力プレイでは、パーティ加入のたびに“現実の時間帯”に合わせた会話文が混入し、同時接続者の発言速度が会話の硬さに反映されるとされる。もっとも、開発資料ではこの挙動は「同期の失敗を仕様化しただけ」とも記されている[7]。
ストーリー[編集]
物語は、架空の都市に現れる“未確認の告知”から始まる。主人公の申請者は、東倉市の掲示板に貼られた一行——「これはゲームではない。」——に導かれ、告知の下で失われた手続きを取り戻すために旅へ出ることになる。
旅の各章は「告知文が書き換わる回数」を軸に進行する。第1章では、告知が「これはゲームではない。」から「これはゲームではない(とされています)。」へ変化し、第3章で「とされています」が削除される。とくに第7章では“句点が消える”演出があり、音声もそれに合わせて短く途切れることで知られる。
終盤では、主人公が最後の申請番号を提出することで、ゲーム内の世界が一度“現実の受付窓口”のログに転写される。ここで転写された内容が、プレイヤーの実際のプレイ時間と一致するかどうかが議論となり、攻略サイトでは「一致するのはたまたま」としながらも、報告例が多数集まったという[8]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公は、名を持たない申請者として扱われる。代わりにキャラクターシートには「あなたの署名が必要」とだけ記され、会話のたびに名前欄が空白のまま進行する仕様が採用された。
仲間には、書類運搬担当の、反復確認を得意とする、危険物の文面を“正確に怖がる”係としてが登場する。緒方は戦闘中に「再確認」を唱え、ムツは戦闘後に「矛盾があれば私が直す」と言いながら、実際にはログを圧縮する人物であるとされる[9]。
敵対勢力としては、東倉市の業務委託を掌握するが描かれる。彼らはプレイヤーを“冒険者”ではなく“誤作動者”と呼び、追跡の際に赤いスタンプを押すことで恐怖演出を行う。なお一部の回想では、敵のリーダーが「我々はあなたが“ゲームだと思った瞬間”を奪う」と語ったとされるが、語り口が過剰であるとして批判もある[10]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界観では、情報は物理量として扱われる。ゲーム内での“文面”は、時に経験値より重く、特定の分岐ではテキストが重量制限に触れる。たとえば第5章の倉庫では、に入れられる文字数が「2,048文字まで」と定められており、これを超える文書は“削除”ではなく“幻聴”として残ると説明される。
“遮断イベント”に関連して、という概念が導入される。これは、句点(。)の存在がプレイヤーの意思決定に作用し、連続セーブが増えると句点が内部で相殺されるという設定である。開発インタビューでは、句点を扱う理由について「読者の目が止まるため」と述べられた[11]。
さらに、セーブデータは通常の状態保存ではなくとして扱われる。台帳には「あなたは現実から逃げている」というような断定文が含まれる場合があり、プレイヤーの自己評価を反映した文面に変化する、とされる。ただし、ネット上では「サーバー側でランダム選定しているだけではないか」との指摘もあり、公式は否定と肯定の両方を繰り返した[12]。
開発/制作[編集]
夜間校正制作社は、従来のRPG開発から一転し、認知のズレを“進行妨害”ではなく“ゲームデザイン”に転用する方針を取ったとされる。企画が立ち上がったのはの社内合宿で、テーマは「否定文は安全だが、否定は効く」と記録されている[13]。
制作の経緯としては、まずプロトタイプ段階で“注意文を出さない”設定を試したが、プレイヤーが確実に「ゲームだ」と言語化してしまい、開発チームの目的から外れたため、逆に注意文を強めた経緯が語られている。結果として、注意文は固定ではなく、進行に従って文体が変わるよう実装された。
スタッフは、ディレクターの梶野レイカが「UI文言は照明である」と主張し、デザイナーの蛭田オルガがタイポグラフィ設計に注力した。なお、プログラマーの佐倉ミツヒは、禁止のラベルが表示されないバグを1週間放置したことで“逆に成立する”ことを発見した、とライブ配信で語ったとされるが、録画の存在は確認されていない[14]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは神楽坂リュートによって作曲された。曲は“現実の受付音”をモチーフとしており、受付窓口の番号が読み上げられるようなリズムが随所に混入する設計である。
代表曲として、、が挙げられる。特に「句点が消えるまで」では、ドラムが通常の小節線から1拍ずれるタイミングで意図的に崩れ、音が途切れると同時に画面上の句点が消える、と報告されている[15]。
CD化された際には、音量レベルが「-14.0 LUFS(平均)」に統一されたとされ、視聴環境により“現実感”が増減するという噂が広まった。もっとも、当時の録音機材一覧は公開されておらず、真偽は未確認とされる[16]。
評価(売上)[編集]
発売直後、ではゴールド殿堂入りを果たしたとされる。売上は初年度で112万本、翌年には累計184万本を突破し、国内だけでなく東南アジアの一部地域でも“文言が効く”体験が話題となった[17]。
ユーザー評価の指標としては、達成率ではなく「注意文を最後まで読んだ割合」が重視され、ゲーム内の称号が人気になった。これはRPGの戦闘力より、テキストへの関与度がスコアに影響する設計だったためであると説明される。
一方で、注意文が強すぎるとして返品率が高かった時期もあり、の一部販売代理店では「返品手続きが増えた」という報告があった[18]。もっとも、返品理由が“難しさ”ではなく“感情の揺さぶり”であったかは、公式には明確化されていない。
関連作品[編集]
本作はの第1作目にあたり、続編として『』が企画されたが、開発途中で音声仕様の方針転換が入り中止されたとされる。代替として、周辺作品として小説版『申請台帳の余白』が出版された。
メディアミックスとしては、テレビアニメ『窓口の向こう側は本物です』がある。アニメでは句点相殺が視覚ギミックとして表現され、視聴者参加型投票で台詞の句点が増減する回が放送されたとされる。ただし放送局や放送日について、資料が複数あり整合性が取れない部分がある[19]。
攻略の派生としては、認知負荷を下げる目的の“静音モード”を解説する同人ガイドが多数出回り、のちに公式が一部内容を参照したと報じられた。なお、この参照の有無は発売元が「事実ではない」としつつも、完全否定はしていない[20]。
関連商品[編集]
攻略本としてが発売された。内容はダンジョン攻略というより、注意文の文体遷移表や、申請番号ごとの分岐確率の一覧が中心となっている。
また、書籍として『台帳の書式—ゲームに見える現実の作り方』が発売され、タイポグラフィやUI文言の設計論がまとめられた。出版社はで、初版部数は8万部とされるが、増刷の履歴は公開されていない。
関連グッズとしては、句点相殺を再現する“スタンプ定規”が販売された。これは紙に押すと句点がにじむよう設計された文房具で、なぜか法務関連のイベントで配布されたと報じられ、業界紙で小さく話題になった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 海東シグマ「『これはゲームではない。』の文体遷移モデル」『Journal of Ludic Typography』Vol.12 No.3 pp.41-58, 2013.
- ^ 梶野レイカ「禁止のラベルはなぜ効くか」『日本インタラクション学会誌』第27巻第4号 pp.201-219, 2014.
- ^ 蛭田オルガ「句点相殺—タイポグラフィによる認知圧」『サウンド&UI研究』Vol.5 No.1 pp.9-26, 2012.
- ^ 佐倉ミツヒ「自己申告ログの実装と倫理的配慮」『ソフトウェア心理工学紀要』第3巻第2号 pp.77-96, 2015.
- ^ 神楽坂リュート「受付音響の構造解析とRPGへの応用」『音響設計評論』Vol.18 No.7 pp.110-133, 2013.
- ^ 記録主任社編集部『混同防止シリーズ公式資料集』記録主任社, 2012.
- ^ 『ファミ通クロスレビュー』編集局「混同防止シリーズ第1作の評価基準(抜粋)」『ファミ通クロスレビュー年鑑』2013年版 pp.301-312, 2013.
- ^ 東倉市都市史編纂委員会『東倉市の掲示板文化(増補版)』東倉大学出版局, 2011.
- ^ Mara K. Ishii and Tomo Alvarez, “Mistruth Friction in RPG Interfaces,” Vol.9 Iss.2 pp.55-70, 2016. (※書名の表記が一部一致しないとされる)
- ^ “Self-Report Systems in Consumer Entertainment,” Proc. of the International Conference on Playcraft Vol.2 pp.1-12, 2014.
外部リンク
- 混同防止ラベルアーカイブ
- 夜間校正制作社 公式資料室
- 東倉市掲示板文化研究会
- 句点相殺シミュレータ(配布ページ)
- 記録主任社 メディアミックス特設