だって好きだもん
| 作品名 | だって好きだもん |
|---|---|
| 原題 | Because I Like It |
| 画像 | Dattesuki.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| 画像解説 | 公開時のティザービジュアル |
| 監督 | 小鳥遊澪 |
| 脚本 | 真鍋リツ |
| 原作 | 白石文庫企画 |
| 製作 | 朝倉遥 |
| 出演者 | 紺野ひかり、三島ユウ、北条怜 |
| 音楽 | 黒田環 |
| 主題歌 | 『好きのままで』 |
| 制作会社 | スタジオ・ミルハ |
| 製作会社 | だって好きだもん製作委員会 |
| 配給 | 朝霧シネマ |
| 公開 | 2021年7月17日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 1億9000万円 |
| 興行収入 | 8.4億円 |
| 上映時間 | 103分 |
| 前作 | なし |
| 次作 | だって好きだもん 〜冬の余白〜 |
『』(だってすきだもん)は、に公開されたのである。監督は、脚本は、原作・企画は。小規模公開ながら口コミで拡大し、興行収入は8.4億円を記録した[1]。
概要[編集]
『』は、の架空の私鉄沿線を舞台にした青春である。タイトルは作中で繰り返される少女の決め台詞に由来し、感情を言語化できない世代の“自己防衛的な告白”を描いた作品として知られる[2]。
制作は小規模な深夜帯映画枠の延長として始まったが、途中からが拡張され、ローカル線の駅名がほぼそのまま背景美術に使われたことでも話題となった。なお、公開初週には都内3館のみの上映であったが、2週目には観客の“泣いた回数”を申告するキャンペーンが物議を醸し、結果として上映館数が37館まで増加した[3]。
あらすじ[編集]
に住む高校2年生の水森しずくは、何かを好きになるたびに「だって好きだもん」とだけ返してしまう癖がある。彼女はの実行委員会で、廃部寸前の放送研究会を救うために、ひとつの“好き”を三分以内の音声作品にする企画を思いつく。
一方、同級生の久我蒼は、感情の強さを「メートル換算」して記録する変わり者であり、しずくの言葉を数値化できずに苦悩する。物語は、二人が沿いの古い送水塔で偶然に拾った録音テープをきっかけに、過去の“好き”が町の再開発計画とつながっていたことを知る展開へ進む。
終盤では、録音テープの声の主が、25年前に閉鎖されたの最後の映写係であったことが判明する。彼の残した「好きは説明できないが、説明しようとする人が町を残す」という奇妙な言葉が、しずくの決断を後押しし、彼女は放送席から全校に向けて、たった一度だけ涙声で「だって好きだもん」と言うのである。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
水森しずくは、本作の主人公である。感情表現が極端に短いが、好きなものに対しては異様な執着を見せ、ノートの端に“好きの理由”を247項目も書きつけている。
久我蒼は、しずくの同級生で放送研究会の部員である。真面目な性格だが、感情の強度を独自の単位「クガ」で記録する癖があり、作中では1クガを超えると耳が赤くなるという設定になっている。
白井冬華は、文化祭実行委員長である。表向きは合理主義者だが、実は白鷺映画館の最後の常連客の孫であり、終盤の展開に深く関わることになる。
その他[編集]
録音係の柴原みなみは、しずくの発言を勝手にポエム化してしまう副音声的役割を担う。劇中で最も有名な台詞「好きって、提出期限あるの?」は彼女のアドリブに由来するとされる[4]。
送水塔の管理人・黒川善次は、物語の鍵を握る老人として登場する。実は彼だけがの解体前の地下倉庫を知っており、なぜか毎週木曜だけ映画のフィルム缶を磨いていた。
声の出演[編集]
水森しずくはが演じた。繊細な台詞回しで評価され、収録時には実際に“好きなものを10個挙げてから泣く”という演技指導が行われたという。
久我蒼は、白井冬華はが務めた。三島は本作で初めて主役級の青年役を演じ、北条は「感情のない委員長をやらせたら右に出る者がいない」と評された。
そのほか、黒川善次役を、柴原みなみ役を、ラジオの声をが担当している。なお、送水塔の“風の音”には実際のの雨天時環境音がサンプリングされており、音響スタッフの間では半ば伝説となっている。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
監督は、脚本は、キャラクターデザインはが務めた。小鳥遊はテレビアニメ出身であったが、本作では“しゃべりすぎない芝居”を重視し、口パクを1フレーム遅らせる処理を多用した。
美術監督は、撮影監督は、編集はである。背景美術はの旧住宅地を徹底的に取材して作られ、電柱の位置まで実地測量されたという。
製作委員会[編集]
製作は、企画統括は、配給はである。委員会は当初5社体制であったが、公開2か月前に駅ナカ書店チェーンのが参画し、結果として主題歌の歌詞カードに“本のしおり”が同封される異例の施策が採られた。
また、フィルム上映用の35mmプリントが9本だけ作られたが、そのうち2本は雨天専用の色味調整が施され、いわゆる「DVD色調問題」に先行する形でファンの間に議論を呼んだ。
製作[編集]
企画[編集]
企画の起点は、にの喫茶店で行われた読書会の雑談であるとされる。原作者不在のまま“好きと言えない人の映画”という仮題が立てられ、後に現在の題名へ改められた。
小鳥遊はインタビューで、「好きと言うより、好きだもんと言ってしまう時の身体の前傾角度を映画にしたかった」と述べたとされるが、要出典の状態が続いている。
制作過程[編集]
制作はの第2制作室を中心に行われた。制作期間は約14か月で、うち4か月は台詞の“間”を測定するためだけに使われたという。
背景スタッフは町の再開発資料を読み込み、存在しないはずの踏切を2か所も描き込んだ。なお、完成版ではその踏切は説明されないまま残されており、公開後にファンが“心象踏切”と名付けた。
美術・CG・彩色・撮影[編集]
美術面では、夕焼けの色を再現するためにの海辺で採取した反射光データが使われた。CGは全体の約18%にとどまり、主に送水塔の水面や文化祭の照明で使用された。
彩色は淡いピンクと青灰色を基調とし、画面の“好き”の強度に応じて彩度が0.3段階ずつ上がる仕様であった。撮影では逆光カットが多用され、人物の表情を完全には見せない演出が徹底された。
音楽・主題歌・着想の源[編集]
音楽はが担当し、ピアノ、薄いシンセサイザー、校舎の空調音を組み合わせた。主題歌はによる『好きのままで』で、サビ前に一度だけ無音が入る構成が特徴である。
着想の源は、脚本家がの車内で隣席の学生の「だって好きだもんね」という独り言を聞いたことだとされる。ただし、その学生の存在は確認されていないため、製作側は“聞こえたことに意味がある”として押し切った。
興行[編集]
宣伝・封切り[編集]
本作は7月17日に公開され、初日舞台挨拶ではキャスト全員が同じ色のハンカチを持つ演出が話題となった。キャッチコピーは「説明できないから、残る。」である。
公開前にはとの2駅で限定ポスターが掲出され、ポスター下部に印刷された“好き申告QR”が1万2734件読み取られたとされる。
再上映・テレビ放送・ホームメディア[編集]
2022年春には応援上映形式でリバイバル上映され、観客が“だって”の箇所でだけ息を吸うという独特の参加方法が流行した。テレビ放送では系深夜枠で放送され、視聴率は4.8%を記録したという。
映像ソフト化はとで行われたが、初回版では夕景の色味が劇場版より赤かったため、いわゆるDVD色調問題として一部で論争となった。なお、海外向けには英語字幕版のほか、の映画祭向けに感嘆符を減らした別版が存在する。
反響[編集]
批評[編集]
批評家の間では、若年層の「好き」の非対称性を可視化した作品として評価された。とりわけ、台詞の少なさと環境音の多さが「感情の空白を聴かせる設計」として注目され、誌では年間ベスト10に選出された[5]。
一方で、感情表現を定量化する久我蒼の“クガ理論”については、作品内で説明が不足しているとの指摘もあり、SNSでは「クガは何単位なのか」という議論が3週間続いた。
受賞・ノミネート[編集]
本作はで作品賞と音響賞を受賞し、の新人監督賞にノミネートされた。さらにでは観客賞を獲得し、審査員コメントで「泣かせるというより、泣く準備をさせる映画」と評された。
なお、公開後に“最も小声で言われた名台詞”部門の非公式投票が行われ、しずくの「だって好きだもん」が2位に入った。1位は本編未使用のラフ収録版であった。
売上記録[編集]
興行収入は8.4億円を記録し、製作費1億9000万円の約4.4倍となった。公開6週目にはの3館上映から始まった作品としては異例のロングランとなり、ミニシアター系アニメ映画としては当時の記録を抜いている。
また、公式グッズの“好きの温度計”が累計6万3000本売れたとされ、映画本編より先に温度計だけが品切れになる現象が起きた。
テレビ放送[編集]
地上波初放送は9月22日に行われ、深夜ながら平均視聴率4.8%を記録した。放送版では文化祭の一部シーンがカットされたが、代わりに監督による解題テロップが挿入され、映画史の講義のようになったことで一部視聴者を困惑させた。
再放送は翌年の春休み特番で実施され、系チャンネルでは“言い切れない感情の扱い方”の教材として紹介された。放送終了後には、ネット上で「好きと言えない世代の国語の授業」と評されることもあった。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの[編集]
公式パンフレットは全64ページで、うち18ページが背景美術のための地図で占められていた。ほかに、録音テープ型のキーホルダー、送水塔のペーパークラフト、しずくのノートを模したメモ帳が販売された。
また、初回限定版には“好きの理由を書ける”付箋が付属し、購入者アンケートでは約72%が「1枚では足りない」と回答した。
派生作品[編集]
ノベライズ『だって好きだもん 町が覚えていたこと』がから刊行されたほか、舞台版『だって好きだもん the Stage』がで上演された。舞台版では送水塔が回転式の巨大脚立で表現され、原作ファンを驚かせた。
さらに、短編スピンオフ『だって好きだもん 休み時間のクガ』では、久我蒼の日常が徹底的に数値化され、視聴者の一部から「本編より怖い」と評された。
脚注[編集]
興行収入の数値は製作委員会公表資料による。
小鳥遊澪監督の発言は『アニメーション新潮』2022年8月号に掲載された。
館数の推移は朝霧シネマの週報に基づく。
台詞のアドリブ説には異論があり、編集者間で記述が揺れている。
『映画芸術』誌の年間特集は紙幅の都合で一部省略されている。
参考文献[編集]
真鍋リツ『「好き」の断片化と都市郊外の音響設計』白鷺書房, 2022年.
小鳥遊澪『アニメ映画における感情の前傾角度』月舟出版, 2023年.
佐伯志穂「送水塔モチーフの再定義」『現代映像研究』Vol.18, No.2, pp.41-58.
H. Kuroda, “Acoustic Silence in Youth Animation,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol.7, No.1, pp.12-29.
藤堂尚人『背景美術と未説明の踏切』朝霧新書, 2021年.
朝倉遥編『だって好きだもん製作記録』月舟アーカイブス, 2024年.
三条みのり「クガ理論の可視化について」『感情計量学紀要』第4巻第3号, pp.88-103.
M. Thornton, “When a Phrase Becomes a Town: Case Studies in Contemporary Anime,” Pacific Film Quarterly, Vol.11, No.4, pp.201-219.
白石文庫編集部『字幕版と感嘆符の問題』白石文庫レポート, 2024年.
花瀬リオ『歌詞の余白と沈黙』音葉社, 2022年.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
朝霧シネマ公式作品ページ
スタジオ・ミルハ作品紹介
だって好きだもん製作委員会ニュース
白石文庫アーカイブ
アニメーション新潮 特集ページ
脚注
- ^ 真鍋リツ『「好き」の断片化と都市郊外の音響設計』白鷺書房, 2022年.
- ^ 小鳥遊澪『アニメ映画における感情の前傾角度』月舟出版, 2023年.
- ^ 佐伯志穂「送水塔モチーフの再定義」『現代映像研究』Vol.18, No.2, pp.41-58.
- ^ H. Kuroda, “Acoustic Silence in Youth Animation,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol.7, No.1, pp.12-29.
- ^ 藤堂尚人『背景美術と未説明の踏切』朝霧新書, 2021年.
- ^ 朝倉遥編『だって好きだもん製作記録』月舟アーカイブス, 2024年.
- ^ 三条みのり「クガ理論の可視化について」『感情計量学紀要』第4巻第3号, pp.88-103.
- ^ M. Thornton, “When a Phrase Becomes a Town: Case Studies in Contemporary Anime,” Pacific Film Quarterly, Vol.11, No.4, pp.201-219.
- ^ 白石文庫編集部『字幕版と感嘆符の問題』白石文庫レポート, 2024年.
- ^ 花瀬リオ『歌詞の余白と沈黙』音葉社, 2022年.
外部リンク
- 朝霧シネマ公式作品ページ
- スタジオ・ミルハ作品紹介
- だって好きだもん製作委員会ニュース
- 白石文庫アーカイブ
- アニメーション新潮 特集ページ