ばかうんこまん
| 名称 | ばかうんこまん |
|---|---|
| 英語表記 | Bakaunkoman |
| 初出 | 1987年ごろ |
| 発祥地 | 東京都板橋区 |
| 分類 | 衛生啓発系ご当地ヒーロー |
| モチーフ | 仮面・排泄・滑稽譚 |
| 制作主体 | 日本児童生活改善協会 企画課 |
| 活動期間 | 1987年 - 1994年 |
| 派生媒体 | 紙芝居、ソフビ人形、AM深夜番組 |
ばかうんこまんは、末期の都市伝承研究と学童向け衛生教育が交差するなかで成立したとされる、発祥の仮面キャラクターである。のちに玩具、紙芝居、深夜ラジオの三媒体で独自の展開をみせたことで知られる[1]。
概要[編集]
ばかうんこまんは、表向きには子どもの生活習慣改善を目的として制作されたとされる架空のヒーローである。名称の直截さに反して、当初の資料では「腸内環境の乱れを笑いに転化して理解させる教育装置」と位置づけられていた[2]。
その成立には内の公立小学校で行われた便意我慢の長期観察記録、ならびにの広報実験が関係したとされる。なお、初期設定では変身前の姿が「普通の商店街の青年」とされていたが、後年の再編で急に超人的な脚力を得たことが知られている。
成立の背景[編集]
ばかうんこまんの原型は、にの保健所で実施された「朝の排便率向上キャンペーン」の副産物として生まれたという説が有力である。当時の担当者であったは、啓発ポスターがことごとく子どもに無視されたことから、あえて侮蔑的な響きを持つ名称を逆用する案を提出したとされる[3]。
この案はの非公式検討会でいったん却下されたが、同席していた民俗学者が「下品語の反転利用は江戸長屋の笑芸に通じる」と発言したことで再検討に回された。結果として、衛生教育を「説教」ではなく「笑いと羞恥の中間領域」に置く方針が採用されたとされる。
歴史[編集]
1980年代後半の初期展開[編集]
、最初の試作版はの会議室で披露され、胸部に「B」の文字を配した紙製マスクを用いていた。初代スーツアクターは元給食配膳員ので、わずか7分の実演で児童42人が「トイレに行ってから遊ぶ」と回答したため、教育効果が確認されたという[4]。
同年秋には沿線の商店会がスポンサーとなり、町内ポスターが計1,260枚配布された。うち14枚だけが雨でにじみ、結果として顔面の表情が異様に迫力を持ったことから、以後の正式デザインは「にじみ顔」を採用したとされる。
紙芝居とソフビ化[編集]
にはの外郭団体が紙芝居『ばかうんこまんと七つのトイレ』を制作し、都内の保育園27園で巡回上演された。脚本は児童文学者が執筆したが、3幕目の「便器の精霊が説教する場面」が長すぎるとして、現場で12分短縮されたという。
同時期に発売されたソフビ人形は、押すと腹部から「がまんはよくない」という音声が流れる仕組みであった。ただし初回生産のうち38体は音声チップの誤配線により「がまんはよくない、でも順番は守れ」と二重に再生され、かえって教育的であるとして回収されなかった。
深夜ラジオへの進出[編集]
にはの深夜枠で『ばかうんこまんの便意相談室』が放送され、視聴率は公称1.7%ながら葉書到達数は週平均480通に達したとされる。相談内容の多くは「授業中に腹が鳴る」「遠足バスで席を立てない」といった切実なもので、番組は次第に生活相談番組としての性格を強めた。
この時期、パーソナリティを務めたは「名前の破壊力で大人を黙らせることができた」と回想している。なお、番組後期には企業スポンサーがつき、CM明けに「本日のばか検定」が挟まれるなど、いよいよ何の番組か判然としなくなった。
設定とキャラクター像[編集]
ばかうんこまんは、普段は都内の小さな清掃会社に勤めるであり、下水管の詰まりを見抜く異常な嗅覚を持つという設定である。変身後は金色のベルトと青いマントをまとい、腰部の「浄化ボタン」を押すことで3秒間だけ跳躍力が約4.8倍になるとされた。
また、必殺技として「反転消臭キック」「いきなり整腸波」などが知られているが、これらの名称はすべてに開催された社内公募で決まったものである。最終候補に残った「排泄の光」は児童に不評だったため採用されなかったという。
社会的影響[編集]
ばかうんこまんは、当時の保健行政が苦手としていた「恥を伴う話題」を、子ども向け文化へ移植することで一定の効果をもたらしたとされる。特にの調査では、対象学級のうち68.4%が「食後すぐに走らない」と回答し、前年度比で12ポイント上昇したと報告された[5]。
一方で、名称の露骨さからの一部には強い反発があり、では配布予定だった下敷き2,400枚が「家庭内会話への悪影響」を理由に一度差し止められた。もっとも、その後の再配布では逆に人気が集中し、転売防止のため一人3枚までという珍妙な制限が設けられた。
批判と論争[編集]
批判の中心は、名称に含まれる下品語が公的事業にふさわしいかという点にあった。とくに、の内部文書において「学習の動機づけとしては有効だが、来賓向け資料の表紙に載せるには刺激が強すぎる」と記されていたことが後年明らかになっている。
また、制作初期の脚本に便通回数の統計が過剰に盛り込まれていたことから、研究倫理上の問題を指摘する声もあった。ただし関係者は「当時の子どもは数字なら信じる」と反論しており、この応酬は雑誌『』第14号の特集でも取り上げられた。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 野口善一『便意と教育—昭和後期の啓発表現』日本生活改善出版, 1994.
- ^ 佐伯みどり『笑いの衛生学』勁草書房, 1996.
- ^ 高瀬律子「巡回紙芝居における羞恥語の転用」『児童文化研究』Vol. 12, No. 3, pp. 41-58, 1989.
- ^ 三浦冬彦『深夜に鳴る腹と番組』双葉社, 2001.
- ^ H. Yamane, “Reversal Humor in Municipal Health Campaigns,” Journal of Urban Folklore, Vol. 8, No. 2, pp. 113-129, 1995.
- ^ M. Kanda, “Toy Prototypes for Digestive Education in Postwar Japan,” Asian Media Studies, Vol. 4, No. 1, pp. 7-26, 1998.
- ^ 『ばかうんこまんと七つのトイレ』台本復刻委員会『復刻版脚本集』日本児童生活改善協会, 2007.
- ^ 田島和彦「板橋区における便意観察日誌の再検討」『地方保健史紀要』第22巻第1号, pp. 88-101, 2010.
- ^ C. Morton, “The Political Economy of Toilet Mascots,” The Review of Civic Satire, Vol. 3, No. 4, pp. 201-219, 2002.
- ^ 山根一平『浄化ボタンの三秒神話』港北文庫, 1999.
外部リンク
- 日本児童生活改善協会アーカイブ
- 板橋区民俗資料室デジタルコレクション
- 昭和サブカル研究会
- 深夜ラジオ記録保存会
- 児童啓発玩具博物館