やまねこスローライフ
| タイトル | やまねこスローライフ |
|---|---|
| 画像 | ファイル: YamanekoSlowLife_cover.png |
| 画像サイズ | 220px |
| caption | 可愛いヤマネコ親子と霧の森を描いたパッケージアート |
| ジャンル | アクションRPG(ハンティング&暮らし) |
| 対応機種 | ニホンノワール、バルーンOS(後期対応) |
| 開発元 | 山影インタラクティブ |
| 発売元 | 梵天流通エンターテインメント |
| プロデューサー | 斑鳩(いかるが)ユウキ |
| ディレクター | 小笠(おがさ)コトハ |
| デザイナー | 黒曜(こくよう)ミナト |
| プログラマー | 風見(かざみ)レオン |
| 音楽 | 霧原(きりはら)サオリ |
| シリーズ | 山影シリーズ第2作 |
| 発売日 | 2021年11月12日 |
| 対象年齢 | 全年齢(保護者推奨) |
| 売上本数 | 全世界累計165万本 |
| その他 | 日本ゲーム大賞受賞 / 協力プレイ対応(ローカル) |
『やまねこスローライフ』(英: Yamaneko Slow Life、略称: YSL)は、[[2021年]][[11月12日]]に[[日本]]の[[山影インタラクティブ]]から発売された[[ニホンノワール]]用[[ロールプレイングゲーム]]である。自給自足と探索を両立した[[スローライフゲーム]]として知られ、通称は「山の子育てRPG」である[1]。
概要[編集]
『やまねこスローライフ』は、プレイヤーが「山の里の見習い」を務め、[[ヤマネコ]]の子育てを手伝いながら、[[不思議な山]]での自給自足を体験する[[ロールプレイングゲーム]]である。ゲーム進行は探索・採取・調理・小屋の改修・家庭菜園の世話という循環で構成され、戦闘と暮らしの境界が曖昧に設計されている[2]。
本作は、開発初期に社内で提案された「ハンティングアクションは1分以内、生活行為は無制限」という方針が採用され、のちに「時間の熱量」を数値化するシステムへと発展したとされる。特に、可愛いヤマネコの子供が成長する過程で、プレイヤーの行動が家の音や匂いのような演出に反映される点が特徴として挙げられる[3]。なお、公式には“リアルタイム”と表現されるが、実際には「霧量ゲージ」を介した疑似時間が用いられていると指摘されている[4]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステムの特徴として、プレイヤーは[[収穫手帳]]を携帯し、[[霧の森]]での採取結果を「香り」「手触り」「余熱」に分解して記録する。これらのメタ情報は料理やクラフトに直接影響し、同じ[[きのこ]]でも調理工程が変化する[5]。
戦闘は完全な主目的ではなく、[[スローステップ]]という回避行動を軸に、追いかけられている動物の気配を読み取る設計が採用されている。一方で、狩猟は「道具の使用回数」よりも「会話回数」によって成功率が上がるため、プレイヤーは敵・獣と同時に“生活者”としての振る舞いを求められる[6]。
アイテム面では、採取物から[[保存壺]]や[[湯気みそ]]が作られ、これらが次の探索での体力回復や、子ヤマネコへの給餌(好物判定)に波及する。対戦モードはなく、協力プレイはローカルのみで、最大2人が「同じ小屋の台所」だけ共有できる形式である[7]。
オフラインモードでは、里の人間関係がランダム生成されるとされ、特定の行商人の訪問日がプレイヤーごとに微妙にずれることが、攻略コミュニティで「ズレ暦」として話題になった[8]。ただし、この挙動は後年のアップデートで抑制されたとされる。
ストーリー[編集]
物語は、不思議な山で暮らす「里」を維持するため、主人公が[[霧の採収契約]]を引き継ぐ場面から始まる。契約書には、ヤマネコの子供が大きくなるまで、伐採量・湯の温度・星空観測の回数を守るよう細かく記されている[9]。
序盤の事件として、[[山のはね橋]]付近で“音が落ちる”現象が起き、プレイヤーの足音が一定の周期で別の場所から返ってくる。これにより、子ヤマネコの遊び場が定位置ではなくなるため、探索の効率と暮らしのリズムが同時に試されることになる[10]。
中盤では、主人公が作った保存食が、なぜか[[隣の谷]]の古い祠へ運ばれている形跡が見つかる。里では「食は帰巣本能を持つ」という民俗が語られており、プレイヤーは自分の行動が“山の意思”に吸収されていく感覚を味わうことになると説明される[11]。終盤では子ヤマネコが巣立ち、里の住人が「次は誰かのスローライフを始める番」と歌う場面で締められる。
登場キャラクター[編集]
主人公は無名の「山の里の見習い」とされ、プレイヤーは会話選択肢によって“声の温度”を変えられる。キャラクター同士の関係はステータスではなく、[[ぬくもり手紙]]のやり取りで変化する点が、当時のメディアで一種の新機軸として扱われた[12]。
仲間としては、ヤマネコの子供「[[コロ]]」とその親「[[雲餅(くももち)]]」が登場する。コロは可愛い見た目に反し、採取した素材を勝手に並べ替える癖があり、これが料理の失敗原因になったプレイヤーも多かったとされる[13]。ただし、失敗作を捨てない場合に限り、後日“温かい失敗”としてレア素材へ変換される仕様があるという指摘がある。
敵としては、狩る存在ではなく「急いでしまうもの」が扱われる。具体的には、[[焦げ砂時計]]を持つ霧の行商人「[[焦点(しょうてん)ブラウ]]」が現れ、里の時間を巻き戻そうとする。ブラウは戦闘ではなく会話と物品の交換で影響してくるため、プレイヤーの暮らし方がそのまま対立構造を形作ると解釈された[14]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、山が“生活の法則”を持つとされている。里の住人はこれを[[山の継続圧]]と呼び、狩猟や伐採だけでなく、皿を洗う回数や夜に火を落とすタイミングが数値に換算されると説明する[15]。
また、探索の基盤として[[霧の層]]が設定されている。霧の層は全部で7層とされ、各層で獲れる素材の匂いの方向性が変わる。「第4層では“甘い金属”のような匂いがする」という表現が公式ガイドで採用されたことで、ファンが真似して香水をつけてプレイしたという逸話が残っている[16]。実際の香りが再現されるわけではないが、開発時にテスターの嗅覚データを取り込んだという内部事情が語られたとされる。
さらに、[[小屋の音響権]]という制度が用語として登場する。これは、小屋の改修が進むほどヤマネコの子供の遊び声が増え、住人が“その音を買う”という奇妙な経済を生むという設定である[17]。批判的な読者からは「かわいいのに制度が重い」と言われたが、ゲーム内では法令文書のようなUIで真面目に表示されるため、結果的に笑いが生まれたとされる。
開発/制作[編集]
開発は[[山影インタラクティブ]]が中心となって行われ、企画段階で関与した「生活リズム班」は調理と採取のモーションに注力したとされる。ディレクターの[[小笠コトハ]]は制作インタビューで、最初のプロトタイプの完成が発売の約530日前だったことを明かした[18]。
制作経緯としてよく語られるのが、[[梵天流通エンターテインメント]]の販促担当が「売れるRPGは戦闘の回転数が必要」と主張し、そこへデザイナーの[[黒曜ミナト]]が「回転数なら生活が一番回る」と反論したという逸話である。結果として、戦闘にかけられる“集中時間”は合計で30分まで、残りは暮らし行為に誘導される調整が入ったとされる[19]。ただし、後にこの制限は撤回されたという証言もあり、編集の都合で食い違いがあると指摘されている。
スタッフ面では、プログラマーの[[風見レオン]]が霧量ゲージの疑似時間生成アルゴリズムを設計したとされる。音楽担当の[[霧原サオリ]]は、里の夜のBGMを「子ヤマネコの呼吸に合わせた拍子」で作ったと語っており、実際の楽曲は小節ではなく“給餌タイミング”で区切られているとファンが分析した[20]。また、ゲーム内テキストの一部は「里の古文書」として架空翻刻されたとされる。
音楽[編集]
サウンドトラックは『[[霧呼び台所音楽録]]』として発売され、全42曲で構成される。うち12曲が料理用、9曲が探索用、残りが子育てイベント用と分類されているという[21]。霧の層が変わると同じメロディが“音程だけ変えて”再登場するため、プレイヤーがBGMの変化から地形を当てることもできると説明された。
具体的な曲名として、[[「保存壺の月」]]や[[「急がない鈴」]]、[[「焦げ砂時計が鳴る」]]などが知られる。特に「急がない鈴」は、テンポが通常の1/2になった瞬間にプレイヤーの[[スローステップ]]成功率がわずかに上がるよう設計されているとされるが、検証は困難で「気のせい」と言う人もいる[22]。一方で、攻略動画では“耳コピ”のように見える行動が紹介され、結果として音楽が攻略の鍵になった。
他機種版/移植版[編集]
後年の移植版として、バルーンOS向けに『やまねこスローライフ for Balloon』が[[2023年]][[9月7日]]にリリースされた。移植ではロード時間の短縮に加え、霧量ゲージのUI表現が「見習いの目」アイコンから「湯気の濃度」へ変更された[23]。
また、操作の補助として[[ゆっくり照準]]機能が追加され、武器の狩猟挙動がさらに“急がない”方向へ調整されたとされる。ただし、元のファンからは「スローがスローでなくなった」との声もあり、評価を二分した[24]。一方で、子ヤマネコの成長イベントの発生タイミングがより安定したことで、新規層が入りやすくなったとも言われる。
なお、クラウドセーブの導入は発売から約18か月後とされ、里のズレ暦の仕様は完全には戻せなかったとされる。公式は「保護のため」であると説明したが、プレイヤー間では「わざとズレを残した」とも言われた。
評価[編集]
発売後、本作は日本ゲーム大賞を受賞したとされる。受賞理由は「身体感覚としての生活行動がRPG設計に組み込まれた点」であり、特に[[ファミ通クロスレビューゴールド殿堂入りソフト]]に選ばれたことが大きいと報じられた[25]。
売上面では全世界累計165万本を突破し、うち国内が約71万本、海外が約94万本と見積もられた。海外では“子育てが癒やし”と受け取られた一方で、食材の管理が細かすぎるとして一部で不満も出たとされる[26]。ただし、ゲーム内の保存手順が「3工程・各工程18回まで」とされる攻略仕様が、配信者の縛りプレイで逆に称賛されたという記録もある。
批評としては、戦闘が弱いというより「戦闘をしないと上手くなる」設計が評価された。とはいえ、時間の疑似生成(霧量ゲージ)が不自然だと指摘され、レビュー媒体では“リアルタイム詐欺”と揶揄する記事が出た。結局のところ、公式は「リアルタイムとは生活のテンポの意味」であると説明し、沈静化したとされた[27]。
関連作品[編集]
関連作品として、テレビアニメ『[[やまねこスロータイム]]』が2022年に放送された。原作ゲームの序盤のみを扱い、子ヤマネコの名前や台所の作法に焦点を当てたとされる[28]。また、漫画版『山の里の見習い手帳』は、料理の章が異様に長いことで知られる。
ゲーム外では、ボードゲーム『[[霧呼び台所]]』や、エッセイ風ライトノベル『[[湯気みそ日誌]]』が展開された。いずれも“生活の手触り”を模した内容で、短い章ごとに採取・調理・改修の手順が挿入される形式を採用している[29]。一方で、物語の裏設定がファンの間で考察され、ゲーム本編の出来事と微妙に食い違うことが指摘されている。
関連商品[編集]
攻略本として『[[やまねこスローライフ 霧層対応 収穫手帳完全版]]』(ISBN 978-4-xxxx-xxxx-x)が発売され、霧の層ごとの素材の匂い分類が表として掲載されたとされる[30]。この表は“現物の匂い”を想起させるために、比喩が過剰に細かいことで話題になり、購入者の一部から「棚が香る」といった報告が出た。
また、サウンドトラックの書籍付き版『[[霧呼び台所音楽録 上巻]]』では、作曲時の拍子が「給餌タイミング(1回/2回/3回)」で記述されているとされる。加えて、周辺アイテムとして“保存壺風”のマグカップが販売されたが、こちらは食器としての安全性が不十分という理由で短期で回収されたと噂されている[31]。
さらに、ゲーム内の[[保存壺]]の配合を再現するクラフト教材『湯気みそスタンプ講座』も出回った。公式は否定しなかったものの「ゲームはゲーム」との注意を出したとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 小笠コトハ『山の里の見習い設計論』山影出版, 2021.(pp. 41-58)
- ^ 斑鳩ユウキ「時間の熱量を暮らしに変えるRPG」『インタラクティブ・プレイ研究』第12巻第3号, 2022.(pp. 12-27)
- ^ 霧原サオリ『霧呼び台所音楽録(作曲メモ)』音符社, 2022.(pp. 5-19)
- ^ 風見レオン「疑似時間生成アルゴリズム“霧量ゲージ”の実装」『ソフトウェア音楽協会誌』Vol.8 No.1, 2023.(pp. 77-93)
- ^ 黒曜ミナト『かわいい敵と暮らしの戦闘学』梵天学院出版, 2021.(第2章)
- ^ 山影インタラクティブ編『やまねこスローライフ 公式開発資料集』限定冊子, 2021.(pp. 2-9)
- ^ T. Kurogawa, “Scent-Indexed Crafting in Slow-Life RPGs,” Journal of Game Feel, Vol.5 No.2, 2022.(pp. 101-118)
- ^ M. Hoshino, “House-Acoustics as Progression: The YSL Model,” Proceedings of the Interactive Home Symposium, pp. 33-49, 2023.
- ^ ファミ通クロスレビュー編集部『ファミ通クロスレビュー大全(架空年版)』KAD番長書房, 2022.(※版元が別物の可能性がある)
- ^ R. Van Alder, “Nonviolent Hunting Systems,” International Review of Quiet Games, Vol.2, pp. 55-69, 2021.(第◯巻第◯号表記が一次資料と一致しない)
外部リンク
- Yamaneko Slow Life 公式アーカイブ
- 霧呼び台所音楽録 特設ページ
- 収穫手帳オンライン(非公式ミラー)
- ズレ暦データベース
- スローステップ検証ラボ