ナチョチョ
| 名称 | ナチョチョ |
|---|---|
| 界 | 動物界 |
| 門 | 脊索動物門 |
| 綱 | 哺乳類様爬虫綱 |
| 目 | 翼爪目 |
| 科 | 薄雲科 |
| 属 | ナチョチョ属 |
| 種 | N. mirabilis |
| 学名 | Nachocho mirabilis |
| 和名 | ナチョチョ |
| 英名 | Glow-mantle Nachocho |
| 保全状況 | 情報不足(地域的には準絶滅危惧) |
ナチョチョ(那蝶々、学名: ''Nachocho mirabilis'')は、に分類されるの一種[1]。夕暮れのにおいて、発光する花粉を衣服状にまとう習性を持つことで知られている[1]。
概要[編集]
ナチョチョは、からの一部にかけて断続的に生息するとされる夜行性の小型動物である。体表の一部が乾燥すると薄い膜状になって剥離し、その破片がを帯びるため、古くから「夜の紙吹雪」と呼ばれてきた。
本種は末期の博物学者によって初めて記載されたとされるが、実際には彼の採集帳に残るスケッチが異様に詳細である一方、標本番号が19点連続で欠番になっていることから、後世に相当な加筆が行われたとの指摘がある[2]。なお、の所蔵資料には、ナチョチョの卵殻とされる半透明の断片が17点保管されているが、いずれも採集地の記録がやけに曖昧である[3]。
分類[編集]
ナチョチョは長らくの中でもに置かれてきたが、地域個体群の差異が大きく、の再検討では「科内に少なくとも3つの未記載属が含まれる」とされた。もっとも、この結論はのとの合同報告に依拠しており、採取されたDNA試料の半数が花蜜由来であった可能性が指摘されている。
現在は、尾膜の縁にある微細な鉤状構造と、舌先に見られる吸着丘の配置を基準に、''Nachocho'' 属として単型に扱う説が有力である。ただし、の洞窟域で確認された個体群は、鳴き声が三拍子ではなく五拍子であるため、別種 ''N. quinta'' とする見解も根強い。学界ではこの点をめぐって、で開催されたの公開討論会が「もっとも無駄に盛り上がった分類学会合」として語り草になっている[4]。
形態[編集]
成体は頭胴長14〜19cm、尾長がそれよりやや長く、体重は平均で84g前後とされる。最大の特徴は肩甲部から背部にかけて発達する半透明の鱗膜であり、これが湿度70%以上の環境で淡い橙色に変化するため、遠目には果実の落下にしか見えない。
頭部はやや扁平で、眼はに近い波長を感知すると考えられている。鼻端には6本の可動性の長毛があり、これを振動させることで周囲の花粉濃度を測るという。なお、のらがに行った観察では、個体が鏡面に映る自分を見て一度だけ抱卵姿勢をとったことが報告されているが、同報告書の図版には明らかに別個体の写真が使われていた[要出典]。
鳴き声は「ナチョ」「チョチョ」と二段階に分かれ、繁殖期にはこれが連続して12〜18回繰り返される。民俗学的にはこの発声が名称の由来とされるが、実際には沿岸の漁師が網修繕中の金具音を聞き違えたものとする説もある。
分布[編集]
ナチョチョの分布は、の石灰岩地帯から西部、さらにの一部に至る帯状の範囲に及ぶとされる。もっとも、確認記録の多くは夜間調査に依存しており、観察者が糖分の高い果実酒を飲んでいた例も少なくないため、実際の生息域はかなり狭い可能性がある。
地域別には、湿地林に住む「平地型」、石灰洞の入口部に多い「鍾乳型」、高木の枝先に滞在する「樹冠型」の3型が知られている。特にのでは、の大規模調査で37頭が記録されたとされるが、うち9頭は翌朝には消失しており、調査ノートの筆跡から「同じ個体を数え直しただけではないか」と疑われたことがある。
生態[編集]
食性[編集]
ナチョチョは花蜜、微小昆虫、腐敗直前の果実を主に摂食するとされる。特に夜明け前に開花するを好み、舌の先で花粉球を丸めて保存する習性がある。
また、雨季にはの胞子嚢をこそげ取る行動が観察されているが、これは栄養摂取というより、体表膜の再生に必要な粘性物質を得るためと考えられている。1個体が1晩に摂取する糖分は平均2.7gで、これは体重比に直すと人間換算で「カフェラテを8杯飲むのと同等」との報告書に記されていた[5]。
繁殖[編集]
繁殖期は明けの2週間ほどで、雄は腹部の発光斑を3回点滅させた後、尾膜を風車のように回転させて雌に求愛する。受精後、雌は地中30〜40cmの粘土層に1〜3個の卵を産み、約41日で孵化するとされている。
ただし、の飼育個体群では、卵ではなく「半透明の繭状構造」が確認され、これをめぐって一時期「ナチョチョは有袋類に近い」とする珍説が出た。後にその繭は飼育員が保温用に巻いた和紙だったことが判明したが、論文は撤回されず、そのまま引用され続けている。
社会性[編集]
ナチョチョは通常は単独生活を行うが、繁殖前後の数日間だけ最大7個体の群れを形成する。群れ内では尾膜の発光パターンによって順位が決まり、最も明るい個体が移動方向を決めるとされる。
群れの移動は「斜め三角形」を保つのが特徴で、これを見たの研究チームは、ナチョチョが協働的な避難行動を持つ初の微小哺乳類様爬虫類であると報告した。しかし、その図では全個体の影が同じ向きであり、会場の学生から「蛍光灯の位置がバラバラでは」と静かに指摘されたという。
人間との関係[編集]
ナチョチョは、との一部では古くから「火前の守り獣」として知られ、家屋の軒下に乾いた葉を束ねて吊るすと寄り付くと信じられてきた。実際には葉の種類に強い偏好性があるだけであるが、40年代の民俗採集では、これを魔除けにした例が24件記録されている。
一方で、体表の発光膜が装飾素材として珍重された時期があり、には違法な採集圧が急増した。これを受け、はに「薄雲科夜行性小型動物暫定保護指針」を発出し、採集袋の内側に黒布を貼ることを義務づけたとされる。もっとも、当時の通達文は事務連絡の体裁をとりながら、なぜか「生体は強い孤独感を示すため、1個体につき見学者は2名まで」と書かれており、担当者の個人的感情が混入した文書として知られている[6]。
また、の一部の教育博物館では、剥離膜を模した紙工作が理科教材として採用され、子ども向けワークショップが年間延べ4,000人規模で実施されたことがある。もっとも、完成品はたびたび単なる銀色の折り紙と区別がつかず、展示担当者が毎回「本物はもっと気まずい光り方をする」と説明していたという。
脚注[編集]
[1] 寺内房次郎『南方薄雲類図譜』博物学研究社, 1912年, pp. 44-51.
[2] 清水瑠美子「翼爪目新分類案における欠番標本の扱い」『東アジア動物分類学雑誌』Vol. 18, No. 2, 1988年, pp. 103-119.
[3] 国立科学博物館編『夜行性小型動物標本目録 第4巻』東京標本館出版, 1996年, pp. 210-214.
[4] リム・シェンホー、志賀倫子「薄雲科内未記載群の同定をめぐる公開討論記録」『東京大学総合研究博物館年報』第31号, 2005年, pp. 77-98.
[5] 琉球自然史協会『西表島夜間調査報告書 1979-1981』那覇自然史叢書, 1982年, pp. 9-12.
[6] 環境庁野生生物保全室『薄雲科夜行性小型動物暫定保護指針』官報別冊第17号, 1982年, pp. 1-7.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 寺内房次郎『南方薄雲類図譜』博物学研究社, 1912年.
- ^ 清水瑠美子「翼爪目新分類案における欠番標本の扱い」『東アジア動物分類学雑誌』Vol. 18, No. 2, 1988年, pp. 103-119.
- ^ 国立科学博物館編『夜行性小型動物標本目録 第4巻』東京標本館出版, 1996年, pp. 210-214.
- ^ リム・シェンホー、志賀倫子「薄雲科内未記載群の同定をめぐる公開討論記録」『東京大学総合研究博物館年報』第31号, 2005年, pp. 77-98.
- ^ 琉球自然史協会『西表島夜間調査報告書 1979-1981』那覇自然史叢書, 1982年, pp. 9-12.
- ^ 環境庁野生生物保全室『薄雲科夜行性小型動物暫定保護指針』官報別冊第17号, 1982年, pp. 1-7.
- ^ Margaret A. Thornton, 『Mantle Glow and Nocturnal Drift in Southeast Asian Vertebrata』Journal of Cryptozoological Studies, Vol. 12, No. 4, 2001, pp. 201-229.
- ^ Kenji Hoshino and Lê Minh Quân, 『Microfauna of Limestone Entrances in the Ryukyu Arc』Annals of Pacific Zoology, Vol. 7, No. 1, 1994, pp. 55-68.
- ^ 大谷晴彦『ナチョチョの発光膜に関する基礎的研究』『南方動物学報』第9巻第3号, 1978年, pp. 14-27.
- ^ 志賀倫子『夜の紙吹雪: 薄雲科動物の民俗と生態』海鳴社, 2013年, pp. 88-112.
- ^ 藤堂一真『繭状構造の誤認と飼育史』『動物園研究通信』第22号, 2016年, pp. 41-49.
外部リンク
- 国際薄雲科研究会
- 琉球夜行動物アーカイブ
- 東アジア仮想動物目録
- 那蝶島自然史資料室
- 南方奇生物データベース