モロペディア
| カテゴリ | 架空の編集遊戯としてのインターネット文化 |
|---|---|
| 成立 | 2000年代半ばの“百科事典ごっこ”コミュニティを母体とする |
| 主な活動 | 短文記事の作成と“出典っぽさ”の演出 |
| 配布形態 | Wiki風ページの頒布、ミラーリング、コピペキット |
| 中心となる媒体 | 画像掲示板・匿名ブログ・SNS |
| 代表的な合言葉 | 「出典は読者を刺す」 |
モロペディア(もろぺでぃあ)とは、雑学を“それっぽく”参照できる体裁に編集し直して楽しむ、和製英語・造語のサブカル百科事典文化を指す。〇〇を行う人はモロペディアヤーと呼ばれる[1]。
概要[編集]
モロペディアは、インターネット上で百科事典の形式を借りて、情報を“検証済みのように”見せながら編集する遊びとして認識されている。明確な定義は確立されておらず、単に「嘘の文章」ではなく「それっぽさの技術」を共有する点に特徴がある。
とくに、との境界をわずかにずらす作法が評価され、モロペディアヤーによる記事は“読めば読むほど、どこが怪しいかが楽しくなる”形式で広まったとされる。ネットの発達に伴い、編集作法はテンプレ化され、頒布(いんぷっと・コピーミラー・改変パック)が盛んになった。
定義[編集]
モロペディアヤーが行う行為は「モロ編集」と呼ばれ、(1) 語の導入文を百科事典調に揃え、(2) それらしい歴史をでっち上げ、(3) 脚注・参考文献の書式を統一し、(4) 一見もっともらしいが微妙に誤る事実(“待てよ”ポイント)を意図的に混ぜることで成立するとされる。
また、モロペディアは和製英語・造語として語られることが多く、由来は「Moro(盛る)+Pedia(百科)」という説明がしばしば引用される。ただし初期の議論では「盛る」だけでなく「諭す(しるす)」の“誤読”を含むという説もあり、言葉の揺れ自体が文化の一部と位置付けられている。
なお、編集は自由参加である一方、コミュニティ内には“最低限の礼儀”が存在するとされる。具体的には、誤りが特定個人への攻撃に転用されないようにする規約や、らしきものは“引用元を名乗る”が“内容の正誤は保証しない”という温度感の合意があったとされる。
歴史[編集]
起源:2006年の“百科の薄い本”事件[編集]
最古の系譜として語られるのは、に内の同人印刷サークルが配布した“百科の薄い本”である。そこでは、雑学コラムを見開き2ページで収める都合から、出典の枠だけを先に作り、後から文章を流し込む方式が採用されたと伝えられる。
この方式がネットに持ち込まれたのは、頃に掲示板のスレで「脚注だけ先に書くと嘘が強くなる」という経験則が共有されたことに起因するとされる。ある投稿では、出典を“3行以内”に制限すると信頼性が跳ね上がる(主観評価)とされ、瞬く間に模倣が増えたという。
また、当時は「百科事典っぽい体裁」を模した投稿タグが乱立し、モロペディアの名称は後から整理されたと考えられている。
年代別の発展:2010年代の“フォーマット競争”[編集]
からにかけて、モロペディアは「体裁の厳格化」を競う文化へと変化した。特に、脚注の句点位置や、参考文献の書式に関するローカルルールが整備されたとされる。例として、参考文献には「著者名『書名』出版社, 年.」の形を崩さないこと、巻号は「Vol.」「第◯巻第◯号」を必ず入れること、などが強く推奨されたという。
この時期には“出典らしさ指数”が非公式に流通した。あるまとめでは、架空の論文のタイトル文字数が「17〜23字」だと読了率が上がるという妙に具体的な指標が提示され、結果としてモロペディアヤーは数字で嘘を補強する方向へ舵を切ったとされる。
さらに、前後からは画像付きでの頒布が増え、図版(擬似グラフや“年表風”画像)がテンプレ化された。
インターネット普及後:2018年の“ミラー地獄”[編集]
インターネット普及後、モロペディアはミラーサイト群によって爆発的に拡散したとされる。特にのクラウド保管サービス上で、記事フォーマットを“読み物”として保存する文化が広がり、周辺のオフ会でも「出典は刺さるが、刺さった人は戻ってこない」などの皮肉が飛び交ったと記録されている。
一方で、ミラー地獄は改変の連鎖も生み、同じテーマのモロペディア記事が10種類以上派生した。あるまとめでは派生数を「2019年時点で44系統」とし、系統ごとに“怪しい場所の癖”が異なると分析された。
明確な統括団体は存在しないとされるが、各コミュニティは暗黙の礼儀として“一次ネタはなるべく短く、二次ネタは脚注を長く”する傾向があると指摘されている。
特性・分類[編集]
モロペディアは、記事の“嘘の置き方”によっていくつかの型に分類されるとされる。たとえば、は脚注が多いほど信じられやすいという発想で作られる。一方ではの年代感を少しだけ曖昧にし、“わずかにズレているのに読めてしまう”状態を狙うとされる。
また、内容の主題でも分類がある。いわゆる「実在っぽい科学」カテゴリでは、架空の研究機関が登場し、データが“見たことがある単位”で提示されることが多い。たとえば「年間約3,200件の頒布」などの統計が出されるが、時点がと書かれていても根拠は示されない。
なお、モロペディアヤーの間では「読者が疑う前に、読者の目を止める装置」が必要とされる。その装置として、妙に細かい日付(“3月17日午前2時、鯖が落ちた”など)や、地名の併記(の架空施設名など)が多用されるとされる。
日本におけるモロペディア[編集]
日本では、モロペディアが特にサブカルチャー文脈で受け入れられたとされる。きっかけとして、後半の匿名掲示板文化において、「説明文の文体」が人格のように扱われたことが挙げられる。文章が上手い人はそれっぽい、ではなく“それっぽさを演出できる人”が評価されるようになり、モロ編集の技能が言語化された。
また、地域性も議論された。関東ではのイベント会場周辺でテンプレ共有が進み、関西では同人誌の体裁(見出し、脚注、参考文献)を流用する傾向があったと説明される。もっとも、この地域差は編集者のノリに影響される部分も大きいという反論もある。
一方、人気の型としては「百科事典の見出し語を“実名っぽい固有名”にする」手法が挙げられる。たとえば、架空の研究者名を“姓+漢字三文字”の様式で統一すると、読者が「人名として成立している」と感じやすいとされ、結果としてモロペディア記事の完成度が上がったと報告された。
世界各国での展開[編集]
世界各国での展開は、言語差よりも“百科事典のフォームが持つ権威”に依存したとされる。英語圏では、モロペディアはMoroPediaとして紹介されつつも、初期には“自称・疑似百科のまとめサイト”と誤解され、拡散の方向が分岐した。
フランス語圏では、脚注の書式を厳密に模すよりも、文体の温度(断定しすぎない)を優先する傾向があると指摘されている。ある翻訳コミュニティでは「曖昧表現を増やすと、嘘でも嘘だと気づかれにくい」という経験則が共有され、モデル文が回覧されたという。
ただし、各国で共通するのは“出典の見せ方”である。図書館文化の強い地域では、架空の出版社名に実在の学術出版社の雰囲気をまぜることが多く、反対に匿名性が高い地域では、出典よりも“本文の小さな矛盾”に重点が置かれる傾向があるとされる。
モロペディアを取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
モロペディアでは、形式の模倣が中心であるため、著作権の扱いが問題となる場合がある。すなわち、百科事典調の文章は一般論として許容されうる一方、特定の記事の構文や見出し配列を“ほぼそのまま”流用すると、翻案や引用の境界が争点になりうるとされる。
また、表現規制の観点では、嘘が“誤情報”として受け取られるリスクが指摘されている。コミュニティ内では、誤認を避けるために「嘘の強度調整」が議論される。具体的には、出典を過剰に細かくせず、年表の数字も“読者が気づく程度の端数”に留める、という運用が推奨されることがある。
なお、ある紛争記録では、の教育機関が“生徒の調べ学習に混入した”として注意喚起したとされる。ただし、関係者の証言は複数に分かれ、どのページが混入したかは特定されていない。要出典の可能性が残る指摘として扱われることも多い。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 乾壁 朝陽『百科フォームの権威:ネット文体の社会学』ミナト書房, 2019.
- ^ Dr. ロラン・マルソー『Pseudo-Citation Mechanics』Presses du Clair-Obscur, 2017.
- ^ 田端 縫『脚注はなぜ働くのか:嘘の情報設計』フィールド研究社, 2021.
- ^ 王寺 朱鷺『ミラー地獄のアーカイブ論』中央図書庁出版, 2020.
- ^ 森島 凪香『サブカル百科の作法:モロ編集入門』電脳同人館, 2018.
- ^ E. K. Halloway『The Paragraph That Persuades』Vol.2, Northbridge Academic, 2016.
- ^ 杉原 亜紗『出典っぽさと曖昧表現の最適化』第5巻第1号, 文体工学会誌, 2022.
- ^ 野々宮 友希『“モロ編集”の系譜図』新都出版, 2015.
- ^ M. Kobayashi『MoroPedia and the Authority Loop』Shin-Kyoto Press, 2013.
- ^ (書名がやや変)高津 輪郭『出典は刺さる:脚注句点の統計』ローカル出版局, 2014.
外部リンク
- MoroPediaテンプレ倉庫
- 出典の儀式アーカイブ
- モロ編集スレ民間辞典
- ミラー監査ボット案内所
- 脚注句点研究会