ワルイージシリーズ
| 分類 | 対称性破れ型アクションゲーム/メディアミックス企画 |
|---|---|
| 主題 | 『正しい側』の逸脱をプレイヤーに体験させること |
| 発祥とされる時期 | 前半(社内企画書の断片が起点とされる) |
| 制作の中核組織 | 株式会社ワールド・レジャー企画室(略称W.L.企画室) |
| 流通の特徴 | 大型家電量販店の『週末再販枠』を利用 |
| 対応プラットフォーム | 据置機中心、携帯機は後期に派生 |
| 代表作とされる号 | 第7号『ねじれの階段』、第11号『反転広場』 |
ワルイージシリーズ(わるいーじ しりーず)は、の家庭用ゲーム界において「対称性の破れ」を主題として発展したとされる一連の作品群である。特に系の流通網と相性がよかったことから、地域イベントでもたびたび取り上げられた[1]。
概要[編集]
ワルイージシリーズは、「ゲームが間違えることでゲームが上手くなる」という逆説的な設計思想を持つ作品群として説明されることが多い。とくにコース構造の“わずかなズレ”をプレイヤーが学習し、そのズレを言語化していく仕組みが特徴とされる[1]。
成立の経緯は、同シリーズの初期企画に関わったが、家庭用ゲーム機向けに“観客の笑い声”を計測するサウンドデザイン手法を導入したことに求められるとされる。この計測は、筐体から500ミリ秒以内の音響反射を指標化するもので、当時の開発者が「笑いはバグだが、バグには余白がある」と述べたことで有名になった[2]。
なお、シリーズ名の由来については、主人公格のキャラクター表情が「良い/悪い」の二値から外れることを理由に、社内で統計的に分類した結果が採用されたという説が有力である。分類は東京都内のテストルームで行われ、被験者67名のうち“悪い”と回答したのがわずか31名だった一方で、開発側は「悪いは“演技の強度”が高い」と解釈したという[3]。この手の解釈が、後の派生媒体(漫画、短尺アニメ、展示カタログ)にも引き継がれたとされる。
概要[編集]
選定基準(何が『ワルイージシリーズ』と呼ばれるか)[編集]
シリーズに含まれる作品は、①ステージ上で意図された“対称性の欠損”が存在する、②欠損を正すのではなく「欠損に適応する操作」を中核に据える、③テキスト演出が“言い訳調”になる、の3条件を満たすものとされる[4]。
ただし例外として、第3号以降の一部作品では「対称性の欠損」が視覚ではなくUIの遅延に移されたとされる。このため、同シリーズを“線形の物語”ではなく“遅延の物語”として読む研究も存在している[5]。
初期の開発体制と役割分担[編集]
初期はの開発協力者ではなく、下請け調整を担っていた出身のプロデューサーが中心に据えられたとされる。具体的には、W.L.企画室の取締役であるが「笑いのピークを遅延させれば、プレイヤーは“理解したふり”を始める」と主張し、音響担当とUI担当に同時指示を出したという[6]。
一方でゲームデザイン側は、対称性の欠損を“悪意”ではなく“手触り”として設計するため、当時のの繊維工房で試験的に用いられた触覚ラベルの研究が参照されたとされる。触覚ラベルの配布量は1人あたり12枚で、配布が多いほどプレイヤーの「次こそ当てにいく」率が上がったという社内メモが残っている[7]。
歴史[編集]
前史:『ねじれの試験』計画[編集]
ワルイージシリーズの前史は、2002年に東京都の音響スタジオで実施された『ねじれの試験』計画に置かれることが多い。計画では、スタジオ内の反響の違いを“道”として見立て、プレイヤーが自分の足音でコースを「読む」方式が試されたとされる[8]。
この試験は、当時の流行だった“リズムゲーム的な成功体験”に対し、成功を固定しないことで逆に没入を作る方針へ繋がった。関係者は成功率を敢えて一定にせず、初期データでは成功率が3週間で17%上下したと記録されている。開発側はこれを「人が学ぶには、揺れが必要」と解釈した[9]。
シリーズ化:第1号から第12号までの拡張[編集]
シリーズ化は第1号『曲がるルート』から始まったとされる。ここで導入されたのが“正しい道がない”設計であり、プレイヤーは選択ではなく“方向感覚の修正”を繰り返すことになる[10]。
第7号『ねじれの階段』では、段数が「偶数のはずなのに途中で奇数に切り替わる」演出が話題となり、観客の驚きが平均で0.83秒遅れることが計測されたという[11]。そして第11号『反転広場』では、反転広場の中心に置かれた旗の色がテストロットごとに微妙に違い、同じ色名でも人が受け取る印象が変わることが統計化されたとされる。統計は“色相角度が約6度ずれると、驚き語彙が増える”という結論で、当時の広報資料にそのまま引用された[12]。
社会的定着:地域イベントと語りの仕組み[編集]
2009年ごろからは、ワルイージシリーズを題材にした地域イベントが全国化したとされる。たとえばの商店街では、スタンプラリーの景品が“謝罪ボタン”型の玩具で統一され、参加者が「悪い選択をした自分」を笑いに変える構図が作られたと報告されている[13]。
この仕掛けは“責任の転嫁”ではなく“責任の可視化”として受け止められ、結果として若年層の対人コミュニケーション(SNSでの言い回し)が柔らかくなるという推計が出回った。ただし、推計の根拠はイベント参加者の投稿数ではなく、玩具の押下音の回数から逆算したという、いかにも怪しい方法であったとも指摘されている[14]。
作品一覧(代表号)[編集]
ワルイージシリーズは「第◯号」という呼称で流通したとされ、研究者やファンのあいだでは号数で語られることが多い。以下は代表的な号である。
- 『曲がるルート』(第1号、2002年)- “正しい道”を排し、プレイヤーの方位がわずかにずれる。開発者が「バグの匂いがする爽快感」と評したとされ、発売前に体験会を行ったの小学校体育館では、床のワックスが原因で滑りが増え、プレイ評価が一時的に上振れしたという[15]。
- 『罰のコイン』(第2号、2003年)- 失敗しても罰が減らず、コインだけが増える仕掛けが採用された。増えたコインは最終的に“謝るための言葉”に変換される仕様で、言葉の変換率が小数点以下2桁まで設定されていたと社内資料が語っている[16]。
- 『薄い影の回廊』(第3号、2004年)- 視覚ではなく入力遅延が物語を運ぶ。被験者の「気のせい」に依存するため、検証担当が“気のせい集団”を作って統計処理したとされる(この手法はのちに批判も受けた)[17]。
- 『逆さの合図』(第4号、2005年)- 走り出す前に合図が逆再生で鳴る。逆再生のテンポが115BPM固定とされる一方、実際の録音は微妙に111BPMへ揺れていたという監査ログが残っている[18]。
- 『階段の例外』(第5号、2006年)- 階段の踊り場だけ“ルールが違う”。開発側はここを「悪いところ」と呼び、プレイヤーには“悪いところを好きになる訓練”として紹介したとされる[19]。
- 『半分だけ正しい』(第6号、2007年)- 画面の半分でだけ正しい判定が出る。プレイヤーが右半分でしか成功できないように見えるが、実際は左半分の失敗が経験値に変換されるため、設計思想の“逸脱の美学”が前面に出た[20]。
- 『ねじれの階段』(第7号、2008年)- 奇数段と偶数段が交互に見えるが、触覚ラベルが段の感触を偽装する。触覚ラベルの貼り替え周期は6分で、その短さによりプレイ記録がブレたため、データ解析が2週間延期になったという[21]。
- 『笑いの遅延』(第8号、2009年)- ヒット音の再生タイミングを意図的に遅らせ、笑い声のピークを遅延させる。遅延量は平均で0.42秒とされるが、広報資料では0.41秒と記載されており、編集者が「0.42の方が語感が悪いから」とこっそり直したのではないかと噂される[22]。
- 『角度の言い訳』(第9号、2010年)- ステージ上の角度に応じて“言い訳テキスト”が変化する。角度センサの閾値が19.5度に設定されていたとされるが、レビューでは22度程度の操作誤差でも反応したとされ、設計段階で閾値が揺れていた可能性が指摘された[23]。
- 『反復する謝罪』(第10号、2011年)- 謝罪が成功条件になる。プレイヤーが同じセリフを繰り返すほど世界が柔らかくなるが、一定回数で謝罪が「謝る前提」に変質する。ここが“狂気の5%”と言及される所以である[24]。
- 『反転広場』(第11号、2012年)- 広場の中心が反転し、重力方向が時折逆になるが、逆になる理由は表示されない。旗の色相角度が約6度ずれると驚き語彙が増えるとした統計をベースに、説明文が少なくても理解されることが狙われたとされる[12]。
- 『破れた対称性』(第12号、2013年)- シリーズの集大成とされ、対称性破れを“プレイヤーの癖”として扱う。上級者モードでは、前回の操作傾向が次回のステージに反映される。反映率は初期では73%と公表されたが、実測では68%だったとされ、ここが唯一の“真面目な不一致”として記憶されることが多い[25]。
批判と論争[編集]
ワルイージシリーズは、自己責任的な言い換え(謝罪の最適化)がプレイヤーの“感情労働”を助長するのではないかという批判を受けたことがある。特に『反復する謝罪』(第10号)に対しては、謝罪入力が習慣化し、現実のコミュニケーションでも“短文での贖罪”が増えたのではないかという指摘が出回った[26]。
一方で、肯定的な見方としては、対称性の欠損があることで「完璧であること」の圧が緩み、失敗が人格ではなく手続きの問題として扱われるようになったという主張もある。もっとも、この主張を裏付ける調査が、実際には玩具の押下音の回数から算出された“雑な推計”であったとされ、学術界では慎重論も出た[14]。
さらに、ファンのあいだでは“第◯号”の数え方が作品ごとに微妙に違うことが問題視されている。制作側は「社内の企画番号と一般流通番号は一致しない」と説明したが、編集担当が号数表記を調整したのではないかという憶測が残ったとされる。結果として、一部の資料では第7号と第8号が入れ替わっている例もあり、「歴史はどこまで数え直すべきか」という議論まで発生した[27]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 柿沼 亮次「“笑いはバグである”を設計へ落とす手法」『ゲーム音響研究』第12巻第3号, 2008年, pp.12-29.
- ^ 山口 真砂「対称性欠損のプレイヤー学習モデル」『インタラクティブ・サイエンス』Vol.7 No.1, 2011年, pp.41-58.
- ^ The W.L.企画室「ねじれの試験:音響反射と行動の相関」『Journal of Domestic Media Lab』Vol.19 No.2, 2009年, pp.77-92.
- ^ 中島 梨江「言い訳テキストの言語学的変換」『日本語ゲーム論叢』第5巻第2号, 2010年, pp.103-129.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton, “Latency as Narrative: A Study of UI Delay Games”『Transactions on Playful Systems』Vol.22, 2013年, pp.201-220.
- ^ 佐伯 俊人「触覚ラベルが“例外”を生む条件」『触感インタフェース研究』第3巻第4号, 2007年, pp.9-24.
- ^ WATANABE Kōichirō「BPMの揺れと驚き反応:逆再生合図の評価」『Proceedings of the Rhythm Mechanics Conference』第1巻第1号, 2006年, pp.55-63.
- ^ 島村 ひかる「謝罪の成功条件化とエモーション設計」『ソーシャル設計学会誌』第9巻第1号, 2012年, pp.65-84.
- ^ 匿名「反転広場の旗色相角度に関する事後報告」『メディア統計年報』第16巻第0号, 2012年, pp.1-18.
- ^ 御厨 誠一郎「“第◯号”表記の揺らぎと編集倫理」『出版運用学研究』第2巻第2号, 2014年, pp.33-49.
- ^ 鈴木 直「家庭用ゲームの地域定着:スタンプラリー玩具の効果」『都市メディア研究』Vol.4 No.3, 2015年, pp.120-136.
外部リンク
- ワルイージ史料室
- 遅延UI実験ログ倉庫
- 触覚ラベル研究ノート
- 反転広場ファンアーカイブ
- ゲーム音響計測ガイド