夢を見る島を見る館
| 作品名 | 夢を見る島を見る館 |
|---|---|
| 原題 | The Dream-Seeing Island, The Dream-Viewing Hall |
| 画像 | 館の正面アーチ(架空) |
| 画像サイズ | 220px |
| 画像解説 | 潮の満ち引きに合わせて自動点滅する回廊灯 |
| 監督 | 黒河内ミノル |
| 脚本 | 雨宮リョウ |
| 原作 | 原案:灰吹キサラ(実在の作家とされるが同名異人説もある) |
| 原案 | 同:夢録研究会 |
| 製作 | 夢録フィルムズ |
| 製作総指揮 | 槻田ナオト |
| ナレーター | 白浜ヨシカ |
| 出演者 | 佐伯アリサ ほか |
| 音楽 | 眞田ウキョウ |
| 主題歌 | 『鏡面の波』唱:歌坂レン |
| 撮影 | 壬生カズヤ |
| 編集 | 白波トオル |
| 制作会社 | 夢録フィルムズ |
| 製作会社 | 夢録フィルムズ ほか(製作委員会) |
| 配給 | 潮光東映配給 |
| 公開 | 2021年8月7日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 17億9,400万円 |
| 興行収入 | 42億3,700万円 |
| 配給収入 | 28億1,200万円 |
| 上映時間 | 118分 |
| 前作 | (なし) |
| 次作 | 夢を見る島を見る館II 片目の潮騒(2024年) |
『夢を見る島を見る館』(ゆめをみるしまをみるやかた)は、[[2021年]]に公開された[[日本]]の[[ホラー映画]]である。監督は[[黒河内ミノル]]、主演は[[佐伯アリサ]]。興行収入は42億3,700万円で[1]、公開3年後に続編の『夢を見る島を見る館II 片目の潮騒』が作られた。
概要[編集]
『夢を見る島を見る館』は、海霧が濃くなる季節にだけ開館するという架空の施設を舞台に、観客の「視る夢」と館の「観る視線」が相互に干渉する様子を描いたホラー映画である。作中では、島民が「館は記憶を返すのではなく、記憶を上映する」と語る場面が反復され、観客の解釈を遅延させる構成が特徴とされる[2]。
企画段階では、同名の奇談収集書『島を見る覚書(昭和の改訂版)』を原案とすることで検討されたが、途中で「原案は研究会の会話記録である」と整理し直されたとされる。結果として、タイトルの「夢を見る」「島を見る」「館を見る」が、同一人物の視覚や人格の“ズレ”として段階的に回収される物語になったという[3]。
なお、映画公開前から、の架空島『片目の瀬戸』をめぐる現地ツアーが一時的に組まれ、鑑賞後の寄港率が高まったと報じられた。もっとも、当該ツアーは映画会社の協賛ではなく、ファンによる自主運営とされる[4]。
あらすじ[編集]
主人公の映像編集者は、行方不明になった叔父の遺品から、島の“視覚装置”の設計メモと思しき紙束を受け取る。メモには「入口の鍵は開けるのではなく、開かせる」「館は映すのではなく、映された側を返さない」と短い注釈があり、さらに「満潮の一分前、天井の影が逆算される」といった異様に具体的な時刻条件が書かれていた[5]。
アリサが辿り着くのは、灯台の直下に建つ回廊型の施設である。館内では、壁面の鏡が観客の“見たいもの”に合わせて自発的に結露し、結露の輪郭だけが先に像を結ぶ。鏡に映ったはずの顔が、翌朝には部屋の向きから逆算した位置にしか見つからないなど、時間と空間の整合性が崩れる。やがて、アリサは自分の夢を編集した記憶がないのに、映像ファイルだけが増殖していることに気づく[6]。
終盤、館は「島を見る者は、島に見られる」という規則を“観測”ではなく“契約”として提示する。アリサが最後に目にするのは、叔父が残したという「夢の上映規格」であり、上映されるのは夢ではなく、夢を見るための視線の回路だったと説明される。ただし、この説明が正しいのか、観客の前提が正しいのかは最後まで曖昧に残される[7]。
登場人物[編集]
は、過去の映像素材を“正しく整える”ことに執着してきた人物として描かれる。劇中では、彼女が編集したはずの映像にだけノイズが残り、ノイズの形が一貫して「波の目盛り」に一致するため、作中人物の中でも最も“編集する者の夢”と“編集される夢”がねじれた立場にあるとされる[8]。
が演じる館の管理補助員は、言葉が妙に手続き的で、「見た夢の申請書は提出する必要があるが、提出先は見られている」など、合理と不合理の境界を保ったまま台詞を投げる。一方、島の古老は「館は人を救うためにあるのではない。人の見方を置き換えるためにある」と語り、観客に比喩を越えた規則性を意識させる[9]。
また、島の灯台守は、満潮時にだけ点灯する非常灯の点滅回数が“回想の長さ”に一致すると主張する。彼の説明は一見、民俗的な語りに見えるが、終盤の設定資料では技術用語として扱われており、スタッフが意図的に俗語と専門語の衝突を起こしたと指摘された[10]。
キャスト[編集]
主要キャストは、ホラー映画の“顔の安心感”を避けるため、若手中心に組まれたとされる。主演のは、無表情で視線だけが揺れる演技が評価され、劇中の鏡面反射シーンでは撮影リハーサルの回数が通常より30%増加したと報じられた[11]。
役はベテラン俳優が担当したとされるが、当初は別配役候補が噂されており、変更の理由として「島の方言指導に適した声の帯域があった」などの細部が週刊誌で取り上げられた。もっとも、当事者は否定している[12]。
そのほか、、、そしてアリサの叔父役が加わる。叔父は撮影当初、表情の“欠落”を演出するために一切のセリフ練習をせず、台本を読まないまま撮影されたとされるが、関係者の回想では「読めと言われたが読めなかった」など食い違いがある[13]。
スタッフ[編集]
監督は、既存の恐怖表現よりも「視線の遅れ」を恐怖として設計する作風で知られるとされる。制作ノートでは、恐怖のピークを“音”ではなく“視点の到達”に置き、カット割りの遅延をフレーム単位で管理したことが記されていた[14]。
脚本のは、タイトルの語順を物語の順序と対応させる方針を採用し、「夢を見る→島を見る→館を見る」の順に、主人公の理解が逆向きに進行するよう調整したとされる。一方で、編集はこの対応をさらに崩し、ラスト30秒だけ時系列を意図的に逆算させたという[15]。
音楽は、潮騒のリズムをメトロノームではなく波の周期に合わせ、作曲の段階で海上実地録音を行ったと説明される。ただし、同録音が実際に使われたかどうかは、公式資料では明言されていない[16]。
製作[編集]
製作はが主導し、製作総指揮のもとで「館内の鏡は実物を使う」という方針が採用された。鏡面には、結露が“像”として先に立ち上がるよう、特定湿度に反応する薄膜が試験的に貼り付けられたとされる。試験は5つのラボで行われ、湿度は68〜74%の範囲に最適値があったと報告された[17]。
また、撮影ではが、回廊の奥行きを「距離ではなく記憶量」で設計するという奇妙な方針を提案した。具体的には、同じ被写体でも撮影距離を変えず、代わりに撮影順序を入れ替えて“視線の残像”を作る手法が試されたという[18]。
さらに、作中に登場する「夢の上映規格」は、架空の規格団体『一般夢視聴規格協会(GDS)』によるものであるとされた。だがGDSのロゴが実際の放送局の類似デザインに見えるとして、公開後に一部から“盗用疑惑”が出た。ただし公式は「デザインは別経路で発生した」と回答しており、真偽は確定していない[19]。
興行[編集]
興行面では、公開初週の動員が平日でも伸び、観客層は20代〜40代の“ホラー耐性が比較的低い層”に広がったとされる。配給収入は経由で28億1,200万円に達し、劇場によっては上映開始前の注意事項が「館と同型の反射面がある場合は自席で視線を固定してください」など、異様に具体的になった[20]。
特にヒットを支えたのは、鑑賞後に実施された“夢の申請”の企画である。公式サイトでは、鑑賞当日から72時間以内に投稿された感想をもとに、上映時間の再編集版が配布されたと説明された。ただし、再編集版の内容は観客ごとに異なるとされており、検証を試みたファンの間では「実際に差分がある」「ない」両方の主張が並立した[21]。
興行成績は最終的に42億3,700万円となり、ホラー単独作品としては当時の同規模公開で上位に位置づけられたとされる。もっとも、同時期の別作品の集計方法と比較した場合の差異も指摘されている[22]。
反響[編集]
批評では、映像美と不気味さの両立が評価された一方で、「視線の遅れ」を理屈で作りすぎたとの声もあった。映画評論誌『画面縫合時報』では、終盤の説明が“説明のための恐怖”になっていると批判されたが、別の記事では「説明を挟むことで、恐怖がより長く持続する」とも反論された[23]。
受賞面では、第44回で作品賞にノミネートされたのち、音響設計が評価され“最優秀不安増幅賞”を受賞したと報じられた。さらに、主題歌『鏡面の波』は翌年の特別選考で入選したが、入選根拠として「潮騒の周波数帯が再現されている」など、科学寄りの審査が疑問視されたことがある[24]。
一方で、作中のGDSロゴ類似問題や、館内の注意喚起文言が現実の施設のものに近いとの指摘が出て、メディア上で複数回取り上げられた。ただし制作側は「雛形の共有はあるが、参照はしていない」と回答している[25]。
関連商品[編集]
関連商品としては、劇中鏡の“結露輪郭”を模したアクリルプレート、夢の上映規格をテーマにした玩具サイズのタイマー、そしてパンフレットに付属した「申請用紙(再利用可能)」が販売された。申請用紙はA5サイズで、手続き欄に「記憶の提出期限は満潮の一分前」など映画的文言が印刷されていたとされる[26]。
映像ソフトはの通常版に加え、館の回廊音を収録した“視線同調パック”が限定発売された。視線同調パックは、家庭用テレビの輝度設定に関する目安が同梱され、家庭内での“館っぽさ”を増幅させる仕様だったと説明される。ただし、設定支援が実際に有効かはユーザー差が大きいと指摘された[27]。
また、公開2周年に合わせて『夢を見る島を見る館 公式反射台帳(2023改訂)』が刊行された。台帳には未使用カットのスチルに加えて、監督の短いメモが“章”として掲載され、ファンの間で引用され続けている[28]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 黒河内ミノル『視線の遅延設計:ホラー映画の編集論』潮光出版, 2020.
- ^ 雨宮リョウ『夢を見る順序の罠——語順と恐怖の対応表』夢録学芸社, 2021.
- ^ 眞田ウキョウ『潮騒を作曲に変える方法』海音音楽出版社, 2019.
- ^ 壬生カズヤ『撮影は記憶の距離である』フィールド光学, 2021.
- ^ 白波トオル『切り替えの倫理:ラスト30秒の逆算』映像縫合叢書, 2022.
- ^ 槻田ナオト『製作委員会と例外規定(第3版)』政策映像研究所, 2021.
- ^ 田辺シオリ「GDS(一般夢視聴規格協会)と映画演出の擬似制度」『Journal of Screen Speculation』Vol.12 No.4 pp.77-99, 2022.
- ^ Kurosawa Minoru「The Hall That Watches Back: A Frame-Delay Horror Model」『Proceedings of the Temporal Audience Workshop』第6巻第1号 pp.31-58, 2021.
- ^ 白浜ヨシカ『注意喚起文言の設計原理』潮光東映配給研究室, 2020.
- ^ 近衛ユキア『島方言はなぜ人を怖がらせるか(改題:島を見る言葉)』朝凪文庫, 2018.
外部リンク
- 潮光東映配給 作品ページ
- 夢録フィルムズ 公式制作ノート
- 日本映像恐怖賞 アーカイブ
- 画面縫合時報 特集
- 視線同調パック 取扱説明ブログ