恋愛関係外の性行為及び腟内射精による子作り法案(PCゲーム)
| ジャンル | 法廷ドラマ型アドベンチャー/パラドックス・シミュレーション |
|---|---|
| 対応機種 | Windows PC(当時はDirectX 11世代想定) |
| 開発 | 「立法演習スタジオ」(のちに解散) |
| 発売年 | |
| 販売形態 | ダウンロード販売+同梱サウンドトラック(限定版) |
| プレイ時間 | 平均 11〜14時間(分岐全クリで約 26時間) |
| 評価対象 | 当時の成人向け表現審査の回収データを風刺したシナリオ |
| 公式略称 | 「腟内射精法案」または「腟内法案」 |
恋愛関係外の性行為及び腟内射精による子作り法案(PCゲーム)は、恋愛関係を外した性的行為と、腟内射精に基づく妊娠を「制度」として扱うことを主題にしたである。ゲーム内では法案の採決手続きや衛生規範の遵守が進行条件として組み込まれており、当時としては風変わりな政治風刺作品として流通したとされる[1]。
概要[編集]
本作は、架空の国家運営を題材に、がどのような手続きで通過し、どのような条件で「子作り」関連の運用が可能になるかを、プレイヤーが交渉し続ける形式で進行する。形式的には政治ゲームに見える一方で、実際には表現規範や自己責任論、そして「恋愛」をめぐる制度設計の滑稽さを描くことが中核とされている。
開発側は「恋愛」という感情概念を、制度設計では測定できない変数として扱った点が特徴だと説明された。例えば、会議室の空気を表すパラメータが「共感度(COE)」として可視化され、規定文言の読み上げ回数が増えると共感度が下がるなど、細部の挙動が風刺として設計されている[2]。なお、開発メモの一部では、会話分岐の分布が「左派 43.1%/中道 39.4%/右派 17.5%」と記録されているが、当時の記者が「ほぼ雰囲気で書いている」と指摘していたこともあり、正確性には揺れがあるとされる[3]。
ゲームシステム[編集]
プレイヤーはの一員となり、特定の倫理条項を満たす提案しか採決に回せない。採決には「手続き整合率(PIR)」が用いられ、書面の整合率が 98% を超えると、なぜか資金調達の説得条件が厳しくなるという逆転ギミックが採用された。開発者によれば「完璧すぎる文章は怪しまれる」という現場感覚を再現したものであるという[4]。
また、ルール本文は複数の章立てで表示され、章ごとに「衛生規範」「同意確認」「記録様式」が割り当てられる。プレイヤーはで提出書類を点検する係(サブロール)に切り替わる場面があり、誤字を直すたびに「人権配慮スコア」が上がる一方で「官僚的疲労」が増えて会話が硬直するという、ブラックな学習曲線が敷かれている。
さらに、章内に「腟内射精」を含む条文が登場すると、選択肢に「血液・体液の記録封印」「医師同席の免責条項」などが並ぶ。これらは現実の医学を扱う意図ではなく、むしろ『管理される身体』という比喩を形式に落とし込んだものとされる。ただし、当初は用語が刺激的すぎたため、販売版ではログ表示が「I V S(Intra-Vaginal Semen)」のような略語に置き換えられたと報じられている[5]。
歴史[編集]
開発の着想:法学ゼミと“恋愛測定器”の騒動[編集]
本作の着想は、の私立大学で開かれた法学ゼミに遡るとされる。関係者によれば、ゼミでは「恋愛」を評価指標に置換できるかが議論され、最終的に試作されたのが“恋愛測定器”である。測定器は「手紙の温度(手のひらで測る)」を入力にするという異様な仕様で、研究費はにある匿名の助成団体から月2回ずつ振り込まれたとされている[6]。
しかし測定器は、被験者の恋愛を“正確に”測るどころか、測定者の気分に反応して数値が跳ね上がった。そこで学生たちは「制度は身体と感情の曖昧さを、数字で上書きするほど嘘になる」と結論づけた。この思想が、のちの“法案を運用するゲーム”という形で結実したと説明される。ただし、同じ人物の別インタビューでは「測定器は2台あった。片方は最初から壊れていた」と語られており、真偽は揺らいでいる[7]。
流通と社会的波紋:配信禁止の“逆効果”が起きた[編集]
発売直後、の一部の配信者が「表現が露骨」として配信を一時停止した。これに対し、開発元は公式フォーラムで「露骨さではなく、制度の露骨さを問う作品である」と説明したとされる。ところが、配信停止が話題化し、ゲームは“触ってはいけないのに触りたくなる”現象として拡散した。
当時の利用統計は、公式発表で「発売後3日間の起動数が 318,042回」「プレイ開始から採決手続き到達までの平均が 1時間19分」とされる[8]。さらに、開始直後に表示されるチュートリアル文言のクリック率が 66.7% と報じられ、なぜか下位互換の環境ではクリック率が 74.2% になったと記録された。ユーザーはこれを「人は悪いものほど読みたがる」という社会心理の証拠だと受け取り、メディアは“逆説の検閲効果”と呼んだという。
一方で、批判派は「比喩が強すぎて、制度批判が性的単語の消費になっている」と指摘した。この点は後述の論争につながり、開発側はアップデートで略語表示の初期設定を変更し、ログ閲覧の“事前同意”画面を追加したとされる[9]。ただし、同意画面は 0.8秒で閉じるよう隠しパラメータが設定されていたため、ユーザーからは「結局形式で縛っている」と皮肉られた。
批判と論争[編集]
本作は、成人向け表現を含むにもかかわらず、制度運用の言葉遣いに寄せた構成であったため、倫理面の議論が早期に発火した。批判の中心は「性的行為と妊娠の文脈を、法技術の部品として扱っている」という点である。また、一部の団体は“恋愛条件を外す”という前提が、恋愛を免罪符に見せてしまうと主張した。
反論側では、「恋愛という曖昧な概念を制度化する試みを笑いに変えている」とされ、風刺としての価値が擁護された。さらに、ゲーム内の採決では“手続き整合率”が高いほど社会的コストが増えるため、単なる制度肯定ではないという見解も出された[10]。しかし、実際のプレイヤー考察では「整合率が 99% を超えるルートが最も収益が出る」とされており、結果として制度の勝利条件が魅力的に見えるのではないかという反論もあった。
加えて、用語の一部が“医療っぽい言い回し”に寄せられていたため、誤解を招いたという指摘がある。フォーラムでは「が強いほど“正しい”と読めてしまう」という声が出た。これに対し開発側は「正しさではなく、正しさの強要を描いた」と応えたとされるが、最後まで納得した人は限定的だったと報告されている。なお、初期版のテキストには“同意確認”のチェック欄が 12項目あるとされるが、修正版では 11項目に減っていたとする証言があり、版管理の混乱も論争の材料になった[11]。
受容と影響[編集]
本作は国内では議論を呼びつつも、海外の批評家からは「政治シミュレーションが持つ形式の暴力性を、身体の比喩で暴いた」と高く評価されたとされる。とくに、採決ログに表示される“説得のための文章量”が、ページ数ではなく「行数」「句読点密度」で換算される点が、テキスト文化の批判として読まれたという[12]。
一方、ゲームデザイン界隈では、当時流行していた“倫理UI”の考え方に影響を与えたと説明される。例えば、後発のアドベンチャーでは「同意画面が閉じるまでの秒数」を可変にし、プレイヤーに“急かされる感覚”を与える仕掛けが普及した。もっとも、その一部は本作の“逆効果の社会現象”まで真似たとされ、倫理UIが単なるクリック工程になってしまうという別種の批判も生まれた。
本作の周辺では、公式に近い二次創作も増え、の元メンバーが関与した同人コミュニティが、月例会として“法案作文コンテスト”を開催したとされる。参加者は「条文は恋愛を測らないほうが面白い」と書き残し、作品は“測れないものを測るほど滑稽になる”というモチーフで語られるようになった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐藤藍里『制度の比喩論:ゲームにおける法文テキストの暴力性』幻影書房, 2017.
- ^ Margaret A. Thornton『Procedural Politics in Digital Narratives』Oxford Ledger Press, 2018.
- ^ 田中正純『風刺としてのUI設計:クリック可能な倫理の限界』立法工学学会誌, Vol.12, No.3, 2019, pp.41-67.
- ^ Liang Wei『Ambiguous Consent Interfaces: A Case Study of PC Simulations』Journal of Interactive Satire, Vol.7, No.1, 2020, pp.88-103.
- ^ 山内歩『採決ログの数理:整合率と説得の関係について』情報演習研究, 第5巻第2号, 2016, pp.12-29.
- ^ Kazuya Morita『Semen-Based Conception Clauses? On the Misreading of Fictional Medical Lexicon』International Review of Game Semantics, Vol.4, No.4, 2021, pp.201-225.
- ^ 匿名『立法演習スタジオ内報:恋愛測定器の仕様書(抜粋)』私家版, 2015.
- ^ 浜野梓『配信停止は燃料か:逆説の検閲効果の実測』関西メディア学報, Vol.3, No.1, 2018, pp.70-96.
- ^ Evelyn R. Brooks『The Rhetoric of Checks: Why “Consent Screens” Fail as Interfaces』New Human-Computer Studies, Vol.9, No.2, 2022, pp.33-58.
- ^ 『恋愛関係外の性行為及び腟内射精による子作り法案(PCゲーム)公式技術資料』PCゲーム出版協会, 2016.
外部リンク
- 腟内法案 研究アーカイブ
- 立法演習スタジオ 公式フォーラム(鏡面ミラー)
- 倫理UI設計者会議レポートサイト
- 採決ログ解析同好会
- 政治風刺ゲーム批評データベース