犯罪大好き!オカッシー
| 通称 | オカッシー |
|---|---|
| 媒体 | 動画配信・掲示板・短編連載 |
| ジャンル | 犯罪観察コメディ(風) |
| 初出とされる時期 | 2016年夏 |
| 主な舞台 | 架空の「港町」および実在の注意喚起サイトへの言及 |
| 制作主体 | 匿名サークル「第三監査室」 |
| 特徴 | やけに細かい“捜査ごっこ”手順と架空の統計 |
| 社会的影響 | 通報行動の代理化・監視表現の常態化への議論 |
| 関連語 | オカッシー式・夜間鑑識ルーティン |
犯罪大好き!オカッシー(はんざいだいすき!オカッシー)は、日本のインターネット文化における「犯罪観察コメディ」を名乗った架空のバズコンテンツである。視聴者参加型の“通報ごっこ”を核に据え、教育番組風の体裁で拡散されたとされる[1]。
概要[編集]
は、犯罪を「怖がる」のではなく「観察して楽しむ」方向へ視聴者の姿勢を誘導する、教育番組パロディとして語られることが多いコンテンツである[1]。一見すると地域の安全啓発に似た導入(標準フォーマットのテロップ、擬似的な実況テロップ、注意喚起のBGM)を採用する点が特徴とされる。
一方で、作中の“行動指針”は必ずしも現実の手続きと一致せず、「通報すべきかどうか」を視聴者に擬似的に委ねる設計になっていたとされる。具体的には、事件現場の描写に紐づく形で「あなたの判断で次のコマが変わる」として、画面内フォームから“通報コメント”を提出させる形式が採られたという[2]。
同コンテンツの成立経緯には、真面目な市民活動が盛り上がりやすい時間帯(平日23時台、深夜の地域掲示板が賑わう曜日)に合わせ、視聴者の“善意の予行練習”を商品化したのではないか、という見方もある[3]。なお、運営側は「犯罪を好むのではなく、手順を好むだけ」と説明したとされるが、後述の論争ではこの区分が争点になったとされる[4]。
概要(制作とフォーマット)[編集]
番組風の文体と“鑑識ごっこ”の定型[編集]
オカッシー回は、毎回「第◯手順」から始まる定型を持つとされる。たとえば初期の代表回では、観察対象を“音・匂い・距離感”に分解し、視聴者に対して「半径10m以内では推定に頼りすぎないでください」などの注意書きを挟む構造が採られていたとされる[5]。テロップはやけに細かいが、数値の根拠は明示されないことが多かったとされる。
また、鑑識作業を模したミニコーナーとして「夜間鑑識ルーティン」が設けられた。そこでは“電灯の角度”や“玄関ポーチの段差”などの生活要素が、断片的な手掛かりとして登場する。これにより、現実の捜査書類には見られない“家庭的ディテール”が、犯罪理解の記号として定着したと指摘されている[2]。
視聴者参加の疑似通報システム[編集]
視聴者参加は、掲示板「第二港浜(だいにみなとひんぴん)」や、実在の自治体広報の問い合わせ窓口を連想させるフォーム装飾を用いて実装されたとされる[6]。視聴者は、作中の状況を見て“通報ボタン”相当の選択肢を押す。選択肢は「今すぐ」「様子見」「記録のみ」の3段階であると説明されるが、実際には“記録のみ”でも次回パートが増えるなど、結果的に視聴の継続を強いる設計だったとされる[7]。
この仕掛けが好まれた理由として、視聴者が自分の判断力を評価される感覚を得やすかったことが挙げられている。特に、ある回では「あなたの選択確率:事後推定82.6%」のような架空の確率表示が出たとされ、視聴者のコメントが「統計に勝った!」という方向へ流れたと報告されている[8]。
歴史[編集]
起源:安全啓発ポスターの“読み替え”文化から[編集]
オカッシーの起源は、2010年代前半の「安全啓発ポスターを翻訳して遊ぶ」ネット文化にあったとする説がある。発端として挙げられるのは、港町を舞台にした教材用イラストを模写し、そこへ“怪しいけれど日常に見える”言い回しを重ねた投稿である[9]。このとき、投稿者たちは本来の啓発文を“捜査用語”に置換し始めたとされる。
その置換の中心にいたのが、のちに匿名サークルと呼ばれる「第三監査室」だったと推測されている。同サークルは、統計の体裁を持つ架空のデータシートを大量に共有し、数値の「それっぽさ」で説得力を作ったとされる。たとえば“夜間の物音通報率”について「第1四半期:14.2件/千人・月」などの値が提示され、後続の動画がそれを前提に組み上げられたとされる[10]。
拡散:行政文書の語彙をコメディ化した2016年の波[編集]
2016年夏、同コンテンツは動画プラットフォーム上で急速に拡散したとされる。拡散のきっかけは「通報のマナー講座」を装った短尺シリーズであり、舞台として内の“架空の湾岸地区”が用意されたとされる。しかし実際には、テロップで参照される“実在の組織名のように見えるもの”が多く、視聴者は「どこかの部署が元ネタ?」と憶測したという[11]。
この時期に、作中にの注意喚起ページを参照する体裁の演出が入り、検索の導線まで含めて設計されていたとする指摘が出た。とくに、作中キャラクター(オカッシーと呼ばれる)は「現実の窓口に行く前に、まず“疑問をフォームに流し込む”」と語ったとされるが、これは視聴者の行動を“安全啓発っぽい儀式”へ寄せる効果があったと考えられている[12]。
代表的エピソード[編集]
同コンテンツは個別回の“細部”が記憶されやすい形式だったとされる。たとえば「第12手順:靴底の模様」回では、玄関前の足跡を「三重露光による推定」と称し、視聴者に“想像用”として「倍率×1.3の頭の中拡大図」を配ったとされる[13]。視聴者のコメント欄では、実際に床材メーカーの型番を当てようとする流れが起きたと報告されている。
また「深夜2時の通報3原則」回では、状況を“音量”“距離”“反復性”の3要素に分解し、「反復性は3回で確信、4回目で疑い」などと妙に段階的な基準が示されたとされる[14]。この基準が“犯罪の是非”ではなく“視聴の快感”を作っていたのではないか、という批判につながった。
一方で、作中の善意も評価された。たとえば「災害帰宅時の勘違い通報」回では、誤報が出た場合のフォロー手順として「謝罪の文面テンプレート」を提示し、投稿者が“通報の言語化”を練習させる趣旨を強調したとされる[15]。ただしテンプレートはあまりに芝居がかっており、「誤報すら物語素材にしている」と感じた視聴者もいたと記録されている[16]。
批判と論争[編集]
論争は早期から起きており、主な争点は「観察の娯楽化が、現実の危険判断を鈍らせるのではないか」という点であった[17]。特に、作中で“通報ボタン”を押さない選択肢が最終的に不利になりやすい設計であったと指摘され、視聴者の行動が“善悪”ではなく“物語の進行”に誘導される構造だと批判された[7]。
また、作中で頻出する“行政文書風の語彙”が、実際の制度理解を代替した可能性も議論された。例として、ある回ではを連想させる表記の架空組織「庁内夜間照合係」が登場し、「照合は平均37分遅れます」などの断定的表現があったとされる[18]。この点については「出典がないのに断定する」ことが問題視され、ファクトチェック記事が出たとされる。
さらに、視聴者参加型のコメントが“監視”の快感へ接続したという指摘もあった。匿名の運営側は「犯罪を好きになるのではなく、疑わしさを扱う訓練をしている」と説明したとされるが[4]、一部では“訓練”という言葉が免罪符のように使われているとの批判が寄せられた。なお、この論争で言及される“データ”の多くは、同サークルが公開していたとされるスプレッドシートに由来するとされるが、当該ファイルが実在したかどうかについては、確認できないとされた[要出典]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐藤ユリカ「『犯罪大好き!オカッシー』における行政文体の転用と視聴行動」『日本メディア擬態研究』第12巻第4号, pp. 41-66, 2017.
- ^ 山本直輝「夜間鑑識ルーティンの数値表現に関する一次資料の検討」『情報社会の言説』Vol. 8 No. 2, pp. 102-129, 2018.
- ^ Margaret A. Thornton「Participatory Reporting as Performance in Japanese Online Culture」『Journal of Digital Civic Theatre』Vol. 5 No. 1, pp. 12-37, 2019.
- ^ 小川慎也「安全啓発パロディの翻訳可能性——港町モチーフの再利用」『地域コミュニケーション学会誌』第3巻第1号, pp. 77-95, 2016.
- ^ 田中カナ「疑似通報ボタンのUXが生む“善意の予行練習”」『ヒューマンインタラクション研究』第21巻第3号, pp. 201-223, 2020.
- ^ 鈴木実「“あなたの選択確率”表示の社会心理——オカッシー式確率の受容」『数理言語と娯楽』第9巻第2号, pp. 55-74, 2021.
- ^ Ethan R. Vance「Surveillance-Adjacent Humor: When Safety Becomes Spectacle」『New Media & Ethics』Vol. 17 No. 3, pp. 300-321, 2022.
- ^ 第三監査室編『夜間照合の言語技術:オカッシー式手順集』港浜出版, 2016.
- ^ 編集部「コメディ犯罪観察の境界線」『月刊メディア批評』第33号, pp. 8-15, 2018.
- ^ 川嶋ハル「(要検証)オカッシー式テンプレートの“謝罪文面”分析」『社会運用文書学』Vol. 2 No. 5, pp. 10-28, 2019.
外部リンク
- 第三監査室アーカイブ
- 港浜掲示板研究所
- 夜間鑑識ルーティン辞典
- 擬似通報ボタン論
- 安全啓発文体翻案データベース