1984
| タイトル | 『1984』 |
|---|---|
| 画像 | 1984_cover.png |
| 画像サイズ | 300px |
| ジャンル | ディストピア・アクションRPG |
| 対応機種 | E-クラウドOS / レイアウト端末B |
| 開発元 | 独立企画研究所 |
| 発売元 | 黒曜印刷ゲームズ |
| プロデューサー | 霧島 煌(きりしま きら) |
| ディレクター | アルド・ノルステン |
| デザイナー | 玖珂 里紗(くが りさ) |
| プログラマー | Dr. ベルント・フェルクス |
| 音楽 | 交響局アーカイブス |
| シリーズ | オーレリアン・シティ |
| 発売日 | 1984年11月9日 |
| 対象年齢 | 15歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計 380万本 |
| その他 | 通称はE4。協力プレイは原則オフライン対応 |
『1984』(英: 1984、略称: E4)は、[[1984年]][[11月9日]]に[[日本]]の[[独立企画研究所]]から発売された[[E-クラウドOS]]用[[コンピュータRPG]]。[[オーレリアン・シティ]]シリーズの第1作目であり、同作に登場する[[監視生物]]の総称、およびそれらを題材にした[[テレビアニメ]]などのメディアミックス作品群を指す[1]。
概要[編集]
『1984』は、[[監視国家]]を舞台に、プレイヤーが[[記憶編集官]]として“言葉の整形”に関わることになるディストピア・アクションRPGである。[[オーレリアン・シティ]]シリーズの第1作目とされ、発売当初から[[黒曜印刷ゲームズ]]の宣伝方針により「未来の教科書の体裁をしたゲーム」として紹介された[2]。
本作の最大の特徴として、会話による進行と戦闘による進行が同一の数値体系で統合されている点が挙げられる。プレイヤーは選択肢を提示された瞬間に、[[言語補正値]]と呼ばれるメーターが変動し、それが与ダメージだけでなく“疑念レベル”にも影響するとされる[3]。
また、同作はのちに[[テレビアニメ]]化され、さらに[[攻略本]]市場を大きく押し上げた。とりわけ、後述の[[監視生物]]の攻略法が「読書の作法」として一部教育機関で模倣され、倫理審査が行われたという逸話がある[4]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
プレイヤーは[[記憶編集官]]として、街区ごとに配布される“紙”をインターフェイスとして受け取る。紙は単なるUIではなく、物理的な重さを模した重量パラメータとして内部計算に組み込まれ、装備スロットの圧迫や回避率に影響すると説明された[5]。
戦闘では、一般的なHP以外に[[整合性]]という勝敗条件が用いられる。敵が“矛盾”を検知した場合、攻撃は通っているのに撃破扱いにならないことがあり、玩家は[[論理手形]]を消費して整合性を回復する必要があったとされる[6]。
アイテム面では、[[言い換えカートリッジ]]と呼ばれる消耗品が象徴的である。言い換えは単なる翻訳ではなく、同じ意味を“別の時制”に置き換えることでダメージ属性や会話分岐が変化するという。なお、当時のデザイナーは開発段階で「言い換えの辞書を作るのに、実測で合計9,173枚の紙カードが必要だった」と語ったとされ、これがファンの間で伝承された[7]。
対戦要素としては、協力プレイに近い[[二名編集モード]]が存在したとされる。二人は同じ街区を別々の視点で編集し、最後に“整合性スコア”を合算する方式で、オンライン対応は発売から1年後のアップデートで部分的に実装されたと報告されている[8]。
ストーリー[編集]
物語は[[オーレリアン・シティ]]第13湾岸地区から始まる。プレイヤーは検閲局の下請けとして、民衆の記録が“現在”に追いつくように再構成する役目を負うが、その過程で自分自身の過去が編集対象として浮上する[9]。
街区の広場では、掲示板が“昨日の告知”を“今日の命令”へと置換する儀式が行われる。プレイヤーはその場で、[[過去の裂け目]]と呼ばれるグレーゾーンに遭遇し、そこでは会話の選択肢が一度だけ増殖するという仕様があると説明された[10]。
第7章のクライマックスでは、[[監視生物]]の一種である[[眼鏡状ワイヤル]]が“言葉の温度”を測定し、プレイヤーの発話が規定温度から外れた瞬間に警戒フェーズへ移行する。反転攻勢では戦うのではなく、編集したはずの文章を“自分の声で誤読”し、検知アルゴリズムを一瞬停止させる必要があるとされる[11]。
終盤は、勝利条件が「敵を倒す」ではなく「街区の整合性を“保たせる”」に切り替わる。プレイヤーは編集官としての矛盾を抱えたまま、最終掲示を出すが、出した直後から自分のステータス表が改版される演出が話題になった[12]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主要人物として、主人公の[[記憶編集官]]であるオーラ・ヴァレリオ(英語圏ではAura Valerioとして表記されることが多い)がいる。彼は“正しさ”の配分を担当するが、ゲーム内のログではしばしば名字が空欄になる仕様があり、発売当時から考察スレが盛り上がった[13]。
仲間として、[[紙齢の運び屋]]ギルデン・カラハンが登場する。彼女は会話中にだけ手元の手帳を開くが、そのページは毎回乱数で差し替わり、攻略には「読み順の作法」が要求されたとされる[14]。
敵としては、[[整合審判室]]の査察官レオナルド・フランツェリが挙げられる。彼は攻撃ではなく“訂正”を行い、プレイヤーが発した数値(例:[[言語補正値]] 42.0など)を“より恐ろしい小数点”へと置換してくる描写がある[15]。
また、[[監視生物]]のリーダー格である[[壁面オルゴール]]は、戦闘中に音程が変化するだけで状態異常の種類が変わるとされる。プレイヤーが音を正確に聞き取れない場合、整合性の回復が逆に進むという珍しい仕様が残っていたと報告されている[16]。
用語・世界観/設定[編集]
世界観の中心概念として[[整合国家]]がある。国家は“出来事が起きた順番”ではなく“いま受け入れられている順番”で現実を確定させるとされ、街区ごとの掲示・会話・戦闘判定がその哲学に連動している[17]。
[[言語補正値]]は、プレイヤーの発話や選択肢が“制度化された語彙”にどれだけ近いかを示す指標とされる。数値は0.0〜99.9で管理され、イベントによっては小数点第2位まで表示される場面がある。ある実況動画では、補正値が「73.14」から「73.16」に上がった瞬間に敵の攻撃が“詩的”な表現へ変化したとされ、検証が試みられた[18]。
[[論理手形]]は、整合性を一時的に取り戻すための鍵アイテムであり、発行元は[[整合審判室]]の偽造部門とされる。なお、偽造部門が存在するにもかかわらず、ゲーム内テキストでその部署名だけが毎回読み替えられる点が、熱心なプレイヤーほど気持ち悪いと感じたという[19]。
[[監視生物]]は、街の媒体(壁、柱、掲示板)に寄生する形で現れるとされる。分類上、[[眼鏡状ワイヤル]]、[[壁面オルゴール]]、[[沈黙カメラリス]]の三系統が“雌雄”ではなく“誤差”で分かれるとされ、図鑑要素がファンアートを促した[20]。
開発/制作(制作経緯/スタッフ)[編集]
本作の制作は、[[独立企画研究所]]が「物語を読ませるのではなく、読ませた結果を操作したい」とする方針のもとで進められたとされる。開発主任は[[霧島 煌]]であり、設計段階では会話分岐の整合性計算を“文学編集”のモデルに置き換えたという[21]。
一方で、[[アルド・ノルステン]]は戦闘システムについて「勝敗ではなく編集の成功率を体感させる」と語ったとされる。実装上は、状態異常や会話の結果が同じ乱数列を参照するため、プレイヤーが“話し方”を変えるとダメージ期待値も変動する設計になったと報告された[22]。
開発は当初1983年春に着手されたが、社内資料によれば、開発停止の危機として“言語補正辞書の品質”問題が挙げられたという。辞書の最終品質指標として「語彙の空白率 0.73%以内」が採用されたとされるが、なぜこの数字になったのかは資料では説明されていない[23]。
スタッフは少人数であったとされ、プログラマーの[[Dr. ベルント・フェルクス]]が物理UI(紙の重量)を担当した。音楽は交響局アーカイブスが担当し、[[壁面オルゴール]]戦では実際の音響測定データを元にテンポが調整されたとされる[24]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
『1984』の音楽は、[[交響局アーカイブス]]が編成した“逆位相”オーケストラを特徴としている。通常はメロディを前に押し出すが、本作では低音帯域から先に提示し、会話イベントで音が遅れて追いつく演出が採用されたとされる[25]。
サウンドトラックは全22曲で構成され、うち3曲が“状態に応じて旋律が変わる”仕様だった。たとえば[[眼鏡状ワイヤル]]のテーマは、整合性が60未満のときだけ分割和音が増えるよう調整され、プレイヤーが数値を見ずに演奏の変化で判断できたと報告されている[26]。
また、EDテーマの歌詞カードはゲーム内で配布されず、代わりに街の掲示板から印字される形式になっていたとされる。印字には端末の時刻設定が影響し、結果として歌詞の一部文字が“別の字体”になるという批判も起きた[27]。
評価(売上)[編集]
発売直後から[[ファミ通クロスレビューゴールド殿堂入りソフト]]として紹介され、国内では初月に推定120万本が販売されたとされる。ただし、当時の社内会計では「流通在庫のうち返品率 3.2%」が記録されており、実売は推定の揺れを含むと指摘された[28]。
全世界累計では[[ミリオンセラー]]を超え、1986年末時点で380万本に達したとされる。海外版では字幕の語彙がわずかに差し替えられ、“言語補正値の挙動が原作と別になる”という指摘が出たが、開発側は互換性の範囲として扱った[29]。
評価の中心は、会話と戦闘が同一のルールで結び付いている点にあった。特に、プレイヤーが“正しい言葉”を選ぶほど敵が賢くなるよう設計されているため、初心者ほど詰まりやすい構造だと語られた[30]。
一方で、ゲーム性の根幹が言語に偏っているため、音声読み上げ機能のない環境では難易度が過度に上がるとされた。のちにパッチで救済措置として“聞き取り補正 1.18倍”が導入されたが、導入時期はメディアごとに食い違いがあるとされる[31]。
関連作品[編集]
メディアミックスとしては、[[テレビアニメ]]『オーレリアン・シティ 異文書の季節』が代表的である。アニメは“ゲームと同じ会話分岐”を再現するため、制作側が脚本に数値注釈を付けたとされるが、放送後に「数値が増えるほど脚本が長くなる」問題が起き、結果としてエピソード尺が15分から18分へ延長された[32]。
また、漫画版としては『整合審判室の下書き』があり、[[論理手形]]をめぐる法律ドラマ風の構成が好評とされた。さらに、外伝小説では[[記憶編集官]]が街を離れて“編集の外側”へ触れる展開が描かれ、ファンの間で公式の正史扱いを巡る議論が起きた[33]。
攻略の系譜としては、ラジオ番組『E4深夜翻刻』が挙げられる。リスナーは公開された“言い換えカートリッジの抜粋”を当てるクイズに参加し、正解者には限定端末用の辞書データが配布されたとされる[34]。
関連商品[編集]
攻略本としては『E4言語補正値完全読本(第3版)』があり、全512ページ、付録として“紙カード再現シート”が付いていたとされる。読者が手動で紙の厚みを測るよう指示されており、測定器の型番まで掲載されたことが当時の話題になった[35]。
書籍としては、研究書の体裁を取った『整合国家のメディア設計:E-クラウドOS時代の編集モデル』が出版された。著者は架空の行政学者として名を連ねていたが、内容はゲーム開発資料に由来すると噂され、学会誌の書評欄でも触れられたとされる[36]。
関連商品には、サウンドトラックCD(全2枚)に加え、“会話の順番”を学ぶための学習カード『沈黙カメラリス認識訓練』がある。なお、カードの難易度はA〜Dの4段階で、Dは“正誤判定が0.04秒遅れる体感”を再現したと説明された[37]。
限定版には、[[オーレリアン・シティ]]地図風ケースが同梱された。ケースには印刷ではなくレーザー刻印が使われ、刻印の深さがゲーム内ロード時間に反映されるという触れ込みがあったが、実際の効果は検証で否定的だったとされる[38]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 戸嶋 裕門『E4の編集哲学:言語補正値設計メモ』黒曜印刷ゲームズ出版部, 1985.
- ^ Marta K. Halloway『Spectral Consistency in Interactive Dystopia』Journal of Play Systems, Vol. 12 No. 4, pp. 101-148, 1986.
- ^ 霧島 煌『“未来の教科書”としてのRPG』独立企画研究所紀要, 第3巻第2号, pp. 33-60, 1984.
- ^ Dr. ベルント・フェルクス『Deterministic Dialogue and Shared Random Streams』International Conference on Game Logic, pp. 77-89, 1985.
- ^ 杉原 琳斗『紙UIの物理感:重量パラメータの臨床評価』ゲーム工学年報, 第9巻第1号, pp. 12-29, 1987.
- ^ Aldo Norstén『Reverse-Phase Orchestration in State-Driven Encounters』Audio Theater Review, Vol. 5 No. 1, pp. 1-22, 1986.
- ^ 王立視聴覚委員会『翻刻掲示板の運用規程(試案)』王立出版社, 1988.
- ^ Hiroshi Tanabe『Rewriting Memory as Gameplay: A Case Study of 1984』Proceedings of the East Asian Interactive Arts, pp. 210-233, 1990.
- ^ K. Petrov『Consistency Meters and Perception Delays in RPGs』Computer Entertainment Quarterly, Vol. 2 Issue 3, pp. 55-73, 1989.
- ^ 小野寺 つぐみ『沈黙カメラリスの実装と誤差設計(第2版)』文化計算出版, 1991.
外部リンク
- オーレリアン・シティ公式資料庫
- E4言語補正値解析プロジェクト
- 整合審判室アーカイブ
- 逆位相オーケストラ試聴室
- 紙UI再現コミュニティ