格好いいのにヘタレな攻めと可愛いのに男前な受け効果
格好いいのにヘタレな攻めと可愛いのに男前な受け効果(かっこいいのにへたれなせめとかわいいのにおとこまえなうけこうか、英: Cool-but-Cowardly Top and Cute-but-Manly Bottom Effect)とは、分野の用語で、においてとが逆転しやすい状況で、がを誤認する心理的傾向である[1]。
概要[編集]
格好いいのにヘタレな攻めと可愛いのに男前な受け効果とは、外見上の属性や物語上の立場が、実際の行動特性と食い違うことで、第三者が関係性の力学を過大または過小に評価してしまう現象を指す。とくに、、および上の二次創作圏で観察されることが多いとされる[2]。
この効果は、の周辺で活動していた匿名のレビュアー集団によって、2008年ごろに半ば自虐的に命名されたとされる。なお、初期の報告では「攻め受け反転錯視」と呼ばれていたが、略称が不自然すぎたため、現在の長大な名称に落ち着いたという経緯がある[3]。
定義[編集]
本効果は、観察対象が「格好いい」「強そう」「主導権を握りそう」と見なされる属性を備えているにもかかわらず、実際には臆病、優柔不断、あるいは繊細である場合に、周囲がその弱さを愛好の対象として再解釈する傾向である。逆に、「可愛い」「守られる側」と見なされる対象が、交渉・突発事態・対人調整の局面で異様なまでに有能さを発揮すると、受け手の側に「この人物こそ実質的な主導者である」とする認知の再配線が生じるとされる[1]。
心理学的には、の逸脱により注意資源が過剰に配分されることで、観察者の印象が固定化しやすくなると説明される。とりわけ、関係性を二元的に把握しようとする層では、「格好いい側が攻め」「可愛い側が受け」という初期仮説が、1回の失敗や1回の機転で反転し、その反転自体が快楽として定着する傾向があるとされる。
由来・命名[編集]
この効果の命名者として最もよく引用されるのは、の非常勤研究員であった渡瀬真理子である。渡瀬は、近くの貸会議室で行われた自主研究会において、参加者が「見た目が強い方ほど泣きやすい」「小柄で可愛い方ほど会計が強い」と口走った記録を採取し、これを一つの様式として整理した[4]。
ただし、名称が定着した直接の契機は、同人即売会で配布された32ページの小冊子『攻めの外見と受けの実務能力の非対称性に関する一考察』であるとする説が有力である。小冊子の奥付には発行部数48部と記されていたが、実際には主催者の机の下にもう1束あったとの証言があり、後年の研究者はここに「現場知の爆発点」を見ている[5]。
メカニズム[編集]
メカニズムとしては、第一にに似た初期推定が働く。すなわち、外見的に「格好いい」人物には統率力や強さが自動付与されるが、実際の言動がヘタレであると、その落差が過剰に記憶されるのである[1]。
第二に、「可愛いのに男前」な人物は、保護欲を喚起する見た目を持ちながら、危機対応で冷静な判断を示すため、観察者の予測誤差が快感に変換される。このとき一部の被験者は、対象の身長や声量ではなく、レジ袋を持つ手際や店員への語調によって主導権を判断する傾向があることが示された[6]。なお、これらの反応はの繁華街よりも、深夜営業ので顕著であったという報告がある。
実験[編集]
、は、被験者312名を対象にした二段階実験を実施した。第1段階では、架空のカップル資料として「長身で寡黙だが、告白の返答で7分黙り込む人物」と「小柄で柔和だが、迷子の外国人を即座に駅へ誘導する人物」が提示され、被験者の72.4%が前者を攻め、後者を受けと判断した[7]。
第2段階では、同一資料において両者の会話ログのみを差し替えたところ、攻め判定は38.1%まで低下し、さらに「むしろ逆ではないか」と答えた被験者が26.0%に達した。研究班は、役割推定が身体的特徴よりも、言いよどみの長さ、謝罪回数、そして「でも」「いや」「その」が各発話に含まれる頻度によって左右されると結論づけた。なお、統計解析に使われたCSVファイル名が「seme_uke_final_final2.xlsx」であったことは、後に学会で軽く批判された[8]。
応用[編集]
応用分野としては、、、およびが挙げられる。出版社の編集部では、表紙に「格好いいのにヘタレ」属性を載せると売上予測が平均で11.8%上振れするとの社内調査があり、特に系レーベルで重視されたとされる[9]。
また、の観光案内所では、英語圏からの来訪者に対し、見た目が華奢でも段取りの良いスタッフを前面に出すことで、案内満足度が向上したという。もっとも、これは心理効果というより単にそのスタッフが地図に強かっただけだという反論もある。なお、近年ではオンライン会議で「声が小さいのに議事録が異様に正確な人物」を男前側とみなす派生現象も報告されている。
批判[編集]
批判としては、そもそも本効果の成立が特定のジャンル語彙に依存しており、一般心理学の概念としては狭すぎるとの指摘がある。とくにの調査では、被験者の31%が「攻め」「受け」という語を聞いた時点で課題を恋愛文脈ではなく配送業務の話題だと誤認しており、測定妥当性に問題があるとされた[10]。
一方で、擁護派は、名称が長すぎること自体が記憶定着を促すと主張している。また、現場の編集者のあいだでは「可愛いのに男前」成分が強い人物ほど、実際には会計・連絡・災害対応に強いという経験則が知られており、批判の多くは理論よりも観察不足に由来するとの反論がある。
脚注[編集]
[1] 渡瀬真理子『役割期待の反転と親和的錯覚』関係心理学会誌 第18巻第2号, 2013年, pp. 41-66. [2] 佐久間遥『二次創作圏における攻受語彙の認知負荷』同人文化研究 第7号, 2011年, pp. 12-29. [3] 田中一成『池袋周辺における匿名レビュアーの発話分析』東京都市文化大学紀要 第9巻第1号, 2010年, pp. 88-103. [4] Marjorie K. Ellison, "Asymmetry in Romantic Role Attribution," Journal of Applied Relationship Studies, Vol. 22, No. 4, 2014, pp. 201-219. [5] 高見澤絵里『即売会小冊子の流通経路と命名慣行』日本サブカルチャー論集 第5巻第3号, 2015年, pp. 77-95. [6] Kenji Hiramoto, "Prediction Error and Affectionate Reversal in Dyadic Perception," Behavioral Aesthetics Quarterly, Vol. 11, No. 1, 2016, pp. 3-27. [7] 東京都立心理行動研究所『対人印象の逆転に関する被験者実験報告書』研究報告 第214号, 2012年, pp. 1-54. [8] 斎藤冬子『ファイル名規則が学会査読に与える影響』計量心理学レビュー 第14巻第2号, 2017年, pp. 119-121. [9] 編集企画室『属性記号の表紙効果に関する社内調査』月刊出版統計 第33巻第8号, 2019年, pp. 44-58. [10] 大阪大学人間行動学部『用語選好と課題誤認の関連について』行動科学年報 第27号, 2021年, pp. 203-226.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡瀬真理子『役割期待の反転と親和的錯覚』関係心理学会誌 第18巻第2号, 2013年, pp. 41-66.
- ^ 佐久間遥『二次創作圏における攻受語彙の認知負荷』同人文化研究 第7号, 2011年, pp. 12-29.
- ^ 田中一成『池袋周辺における匿名レビュアーの発話分析』東京都市文化大学紀要 第9巻第1号, 2010年, pp. 88-103.
- ^ Marjorie K. Ellison, "Asymmetry in Romantic Role Attribution," Journal of Applied Relationship Studies, Vol. 22, No. 4, 2014, pp. 201-219.
- ^ 高見澤絵里『即売会小冊子の流通経路と命名慣行』日本サブカルチャー論集 第5巻第3号, 2015年, pp. 77-95.
- ^ Kenji Hiramoto, "Prediction Error and Affectionate Reversal in Dyadic Perception," Behavioral Aesthetics Quarterly, Vol. 11, No. 1, 2016, pp. 3-27.
- ^ 東京都立心理行動研究所『対人印象の逆転に関する被験者実験報告書』研究報告 第214号, 2012年, pp. 1-54.
- ^ 斎藤冬子『ファイル名規則が学会査読に与える影響』計量心理学レビュー 第14巻第2号, 2017年, pp. 119-121.
- ^ 編集企画室『属性記号の表紙効果に関する社内調査』月刊出版統計 第33巻第8号, 2019年, pp. 44-58.
- ^ 大阪大学人間行動学部『用語選好と課題誤認の関連について』行動科学年報 第27号, 2021年, pp. 203-226.
外部リンク
- 国立関係認知アーカイブ
- 日本対人印象学会
- 二次創作心理研究センター
- 池袋サブカル資料室
- 関係性語彙データベース