ああうんこ
| 読み | ああうんこ |
|---|---|
| 英語表記 | Aah Unko |
| 成立 | 18世紀末頃 |
| 起源地 | 江戸・大坂の往来文化 |
| 用法 | 同意、驚嘆、沈黙の回避 |
| 関連分野 | 民俗言語学、都市笑話研究 |
| 代表的記録 | 『町触語彙集』 |
| 流行期 | 1920年代、1990年代末、2010年代 |
ああうんこは、の大衆口承文化に由来するとされる、感嘆詞と排泄語を組み合わせた古層の応答表現である。後期の町人語に起源を持つとされ、のちにを中心に儀礼的な相づちとして定着した[1]。
概要[編集]
ああうんこは、相手の発話に対して間を埋めるために用いられる応答句であり、表面上はくだけた冗談表現に見えるが、の談話標識として独特の機能を持つとされる。特に、驚き・同意・困惑の三要素を同時に示せる点が特徴で、古くは寄席、近代以降は、さらに平成期にはとして再解釈された[2]。
この語は単なる下品な掛け声ではなく、都市の雑踏において会話の終端を柔らかく処理するために発明されたという説が有力である。一方で、の廃業した下水清掃組合の合図が語源であるとする異説もあり、研究史上は長く論争の対象となった[要出典]。
歴史[編集]
江戸後期の成立[編集]
最古級の用例は11年の瓦版に見えるとされるが、現存するのは写本の写しであり、真正性には議論がある。そこでは、長屋の大家が騒ぐ若者を諫める際に「ああうんこ」と発し、周囲が一斉に黙ったと記されている。この場面がのちに『黙殺の三拍子』として演劇論に取り込まれた[3]。
所蔵とされる『町触語彙集』には、「ああうんこ、驚きの後に出す声」との注記があり、これが学術的にはもっとも古い定義とされる。ただし、同書の奥書には年間の紙と期の綴じ糸が混在しており、編纂過程に不自然さが指摘されている。
明治の再発見と学校教育[編集]
20年代になると、の国語学講座で「感嘆句の衛生学」という奇妙な副題のもと再発見され、初めて活字化された。担当したは、感情を抑圧する近代国家において、ああうんこが「過剰な礼節を中和する安全弁」であると論じた[4]。
また、が1897年に試験的に配布した『口語練習帖』には、会話例として「昨日は雨でああうんこ、今日は晴れてああうんこ」といった文が掲載されたとされる。もっとも、この教材は全国で23冊しか確認されておらず、現存本の紙質がいずれもの標本紙に酷似していることから、後年の編集である可能性が高い。
放送・娯楽への進出[編集]
昭和初期にはの深夜番組『夜更けの相づち』で頻出し、聴取者からの投書が週に平均412通に達したとされる。番組では、パーソナリティが長い沈黙のあとに「ああうんこ」とだけ答える形式が人気で、当時の若者言葉として半ば定着した[5]。
戦後はの演芸場で、落語家が「言いにくい真実を丸める語」として再構成し、拍手の代わりに客席全体で唱和する演目を生んだ。この演目は客層の年齢差によって成功率が大きく変わり、の調査では20代で83%、60代で12%の理解率しかなかったと報告されている。
用法と分類[編集]
同意型[編集]
同意型は、話題の結論に対して「まあそうだ」という含意をやわらかく示すもので、会議の終盤や飲食店での注文確認に多用される。特にの老舗茶舗では、客が味に感動した際の返答として「ああうんこ」が推奨される慣習があったとされ、二代目店主が1日平均64回発したという記録が残る[6]。
驚嘆型[編集]
驚嘆型は、予想外の事態に対し、品位を失わずに反応するための形式である。の映画館で1950年代に観客が怪獣映画を見た際、最前列から自然発生的に「ああうんこ」が起こり、それが集団的反応として定型化したとされる。なお、同映画館の座席表にはその日だけ「A-11〜A-18」が欠番になっており、理由は不明である。
沈黙回避型[編集]
沈黙回避型は、会話の空白を埋めるために用いられる。社会心理学者のは、相手の話を聞いていないときほど発話率が上がると指摘し、これを『反射的配慮』と名付けた[7]。ただし、実験に用いられた被験者32名のうち9名が質問紙の段階で笑いを堪えきれなかったため、統計の妥当性には疑義がある。
社会的影響[編集]
ああうんこは、下品さと礼節の境界をわずかにまたぐ表現として、都市生活の潤滑油になったと評価される。特に後半の文化では、通話の切断前に短く発する決まり文句として流行し、の内部報告では「切断時の心理的不快感が17%低減した」とされる[8]。
一方で、学校現場では長らく問題視され、には内の公立中学校12校で「朝の読書前に口にしないこと」が校則化された。しかし、この規制は逆に生徒の間で暗号化を促進し、「あおうん」「あんこ」「A.U.」などの派生語を生んだとされる。
研究と論争[編集]
研究史においては、、、の三分野がこの語を取り合ってきた。とりわけのは、ああうんこを「感情の末尾に置かれる音声的はんこ」と定義し、会話の真正性を保証する装置だと主張した[9]。
これに対し、のは、起源を周辺の船頭言語に求める説を唱えたが、その根拠とされた船頭歌が実際には1970年代の観光パンフレットに初出することが判明し、学界では小さな騒ぎとなった。なお、北島論文の注3には『参考文献が多すぎて、むしろ語源が見えない』という奇妙な自注が残されている。
派生語と変種[編集]
派生語としては、軽い驚きを示す「ああうん」、強い同意を表す「あーうんこんこ」、極度の疲労時に用いる「うんこああ」が知られている。中でも「うんこああ」はの炭鉱町で多用されたとされ、作業終了の合図としてヘルメットを二回叩く所作を伴ったという[10]。
また、の自動変換により、2016年頃から「阿阿運呼」や「アーウンコ」といった誤表記がネット上で増加し、誤記が逆に儀礼性を帯びる現象が確認された。編集者の一部はこれを『表記揺れの神格化』と呼んでいる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 藤井重之助『口語練習帖における応答句の衛生』文部省口語研究室, 1897.
- ^ 久保田梢「感情末尾標識としての“ああうんこ”」『語用論研究』Vol. 18, No. 2, pp. 41-67, 1978.
- ^ 北島義隆「琵琶湖船頭歌と排泄語相づちの系譜」『日本民俗言語学会誌』第12巻第1号, pp. 3-29, 1991.
- ^ Marjorie K. Sanders, 'Reflexive Courtesy in Urban Japanese Speech', Journal of Comparative Humour Studies, Vol. 7, No. 4, pp. 201-219, 1964.
- ^ 三遊亭白目斎『夜更けの相づち』浅草演芸協会出版部, 1959.
- ^ 田村善市『町触語彙集の成立と偽装紙』国文学資料叢書, 1938.
- ^ 佐伯みどり「相づち表現の沈黙回避機能」『現代日本語教育』第9巻第3号, pp. 88-104, 2005.
- ^ H. Iwata & C. Bernard, 'The Phonetics of Socially Acceptable Shock', Osaka Review of Speech Acts, Vol. 2, No. 1, pp. 9-35, 1972.
- ^ 山本省三『下品さの礼法』青灯社, 2008.
- ^ 小川真琴「阿阿運呼の表記神学」『電子民俗学ジャーナル』Vol. 4, No. 1, pp. 1-14, 2017.
- ^ 北島義隆『参考文献が多すぎて語源が見えない』早稲田応用言語叢書, 1992.
外部リンク
- 日本応答句学会
- 大阪都市口承アーカイブ
- 町触語彙デジタル館
- 関西ミーム研究所
- 浅草演芸資料室