うんちっち
| 分類 | 幼児語・隠語・玩具用語 |
|---|---|
| 成立 | 1987年頃(諸説あり) |
| 起源地 | 東京都台東区・浅草橋周辺 |
| 提唱者 | 児童語研究家 牧野一成 |
| 主な使用層 | 幼児、保育者、玩具メーカー、深夜番組視聴者 |
| 関連施設 | 日本児童語保存協会 |
| 派生商品 | うんちっちシール、うんちっちスタンプ |
| 象徴的事件 | 1994年の『小便器反転事件』 |
| 別名 | うんち語、やわ便表現 |
| 現在の扱い | 一部地域の家庭内用語として存続 |
うんちっちは、の幼児語文化から派生したとされる、便意をやわらかく婉曲化した語である。語感の愛らしさから、末期には玩具業界や保育現場にも浸透したとされる[1]。
概要[編集]
うんちっちは、便や排泄を直接的に言い表すことを避けるために用いられる、極めて柔らかい表現である。一般には幼児向けの言い換えとして認識されているが、実際にはの文具商と関係者の間で、1980年代後半に半ば意図的に設計された語であるとされる。
語尾の「っち」は由来の縮約ではなく、当時の児童心理学で流行した「接触音を増やすことで不安を下げる」という理論に基づき付加されたものである。なお、この理論はの内部報告書でしか確認されておらず、学界では要出典とされることが多い[2]。
歴史[編集]
成立以前の婉曲表現[編集]
期から初期にかけて、便に関する婉曲表現は「お手洗いのもの」「ながもの」など地域差の大きい語で揺れていた。特にの寄席では、下品さを避けるために「土産」「落とし物」といった暗喩が用いられていたが、幼児が理解しにくく、保育現場では使いづらかったとされる。
、系の外郭団体が実施した「幼児生活語彙調査」では、3歳児の47.3%が排泄語を大人の前で発話できないと答えたとされ、この統計を受けて複数の教材会社が“かわいく言える便語”の開発に乗り出した。もっとも、この調査票の原本は所在不明であり、数字の扱いには異論がある。
浅草橋会議と命名[編集]
うんちっちの命名は、11月に浅草橋の玩具問屋「坂東紙工倉庫」二階会議室で開かれたとされる「第4回こども言語懇話会」にさかのぼる。会議には、児童語研究家の、保育用品メーカーの企画担当・、音声学者のが参加し、わずか23分の討議の末に「うんちっち」が候補の中で最も“丸い”として採択された。
牧野は後年、「うんちの後に小さな足音がついて歩いてくる感じがした」と述べたと伝えられるが、これはのインタビュー断片にしか残っておらず、しばしば編集者を悩ませる箇所である。なお、同会議では「うんちゃりん」「うんたんぼ」も候補に挙がっていたが、いずれも玩具化した際の視認性に欠けるとして退けられた[3]。
全国流通とブーム[編集]
には、の大型スーパー向けに発売された「うんちっちシール帳」が累計18万4,000部を売り上げ、語は一気に広まったとされる。特にレジ待ちの親子連れの間で「今日はうんちっち出た?」という確認用フレーズが定着し、保育園から家庭へ逆輸入される形で拡散した。
にはの深夜再放送枠で放送された育児番組『あしたのことば』の中で、著名な言語病理士が「うんちっちは日本語の乳幼児化現象を象徴する」と発言し、翌週の視聴者ハガキが通常の4.6倍に増えた。この回は後に“便語回”として語られ、番組アーカイブの請求件数だけが異様に多いことで知られている。
社会的影響[編集]
うんちっちの流行は、単なる幼児語にとどまらず、との境界を曖昧にした点で注目された。1990年代後半には、内の私立保育園のうち約31%が、排泄指導の場面で直接語を避けるための“うんちっちカード”を導入したとされる。
一方で、言葉の過剰な愛称化が子どもの語彙発達を遅らせるとする批判もあった。とりわけの研究グループがに発表したとされる報告では、家庭内でうんちっちのみを使った場合、便意申告の平均発話開始年齢が0.8か月遅れる可能性が示唆された。ただし、この報告は学内紀要のコピーが1部しか見つかっておらず、検証は進んでいない。
また、玩具業界では“言いやすさ”を競う語尾設計が加速し、のちの「ぴかぴか」「もぐもぐ」系ブランド命名に影響したとされる。東京・の一部ショップでは、うんちっち関連商品をまとめた棚が「乳幼児語コーナー」として独立し、時点で全体売場の2.1%を占めていた。
うんちっち現象[編集]
うんちっちは、単語そのものよりも、発話時の表情や間を含めた“現象”として論じられることがある。言語学者のは、これを「発音の直後に必ず笑いが生じるため、会話の終止符として機能する稀有な例」と説明した。
特筆すべきは、の関東ローカル通販番組において、司会者が商品説明の締めに3連続で「うんちっち」と言ったところ、視聴者の注文が通常比で12%増加したとされる件である。番組側は偶然として処理したが、後年、制作会社のメモに「語感テスト成功」と残っていたことから、マーケティング用語としても研究対象になった。
一方で、の一部小学校では、児童が授業中にこの語を多用したことで「ふざけ言葉」として黒板に書かれる事案が続出した。これに対し、教育委員会は“言葉の機能を理解した上で使うべきである”とする通知を出したが、現場では「じゃあいつなら使っていいのか」という根本問題だけが残った。
批判と論争[編集]
うんちっちをめぐる最大の論争は、その起源が自然発生的な幼児語なのか、広告代理店による設計語なのかという点にある。の業界誌『ことばと生活』では、元コピーライターのが「我々は意図的に“っち”を足した」と証言した一方、牧野一成は「そういうのは後付けである」と反論している。
さらに、にはが、子ども向け商品に過度に愛称化された排泄語を使用することの是非を検討し、8対5で“容認だが慎重”と結論づけた。しかし議事録の末尾に「なお、委員の半数が会議後にうんちっちシールを持ち帰った」と記されていたため、結論の中立性に疑義が生じた。
現在では、家庭内やごく一部の保育現場において穏当な表現として残る一方、公共広告での使用はほぼ見られない。もっとも、の駅売店で販売されたミネラルウォーター『うんちっちの雫』が短期間で販売停止になった件は、名称の社会的耐久性を示す象徴例としてしばしば引用される。
派生語と関連文化[編集]
うんちっちからは、派生語として「うんちっちる」(便意をやわらかく伝える)、「うんちっち化」(表現を幼児寄りに変える)、「逆うんちっち」(むしろ硬く聞こえるように言い換える)などが生まれたとされる。特に「逆うんちっち」は頃、の地下ライブハウスで若手芸人が用いたことで広まり、笑いのテンポを崩す決め台詞として定着した。
また、浜松市の一部こども園では、排泄を報告できた子どもに配る“うんちっちスタンプ”が導入され、1日平均9.7回押されていたとされる。スタンプ台のインクが薄いと子どもが報告をためらうため、施設側はインク濃度を0.82に保つという独自規格を設けたが、誰が測定したのかは不明である。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 牧野一成『幼児語尾の設計学――うんちっち以前と以後』日本児童語学会, 1996, pp. 41-68.
- ^ 早乙女久美子『保育用品における音感訴求の実証』ベビー・デザイン社, 1992, Vol. 3, No. 2, pp. 11-29.
- ^ Harold V. Sykes, "Rounded Syllables in Toilet Euphemism", Journal of Applied Child Phonetics, 1990, Vol. 12, No. 4, pp. 201-219.
- ^ 内田玲子『笑いを生む終止符としての語尾研究』東京ことば研究所, 2004, pp. 7-35.
- ^ 佐伯慎吾『コピーライターはなぜ“っち”を足したのか』文藝言語, 2001, Vol. 18, No. 1, pp. 77-94.
- ^ 日本言語倫理委員会編『幼児語と公共性――平成十七年度審議録』日本言語倫理委員会, 2006, pp. 103-126.
- ^ 渡辺精一郎『浅草橋玩具街の戦後史』港出版会, 1989, pp. 220-244.
- ^ M. A. Thornton, "Consumer Response to Baby-Registered Lexemes", Linguistic Commerce Review, 1998, Vol. 7, No. 3, pp. 55-73.
- ^ 大阪大学子ども言語研究班『便語の発話開始年齢に関する予備調査』大阪大学紀要, 2002, 第41巻第2号, pp. 88-101.
- ^ ことばと生活編集部『特集・便をめぐる語感革命』ことばと生活, 1999, 第5巻第6号, pp. 14-23.
外部リンク
- 日本児童語保存協会
- 浅草橋ことば博物館
- 保育用品語感研究センター
- 関東便語アーカイブ
- うんちっち資料室