うんぽっぽ
| 名称 | うんぽっぽ |
|---|---|
| 別名 | ぽっぽうん、うんぽ音頭、三拍子掛け声 |
| 起源 | 昭和初期の東京下町 |
| 分類 | 即興掛け声、儀礼的発声 |
| 主な普及地域 | 関東地方、北陸地方、瀬戸内沿岸 |
| 成立年代 | 1931年頃とする説が有力 |
| 関連機関 | 東京児童声研究会、帝都民俗記録館 |
| 代表的資料 | 『うんぽっぽ記譜帳』 |
| 現在の用途 | 保育、地域行事、ニッチなコール&レスポンス |
うんぽっぽは、日本の児童文化に由来するとされる即興合唱用の掛け声、または小規模な儀礼的発声の一種である。初期にの巡回玩具商たちの間で広まったとされ、のちに地方の祭礼、幼稚園教育、深夜ラジオのジングルへと転用された[1]。
概要[編集]
うんぽっぽは、短い母音連鎖と破裂音を組み合わせ、一定の拍で反復する発声様式である。一般には「歌」と「掛け声」の中間に位置づけられ、参加者が意味内容よりも音勢の一致を重視する点に特徴がある。
名称の由来については、沿いの船宿で使われた「運びの合図」から転訛したとする説、またはの帰りの点呼を真似た子どもの擬声が定着したとする説がある。一方で、の民俗音声研究班は、1930年代の玩具笛の広告文句「うんと鳴って、ぽっと止まる」から生じた可能性を指摘している[2]。
歴史[編集]
成立[編集]
最古の記録は夏、の縁日で配布された小冊子『子ども遊戯と音の礼法』に見えるとされる。そこでは、輪唱の入りを失敗した児童が、恥を隠すために「うん、ぽっぽ」と二拍で再起動したことが起源として描かれている[3]。なお、この記述は後年の写本にのみ現れるため、信憑性には疑問がある。
当初のうんぽっぽは、売りが客寄せのために用いた単調なリフレインであり、特に売り声の切れ目に差し込む「ぽっ」の部分が強調された。1934年には内の3つの玩具問屋が「うんぽっぽ式呼び込み」を採用し、午後3時台の売上が平均12.8%増えたという帳簿が残されている[4]。
普及と制度化[編集]
になると、うんぽっぽはの補助教材『声の集団遊戯』に収録され、保育現場へ急速に浸透した。とりわけ1958年、視学官だった架空の教育学者・が「幼児の共同注意を促す音声最小単位」と定義したことが転機とされる[5]。
1960年代にはラジオ第一放送の深夜番組『夜更けの子守歌メモ』でジングルとして使われ、聴取者の一部から「耳に残りすぎて眠れない」との投書が相次いだ。これにより、うんぽっぽは児童文化であると同時に、微睡みを妨げる奇妙な現代音響としても知られるようになった。
地方への伝播[編集]
では、金物祭りの開会宣言に転用され、金槌を3回打ってから「うん・ぽっ・ぽ」と唱和する方式が定着した。地元の記録によれば、1967年の祭礼では誤って4拍目を足した青年がいたため、観客が笑いをこらえきれず、その年だけ露店の回転率が上がったという。
の一部地域では、うんぽっぽが「舟入れの安全確認」の合図として使われた。これは波音と混同しやすいで有効とされ、港湾職員が「うん」で確認し「ぽっ」で返答することで、遠目からでも作業進行が判別できたと伝えられている。
構造と演者法[編集]
うんぽっぽは、通常3音節から成るが、実演では前置きの「うーん」を含めて4拍化されることが多い。標準形は「うん・ぽっ・ぽ」であるが、方言圏では「うんぽっぽい」、の一部では語尾に息継ぎの「ふう」が付くなど、地域差が大きいとされる。
演者法としては、第一拍を低く、第二拍を極端に破裂させ、第三拍で半音下がるように処理するのが基本である。1962年にの臨時講座で録音された分析では、熟練者12名の平均持続時間は1回あたり0.74秒、最長でも1.9秒に過ぎなかったが、聴衆の体感時間はその3倍以上だったと報告されている[6]。
また、うんぽっぽは単独で完結せず、手拍子や膝打ちと組み合わせると効果が倍化するとされる。このための現場では、転倒防止のために床に吸音マットを敷き、子ども8人につき大人1人が拍頭を担当する運用が広まった。
社会的影響[編集]
うんぽっぽは、幼児教育における「失敗の再開」モデルとして評価された。声を揃えることよりも、途中で外れても最初からやり直せることを示す象徴として用いられ、の一部私立園では入園式の緊張緩和に採用された。
一方で、1970年代後半には対策の街頭啓発で使われたことから、単純化された標語音声として批判も受けた。特にの環境運動家の間では「かわいさによって政策の深刻さが薄まる」との声があり、とされる内部文書では、うんぽっぽの使用を巡って自治体広報課と教育課が対立した記録がある。
それでもの『全国ことば遊び大会』でうんぽっぽ団体が優勝したことを契機に、地域おこしの定番素材として再評価された。優勝演目では、参加者36名が一糸乱れぬ「ぽ」の終止を決め、審査員のうち2名が採点を忘れて拍手したと伝えられている。
論争[編集]
最大の論争は、うんぽっぽが本来の民俗音声なのか、後年の観光資源化で作られた創作なのかという点にある。所蔵のテープには、1910年代の録音とされる音声が含まれるが、機材に製のラベルが貼られていたため、研究者の間では長く議論の的となった[7]。
また、への導入時に「幼児語の固定化を助長する」との批判も出た。これに対し三輪康四郎は「意味を与えないことが、共同体への最短距離である」と反論したとされるが、この発言は本人の講演録に見当たらず、後世の編集の可能性がある。
なお、2001年には上で「うんぽっぽは高速道路のPAでしか使われない」という新説が流布した。これにより、実際にのサービスエリアで試験的なコールが行われたが、担当者3名が笑いを堪えきれず、1週間で中止された。
文化的受容[編集]
21世紀に入ると、うんぽっぽはミーム化し、で短尺コンテンツの締めとして再流行した。特に「起承転ぽっぽ」と呼ばれる編集手法では、3秒以内にオチを作る目的で、最後にうんぽっぽを重ねることが流行した。
の一部の民芸店では、陶器の底に「うんぽっぽ」の刻印を入れる風習が生まれ、これが「割れにくい縁起物」として販売された。2022年の調査では、購入者の37%が意味を知らず、21%が知っていても説明できなかったが、満足度は高かったという[8]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三輪康四郎『声の集団遊戯――幼児共同注意と反復発声』東京教育出版, 1959年.
- ^ 平田多賀子「下町玩具商における呼び込み音の変遷」『民俗音響学研究』第12巻第3号, 1972年, pp. 44-61.
- ^ M. A. Thornton, "Repetitive Vocal Tokens in Urban Child Play", Journal of Comparative Folklore, Vol. 18, No. 2, 1981, pp. 112-139.
- ^ 石橋栄一『うんぽっぽ記譜帳』帝都民俗記録館叢書, 1963年.
- ^ 高瀬由美「戦後保育と短音節掛け声の導入」『教育音声史紀要』第7号, 1961年, pp. 5-29.
- ^ 渡辺精一郎『日本の反復音と地域共同体』北辰書房, 1998年.
- ^ L. H. Bennett, "The Unpoppo Question: Authenticity and Manufactured Tradition" , Proceedings of the East Asian Sound Studies Association, Vol. 4, 2006, pp. 77-91.
- ^ 佐久間和枝『ことば遊び大会の社会史』みなと文化出版社, 2011年.
- ^ 宮原健『港湾儀礼の近代化と音声合図』関西海事評論社, 1979年.
- ^ 『うんぽっぽと都市の記憶』東京下町資料協会, 2020年.
外部リンク
- 帝都民俗記録館デジタルアーカイブ
- 東京児童声研究会年報
- 全国ことば遊び大会実行委員会
- 下町音声文化フォーラム
- うんぽっぽ保存会