おっぺー・らばー・インダストリー
| 名称 | おっぺー・らばー・インダストリー |
|---|---|
| 英語名 | Oppai Rubber Industry |
| 成立 | 1968年頃 |
| 主な地域 | 東京都、神奈川県、愛知県 |
| 分野 | 軟質素材工業、玩具設計、展示文化 |
| 代表組織 | 日本弾性乳形工業協会 |
| 主要材料 | 合成ゴム、可塑剤、微細気泡樹脂 |
| 市場規模 | 1987年時点で年商約482億円 |
| 通称 | ORI |
| 批判 | 過度な商品化と衛生表示の曖昧さ |
おっぺー・らばー・インダストリーは、後半にの化学ゴム研究者たちのあいだで成立した、乳房形状を模した軟質弾性素材の設計・流通・文化利用を総称する産業圏である。英語では Oppai Rubber Industry と呼ばれ、のちにとを横断する独自の市場として知られるようになった[1]。
概要[編集]
おっぺー・らばー・インダストリーは、乳房を思わせる曲面と弾性を持つ製品群、ならびにその制作技法・販売経路・鑑賞作法を含む総合産業である。単なる玩具製造にとどまらず、、、、などへ応用された点に特徴がある。
成立当初はの工業試験場で、低温下でも硬化しにくい素材の研究から派生したとされる。もっとも、業界関係者のあいだでは「形状の必要性が先にあり、材料は後からついてきた」と語られており、これは後年の編集者によって何度も修正された経緯がある[2]。
歴史[編集]
黎明期[編集]
起源は、の中区にあった小規模素材工房「東洋軟体研究所」にさかのぼるとされる。所長のは、船舶用パッキンの試作中に偶然できた半球状の試験片が妙に“安心感のある輪郭”を持つことに着目し、研究員を集めて反復成形を始めたという。
この時期の製品は「N-11型」「蜜球試験体」などの無機質な符号で呼ばれたが、に広告代理店のが「おっぺー」という俗称を採用したことで市場が急拡大した。なお、当時のカタログには「触感は穏やかであるが、机上での安定性がやや高い」と記されていた[3]。
産業化と輸出[編集]
後半になると、の量産工場群が参入し、ORIは一気に工業化された。特にの「南港弾性成形センター」では、1日あたり平均14,200個の半球ユニットが出荷され、うち約7%が検品段階で左右非対称としてはじかれたという。
輸出は意外にもより先にで成功した。現地の流通業者が「文化的に説明しやすい」と判断し、店頭POPに“Portable Comfort Object”と記したことが、後の国際展開の端緒になった。一方で、の報告書では「用途の説明が過剰に曖昧である」として注意喚起が行われた。
成熟期と規制[編集]
には、学校教材向けの標準規格「J-Soft 4.5」が制定され、外径・反発係数・表面微細溝の深さが細かく定められた。とりわけ反発係数0.41〜0.47の範囲が“情緒的に適正”とされ、これが学術界と業界の妥協点になった。
しかし、の通達により、玩具と医療模型の境界が問題化し、いわゆる「白箱事件」が発生した。白無地の箱に入った匿名製品が駅売店で流通し、利用者の半数以上が用途を誤認したとされる。これにより、製品ラベルには「観賞用」「訓練用」「会議室備品」のいずれかを明記することが事実上義務化された[要出典]。
構造と製造技術[編集]
ORI製品の核心は、三層構造にあるとされる。外層は指先の滑りを抑える系樹脂、中層は復元性を高める微細気泡、内層は重量配分を調整する鉛フリーのゲルで構成される。
また、1980年代末にの試作班が導入した「乳頭マーカー・レーザー校正法」は、左右の微妙な高さを0.3ミリ単位で揃える技術として知られる。もっとも、熟練職人の一部は「完全対称はむしろ不自然である」として、あえて0.8ミリの個体差を残す流派を守っていた。
製造現場では、成形後48時間の“静置熟成”が重視された。これは本来、材料内の応力を抜く工程であるが、現場では「落ち着きが出る」「名乗りが整う」などの精神論が混入し、工場見学の案内文まで妙に詩的になったとされる。
社会的影響[編集]
ORIは、のにおいて、家庭用雑貨、舞台美術、深夜ラジオの景品文化をつなぐ媒介となった。とりわけの量販店街では、週末になると“比較試用”を目的とする買い物客が増加し、1986年には周辺の喫茶店で「試験片の余韻」を語る常連まで現れた。
一方で、教育現場では人体理解の補助教材として一部採用され、の保健室に「乳房断面教材」として置かれた例が報告されている。これがきっかけで、保護者会での説明資料が毎年22ページ増えるという副次的効果が生じた。
また、広告表現の洗練に寄与した点も重要である。1989年頃には、写真を一切使わずに「やわらかい存在感」を伝えるコピーライティングが流行し、のちのやの広告にも影響を与えたとされる。
批判と論争[編集]
ORIには、過度な商品化とジェンダー表象の固定化をめぐる批判が根強い。特にの紙上では、「弾性素材が感情を代替しうるか」という社説が掲載され、読者投稿欄が3週にわたり炎上した。
また、業界団体による自主規制がしばしば形骸化していたことも問題である。検査証明書の発行番号が、実際には前月分を流用していたケースがで確認され、これが「番号だけは立派だが中身が伴わない」と揶揄された。
ただし、支持者はORIを単なる性的文脈に還元するのは誤りであり、むしろ“触覚を設計する工業文化”として評価すべきだと主張している。この主張はの一部研究室にも受け継がれ、現在でも年1回の公開講座が行われている。
代表的な製品[編集]
ORIの代表例としては、1973年発売の「ソフト・アトラス」、1981年の「ミルキーM」、1990年の「リボン胸郭シリーズ」などが知られる。いずれも名称だけを見ると菓子や医療器具に見えるが、実際には販売店の棚で独特の存在感を放った。
なかでも「ミルキーM」は、箱の側面に“用途の誤解は設計の敗北ではない”という謎めいた文言が刷られていたため、コレクターの間で高値がついた。オークション記録によれば、未開封品がに6万8,400円で落札されている。
1997年登場の「KISL-7」は、内部に小型の砂鉄を封入した“姿勢補正モデル”として宣伝され、会議室での紙押さえとして第二の人生を送った。これが逆に人気を呼び、企業の重役室にまで流入したという。
脚注[編集]
[1] 山口春彦『軟質感覚産業史序説』東洋経済新報社、1998年、pp. 44-61。
[2] 斎藤みどり「乳形素材の都市文化的展開」『工業デザイン研究』Vol. 12, No. 3, 2004年, pp. 118-126。
[3] 東洋軟体研究所『N-11型標準試験体カタログ』社内資料、1971年。
[4] Bureau of Elastic Goods Studies, “The Oppai Rubber Market in East Asia,” Journal of Applied Material Folklore, Vol. 8, No. 2, 1985, pp. 201-219.
[5] 村瀬照夫『会議室備品の文化史』勁草書房、2001年、pp. 77-93。
[6] Patricia L. Wainwright, “Affect, Resilience, and the Semiotics of Soft Surfaces,” Materials & Society Quarterly, Vol. 19, No. 4, 1992, pp. 9-28.
[7] 日本弾性乳形工業協会『J-Soft 4.5 規格解説書』第4巻第1号、1988年。
[8] 高橋慎吾「白箱事件と流通ラベルの変遷」『流通経済評論』Vol. 23, No. 1, 1995年, pp. 33-49.
[9] Laura M. Pendleton, “Portable Comfort Objects and the Politics of Cushioning,” Comparative Design Review, Vol. 5, No. 1, 2007, pp. 88-97.
[10] 『月刊ソフトコンタクト』編集部『世界の弾性模型カタログ 1989年度版』サイバースペース出版、1989年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山口春彦『軟質感覚産業史序説』東洋経済新報社、1998年、pp. 44-61.
- ^ 斎藤みどり「乳形素材の都市文化的展開」『工業デザイン研究』Vol. 12, No. 3, 2004年, pp. 118-126.
- ^ 東洋軟体研究所『N-11型標準試験体カタログ』社内資料、1971年.
- ^ Bureau of Elastic Goods Studies, “The Oppai Rubber Market in East Asia,” Journal of Applied Material Folklore, Vol. 8, No. 2, 1985, pp. 201-219.
- ^ 村瀬照夫『会議室備品の文化史』勁草書房、2001年、pp. 77-93.
- ^ Patricia L. Wainwright, “Affect, Resilience, and the Semiotics of Soft Surfaces,” Materials & Society Quarterly, Vol. 19, No. 4, 1992, pp. 9-28.
- ^ 日本弾性乳形工業協会『J-Soft 4.5 規格解説書』第4巻第1号、1988年.
- ^ 高橋慎吾「白箱事件と流通ラベルの変遷」『流通経済評論』Vol. 23, No. 1, 1995年, pp. 33-49.
- ^ Laura M. Pendleton, “Portable Comfort Objects and the Politics of Cushioning,” Comparative Design Review, Vol. 5, No. 1, 2007, pp. 88-97.
- ^ 『月刊ソフトコンタクト』編集部『世界の弾性模型カタログ 1989年度版』サイバースペース出版、1989年.
外部リンク
- 日本弾性乳形工業協会
- 東洋軟体研究所アーカイブ
- 会議室備品文化センター
- ソフトマテリアル年鑑
- 横浜産業デザイン博物館