かずみん
| 主な用法 | 愛称・通称、またはネット上の人格の呼び名 |
|---|---|
| 発祥の地域 | 主に内の掲示板文化 |
| 関連分野 | インターネット・ミーム、地域参加、広告慣行 |
| 最初期の媒体 | 大学サークル向けのBBS(板) |
| 象徴とされるもの | 「返信が速い」「過剰に正確な目撃報告」 |
| 語の性質 | 名指しでありつつ、集合的に運用される呼称 |
| 使用の対象 | 個人、少人数集団、あるいは匿名アカウント |
かずみんは、で用いられる、特定の呼称(愛称・通称)としての「ネット上の人格」を指す語である。1990年代末に派生したとされ、のちにからの象徴へと転じたとされる[1]。
概要[編集]
かずみんは、単なる個人名ではなく、「その名で呼ばれると“らしい振る舞い”が期待される」ような運用を含む呼称である。特に、やといった行動規範とセットで語られる点が特徴とされる[1]。
語の中心には、実在の誰か(もしくは複数の人物の合成)として始まったという伝承がある。一方で、後年になるほど「その場にいる人が自分もかずみん化していく」現象が指摘され、結果として、個人と集合が入れ替わるような社会的機能を持つに至ったとされる[2]。
語の成立[編集]
呼称の発明と「実況テンプレ」[編集]
かずみんという語は、にある架空の学生寮「」の掲示板で、2001年春ごろに生まれたとされる。寮の夜食係だったとされる人物が、外部掲示板へ「今日のコンビニ入荷の詳細」を投稿し、以後“実況が上手い人”の代名詞として定着した、という筋書きが最もよく語られる[3]。
当時の投稿には、時刻・天候・棚の段数・割引開始レジまでが記録されており、たとえば「20時12分、曇り、氷が3パック欠品、レジは2番で割引開始、会計が38秒で完了」などの報告があったとされる。こうした細目が「人を名指しながら、役割を固定する」形式として模倣され、呼称が“実況テンプレ”のラベルになったと推定されている[4]。
「かずみん税」と呼ばれた行動コスト[編集]
さらに、2003年ごろから「かずみん税」という冗談めいた概念が広がったとされる。これは「かずみんとして振る舞うと、返信にかかる平均時間が10分から19分に増える」など、観察コストが上乗せされるという主張である[5]。
実際の“計測”がどの程度行われたかは不明だが、近隣のミニ調査グループ「観測友の会」が、投稿の待ち時間分布をまとめた体裁のレポートが出回り、「中央値が17分、最頻値が16分、最大が63分」という数字が独り歩きしたとされる[6]。このような擬似統計が、かずみんという語を単なるあだ名から“行動規範”へ押し上げた、とする見方がある。
社会的影響[編集]
かずみんの拡大は、地域の人間関係の作り方にも影響したとされる。具体的には、オフラインの集まり(小規模の清掃会や寄付活動)で、発言者の信頼度が「結論」より「観察の細かさ」で判断される傾向が強まったという指摘がある[2]。
この変化により、側も無視できなくなった。たとえば神奈川県の「市民参加広報」では、問い合わせ窓口のフォームに「状況の観察欄」を設ける案が検討されたとされる(実装されたかどうかは資料の一部が欠落している)[7]。ただし関係者は、これはかずみん礼賛ではなく、情報の誤読コストを下げる工夫だったと説明したという。
また、企業のマーケティングでは、かずみん型コミュニケーションが“炎上しにくい丁寧さ”として模倣された。広告代理店「」の提案書では、見込み客への返信を「一次観察→推定→誤差→次アクション」の順に並べることで、離脱率が最小化されるとされ、「離脱率は通常の約1.3倍だが、購買転換は1.8倍になる」という不自然な計算式が記載されていた[8]。
批判と論争[編集]
一方で、かずみんの運用は「過剰な正確さ」の弊害も生んだとされる。観察を重ねるほど投稿が長文化し、結果として議論の速度が落ちるという批判が出たのである[9]。
また、かずみんという語が個人の名に見える一方で、実際には集合的な役割として流通していたため、誰が“本物”のかずみんなのかが曖昧になったことが問題視された。2006年には、ある配信者が「私は“かずみん原型”を名乗る」と主張し、別の匿名アカウントと呼称の正統性をめぐる論争が起きたとされる。双方が提示した「初投稿のスクリーンショット」は、同じフォントと同じメモリサイズを使っていると指摘され、真偽の判定がつかないまま終結した[10]。
なお、最も笑いを誘った論点は「かずみんは人称代名詞として機能するのか」という学術ごっこである。大学のゼミで「“かずみんは誰?”への答えは“あなたの返信の速さ”である」と発表され、議論が言語学からスケジュール管理へ飛躍したとされる。要するに、用語が概念化する速度が速すぎた、という不満だったと記録されている[11]。
年表(よく語られる出来事)[編集]
2001年春:BBSで実況テンプレが拡散し、「かずみん」が“観察が細い人”を指す呼称として使われ始めたとされる[3]。
2003年:返信にかかる時間増を揶揄する「かずみん税」が現れ、観察コストが“説”として語られるようになったとされる[5]。
2005年:周辺の参加型イベントで、報告が短い人より長い人が評価される“かずみん指標”が一時的に採用されたとされる(会場に貼られた謎の採点表が目撃されたという)[6]。
2006年:正統性論争が起き、スクリーンショットのフォント一致問題が話題になったとされる[10]。
2008年:企業のSNS運用へ模倣が入り、「一次観察→推定→誤差→次アクション」型の文章がテンプレ化したとされる[8]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山口三二郎『ネット呼称の社会学:愛称が規範になる瞬間』日本評論社, 2009.
- ^ Margaret A. Thornton『The Rhetoric of Punctual Observation』Vol. 14, No. 2, Journal of Online Conduct, 2012.
- ^ 鈴木梓海『みなと寮とBBS史料:かずみん誕生の可能性』横浜大学出版会, 2007.
- ^ 観測友の会『掲示板投稿の待ち時間分布(みなし統計版)』観測友の会紀要, 第3巻第1号, 2004.
- ^ Eri Kuroda『Micro-Performance Metrics in Informal Networks』Communication Studies Quarterly, Vol. 22, No. 4, 2006.
- ^ 橋本啓介『SNS時代の「観察欄」設計:行政文書の誤読コスト』行政情報研究所, 2011.
- ^ 中島ゆき『銀河宣伝の提案書と企業模倣:かずみん型文章の商業化』広報経営叢書, 2014.
- ^ 田端光『正統性論争はなぜ止まらないか:匿名呼称の自己複製』計算社会学論文集, 第8巻第3号, 2007.
- ^ K. Yamane『Font-Hash Forensics and Community Memory』pp. 77-101, Proceedings of the Informal Forensics Workshop, 2008.
- ^ 佐藤実『丁寧さの経済学:返信の長文化が生む“見かけの信頼”』学術社, 2010.
- ^ 「神奈川県市民参加広報」内部資料『観測欄の導入可能性』第2案, 2005.(一部欠落)
外部リンク
- みなと寮アーカイブ
- 観測友の会データ倉庫
- 銀河宣伝の提案集
- 横浜BBS史料館
- オンライン行動規範研究室