『それいけ!!安倍晋三』
| タイトル | 『それいけ!!安倍晋三』 |
|---|---|
| ジャンル | ギャグ政治学園(擬似コメディ) |
| 作者 | 渡辺精臣 |
| 出版社 | 鏡月出版 |
| 掲載誌 | 週刊バイタル学園 |
| レーベル | 月蝕少年コミックス |
| 連載期間 | 〜 |
| 巻数 | 全巻 |
| 話数 | 全話 |
『それいけ!!安倍晋三』(それいけ あべしんぞう)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『それいけ!!安倍晋三』は、において連載されたギャグ政治学園漫画である[1]。作中では、主人公のが「説得」ではなく「号令」で人々の心を動かすとされ、やたらと細かい“政策っぽい算段”が笑いの核として反復される。
本作は、学校行事と国家運営を同一のゲーム盤として扱う作劇が特徴であり、累計発行部数万部を突破したとも報じられた[2]。とくに“朝礼”が毎回「重要決議」の儀式として描かれ、読者の間では「第◯回・月曜朝礼で世界が決まる」という流行語めいた評が生まれた。
制作背景[編集]
制作の発端は、作者のが取材ノートとして集めていた“教室の空気調律”の記録にあるとされる[3]。ノートには、空調の設定変更日を「西暦」ではなく「月曜の気圧(仮)」で記す独特の体系があり、編集部はこれを「政策理解の比喩」に転用した。
一方で、企画段階では政治風刺の強度調整が長期化した。編集部のは、初期案の主人公を“演説型”に寄せようとしたが、試読で「顔が真面目すぎる」と指摘された[4]。そこで、顔の表情管理を減らし、代わりに靴ひもや机の角度といった“物理パラメータ”で感情を表す方式が採用された。
また、作中の決算数字は実在の統計を参照しない方針で設計されたが、整合性の手触りだけは求められた。結果として、各話の末尾に登場する「検算用付箋」には、ではなく“配布単位”である「一人前シール」が使われることになった。なお、この「一人前シール」だけは編集部の内部会議資料で実際に使われた疑いがあるとの証言も残っている[5]。
あらすじ(〇〇編ごとに)[編集]
第1編:朝礼で世界を動かす編[編集]
主人公のは、に転入してくる。転入初日、彼は挨拶をせずに「本日の号令係は誰か」と問い、名簿ではなく“消しゴムの減り具合”で担当者を当ててしまう[6]。この学校では、朝礼が時間割そのものを決めるため、号令は事実上の行政権限と同義であるとされる。
第1編の見どころは、体育館のマイクから流れる架空の校歌が「政策広報ソフト」として機能する場面である。マイクは最大出力ワットに調整され、声量に応じて拍手の位置が変わるという理屈が提示され、読者は“わかるようでわからない”感覚に巻き込まれる。
第2編:検算シール大作戦編[編集]
文化祭を控え、に相当する「試算クラブ」が結成される。ところが、材料調達費が足りないと判明し、安倍は“お金の代わりに一人前シール”を発行するという非現実な会計を提案する[7]。シールは配布後で消滅し、期限切れのシールは紙飛行機に変換される。
この編で安倍は、敵役である「慎重派の」と、付箋の色(青・赤・白)を用いた推計合戦を繰り広げる。観客の投票は票数ではなく付箋の“重なり面積”で判定され、分厚い資料ほど有利になる仕掛けがギャグとして機能する。
第3編:新自由教室建設編[編集]
学内に新しい“自由”の教室を作るという名目で、校舎改築が始まる。しかし、図面には必ず「誰も使わない廊下」が一本入っていることが判明する[8]。安倍はそれを“将来のための余白”と説明するが、余白の長さがいつもに揃えられている点が不気味さとして描写される。
さらに、この編ではの姉妹校から来た教育使節団が登場し、学校の運営理念が語られる。だが使節団の実態は“余白巡回”のための監査チームであり、彼らは廊下のホコリ量を点数化して採点する。ここで読者は、政治っぽさが“掃除っぽさ”に置換される感覚を味わう。
第4編:スローガン学習院編[編集]
安倍は、生徒たちにスローガンを暗記させるだけで成績が上がると主張し、を開講する[9]。授業は暗記カードではなく、廊下の掲示板が毎日違う“約束形”に書き換わる仕組みで運用される。
しかし、掲示が増えるほどホコリも増えるため、安倍は“政策を削ってでも清掃を残す”という矛盾を抱え込む。読者の笑いは、彼が堂々と矛盾を肯定し、最後に「矛盾は資源である」と締める決まり文句に集中する。
第5編:号令統計リミックス編(最終盤)[編集]
最終盤では、学内の出来事が“号令の回数”で自動集計される装置が導入される。装置の名前はで、朝礼の声が周波数解析され、までスコア化される[10]。安倍はこの装置を使い、問題を解決するのではなく“問題が起きたように見える時間”を短縮する。
この編の最大のエピソードとして、安倍が「不都合な事実は音量で丸める」という怪しい理屈を説明する場面が挙げられる。編集側はここを最後までセーフラインに置き、後日、担当編集のが「声量で丸めるのは漫画の特権です」と語ったとされる[11]。
登場人物[編集]
主人公のは、学内の“空気”を数値化して動かすことが得意である。表情の変化が少ない代わりに、彼の机は毎回度回転しており、その角度が心情のサインとして扱われる。
ヒロイン枠としては、掲示板の校正係であるが登場する。彼女は文字の誤字を見つけると即座に“訂正スローガン”を作るが、作り直しのコスト計算が毎回で固定される点が細部の笑いとして機能する。
また、対立側には慎重派のがいる。彼は会議に参加するたび、同意の量を“お茶の濃さ”で表現するため、最終的にお茶が真っ黒になるというギャグ展開へ発展したとされる[12]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、学校の儀式と行政がほぼ同一のシステムとして描かれる。たとえば“朝礼”はと呼ばれ、拍手が集計されると“可決”が成立するとされる。
重要用語としてがある。シールは会計の単位として扱われ、期限切れは「無駄ではなく運用変更」として紙飛行機に変換されるとされる。なお、シールの色分けには青=即応、赤=備蓄、白=先送りというルールがある。
さらにという用語も登場する。これは改築に必ず入れられる未使用区画であり、以上は“将来の予算の眠り”として否認される。読者には不思議な規則として受け取られる一方で、作中ではなぜか妙に真剣な顔で説明されるため、その温度差が笑いとなった。
書誌情報[編集]
『それいけ!!安倍晋三』はのコミックスレーベルより刊行された。全巻構成で、各巻には“検算用付箋”のミニ再録が付くとされる[13]。
連載はからまで続き、総話数は話と計算された。巻ごとの話数は一定ではなく、第1巻は話、第30巻は話とされ、編集部は「最終巻だけ短くした」と宣言したと報じられた[14]。
また、読者参加企画として「次の朝礼号令を作れ」が毎年月に実施された。採用された号令はコミックスの裏表紙に刻まれ、作者のは「号令は物語の体温」とコメントしたとされる[15]。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化が行われたとされ、が制作を担当したことになっている[16]。放送は深夜帯で、タイトルコールのたびにOP映像に“統計号令リミキサー”の数値が数フレームだけ表示されたと話題になった。
さらに、関連商品として“朝礼マイク型おしゃべり文具”が登場した。製品は声を録音して再生するのではなく、録音した声をワット相当の雰囲気に再合成する仕様だったとされる[17]。
メディアミックスとしては、内での連動企画ページが追加され、そこでは登場人物たちが「政策を宿題にする方法」を短文で解説した。読者は「漫画がそのまま授業プリントになった」と評価し、学校内での冗談が一段と加速したとされる。
反響・評価[編集]
本作は社会現象となったとされ、駅前の掲示板に「本日の号令係は誰か」と書かれる“即席パロディ”が増えた[18]。とくに、夏休み前のに売上が伸びた理由は「部活動の上下関係が朝礼ロジックと似ているため」と分析された。
批評では、政治風刺の強さよりも、細かい計算や単位の置換が評価された。文芸評論家のは「風刺が説明になりすぎない手触りがあり、読者は“聞かされる”のではなく“当てられる”」と評したとされる[19]。
一方で、最終盤の装置描写が“現実の統計”と似すぎているのではないかという指摘も出た。ただし、作者は「似ていても別物です」と語り、読者の笑いはむしろ増幅されたともいわれる[20]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精臣「『それいけ!!安倍晋三』連載十周年記念座談会」『週刊バイタル学園』第15巻第4号, 2021年, pp. 12-31。
- ^ 倉橋紗夜「号令が物語になる瞬間」『月蝕少年コミックス研究』Vol.3 No.2, 2019年, pp. 44-58。
- ^ 小田島文乃「細部の単位置換が生む笑い」『日本漫画批評ジャーナル』第8巻第1号, 2018年, pp. 3-19。
- ^ 山川健人「ギャグ政治学園の時間割構造」『メディア社会学叢書』第12巻第2号, 2020年, pp. 71-96。
- ^ 田端律子「“検算用付箋”の読者参加設計」『編集工学レビュー』Vol.5 No.1, 2017年, pp. 102-117。
- ^ Thompson, Martin. “Slogan Literacy in Classroom Comedy: A Quantitative Reading.” 『Journal of Pop Narrative Studies』Vol.14 No.3, 2016, pp. 201-229。
- ^ Hirano, Saki. “The Sound-Volume Metaphor in Japanese Web Gags.” 『International Review of Cartoon Semiotics』第2巻第7号, 2015年, pp. 55-73。
- ^ 安土玲「朝礼決議機構の擬似制度化」『架空制度史研究』第6巻第4号, 2022年, pp. 9-27。
- ^ 渡辺精臣「最終回の声量設計メモ」『原稿資料通信』第1巻第1号, 2021年, pp. 1-8。
- ^ 中沢光「スタジオ・ハイダウェイにおける深夜OP演出の実験」『アニメ表現技術年報』Vol.9, 2018年, pp. 88-105。
外部リンク
- 鏡月出版 公式 それいけ!!特設サイト
- 週刊バイタル学園 パロディ掲示板アーカイブ
- 統計号令ファンサイト
- 余白廊下保存委員会
- 月蝕少年コミックス 付箋図鑑