もな
| 分野 | 言語学・編集実務・法務文書慣行 |
|---|---|
| 用語の形 | 3文字略語(もな/monograph note) |
| 使用領域 | 校正・社内規程・締結前の注記 |
| 特徴 | 厳密に定義されないが運用ルールがある |
| 関連概念 | 注記、校正、前提条項 |
| 誤用の典型 | 口頭説明にだけ載せること |
もな(英: Mona)は、の言語現場で「小さな規約(monograph note)」を指すとされる、柔らかな略語体系である。音声学・編集実務・契約文書のあいだで独自に発展したとされ、現場では「もなのつく文は後で揉める」とも言われる[1]。
概要[編集]
もなは、表面上は「注記の一種」や「編集上の注意書き」として説明されることが多い。だが実際には、編集現場と契約実務のあいだで生まれた“曖昧さの管理技術”として語られてきたとされる。
語の由来は明確ではないとされるものの、の系統的な用例調査では、1990年代後半に校正支援ソフトのログに「monograph note」の頭文字として断片的に現れたことがあると報告されている[2]。一方で、社内文書では略語が独り歩きし「もな=小さな前提」として定着した経緯も指摘される。
語の成立[編集]
編集現場での“もな落ち”[編集]
もなという運用が広まった直接の起点は、の出版社で行われた「三段階校正・最後に注記だけ追加」方式への移行だったとされる。特に1997年から1998年にかけて、版面に注を差し込む場所を1ミリ単位で管理する“注記グリッド”が導入され、注の増減が原因で原稿の整合性が崩れる事故が多発したとされる[3]。
そこで編集者の間では、注記の追加を“例外扱い”にするための印として、短く書ける「もな」が採用された。のちに運用集が作られ、注記は「もな1行につき、前提の解像度は平均0.7段階下がる」といった、実務者向けの妙に具体的な経験則が追記された。なお、この「0.7」は実測というより、事故報告の分類器の内部スコアから逆算されたものであるとも言われる[4]。
法務文書への侵入と“もな条項”[編集]
編集の都合で生まれた略語が、いつ法務へ渡ったかについては複数の説がある。最もよく引用される説では、2002年にが主催した「注記と紛争の距離」研修で、参加者が“口頭説明にだけ存在する条件”を指す隠語として「もな」を使ったのが始まりとされる[5]。
その後、訴状・反論書の素案で「もな」の文言が混入し、裁判官が「前提条項が見えない」として差し戻す事例が増えたとされる。結果として、契約書の脚注に「もな」が現れる場合、必ず本文への参照を求める社内規程が各社で作られた。だが皮肉にも、その規程文がまた“新しいもな”を生む原因となり、運用が自己増殖したとも指摘されている[6]。
社会における影響[編集]
もなは、言葉の精度を上げるのではなく、精度の“揺れ方”を揃える方向で機能したとされる。編集者は「もなが付くと、後から都合の良い解釈が付く」ことを経験的に知っており、見出しの整合性や参照先の明示を徹底するようになった。
その影響は民間だけでなく、の印刷協同組合が導入した品質管理にも波及したとされる。印刷物の検査工程では、脚注の位置ズレを許容する条件として「もな許容率」を定義した例が報告されている。具体的には、当初の許容率が「3日間の在庫で最大4.2%まで」だったにもかかわらず、監査では「4.2%を下回れば良いわけではない」と却下されたという[7]。この“却下された理由”が、実は注記の読み手が変わるタイミング(在庫の世代交代)に関係していた、という点が当時の笑い話になった。
さらに、もなは採用面接の言葉としても現れたとされる。「もなを理解できるか」は、要するに“曖昧な文を曖昧なまま再利用できるか”の評価に使われた。研修資料では、受講者の理解度を「もな耐性指数(MONA-RT)」としてスコア化し、初回の平均が72点、最終の平均が91点であったと記載されている[8]。ただし資料の注には「91点とは、意味ではなく運用に慣れた状態である」と小さく追記されており、ここが反転のツボになったとされる。
批判と論争[編集]
批判としては、もなが“曖昧さを商品化する記号”である点が挙げられている。特に、法務側では「もな」の運用が進むほど、契約当事者が前提の所在を確認しなくなるのではないかという懸念が指摘された。
一方で擁護論としては、もなはそもそも完全な定義を目指さないからこそ、現場に合うとする見解も存在する。編集者の中には「もなを廃止すると、代替の曖昧語が増殖する」と主張する者がいたとされ、廃止プロジェクトの失敗例が回覧されたこともある[9]。
なお、論争の最中には「もなは英語圏では“monarch note”と誤認される」とする、やや物語的な主張が広まった。さらにの広報資料らしき文書では、もなが国民投票に関する“周知のための注記”として扱われた、とまで書かれていたが、当該文書は内部草案に過ぎないと後日訂正された。にもかかわらず、この誤情報がネット上で“元祖の伝承”として定着してしまったともいわれる[10]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田律子「小さな規約(monograph note)と校正事故の相関」『日本編集工学紀要』Vol.12第3号, pp.41-58.
- ^ Margaret A. Thornton「Ambiguity Management in Corporate Drafting: The MONA Pattern」『Journal of Applied Philology』Vol.58, No.2, pp.201-229.
- ^ 佐藤健太郎「注記の位置ズレが読解に与える“運用上の誤差”」『印刷品質研究』第9巻第1号, pp.77-96.
- ^ 田中みなと「もなのつく文章はなぜ揉めるのか—実務者調査」『文書法実務』Vol.5第4号, pp.12-39.
- ^ Heinrich P. Vogel「References, Footnotes, and Dispute Resolution」『Transactions of Administrative Writing』Vol.21, Issue 7, pp.310-344.
- ^ 日本商事仲裁協会編『注記と紛争の距離(研修報告書)』日本商事仲裁協会, 2002年.
- ^ 国立国語研究所「略語ログにおけるmonograph note断片の分布」『言語データ整理報告』第33号, pp.1-26.
- ^ Print Consortium of Osaka「脚注検査におけるもな許容率の監査事例」『大阪印刷監査年報』Vol.18, pp.55-63.
- ^ 杉本里緒「前提条項の“見えなさ”と差し戻し率」『裁判資料と言語』第2巻第6号, pp.99-118.
- ^ Berenice Hart「The monarch note legend and why it persists」『Folk Linguistics Review』Vol.3, No.1, pp.7-19.
外部リンク
- もな運用アーカイブ
- 校正事故データベース(MONA)
- 脚注グリッド研究会
- 文書法務・略語研究フォーラム
- 参照マッピング講座