よんじゅうななんち!
| タイトル | 『よんじゅうななんち!』 |
|---|---|
| ジャンル | ナンセンス・学園コメディ(超常数え上げ) |
| 作者 | 北条 しおみ(ほうじょう しおみ) |
| 出版社 | 株式会社ハイパー・グラフ |
| 掲載誌 | 『月刊マンガギア』 |
| レーベル | H.G.コミックス |
| 連載期間 | 号〜号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全136話 |
『よんじゅうななんち!』(よみ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『よんじゅうななんち!』は、数字の聞き間違いから“世界のルール”が書き換わっていくことを主題とするの漫画である[1]。
主人公・四重(しじゅう)と友人たちが、校内の放送設備に宿るとされる“数え上げ妖精”の指令に従いながら、理屈では説明しにくいトラブルを打開していく構成が特徴である[2]。連載開始直後から読者の間で「よんじゅうななんち!と言われると、なぜかレジが先に鳴る」という噂が拡散し、後年には作中用語が生活語として一時的に流通したとされる[3]。
一方で、作中の“正解”が回によって揺れ、読者が答えを確定できないまま話が進むため、賛否が分かれたことも指摘されている。なお、この不安定さは作者自身の「世界は数でできているのではなく、数え方でできている」趣旨の発言に由来するとされる[4]。
制作背景[編集]
作者のは、当初は学園恋愛を描く予定だったが、にある編集部の会議室で「受付番号の読み上げが一度だけ逆再生された」という出来事に遭遇し、翌月に“聞き違いが物理法則を更新する”ギミックへ企画を切り替えたと語られている[5]。
制作チームには、構図設計を担当した漫画編集者の、サウンド表現を担当した音響出身の、そして“数字のリズム”を担当する校正見習いのが関わったとされる。特にが「“よんじゅうななんち”には舌の震えが入る。震えを脚本に入れれば、読者の口内で勝手に続きが発生する」と主張したことで、全編にわたりオノマトペが計量的に散りばめられたという[6]。
なお、作中の肝である“校内放送妖精”の原案は、実在の自治体が運用していた避難誘導メロディの旋律分析から作られたとする説がある。ただし、避難誘導メロディの旋律そのものは確認されていないとされ、結果として「ありそうでないが、ありそうな」記述として残ったという指摘がある[7]。
あらすじ[編集]
※本項では大きくの編(編成)に区分して記述する。各編は“正しい数え方”が切り替わるタイミングで区切られている[8]。
四重は、の昇降口で拾った古い放送マイクから「よんじゅうななんち!」という謎の合図を受け取る。マイクは“音量”ではなく“言い切り”の強度に反応する仕様であり、四重が勢いよく叫ぶほど校則が増殖していく[9]。第1話で校則が増えすぎ、文化祭の準備が強制的に“学術発表形式”へ変換される展開は、当時の読者アンケートでも最も印象的だったと報告されている[10]。
次に四重たちは、校舎の地下にある「よんじゅう区画」を調査する。よんじゅう区画は“数字の桁”を保管する場所で、保管されている桁が一つ減ると、街の信号がずつ遅れると作中で説明された[11]。ここでは、四重が“なんち”の正体を推理するが、推理のたびに手元のメモが濡れて読めなくなるという演出が入る。なお、この回で四重がメモを読めなかった理由として「紙が濡れたのではなく、読めなかったという結果が濡れたことになった」といった屁理屈が語られる[12]。
“なんち交差点”は、作中世界で唯一、青信号が出る前に赤信号を通過できる構造になっている。四重たちは交通安全週間のポスターを作り直すため、交差点の管理端末を解析するが、端末の管理者が“読者の記憶”であることが示唆される[13]。この編の終盤では、四重が叫びを一度だけ弱めることで、信号機の挙動が元へ戻る。しかし、戻った“元”がそもそも元ではなかったことが明かされ、物語が次の編へ反転する。
最終局面では、四重たちが“世界の棚卸し”を行う。棚卸しの手順は奇妙で、まず校内の物品を秒以内に「存在」と「未存在」に分類し、その分類結果を放送マイクへ返す必要があるとされる[14]。ただし、未存在へ分類されたものは作中でも描かれないため、読者は“足りない絵”を補完する役割を担わされる。作品の最終話では、放送マイクが「よんじゅうななんち!」と言い換えるたびに、四重の名前が少しずつ別の読みになるオチが付けられ、以後の巻末コラムでは「あなたの読み方が、次の世界線を確定する」とした編集部コメントが添えられたとされる[15]。
登場人物[編集]
中心人物は四重(しじゅう)である。四重は真面目で正論型の性格として描かれるが、放送マイクから指示されるほど言葉が増幅し、逆に言葉が“現実”へ変換される速度が上がってしまう[16]。
四重の友人である早瀬(はやせ)は、感情ではなく手順で動くタイプで、校内の備品管理に詳しいと設定される。早瀬は作中でしばしば「なんちとは“難地”の別名」といったもっともらしい誤説明をするが、実はその誤説明が最終的に正解へ導く仕掛けとなっている[17]。
また、放送設備の妖精を擬人化した存在として、音量妖精の“ナン”が登場する。ナンは、声が届く範囲を“頭の中の距離”で測定するため、登場シーンではいつも会話がずれて聞こえるという演出があるとされる[18]。さらに、物語終盤で管理端末の顔として現れる(えんどう いちろう)は、棚卸しの監査員として紹介されるが、監査員であること自体が読者の行為によって成立する、と解釈される余地が残されている[19]。
用語・世界観[編集]
作中の核となる合図が「よんじゅうななんち!」である。作者は本作の公式ガイドブックで、これは“数の復唱”ではなく“数えの誓約”であると説明したとされる[20]。誓約が成立すると、校内の設備(放送マイク、掲示板、時間割端末など)が互いに干渉し、同じ出来事が別の手続き名で再発する現象が起きる。
「よんじゅう区画」は、桁が保管される場所である。ここでは数字が単位を持たず、代わりに“管理番号”だけが存在するため、読み取る側の口調が変わると数字の意味も変わるとされる[21]。
「なんち交差点」は、交通規則が“先に記憶を更新した方が勝つ”という特異性を持つ地点である。作中では信号の色が変わる瞬間に、読者のカレンダーが先へ進むような描写がされるが、これは物理的なタイムスリップではなく、読者の理解が先行して“過去が補正される”現象として処理されている[22]。このような世界観は、あえて説明過多にしない脚注設計としても知られる。初出時の注釈だけ妙に詳しく、以降は省略される編集の癖があるとファンブックで指摘されている[23]。
書誌情報[編集]
『よんじゅうななんち!』は号から号まで『月刊マンガギア』において連載された漫画である[24]。
単行本は全14巻で、H.G.コミックスレーベルから刊行された。累計発行部数はを突破したとされ、特に第6巻「回収編(よんじゅう区画)」の売上が伸びたと報告されている[25]。また各巻の巻末には“数え方の練習問題”が付属し、読者投稿による解答が翌号の特別掲載に反映された回があるとされる[26]。
装丁面では、表紙の数字が印刷工程の都合で微妙にズレることがあり、そのズレを理由に「ズレた数字が正しい」とするファン解釈が生まれたという。結果として、出版社は後年に「ズレは仕様である」とする補足書面を同梱したといわれるが、公式に確認されたわけではない[27]。
メディア展開[編集]
本作はされ、第1シーズンはに放送されたとされる[28]。アニメ版では合図「よんじゅうななんち!」が実際にSEとして使用され、放送局のスタジオでは“復唱禁止”が徹底されたという逸話がある。理由は、復唱するとスタッフの台本が勝手に差し替わることがあったためだと説明されているが、作り話だとする声も多い[29]。
さらに、劇場版として『よんじゅうななんち! 数の棚卸し—完全版—』が公開されたとされ、公開初週で観客動員がを記録したと報じられた[30]。一方、劇場パンフレットには「入場者が持ち帰った“数え方”は回収できない」とする趣旨の注意書きが添えられ、演出面で“自己参加型”を強めた作品になったとされる[31]。
メディアミックスとして、音声ドラマと連動した“放送マイク型ステッカー”が販売され、ステッカーを端末にかざすと朗読が再生される仕様だったとされる[32]。ただし再生内容はランダムで、同じセリフでも読者の理解速度に合わせて微妙に変化するという苦情が一部で出たと報告されている[33]。
反響・評価[編集]
連載開始直後から、SNS上で「よんじゅうななんち!」を言うと、なぜか“数え上げ”が始まる体験談が多数投稿されたことで社会現象となったとされる[34]。
評価面では、脚本の数字ギミックが高く評価された一方で、終盤の“補完させる余白”が難解だと指摘されることもあった[35]。特に第12巻の回収後、読者が「正解の読み方」を特定できない状態が続き、読者同士が論争したとされる[36]。
また、作品のヒットにより、文房具メーカーが“数字の復唱学習”をうたう学習机の販促を始め、の標準教材検討会で話題になったという報道もある。ただし、会議記録は確認されておらず、関連団体が否定したという証言がある[37]。このように、本作は正しさではなく“数え方”の多様性をめぐる議論を引き起こした作品として語られている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北条 しおみ『『よんじゅうななんち!』作者講義 1〜誓約のイントネーション』ハイパー・グラフ出版, 2018.
- ^ 佐々木 眞琴『月刊マンガギア編集部の数字設計論(内報抄録)』月刊マンガギア編集室, 2020.
- ^ 大友 静路『音量と発話の相互作用に関する架空音響分析』日本音響協会, 2017.
- ^ 高橋 ルイ『「よんじゅうななんち!」の口内速度モデル(未公刊メモ)」, 2016.
- ^ Smith, Jonathan. "Counting as Contract: A Study of Mnemonic Drift in Fictional Broadcasts." Vol.12 No.4, Journal of Narrative Acoustics, 2021. pp. 33-51.
- ^ 田中 梓『学園ギミックと読者参加の設計』講談社学術出版, 2019.
- ^ 遠藤 いちろう『棚卸しと未存在の描写—補完余白の倫理—』東北大学出版局, 2022.
- ^ López, Marta. "The Semiotics of Erroneous Numerals." International Review of Comic Worlds. Vol.9 No.2, 2020. pp. 101-129.
- ^ ハイパー・グラフ編集部『『よんじゅうななんち!』公式ガイドブック—全14巻完全解読—』ハイパー・グラフ出版, 2021.
- ^ Rossi, Paolo. "On the 42-Second Procedure in Schoolyard Mythologies." Studies in Impossible Time. 第3巻第1号, 2018. pp. 7-18.(題名が一部不自然)
外部リンク
- ハイパー・グラフ 公式作品ページ
- 月刊マンガギア アニメ特設サイト
- H.G.コミックス 読者投稿アーカイブ
- 数の棚卸し 推定ファンサイト(非公式)
- 放送マイク型ステッカー 仕様まとめ(非公式)