らぎぃ〜 Ragy_11743
| 分類 | ネット符丁/音響インタラクション表現 |
|---|---|
| 別名 | Ragy記法(非公式) |
| 初出とされる時期 | 2017年後半 |
| 関連分野 | 音声工学・UX研究・暗号的コミュニケーション |
| 主な利用形態 | 短文コピペ+音声模倣の合図 |
| 運用上の合意 | 「声の長さ」を共有することを目的とする |
(らぎぃ〜 らぎー いちいちななよんさん、Ragy_11743)は、音声ハック研究者のあいだで「微分誤差を遊ぶ合言葉」として流通した符丁である[1]。ネット上では、特定の“間(ま)”を再現するための擬似コード表現としても知られる[2]。
概要[編集]
は、端的に言えば「言葉が音声に変換される直前の瞬間」を合図する符丁である。特に、発話の“息継ぎの位置”や“語尾の減衰カーブ”を再現するための目印として解釈されることが多い。
成立経緯については、音声圧縮の教材コミュニティで、復元誤差を笑いに変える企画が先に走り、その後に符号化された口ぐせとして固定化した、と説明されることがある。なお、名称に含まれるは、単なる個人IDではなく「11743ミリ秒ぶんの減衰を想定する」という擬似仕様と結びつけられたとされる[3]。
当該符丁は、チャットで文字が送られた時点では意味が曖昧でありながら、音声で読み上げると特定のリズムを強制する性質があるとして扱われてきた。一方で、実際には音声出力の環境(マイク、OSのノイズ抑制、配信遅延)によって“らぎぃ〜”の聞こえが変わり、ユーザー側の解釈差が議論を呼んだとも指摘される。
概要[編集]
解釈の中心は「微分誤差の遊び」である。すなわち、元の波形からの差分が“どこで大きくなるか”を、発話者が自覚的に操作するための合図として機能すると説明された。
また、符丁は暗号的な雰囲気を帯びるよう設計された、とする説がある。そこではが“聴覚的ハッシュ”の導入部であり、後続のが“検算用の桁”として働く、とされる。ただし、この仕組みは研究論文というより、交流が盛んな掲示板での実験ログを根拠にして語られることが多い。
このため、学術コミュニティでは「定義が先に立ち、観測が後から付いてくるタイプの現象」として半ば黙認され、民間側では「意味が空でも成立するコミュニケーション」としてむしろ歓迎された。
歴史[編集]
生成の背景:音声圧縮教材から符丁へ[編集]
2017年後半、東京の周辺で行われた、圧縮復元の“ズレ”を可視化する講座がきっかけになったと語られる。そこで受講者は、復元波形の比較で差分が目に見える瞬間を探し回り、ついに「息継ぎ部分だけは誤差が暴れやすい」ことを学んだとされる[4]。
当初の合図は「/ragy/」という短い音素列であったが、視聴者の口が追いつかない問題が起きた。そこで講座の運営側は、文字列に余韻を含ませる必要があると判断し、語尾を伸ばす記法としてが提案された。記法は、伸ばし開始から減衰開始までを117ミリ秒、減衰を完了させるまでを43ミリ秒、合計で11743ミリ秒ぶん“らぎぃ〜らしさ”が再現される、という妙に具体的な目安に結びつけられた[5]。
もっとも、目安の根拠は公開されず、後年になって「マイク距離が30cmのときにのみ成立する近似だった」と一部が暴露された。ここから、符丁が“正しく読む”ほど当人の条件に依存し、結果として模倣がコミュニティの身分証のように働く土壌ができたとされる。
普及と変種:配信遅延が“意味”を作る[編集]
その後、配信者がを読み上げるとチャット欄で一斉に追試が起きる現象が報告され、SNS上で“間(ま)選手権”のような形に変質した。特に、遅延が平均で240ms前後に揃うと、読み上げの“らぎぃ〜”が同じタイミングで重なりやすい、とコミュニティが勝手に見積もったことが普及の加速要因になったとされる[6]。
一方で、をテキストとしてコピペするだけの人々も増え、意味が空洞化する。すると空洞化した側の投稿には、やけに細かい記述が添えられるようになった。例として「鼻腔共鳴はしない」「舌先は上顎に触れない」「声帯振動を第2倍音で止める」といった、音声工学の実験ノートを装った文が増殖したのである。
2019年頃には、この現象を扱う“ガイド”がの周辺サークルで作成され、読者が読むだけで再現できると主張された。ただし、のちにガイドが実際には個人の録音条件依存だったことが噂になり、コミュニティは「再現できた者だけが意味を持つ」方向へ傾いた、と整理されることがある。
事件:11743が“鍵”だと誤解された騒動[編集]
2020年、ある動画配信でが“個人情報の一部”として扱われ、視聴者が推測の連鎖を起こした。運営は直ちに「符丁であり、鍵ではない」と説明したが、説明が遅れた結果、視聴者の一部が11743を鍵番号として扱う“妄想暗号”が流行したとされる[7]。
この騒動で注目されたのは、の広報資料に似た文体が、ファンメイドの説明欄に混ざっていた点である。つまり符丁の周辺には、権威っぽい語彙を借りて説得力を得ようとする癖があり、そこに“らぎぃ〜”の曖昧さが相乗して、誤解が長引いたと分析された。
なお、最終的に「11743は単に語尾伸ばしのメモ番号だった」と回収されたが、回収文が“テンポ設計書”の体裁だったため、逆に納得しない層も残り、現在まで「11743派」と「雰囲気派」の対立が小さく続いていると報じられている。
批判と論争[編集]
批判としては、第一に、符丁が再現条件に依存しすぎる点が挙げられる。音声出力の環境差で聞こえが変わる以上、「正しい読みに権威を与えるのは危険」とする意見がある。また、なぜか“11743の桁”に意味を見出そうとする動きが繰り返され、注意喚起が出ても別の数字で同種の儀式が起きる、とも指摘されている。
第二に、学術的検証の欠如がある。符丁を研究したという体裁の資料が投稿されることはあったが、その多くは自己録音の比較表であり、外部の追試が十分に行われたとは言いにくいとされる。実際、あるまとめ記事では「当該符丁は周波数特性で分類できる」と主張しながら、肝心の中心周波数が「3.14kHz」とだけ書かれており、測定条件が記載されていなかったと後から発見されている[8]。
ただし擁護としては、これは“技術”というより“遊びのプロトコル”である、という見方も有力である。すなわち、音声工学の知見を持たない参加者でも、模倣を通じて違いに気づける点が価値だと説明される。とはいえ、遊びがいつの間にか優劣の指標として扱われると、コミュニティの関係がぎこちなくなるため、運営側は「正解の提示はしない」方針を採る場合がある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯ユウ『口ぐせの工学的再現:符丁と減衰の関係』共立通信社, 2018.
- ^ Margaret A. Thornton『Error Play in Speech Reconstruction: A Community-Driven Approach』Journal of Acoustic Interaction, Vol.12 No.3, pp.77-101, 2019.
- ^ 堀田和成『余韻タイムライン設計論:チャット×音声の同期』技術評論社, 2020.
- ^ 田中眞理子『“間”の社会学:らぎぃ〜現象の観察記録』音声社会研究会, 第4巻第2号, pp.55-68, 2021.
- ^ K. Morita, S. Watanabe『Delay-Locked Imitation Patterns in Live Streaming』Proceedings of the International Workshop on Human-Audio UX, pp.201-219, 2019.
- ^ 国立情報通信研究所『減衰曲線可視化教材:講座資料集』第11743号別冊, 2017.
- ^ 松原健太『符号としての口:文字列が音韻を誘導する仕組み』東京電機出版, 2022.
- ^ Lidia Fernández『Perceived Correctness Without Shared Ground Truth』International Review of Interactional Systems, Vol.8 No.1, pp.1-20, 2018.
- ^ 「Ragy_11743調査報告書(仮)」編集部編『匿名コミュニティの技術風紀』都市技術叢書, pp.13-44, 2020.
- ^ 日本音響学会編集委員会『音響研究のための測定条件チェックリスト(第3版)』日本音響学会出版, 2016.
外部リンク
- Ragy記法アーカイブ
- 減衰ノート同好会
- 間選手権(非公式)
- 音声同期ログ倉庫
- 符丁観測掲示板