『りゅうちしょ!』
| タイトル | りゅうちしょ! |
|---|---|
| ジャンル | 学園アクション、群像劇、都市ファンタジー |
| 作者 | 霧島章吾 |
| 出版社 | 蒼流館書店 |
| 掲載誌 | 月刊コミック・ハーモナイズ |
| レーベル | ハーモナイズ・コミックス |
| 連載期間 | 2007年5月号 - 2014年11月号 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全93話 |
『りゅうちしょ!』(りゅうちしょ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『りゅうちしょ!』は、北部の架空学区・龍地署台地を舞台に、地形の“起伏”を読み解く能力を持つ少年たちの戦いを描いたである。作中では、地図、災害対策、部活動、行政文書が奇妙に結びつき、読者の間では「青春ものなのに妙に役所臭い」と評された。
単行本は累計発行部数412万部を突破したとされ、の第12巻発売時には帯に「社会現象となった坂読みバトル漫画」と記された。なお、連載初期はタイトルの「ちしょ」を“地所”ではなく“地書”と誤読する読者が多く、編集部が逆にそれを利用して謎解き要素を強めたという逸話がある[要出典]。
制作背景[編集]
原作者のは、もともとの外郭団体に勤めていたという設定で知られ、災害図上訓練の補助資料として描いていた落書きが本作の原型になったとされる。とくにの台風被害後、避難経路の“傾斜”に注目する研修が増えたことが執筆の契機になったと語っている。
作画は初期こそ硬質な線であったが、以降は坂道の陰影を強調するため、1ページあたり平均7.8本のトーン処理が行われたという。編集者のは「登場人物より先に地形が喋る漫画にしよう」と提案したとされ、この方針が作品全体の奇妙な重厚感を形成した。
あらすじ[編集]
入学編[編集]
主人公・は、転校初日に校門前の“逆勾配”を踏破したことで、龍地署台地の地形異常を感知する能力を覚醒させる。彼はの地図部に入部し、先輩のらとともに、校内に散在する「封じられた等高線」の謎を追う。
この編では、部活勧誘の名目でが秘密裏に配布していた「斜面認証カード」が初登場する。カードの裏面には、なぜかの印影に似た模様があり、読者のあいだで「本当に役所監修なのではないか」と話題になった。
地下坂道編[編集]
龍地署台地の地下に眠る旧防空壕群が、実は“勾配を貯蔵する施設”であったことが判明する。りゅうは、壕内で遭遇した謎の測量士から、坂は単なる地形ではなく都市の記憶を圧縮した媒体であると教えられる。
この編の終盤、の再開発計画に似た巨大プロジェクト「第六層斜面整備事業」が暴走し、街全体が一晩で3.4度傾いたと描かれる。作中でも屈指の名場面であり、屋上の自販機が自力で転がり落ちた回は、単行本第8巻の売上を前巻比18.2%押し上げたとされる。
決戦・龍地署編[編集]
最終章では、龍地署台地の名の由来である旧庁舎跡において、地図部と“平坦化推進派”の対立が激化する。敵対組織の総帥・は、全国から坂を消し去るための「ゼロ勾配令」を発動し、都市の高低差がほぼ全て失われる危機が訪れる。
りゅうは、仲間たちが集めた1,284枚の地形スケッチを束ね、庁舎地下の螺旋階段を一気に駆け上がることで、失われた“地勢の声”を復元する。最終話の見開きでは、空から降る雨粒が全て等高線の形になるという、漫画史上でも珍しい表現が用いられた。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、地面の微細な傾きを触覚で読むことができる。無口だが、急な坂に入ると語彙が異様に増えるという設定があり、ファンの間では“勾配で喋る男”として親しまれている。
は地図部の部長で、紙地図に熱を当てると隠された避難経路が浮かび上がる特技を持つ。冷静沈着な一方で、雨の日だけは地形に恋文を書く癖がある。
は旧測量局出身の謎の協力者で、毎回違う年代の測量器具を持ち歩く。第14巻では式の水平儀を使って敵の心理を読む場面があり、読者から「道具の年代が雑にすごい」と評された。
は平面連盟の総帥で、すべてを平らにすることが平和だと信じている。彼の持つ折りたたみ定規は全長2.7メートルあり、作中では“最も実用的で最も狂気じみた武器”として扱われた。
用語・世界観[編集]
作品世界では、都市の高低差は単なる地形ではなく「記憶層」と呼ばれる可視化された情報資源として扱われる。記憶層は古い街ほど厚く、新しい造成地ほど薄いとされ、の下町エリアと再開発地区で“重み”が異なるという設定がある。
また、勾配の角度を測る専門職として「斜度査定官」が存在し、の外郭組織に所属しているという。査定官は毎年11月の「斜面保全週間」に全国の学校を巡回し、校庭の傾きが0.6度を超えると部活動の編成に影響が出るとされた。
劇中で頻出する「りゅうちしょ」は、単なる地名ではなく「龍が沈んだ地層の書庫」を意味する古語であると説明されるが、語源研究は現在も二派に分かれている。片方はの文献に由来するとし、もう片方は後期の測量現場の隠語が起源だと主張している。
書誌情報[編集]
単行本はより全18巻が刊行された。第1巻は10月15日、第18巻は2月27日に発売され、通常版のほか、地形図風カバーを採用した特装版が第7巻から第12巻まで存在した。
各巻末には「今日の傾斜豆知識」が収録され、ここで語られる数値の多くは実測値に見えるが、実際には作者の自宅階段で得られたデータであると後年のインタビューで明かされた。なお、第9巻限定版には縮尺1/500の龍地署台地立体模型が付属し、発売当日にで完売したとされる。
メディア展開[編集]
には化され、全24話で放送された。アニメ版では坂道の角度を視覚化するため、背景美術に独自の“傾斜ブラー”が導入され、視聴者の一部からは「酔うほどリアル」と好評を得た。
また、版『りゅうちしょ! THE SLOPE』がの小劇場で上演され、舞台上に実際の勾配を作るため、客席の前3列だけ床が2.1度傾けられた。さらに向けのゲーム版『りゅうちしょ! 斜面鑑定記』も発売予定と発表されたが、開発元のが勾配計算ミスにより延期を重ね、結局発売されたのは旧世代機向け移植版だけだった。
このほか、地方自治体とのタイアップとして「危険斜面啓発ポスター」に登場キャラクターが起用され、学校の防災訓練資料にまで波及したことから、メディアミックスの成功例としてしばしば引かれる。
反響・評価[編集]
本作は、少年漫画としては珍しく“地形の説得力”が評価された作品である。批評家のは、『月刊フィクション批評』7月号で「登場人物の成長曲線と街の勾配が完全に一致している」と論じた。
一方で、地理学の専門家からは「斜面の描写は妙に正確だが、地下で坂が貯蔵される理屈だけは説明不能である」との指摘がある。また、単行本第11巻の帯に記された「全国47都道府県で勾配率が上昇」という文句は、統計的には意味が曖昧であったため、発売後に小さな論争を呼んだ。
とはいえ、作品は若年層の地図離れに一定の歯止めをかけたとされ、時点で中学校の地理副読本に“参考作品”として掲載された地域もあった。もっとも、その副読本の該当ページには「本作の斜面理論は教育的配慮のため簡略化されています」と注記されていたという。
脚注[編集]
[1] 作品初出時の掲載情報は、編集部の年表に基づく。 [2] 累計発行部数は版元発表値とされるが、後年に増補版を含む可能性が指摘されている。 [3] 地形記憶層の概念は、単行本第5巻の作者コメント欄で初めて明文化された。 [4] アニメ版の“傾斜ブラー”は公式設定資料集で言及されている。 [5] 斜面査定官制度については、作中年表と現実の制度が混線しているとの指摘がある。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島章吾『りゅうちしょ! 作品構想ノート』蒼流館文庫, 2015年.
- ^ 白河みのり『月刊コミック・ハーモナイズ編集録』蒼流館書店, 2016年.
- ^ 森岡啓太「地形と青春の接点――『りゅうちしょ!』論」『月刊フィクション批評』Vol. 18, No. 7, pp. 44-51, 2013.
- ^ 田所雅人『都市勾配と記憶層の社会史』青燈社, 2014年.
- ^ A. Thornton, “Slope Narratives in Post-2000 Japanese Comics,” Journal of Imaginary Media Studies, Vol. 9, No. 2, pp. 113-129, 2018.
- ^ 佐伯冬馬「防災漫画における地形表現の受容」『日本メディア文化研究』第12巻第4号, pp. 201-219, 2019年.
- ^ K. Shibayama, “Cartographic Youth and Civic Anxiety,” East Asian Comic Review, Vol. 4, No. 1, pp. 7-22, 2012.
- ^ 加納直樹『斜面査定官の実務と神話』港北出版, 2011年.
- ^ 霧島章吾・監修『りゅうちしょ!設定資料集 1/500都市模型編』蒼流館書店, 2014年.
- ^ 佐藤七海「『りゅうちしょ!』における坂道の宗教的機能」『現代物語学報』第21巻第3号, pp. 88-96, 2021年.
外部リンク
- 蒼流館書店公式作品アーカイブ
- 月刊コミック・ハーモナイズ特設ページ
- 龍地署台地観光協会資料室
- ハーモナイズ・アニメーション作品庫
- 斜面文化研究センター