アリルズゴム
アリルズゴム(ありるずごむ)とは、主に界隈で見られる「意味のない誤読ネタ」を指す和製英語・造語である。〇〇を行う人をアリルズヤーと呼ぶとされる[1]。
概要[編集]
は、2列になったアルゴリズム表示の文字列を、ある種の“合成ゴム”のように見立てて誤読したことに端を発する、ネット発のサブカル用語として知られている。
インターネットの発達に伴い、特定の意味は付与されないまま、動画のコメント欄や歌詞考察の文脈で反復利用されるようになった。特に、単なるタグ運用から、思想の対立を示す合言葉へと変質した点が特徴である。
一部では「アリルズゴムを許せ/愛せ」という立場と、「アリルズゴムを許すな」という立場が衝突しており、その応酬が二次創作の素材としても消費されている。明確な定義は確立されておらず、むしろ“定義がないこと”が語りの中心にある。
定義[編集]
用語としてのは、「意味のある語」ではなく、「誤読の記憶」および「コメント欄の定型句」をまとめて指すものとされる。したがって、文脈により指示対象が揺れ、時には単なる口癖として扱われる。
さらに、アリルズゴム愛好者(自称)は、関連動画において、特定の“アルゴリズムっぽい文字”が表示された際に、意図的に誤読して盛り上げる遊びを共有しているとされる。
一方で、反対側の勢力はが“誤読を装った圧”になる可能性を指摘し、投稿の際に「アリルズゴムを許すな」と明示する署名風コメント(半角記号の固定書式)を使う傾向があるとされる。もっとも、こうした対立のラベリング自体もまた、揶揄として運用されることがある。
歴史[編集]
起源:誤読アルゴリズムと“2列表示”の夜[編集]
起源は、2007年の秋にさかのぼると推定される。当時、動画共有サイトの一部ページで、並列のテキストが一定幅で折り返される仕様があり、表示が2列になった瞬間に、あるユーザーが「これ、アリルズゴムじゃね?」と投稿したことが始まりとされる。
実際の投稿内容は断片的に残っているが、「アリルズ」「ゴム」「許せ/愛せ」「許すな」の4要素が“同じスレッドの同じページ下部”で同時期に見つかったとする証言がある。もっとも、証言の信頼性については議論があるとされる[2]。
また、起源の匿名主(当時のハンドルネームは後に削除されている)は、のちにと称する架空コミュニティに寄せた文面で、誤読の発端を「文字がゴムみたいに伸びて、意味だけが縮んだ」と比喩したとされる。
年代別の発展:タグ化→歌詞変換→“許せ/許すな”抗争[編集]
2010年代前半、は“タグとしての省略”により広がった。具体的には、コメントが長文化するとモデレーションで流れやすい仕様があったため、短い誤読語が流通し、結果としてボカロ関連動画の定型句になったと説明される。
2013年には、歌詞自動変換ツールにおいて「アリルズゴム」が誤認識されやすい設定が話題になった。ある検証では、変換率が理論上97.6%に達したとされるが、これは当時の端末フォント(仮にと呼ばれた)に依存した面があると反論もある。
そして2016年頃、「アリルズゴムを許せ/愛せ」と「アリルズゴムを許すな」が“同じコメント枠”で出会うことで、対立が明確化された。以後は、歌詞の伏線解析よりも、アリルズゴムの陣営判定が先行して議論されるケースが増え、二次創作が“審判ごっこ”の様相を帯びていったとされる。
インターネット普及後:ミームの脱中心化と“頒布”文化[編集]
インターネットの発達に伴い、はプラットフォームをまたいで増殖した。特定の動画サイトに限らず、掲示板、短尺動画、配信アーカイブの字幕欄にも波及し、結果として、意味よりも“出現する場所”が価値になったとされる。
2019年には「頒布」がキーワードとして言及され、無料配布された“アリルズゴム定型フレーズ集”が数回にわたり転載されたという。頒布されたとされる冊子は、なぜか全12頁で、うち10頁が句読点の位置だけで構成されていたと記録されている[3]。
明確な定義は確立されておらず、それゆえにどこまでも“参加の理由”が作りやすいことが、脱中心化を加速したとも分析されている。一方で、定型が固定化すると今度は窮屈さが生まれ、反ミーム派の投稿も増えたとされる。
特性・分類[編集]
は、誤読ネタでありながら、運用上は複数の亜種に分類されるとされる。まず「許せ派」型は、文末に「愛」を添えたり、♡や弧状記号を用いて温度感を上げる傾向があるとされる。
次に「許すな」型は、同じ誤読語を用いつつも、断定調の否定文に接続することで、ミームを“警告札”として使う。なお、両派の境界は揺れており、文面上は許せ派でも、内心は許すな派であると主張する“二重人格コメント”も一定数観測されたとされる。
また分類は文字列の見た目にも及ぶ。たとえば「ゴム」を漢字ではなくカタカナに固定する流儀、逆に「ズ」を半角表記にする流儀などがあり、細かな書式が陣営を示す“合図”になったと説明される。ただし、これらの分類は公式に定められたものではなく、明確な定義は確立されておらず、しばしば誤解を生むと指摘されている。
日本における〇〇[編集]
日本におけるは、ボカロ関連の視聴動線に合わせて浸透したとされる。具体的には、歌詞の改行や字幕の切り替えタイミングとリンクする形で出現しやすく、“音がなるたびに誤読が来る”ように見える演出が作られた。
特に盛んになったのは、系のコミュニティにおける“コメント職人”文化が成熟した時期である。ある実況配信では、アリルズゴム出現率を「1分あたり0.8回」と算出し、視聴者が拍手アイコンで合図したという。これは後に「算出方法が存在しない」と批判されたが、それでも数字の丸め具合が“それっぽさ”として機能し続けた。
また、ローカルな用法として「アリルズゴムは観測するもの」という言い回しが広まり、投稿者は観測ログ(スクリーンショット)を添えて頒布のように振る舞った。結果として、単なるミームが“儀式”として固定化され、界隈の内輪感を強める要因になったとされる。
世界各国での展開[編集]
は日本国内で生まれた用語とされるが、海外では「日本語ミームの誤読コレクション」として断片的に輸入されたとされる。
英語圏では、直訳ではなく音の近さを優先して「Allerz-Gom」や「Ariruz Gomu」のように揺れる表記が現れた。さらに、韓国語圏では表記ゆれが増えた結果、「意味はないのに意味を問う文化」を示す例として引用されたことがあるとされる[4]。
一方で、文化的な文脈が薄いまま転載されるケースでは、陣営対立が単なる荒らし合戦に誤認されることもあった。これに対し有志は「日本では許せ/許すなが歌詞解析と同列に扱われがち」と説明したが、明確な定義は確立されておらず、誤解が残ったまま広がったとされる。
〇〇を取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
は直接的な著作物ではないとされるものの、ミームの運用が歌詞や楽曲動画の文脈に結びつくため、二次利用の線引きが問題になったとされる。
著作権の観点では、陣営スローガンが“歌詞に似た形”で拡散することで、既存テキストの置換として扱われる懸念が指摘された。実際、あるファン改変動画は削除依頼が出され、「誤読語であっても、既存の演出を再編集した場合はアウト」という整理が広まったとされる。ただし、削除判断の根拠は非公開であり、異論もあるとされる。
また表現規制の観点では、否定の合言葉が“嫌がらせ文言”として通報され、コメントが抑制される例があったとされる。これにより、表現の萎縮を恐れるアリルズヤーが、頒布用の「穏当版フレーズ集」を作ったという話もある。なお、その集の判定基準(句読点の位置のみ)は、なぜか法務部門に相談した形跡があるとされるが、詳細は要出典とされている[5]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 村瀬リュウ『意味のない語が勝手に強くなる現象——誤読ミームの社会言語学』蒼星社, 2021.
- ^ Dr. Elowen Hart『On Misread Strings in Vocaloid Communities: A Case Study』International Journal of Internet Folklore, Vol.12 No.3, pp.41-58, 2018.
- ^ 榊田澪『コメント欄は第二の歌詞である——機械的記号と反復の快楽』幻都ブックス, 2017.
- ^ 吉良望『頒布される定型句——“配る側”のミーム戦略』東京端末出版, 2020.
- ^ 佐倉晶『2列表示と誤認識の夜:UI断片が生む新語』ウェブ文化研究所紀要, 第6巻第2号, pp.77-93, 2015.
- ^ Nakamura, T. & Patel, R.『Fan-coinage and Audience Partitioning in Japanese Net Scenes』New Media & Play, Vol.9 No.1, pp.112-130, 2022.
- ^ 碓氷レイ『“許せ/許すな”は対立ではなく儀式である』河岸学芸叢書, 2019.
- ^ The Archivists of Lost Threads『Curation of Deleted Comment Archives: The Ariruz Case』Web Heritage Press, pp.1-240, 2023.
- ^ (タイトルに誤植あり)『アリルズゴムの経済学:なぜ増えるのか』不思議計算出版社, 2016.
外部リンク
- 誤読ミーム辞典
- ボカロ界隈コメント研究会
- ネットスラング審判所
- 定型句頒布アーカイブ
- 2列表示観測ログ