エイプリルフール検定
| 名称 | エイプリルフール検定 |
|---|---|
| 略称 | AF検定 |
| 実施日 | 毎年4月1日 |
| 主催 | 日本ユーモア認証協会 |
| 開始年 | 1987年 |
| 区分 | 民間検定 |
| 試験方式 | 筆記・口頭・状況判断 |
| 合格基準 | 総合70%以上 |
| 公式会場 | 東京都千代田区・神田淡路町 ほか |
エイプリルフール検定(エイプリルフールけんてい、英: April Fool Qualification Test)は、に実施される発祥の技能認定制度である。冗談を見抜く力、虚構を見抜いた上でなお笑いに転化する能力、ならびに周囲を傷つけずに“嘘を楽しませる”配慮を評価するものとして知られている[1]。
概要[編集]
エイプリルフール検定は、が毎年前後に実施しているとされる検定制度である。受験者は、の真偽判定、話法の裏読み、SNS上での炎上回避、そして「笑いを取るために自爆しない」倫理を問われる。
制度上は・・の三段階に分かれているが、実際にはに相当する非公開の面接が存在するとされ、ここで「その嘘は誰を幸せにするのか」を答えられなければ不合格になるという。なお、合格者には紙の認定証のほか、薄く印字されたが配布されるが、裏面の注意書きが毎年変わることでも知られている[2]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は末期の・にあった小規模な出版倉庫の懇談会に求められる。1987年、印刷事故によって「特集・世界の珍事」が全面的に誤植された号がむしろ高く売れたことから、編集者のが「誤情報を見抜く訓練自体を商品化できる」と発案したとされる[3]。これがの前身であるの設立につながった。
当初は紙面上の小さな読者欄であったが、1989年にはの貸会議室で初の公開試験が行われ、受験者17名のうち合格者は3名であった。うち1名は「出題者が最後に笑っているか」を答えとして書いたことで満点を得たと伝えられる。
制度化[編集]
1994年、の外郭団体を名乗る形で作成された白書『冗談と公共性』により、検定は一時的に準公的な位置づけを得たとされる。もっとも、この白書は実在の公文書ではなく、のちにの閲覧者が「妙に整っている」と指摘したことから話題になった[4]。
2001年には試験科目が再編され、由来の文章を判定する「文脈保全」、テレビ番組の仕込み企画を見抜く「演出逆算」、家庭内の軽口を事故にしない「人間関係調整」が導入された。この頃から受験者層は学生よりも、・・関係者に広がったとされる。
普及と変質[編集]
2010年代に入ると、SNSの普及により受験者数が急増した。2016年時点で年間受験申込は約12,800件、実受験は約9,400件に達したとされ、その半数近くが「友人の結婚報告の真偽を見極めたい」という実務的動機によるものであった[5]。
一方で、検定の人気が高まりすぎた結果、4月1日当日に限って企業の社内告知が過剰に疑われる副作用が出たと指摘されている。これを受け、主催団体は「検定合格者であっても、すべての嘘を見抜けるわけではない」とする補足文を受験票に追記した。
試験内容[編集]
筆記試験[編集]
筆記試験は80分で行われ、設問は40問である。内容は、実在のニュース記事に紛れ込んだ作り話を判定する問題、語尾だけで冗談を成立させる文章の危険度を測る問題、さらに「知人が急に丁寧語になったときの真意」を選択させる問題などから成る。
採点は単純な正誤だけではなく、解答の“笑いの角度”も加点対象となる。たとえば、ある年度では「この発表は本日正午で撤回されました」という文に対し、真偽判定は誤答であっても、撤回時刻の秒数まで推測した受験者が高評価を受けたという。
口頭試問[編集]
口頭試問では、試験官が突発的に「もしが明日から島になるとしたら、あなたはどう報じるか」と尋ねる形式が採られる。受験者は内容の荒唐無稽さだけでなく、相手を否定せずに会話を収束させる技術を示す必要がある。
2013年の試験では、ある受験者が「まずの水位計を確認します」と返答し、場内の笑いを取ったうえで満点を獲得したとされる。ただし、この逸話は長年にわたり公式記録と非公式ブログで細部が異なっており、検定史研究者の間でも見解が割れている。
実技課題[編集]
上級では実技として、受験者自身が短い“安全な嘘”を作り、同席者を不快にさせずに着地させる課題が課される。ここではそのものより、オチの撤収の仕方が重視される。
特に有名なのは「3分以内に、相手が笑った時点で真実を開示すること」という規定で、これを破るとたとえ完成度が高くても減点される。審査員の一人は「面白い嘘より、後始末の上手い嘘が文化を残す」と述べたとされる。
社会的影響[編集]
エイプリルフール検定は、やに一定の影響を与えた。検定開始以後、4月1日のプレスリリースには「読後30秒で真相がわかること」が暗黙の規範として広まり、過度に悪質な虚偽表現は減少したとされる。また、学校教育では情報リテラシー教材の題材として採用され、の授業で「比喩と詐欺の違い」を議論させる事例も見られた[6]。
ただし、SNS上では「検定があるせいで、毎年の洒落がテスト化してしまった」との批判もある。とくに2018年には、ある大手食品会社の“空気を食べる新商品”の発表が過剰に洗練されていたため、逆に本当に開発中だと信じる人が続出し、主催団体が緊急で注意喚起を出した。
批判と論争[編集]
批判の中心は、検定が「嘘を楽しむ能力」を資格化することで、遊び心を序列化しているのではないかという点にある。一部の評論家は、笑いの感受性を点数に変える行為そのものがの行き過ぎであると論じた[7]。
また、試験問題の一部が過去の新聞記事を参照しているため、古い報道の文脈を知らない受験者ほど不利になるとの指摘もある。これに対し主催者側は「それもまた時代との対話である」と反論しているが、毎年の説明会でこの一文が最もウケるため、本当に対話しているのは聴衆のほうだとも言われる。
主な合格者[編集]
公式に名前が公表された合格者は少ないが、記録上は、、、などが多い。2012年には、の高等学校教諭が「生徒が作った嘘ニュースを授業で分解できる」として上級に合格し、地元紙で小さく紹介された[8]。
一方で、最年少合格者は当時9歳の児童とされるが、本人は「母が書いた答案を横で見ていた」と証言しており、真偽は定かでない。こうした曖昧さ自体が、検定の周辺文化を象徴していると解釈されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 西園寺雅彦『冗談資格の成立史』軽口出版、1998年、pp. 14-39.
- ^ 松浦百合子『嘘の後始末学』神田書房、2004年、pp. 71-88.
- ^ A. Thornton, "Testing Credulity in Modern Japan", Journal of Applied Humor Studies, Vol. 12, No. 3, 2011, pp. 201-229.
- ^ 藤原健一『情報社会とエイプリルフール』日本広報学会叢書、2015年、pp. 55-79.
- ^ M. R. Collins, "Certified Mischief: A Comparative Study", The London Review of Social Play, Vol. 7, No. 1, 2018, pp. 3-26.
- ^ 『冗談と公共性』文化庁外郭白書編集委員会、1994年、第2巻第1号、pp. 1-17.
- ^ 小林由紀子『ネット時代の冗談倫理』青灯社、2020年、pp. 102-131.
- ^ N. Ishikawa, "The Reception of False Announcements", East Asian Media Quarterly, Vol. 5, No. 4, 2009, pp. 88-110.
- ^ 山岸正『エイプリルフール検定公式問題集 2017』日本ユーモア認証協会、2017年、pp. 5-96.
- ^ P. S. Harada, "April Fool Qualification Test and the Public Sphere", Kyoto Studies in Communication, Vol. 9, No. 2, 2022, pp. 41-67.
外部リンク
- 日本ユーモア認証協会 公式案内
- エイプリルフール検定 受験者フォーラム
- 神田淡路町文化史資料室
- 冗談と公共性アーカイブ
- 検定落語研究センター