オチンチンオチンチン
| コンビ名 | オチンチンオチンチン |
|---|---|
| 画像 | 白い法被+緑のサテンリボン(劇場資料写真より) |
| キャプション | 「声の大きさは設計図で決まる」と書かれた看板を持つ(2001年舞台写真) |
| メンバー | ボケ担当:飯塚 オチ丸/ツッコミ担当:唐沢 チン次 |
| 結成年 | 1998年10月 |
| 事務所 | 東京ボケストリート事務所 |
| 活動時期 | 1998年 - 現在 |
| 芸種 | 漫才・コント・司会 |
| 出囃子 | 『三角ベータの行進』 |
| 公式サイト | オチンチン公式応援広場 |
オチンチンオチンチン(英: OCHINCHIN OCHINCHIN)は、[[港区]]の[[東京ボケストリート事務所]]所属のお笑いコンビである。[[1998年]]10月に結成され、[[M-1グランプリ]]1999年ファイナリストとして話題となった[1]。
概要[編集]
オチンチンオチンチンは、[[お笑い]]における音声表現(擬声語・間・反復)を、あたかも工学のように扱うことで知られるコンビである[1]。
コンビ名の由来は、1980年代末に[[東京消防庁]]の広報チームが制作した「避難誘導のための反復合図」音源を、当時の若手が“芸名の呪文”として誤って流用したことにあるとされる[2]。
なお、この反復合図がなぜ現在のネタ構造(反復→ズレ→制度説明)へ接続されたかについては、後述の「音響測定台本」事件が重要な鍵として挙げられている[3]。
メンバー[編集]
飯塚 オチ丸(いいづか おちまる)は、静かな口調で大仰な前置きを積み上げ、最後に同じフレーズを“意味が変わる速度”で反復することを得意とするボケ担当である[4]。
唐沢 チン次(からさわ ちんじ)は、反復の直後に必ず「計算してください」と促すツッコミを入れる。彼のツッコミは言葉の鋭さよりも、観客の手拍子を強制的に規格化する点に特徴があるとされる[5]。
2人は出会いの時点から役割が固定されており、飯塚が“台本の技術者”、唐沢が“現場の規格担当”として機能していたと回顧される[6]。
来歴/略歴/経歴[編集]
地方下積みと「音響測定台本」事件[編集]
1998年、飯塚と唐沢は同じ養成講座で、課題の“1分ネタ”を反復だけで構成する実験を提出した。採点者は内容ではなく「音量の安定性」を評価し、二人はその採点基準をネタへ転用する方向で改造を始めたとされる[7]。
2000年、二人は[[大阪市]]の小劇場で上演中、舞台のマイクが原因不明のピークを記録した。原因究明のため唐沢が裏方に聞いた「ピークが立つ瞬間の言葉」を、飯塚がそのままネタの“合図”に組み込み、以後の代表形式となったという[8]。この一件は「音響測定台本」と呼ばれ、のちにファンの間で“事故が発明の母”として語られた。
この事件以降、二人は毎回リハーサルで手拍子のテンポを小数点第2位までメモするようになったといい、当時の記録が現在でも一部残っていると報じられている[9]。
東京進出とテレビの採用ロジック[編集]
2002年、二人は[[東京]]のライブ会場にシフトした。きっかけは[[NHK]]の深夜枠で“反復表現が視聴維持率に与える影響”を検証する企画が動き出し、演者としてコンビが選定されたためとされる[10]。
テレビ側は、単なる下ネタではなく「反復が聴覚認知に与える設計」を評価して採用したとされ、結果として“下品さよりも工学っぽさ”が前面に出るようになった。ここで、コンビ名の語感が「安全な合図に聞こえる」ことが利点として整理されたという指摘がある[11]。
その後、冠番組のタイトルが「[[反復免許]]」に寄せられたのは、視聴者に“間の正しさ”を認識させる編集方針があったからだと説明されている[12]。
芸風[編集]
オチンチンオチンチンの漫才は、擬声語の連続(例:『オチンチンオチンチン』)を“統計の読み上げ”の形に見せかけ、次の瞬間に意味がズレていく点が特徴である[13]。
唐沢はツッコミで、毎回「はい、条件は3つ。①反復の速度、②観客の期待、③間の誤差です」と制度説明を行う。飯塚はそれに従い、説明をさらに滑らかにすることで成立させるため、即興に見えて実は脚本の分岐が緻密だとされる[14]。
なおネタの末尾では必ず“言い切らない”形で着地する。これにより、放送審査の閾値を避けつつ、観客に「最後の逃げ」があるように錯覚させる編集が、関係者の証言として残っている[15]。
エピソード[編集]
彼らがブレイクしたきっかけのひとつは、2003年のローカル特番で披露した『反復申請書(第12号)』である。ネタ中に登場する“申請書”の項目が異様に具体的で、観客が思わず笑ってしまったとされる[16]。
項目には「提出日:8月17日(大安)」「押印:左手親指、3.2秒」「反復回数:本番は17回+余白2回」「余白は笑いが出たら取り下げ可」といった“細かい数字”が並び、番組スタッフが実際にメモを取ったと報じられた[17]。
さらに、番組の放送尺に合わせるため、飯塚が台本を“声の長さ”で切り貼りしたという逸話がある。台本には「沈黙は1拍だけ伸ばすと勝つ」と鉛筆で書かれており、現在はファンが“最古の現場資料”として写真を流通させている[18]。
出囃子[編集]
出囃子は『三角ベータの行進』とされる。曲名は[[大学]]の研究室サークルが作った練習曲が起源と説明されているが、当初はゲームセンターの景品BGMとして流通していたという説もある[19]。
実際の使い方は、漫才冒頭で三角ベータ(ベータではなく“手拍子の角度”を指す)を観客に示すように、唐沢が視線だけで三拍子を指揮するのが定番である[20]。
この出囃子を採用した理由として、反復ネタとリズムが“同じ器官”で処理されるという、古い民間音響研究をもとにしたと記録されている[21]。
賞レース成績・受賞歴[編集]
オチンチンオチンチンは、[[M-1グランプリ]]1999年に[[ファイナリスト]]入りした。理由は「不快さを反復で制御している」点が評価されたとされる[22]。
翌2000年の[[キングオブコント]]では準優勝となり、審査員コメントで「説明が多いのにテンポが落ちないのが不思議」とされたという記録がある[23]。
また、2011年には“言葉のリズム部門”として創設された独自賞(主催:[[日本民間笑技協会]])で受賞しており、これが現在の司会業へ繋がったと整理されている[24]。
出演[編集]
テレビでは、バラエティ枠だけでなく[[情報番組]]の司会にも抜擢された。特に「反復免許(再編集版)」は、スタジオ観客の手拍子をリアルタイムで採点する仕様だったとされる[25]。
過去の代表出演としては、2004年の特番『笑いの認知回路(第2夜)』がある。そこでは二人が“音量ではなく期待を測る”という趣旨で、笑い声の分布図を即興で読むコントを行ったと報じられた[26]。
ラジオ番組では[[J-WAVE]]系統の「港区夜間反復研究所」を担当し、視聴者から送られた“好きな反復フレーズ”を職員が判定する体裁で進行した[27]。
作品[編集]
CDでは『オチンチンオチンチン 反復回路』(2005年)があり、ネタ音源の合間に“沈黙の秒数”が書き起こしで付属したとされる[28]。
DVDでは『反復免許:規格化された笑い』(2008年)と『三角ベータの行進』(2012年)が流通した。後者はライブ映像に加え、出囃子の指揮動作を解説する短尺特典が含まれていたという[29]。
また、電子媒体ではネット配信『誤差0.03秒の反復』が人気となり、再生後に“間のタイミング”が通知される仕様が話題になったとされる[30]。
単独ライブ[編集]
単独ライブは「反復免許シリーズ」として定例化しており、毎回会場の入場導線にも演出が仕込まれることで知られる[31]。
2016年の『反復免許 第3種講習』では、チケット半券の裏に“本番反復回数の自己採点欄(最大20)”が印字されていたという。自己採点の結果で笑いが変わるという説明は半分冗談であったが、実際に笑い声の統計が取られていたとされる[32]。
なお、地方公演の際は必ず“地元の安全合図”に似せた擬声語を1箇所だけ入れる習慣があり、これが地元の観客に刺さったとされている[33]。
書籍[編集]
書籍として『沈黙は1拍。反復の設計図』(2017年、[[扶桑社]])がある。内容は漫才論に見えるが、実際には台本分岐表の作り方や“観客の期待の揺れ”を数値化する独自手順が中心であるとされる[34]。
また、飯塚の個人名義で『音響測定台本の作法』(2019年、[[白夜書房]])が出版された。こちらは脚本資料の写真が多く、ファンが“本物の鉛筆の汚れ”を探すようになったと紹介されている[35]。
一方で、唐沢は監修として『反復免許Q&A(誤差編)』を出しており、誤差の許容範囲(例:手拍子の遅れが0.07秒以内なら合格)まで書かれていると伝えられる[36]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田雫『反復芸の社会心理:笑いの設計図』日本評論社, 2006年.
- ^ 唐沢チン次『ツッコミは規格だ(第1版)』扶桑社, 2010年.
- ^ 飯塚オチ丸『沈黙は1拍。反復の設計図』扶桑社, 2017年.
- ^ 佐藤朋樹「擬声語反復が聴覚期待に与える影響」『音声コメディ研究』Vol.12第3号, pp.41-59, 2004年.
- ^ Matsumura, Keita. "Repetition as Governance: A Study of Japanese Stage Timing" Journal of Humor Engineering Vol.8 No.2 pp.77-95, 2011.
- ^ 田中梨沙「放送審査と語感の調律:反復フレーズの編集技術」『メディア適正化年報』第5巻第1号, pp.110-132, 2013年.
- ^ 日本民間笑技協会『言葉のリズム部門 採点要領』第2版, 日本民間笑技協会出版局, 2011年.
- ^ 関口礼子「反復合図の誤読が芸名になるまで:仮説と資料」『舞台史ノート』Vol.3 pp.12-28, 2020年.
- ^ Klein, Ruth. "Safe Cues and Funny Outcomes" Proceedings of the International Conference on Comic Signals Vol.2 pp.201-219, 2009年.
- ^ 『東京ボケストリート事務所 年史』東京ボケストリート事務所編, 第1巻, 2022年(タイトル表記に一部誤りがある).
外部リンク
- オチンチン公式応援広場
- 反復免許アーカイブ
- 三角ベータ研究室
- 音響測定台本コレクション
- 港区夜間反復研究所(聴取ログ)