セミアリセミナシセミセミ
| 名称 | セミアリセミナシセミセミ |
|---|---|
| 界 | 動物界 |
| 門 | 音板節足門 |
| 綱 | 共鳴翅綱 |
| 目 | 蟻無翅目 |
| 科 | 蝉無蟻科 |
| 属 | Semiarinasis |
| 種 | S. semisemi |
| 学名 | Semiarinasis semisemi |
| 和名 | セミアリセミナシセミセミ |
| 英名 | Semi-ari Seminasi Semisemi |
| 保全状況 | 情報不足(局所的増減が激しいとされる) |
セミアリセミナシセミセミ(漢字表記: セミ蟻・蝉無蝉蝉、学名: ''Semiarinasis semisemi'')は、に分類されるの一種[1]。
概要[編集]
セミアリセミナシセミセミは、的な羽音を発する一方で、地表に営巣するとして分類されるである。名前の反復は、同種が「鳴く→這う→鳴く」を数秒単位で往復する観察様式に由来するとされている[2]。
本種は、長期のフィールド調査が行われるまで「単なる騒音」として片づけられやすかった。ところが、(現: )の夜間計測チームが、特定の周波数帯で規則的な“巣の呼吸”があることを示し、研究対象として定着した経緯が知られている[3]。なお、学名の由来については「セミの合図(semi)」「蟻の道(ari)」「無蝉の沈黙(seminasi)」を短縮したとする説があるが、解釈が複数あるとされる[4]。
分類[編集]
分類学的には、セミアリセミナシセミセミは音板を持つ節足系統に位置づけられ、発音機構が分類の主要指標となっているとされる。特に本種は、羽を持つのに“羽が鳴らない瞬間”が周期的に存在し、その沈黙が巣内個体の整列行動と同期するとされる点で独立した系統として扱われる[5]。
は、先行する形態学研究により「蟻のように行軍するが、蟻ではない」「セミのように鳴くが、セミの筋肉構造と一致しない」という二重の不一致からまとめられたとされる。研究史では、分類の混乱を正すために「鳴音の句読点(ピリオド音)」という指標が導入されたことも知られている[6]。
一方で、近縁の“誤同定種”として、夜間ライトの下でだけ偶然に鳴くとされる記録があり、調査方法により出現率が変動する可能性が指摘されている[7]。このため、記載時点から“音響証拠”と“巣構造証拠”の両方が必要とされる運用が続いている。
形態[編集]
形態は、薄い音板状の前胸部と、退化的と見なされるが実際には“瞬間的にだけ機能する”後翅を特徴とする。体長は平均で9.8〜12.4mmとされ、個体差が大きい。とくに成熟個体では、腹部の側面に微細な“反響溝”が14〜19本確認されると報告されている[8]。
頭部は小さく、触角の先端に粘着毛が密集するとされる。粘着毛は巣材(のように見える微粒子)へ付着し、鳴音時にだけ引き剙がれるため、録音では「鳴いたのに音が途切れる」現象が生じるという[9]。
体色は茶褐色を基本としつつ、個体群によって緑青色の斑が出ることがある。これは巣の材料に含まれる金属微粒子の反射によると考えられているが、どの地域でも一定しないため、環境要因の寄与が議論されている[10]。なお、外観だけで同種判別するのは難しいとされ、実務上は音響パターンが優先される。
分布[編集]
セミアリセミナシセミセミは、温帯から亜寒帯にかけての、乾いた土と柔らかい落葉層が混在する環境に生息するとされる。特にの内陸北部における河川敷段丘での観察が多く、周辺では“同じ鳴き方”が年単位で継続する事例が報告されている[11]。
分布調査では、巣らしき窪地の密度が指標となる。ある観測記録では、直径30mの試験区画で、巣窪地が平均27.3個(標準偏差 6.1)確認されたとされる[12]。この密度は降雨後に増減し、翌週には急に減る傾向があると報告されている。
一方で、都市部でも記録が皆無ではない。たとえばのにある旧水路の護岸で、夜間散歩の住民が「誰かがカセットを回しているみたい」と証言したことが起点になり、短期間の保護捕獲が行われた経緯がある[13]。ただし都市部での定着は限定的とされ、季節性が強いと考えられている。
生態(食性/繁殖/社会性)[編集]
食性は、腐植を“音で分解したように見える”微細粒子を摂食するタイプとして扱われる。観察では、個体が鳴音を発しながら地表の落ち葉層を短く撹拌し、その直後に口器で微粒子を集める行動が観察されている[14]。このため、実際には音が餌の発酵を促すのではないかと推定されるが、因果は確定していない。
繁殖は年一回〜年二回とされるが、地域差が大きい。ある事例では、発情期に相当する“鳴きの沈黙区間”が、夜間23時から23時12分までの平均12分間に集中したとされる[15]。産卵は土中の小室に行われ、孵化までの期間は27〜33日と記録されている。孵化率は、調査者が無線マイクを近づけたかどうかで変わるとも報告されており、擾乱耐性の評価が求められている[16]。
社会性は強い同調型で、巣内の個体は“鳴く個体”と“歩く個体”に役割分担されるとされる。巣の中心で役割交代が行われる周期は、平均で6.4分ごとと推定される。加えて、捕食者が近づくと全個体が一斉に無音状態へ移行し、音板の機構を切断するように見えることがある。この行動は「音の集団遮断」と呼ばれている[17]。
人間との関係[編集]
人間との関係では、まず本種の鳴音が農作業の騒音トラブルとして扱われた時期があったとされる。特にの果樹園で、収穫期に“セミの仲間の大量発生”として通報が相次ぎ、実際には本種の巣窪地が農地の境界に沿って点在していたことが後で判明したとされる[18]。
また、本種は音響計測技術の開発に間接的な影響を与えたと考えられている。前述のは、本種の無音区間が“周波数の抜け”として再現できる点に着目し、河川防災用のセンサー校正に流用したとされる[19]。この取り組みは、音の周期解析が得意な研究者にとって“都合の良い生体オシレーター”になったとも記されている。
ただし、保護と研究の線引きには批判もある。巣窪地を可視化するための微弱照明を増やすと、数日で消滅した例が報告されたため、過剰な観測が個体群に悪影響を与える可能性が指摘されている[20]。一方で、地域住民の一部は本種を“夜の工事現場を静かに整える存在”として語り継いでおり、観察文化が形成されたともされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『音響巣性動物の分類学(第2巻)』共鳴出版, 1967.
- ^ Matsuda K. and Thornton M. A.『Acoustic Punctuation in Cavity-Nesting Arthropods』Journal of Resonant Ecology, Vol. 14, No. 3, pp. 201-219, 1989.
- ^ 青山恭介『現地観察記録に基づくSemiarinasis属の記載』国土共鳴技術庁資料, 第5号, pp. 1-42, 2001.
- ^ Rémy, L.『Insect-like but Not Insect: A Comparative Anatomy of Sound-Plates』Proceedings of the International Ethoacoustics Society, Vol. 9, No. 1, pp. 55-73, 1996.
- ^ 小林里緒『都市部での一時的定着が示唆する個体群動態』日本音響生物学会誌, 第33巻第1号, pp. 11-28, 2014.
- ^ Chen, Y.-L.『Silence Intervals as Breeding Cues in Burrow Communities』Asian Journal of Field Bioacoustics, Vol. 7, No. 2, pp. 88-103, 2018.
- ^ 田中宗明『巣窪地密度の統計解析: 直径30m試験区画の再検討』環境計測年報, 第22巻第4号, pp. 301-330, 1999.
- ^ “半翅類の鳴音機構研究”編集委員会『実地調査マニュアル: 音で見分ける生物』呼称科学社, 2010.
- ^ Saito, H.『河川防災センサー校正における生体オシレーター利用』防災計測通信, Vol. 2, No. 1, pp. 9-24, 2006.
- ^ ブリュノ・マルタン『セミ蟻蝉蝉の幻想: ある誤認研究の軌跡』微粒子書房, 1974.
外部リンク
- 音響巣性図鑑(試作)
- 国土共鳴技術庁 研究アーカイブ
- 夜間観測コミュニティ「無音区間」
- 生物分類データベース(暫定)
- 荒川旧水路生物ログ