ヂニリヂ・ミキヂリリヂ
| 分類 | 言葉遊び系の音声呪物(文字列) |
|---|---|
| 主な伝播媒体 | 掲示板、学校の回覧プリント、深夜放送 |
| 特徴 | 特定の発音・タイピングで“気配”が強まるとされる |
ヂニリヂ・ミキヂリリヂ(ぢにりぢ・みきぢりりぢ)は、の都市伝説に関する怪奇譚の一種である[1]。
概要[編集]
とは、聞く側の身体感覚を“音に合わせてズラす”という噂がある都市伝説である[1]。特に「意味はないのに、言い終えるころに背後が増える」といった目撃談が多く、妖怪の類として扱われることもある。
噂の出どころは、古いオカルト雑誌の投稿欄とされるが、実在する人物だとも言われている一方、事実証明がなされていない。全国に広まったのは、深夜帯のマスメディアで「学校で流行った“変な合言葉”」として断片的に紹介されたことがきっかけとされる[2]。
歴史[編集]
起源(“正体”の手がかり)[編集]
起源はの古い寄宿舎で、舎監が点呼の代わりに“文字列を復唱させた”という言い伝えに求められている[3]。当時は、吃音のある生徒を配慮する目的だったとされるが、のちに「復唱中に床鳴りが同期した」という恐怖の記録が、噂として混ざり込んだとされる。
また、別の起源説として、にあった民間放送局「北関中波(きたかんちゅうは)」の技術員が、試験電波の検証用に作った“無意味な音”が元だとも言われている[4]。ただし、その人物名は複数の資料で表記ゆれがあり、出典の整合性に欠けると指摘されている。
流布の経緯(ネットと学校の噂)[編集]
1980年代末に、コピー機の印刷ずれを遊びとして扱う学級内ブームがあったとされ、その延長で「ヂニリヂ・ミキヂリリヂ」の“癖のある濁点”だけをわざとずらして書き写す文化が発生したと推定されている[5]。2003年ごろ、の匿名掲示板で「タイピングすると出没する」として一斉に書き込まれ、目撃談が連鎖した。
その後、2011年の“学校の怪談特集”番組により、マスメディア経由の再ブームが起きたとされる[6]。番組では、言葉の発音を「早口の子どもが寝言で言う」ように説明したが、視聴者からは「同じイントネーションでないと効果が薄い」という噂が返ってきた。なお、これが流布を加速した要因だとする見方がある。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
伝承では、は“出没するお化け”ではなく、むしろ「言葉が先に増殖して、後から気配が付いてくる」と言われている[7]。目撃された場所としては、図書室、用務員室前の廊下、そして下駄箱の裏側が特に多いという噂がある。
噂に見る正体としては、実在する人物だとも言われているが事実証明がなされていない「点呼係の元生徒・ミキヂリ」(仮名)が、発声をやめられないまま校内に残ったものではないかとする説がある[8]。ただし“ミキヂリ”という呼称は、地域によって「ミキジリ」「ミキヂリ」「ミキぢり」と揺れると報告されており、伝承の層が厚いとされる。
また、恐怖の典型パターンとして「三回目の“り”を言い切った瞬間、蛍光灯が一度だけ明滅し、次の瞬間に自分の影の輪郭が遅れて着地する」という目撃談がある[9]。この明滅は“停電”ではなく“音の遅延”と説明されることが多いとされ、理屈としては不気味であると恐れられた。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとして、濁点の位置を変えるだけで挙動が変わるという伝承がある。たとえば「ヂニリヂ・ミキヂリリヂ」から、最後の“ヂ”を“ヂ”ではなく“ジ”にすると、出没が“遅刻する影”型になると噂される[10]。逆に、最初の“ヂ”を強く読んだ場合は“机が先に鳴る”型になるとされ、学校で特に恐れられた。
地域差として、では末尾が「ヂニリヂ・ミキヂリリヂ(オ)」と付くと言われる[11]。沖縄方面では「ヂニリヂ・ミキヂリリヂ(よぉ)」と語尾が伸び、怪談の語り手が“聞き返し”を誘うように演じる傾向があるとされる。これらは全国に広まった時点で混ざり、カタログ化されたとも言われている。
さらに、極端な派生として「ヂニリヂ・ミキヂリリヂ・ヂニリヂ」という三重唱版が作られたとされる。2014年にのオカルトサークル「臨界民話研究会」が配布した“実験手順”のようなプリントでは、発音回数が「7回(ただし最初の1回は半分だけ)」と書かれていたという証言がある[12]。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法は、怖がらずに“正しい無視”をすることで成功するとされる。最も有名なのは「言葉を聞いたら、返事をせずに息を二秒止める」という方法である[13]。噂では、二秒の間に“音の増殖”が止まるため、気配が後追いできなくなると説明される。
次に多い対処として、「濁点を数える」ことで恐怖が解けるというものがある。たとえば「ヂニリヂ」の“ヂ”は2つなので、2つ数え終わるまで目を閉じないようにする、と言われている[14]。この手順がやけに細かい数字として語り継がれており、実践者の報告が増えた背景だと推測されている。
一方で、やってはいけないこととして「その場で書き写す」「タイピングで模倣する」が挙げられる。コピーして拡散する行為が、伝説そのものを育ててしまうと警告されるのである[15]。このため、学校では“回覧プリント化”が最も危険だとする噂が出回った。
社会的影響[編集]
社会的影響は、怪談そのものよりも“音への過剰反応”が学校文化に持ち込まれた点にあるとされる[16]。2012年ごろ、の複数校で「校内放送の間に、濁点が多い読み上げが混ざるようになった」と苦情が出たという[17]。もちろん公式には否定されているが、噂が先行した。
また、マスメディアがブームを作る一方で、視聴者が真似をする“実験化”も進んだと指摘されている。ネット上では「一度でも言ったら戻れない」という過激な恐怖表現が広がり、取り返しのつかないパニックを生むとされる[18]。その結果、PTAの会合で“音声系都市伝説の注意喚起”が議題化した地域もあったとされる。
さらに、地域の自治体が「怪談の文言を掲示板から削除できるか」と相談したという噂まであり、の関連部署が“直接の介入は困難”と回答した、と語られることがある[19]。ただし、その回答内容は裏取りが取れていないとされ、要出典タグがつきそうな話として扱われた。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化面では、児童向けの創作教材に“音声呪文の構造分析”として取り入れられた例があるとされる[20]。教材の一部では「ヂの位置」「濁点の間隔」「語尾の伸ばし方」が観察項目になっていたという。もっとも、それが実際に効果を持つかは別で、むしろ怪談の安全な“解剖”として消費されたと見る向きがある。
メディアでは、バラエティ番組の検証コーナーで「読み上げた人数」と「現象が報告された人数」の比率が示されたことがある[21]。その際、比率は「67.3%」のように小数点一桁まで細かく出されたとされるが、放送後に「分母の定義が曖昧」との批判が出たという。なお、別の回では「観測者の体温が36.8℃以上だと出没率が上がる」といった妖怪番組らしい説明も採用されたと噂される。
派生作品としては、ソーシャルゲームのログに“ヂニリヂ・ミキヂリリヂ”が隠し文字列として登場するケースや、アニメの最終話で“看板の文字が一文字だけずれる”演出がこの都市伝説のオマージュだとされるケースがある。とはいえ、制作者側の正式な言及は少ないとされる。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐藤夜明『濁点から始まる怪談史』青嶺社, 2008.
- ^ 田中鉦太『学校に残る音の都市伝説』草原出版, 2013.
- ^ 小林ミツヨ『掲示板で増殖する言葉』メディア・フォーラム, 2016.
- ^ Rina K. Watanabe, “Phoneme Delays in Japanese Urban Legends,” Journal of Folklore Technology, Vol.12 No.3, pp.45-63, 2014.
- ^ Hiroshi Maeda, “Shadow Synchronization and Rumor Diffusion,” Asian Studies of the Uncanny, Vol.7 No.1, pp.101-119, 2018.
- ^ 北関中波技術資料編集委員会『試験電波と無意味音の実験記録(復刻版)』北関中波出版, 1999.
- ^ 臨界民話研究会『“ヂニリヂ”検証プリント(回覧用)』臨界民話研究会, 2014.
- ^ 松本市教育委員会『寄宿舎点呼資料(抄録)』松本市教育委員会, 1976.
- ^ 総務省報道室『ネット上の迷惑情報と管理の実務』ぎんこう印刷, 2010.
- ^ “都市怪異の数値化:小数点は信じられるか”『放送倫理年報』第9巻第2号, pp.12-27, 2012.
外部リンク
- 怪談言語アーカイブ
- 学校怪談回覧板(資料庫)
- 音声呪物研究会サイト
- 噂の拡散地図(検証)
- 濁点カタログ