ニダ教
| 名称 | ニダ教 |
|---|---|
| 略称 | NDO |
| ロゴ/画像 | 青地に白い環状紋と三本線を組み合わせた標章 |
| 設立 | 1978年4月12日 |
| 本部/headquarters | スイス・ジュネーブ |
| 代表者/事務局長 | アレクサンドル・ヴァレーヌ |
| 加盟国数 | 43か国 |
| 職員数 | 約860人(2023年時点) |
| 予算 | 年額約2億4,700万スイス・フラン |
| ウェブサイト | www.ndo.int |
| 特記事項 | 正式な設置根拠はニダ教設置協定および1979年理事会決議第14号とされる |
ニダ教(にだきょう、英: Nida Doctrine Organization、略称: NDO)は、文化摩擦に伴う応答様式の標準化を目的として設立された国際機関である[1]。設立。本部はに置かれている。
概要[編集]
ニダ教は、で創設されたであり、各国の行政・教育・広報部門における「応答の礼法」を統一することを目的として設立されたとされる。設立当初は系の準機関に近い性格を持つと説明されていたが、後に独自のとを備える常設機関として整備された[1]。
同機関は、相手の主張を全面否定せず、まず短く受諾の姿勢を示した上で議論を進める「ニダ様式」を普及させたことで知られている。また、加盟国の公務員研修、災害時の住民アナウンス、外交文書の応答基準などを担うものとされ、内では的な扱いを受けることもあった。もっとも、実務の多くはやの地区事務所に分散しており、本部の役割は象徴的であるとの指摘がある。
歴史・沿革[編集]
前史[編集]
ニダ教の前身は、後半にの周辺で行われた「対話応答表現研究会」に求められる。これは、国際会議で相手の提案を穏当に受け止めつつ反対を表明するための言い回しを分類する、半ば言語学、半ば儀礼学の研究であった。研究会の議事録によれば、最初の原型は1968年の会合で、ある通訳者が「それは興味深いが、少しニダである」と発言したことに由来するとされる[2]。
この「ニダ」は、当時の参加者が用いた即席の相づちにすぎなかったが、外交文書の下書きや校内放送の文例集で急速に拡散した。なお、同語の起源については語圏の略語説、の民間語感説、の方言借用説が併存しており、いずれも決定的ではない。
創設と制度化[編集]
、で開かれた「第1回応答倫理と公共表現に関する国際会議」において、ニダ教の設立が宣言された。設立文書では、加盟国は「公的応答において相手を無用に退けないこと」を誓約し、これをにより国内制度へ反映させることが定められた[3]。
翌にはが常設化され、の第3回で現在の組織名が採択された。初期の本部はジュネーブ旧郵便局の3階に置かれ、職員数はわずか27人であったが、1980年代後半には系の共同事業や災害用定型文の配布事業により急拡大した。
拡張期[編集]
、ニダ教は「応答基本条約」を改訂し、加盟国に対して学校現場でのニダ式対話訓練の導入を推奨した。この改訂は諸国で高く評価された一方、の一部加盟国では過剰に婉曲であるとして批判された。また、同年に導入された「三段階返答モデル」は、受諾・留保・再受諾を一連の様式として示したもので、後の政府広報テンプレートの原型になったとされる。
には、の連絡事務所で保存されていた初期文書の一部が誤って湿度管理庫ごと移送され、約480点の草案が再製本された。この際に生じた版の混乱が、後年の「第一採録版」「第二採録版」論争の火種になった。
組織[編集]
組織構成[編集]
ニダ教は、、事務局、および専門委員会から構成される。総会は毎年1回開催され、加盟国の全権代表が参加する最高意思決定機関である。理事会は12か国で構成され、財政・加盟審査・儀礼規範の改定を担う[4]。
事務局は本部機能を担うほか、、、、、などに分かれている。なお、用語基準室は設置法上は教育局の付属部局であるが、実際には理事会の意向が強く、半ば独立した編集機関として運営されることが多い。
主要部局[編集]
広報局は各国政府の声明文テンプレートの監修を行っている。危機応答局は、地震、洪水、政情不安、空港閉鎖などに際して「まずニダ、次に説明」と呼ばれる標準手順を配布することで知られる。教育局は中等教育向けの副読本を作成し、年平均で約14万冊を加盟国へ送付している。
儀礼監察班は、年に数度、、、の加盟関連会議に派遣され、発言者の結び言葉が規範に沿っているかを記録する。監察記録の一部は公開されているが、しばしば赤字で「ニダ不足」と書き込まれており、内部では半ば冗談として扱われている。
活動[編集]
教育・研修事業[編集]
ニダ教の活動の中心は、公務員および学校教職員向けの研修である。年間約6,200回の講習が、、の加盟都市で開催され、受講者は冒頭で必ず「承知した上で、なお確認したい」と述べる訓練を受ける[5]。
特に有名なのは「窓口三分講座」で、住民が怒って来庁した際の応答を3分で整えるというものである。受講率が90%を超えた自治体では、苦情件数そのものよりも窓口滞在時間が平均11分短縮したとされる。ただし、調査の一部は自己申告に依存しており、要出典とする編集者もいる。
外交・調停[編集]
加盟国間の軽微な外交摩擦に対しては、ニダ教が「仮置き文案」を提示することがある。これは、対立する2文を並置し、どちらの国も面子を失わないように仕立てる文書技法であり、の地域調停で初めて大規模に用いられた。以後、やの一部省庁でも参考様式として採用された。
また、同機関は港湾、空港、鉄道などの案内放送の標準化にも関与したとされる。とりわけで導入された「遅延のお知らせですが、焦らずニダでお待ちください」という定型文は、2010年代にネット上で広く拡散し、ニダ教の知名度を決定的に高めた。
出版・標章[編集]
ニダ教は、、を毎年刊行している。年鑑は全968ページ前後で、紙質の厚さまで規格化されているという。標章は三本線が環状に結ばれた意匠で、これは「受諾」「保留」「再受諾」を象徴すると説明されている[6]。
一方で、2009年版の標章説明文に「三本線は朝食・昼食・夕食の均衡を表す」と書かれていたことがあり、これは広報局の内部校閲をすり抜けたまま5年間訂正されなかった。
財政[編集]
ニダ教の予算は、からの分担金、研修事業収入、出版物売上、および「儀礼改善助成」によって構成される。2023年度の総予算は約2億4,700万で、そのうち39%が人件費、28%が研修・出張費、17%が翻訳・編集費、残余が会議運営費に充てられた[7]。
分担金の算定方式は加盟国の人口、対話教育導入率、過去5年間の「ニダ達成指数」に応じて変動する。なお、とは例外的に上限が設けられているが、これは両国の文書文化がすでに高水準であるためと説明されている。2018年には予算委員会が「翻訳予備費として0.7%を確保すべき」とする決議を採択したものの、最終的には会議弁当費に流用されたとする内部文書がある。
加盟国[編集]
2024年時点で43か国が加盟している。加盟国はに多く、次いで、の順である。加盟資格は、国内法にニダ式応答規範を反映する意思があること、ならびに事務局研修を年1回以上受け入れることとされる[8]。
新規加盟の申請は年2回受け付けられ、の承認には3分の2以上の賛成が必要である。2016年にはの加盟申請が一度否決されたが、翌年の再提出で可決された。否決理由は「礼節のテンポが速すぎる」とされたが、公式には「技術的審査未了」とのみ記録されている。
歴代事務局長・幹部[編集]
歴代事務局長としては、創設期の、制度整備を進めた、地域拡張を主導した、現職のが知られている。とりわけ渡辺は、ニダ教の発言様式を「短く、やわらかく、しかし退かない」と定義したことで引用されることが多い[9]。
幹部職は加盟国の地理的均衡を重視して配分されるが、実際には、、出身者が多い。2011年には広報局長の座をめぐって2週間にわたり空席が続き、内部では「沈黙の理事会」と呼ばれた。なお、同期間に代行を務めた人物の名前は複数資料で食い違っている。
不祥事[編集]
最大の不祥事は、2014年に発覚した「定型文横流し事件」である。これは、ニダ教が開発した災害放送文例の一部が民間コールセンター事業者に転売されていたもので、少なくとも17社が関与したとされる。事務局は当初、外部委託先の「善意の再利用」であると説明したが、後に理事会で厳しく追及された[10]。
また、2020年には内部監査で、加盟国向けの翻訳見積もりに同一の誤植が219件含まれていたことが判明した。これにより用語基準室の室長が辞任したが、辞任会見で「ニダは誤っても前へ進む」と発言したため、逆に支持を集めたという。さらに、2022年には本部カフェテリアのメニューに「ニダ風カレー」が登場し、辛さ表示が5段階ではなく5礼節段階で表記されていたことから、来訪者の苦情が相次いだ。
脚注[編集]
[1] J. R. Ellison, *The Protocol of Nida: International Courtesy and Administrative Language*, Geneva Press, 1981, pp. 14-29.
[2] 菊池孝一『応答の礼法と国際会議』中央公論儀礼社, 1992年, pp. 61-66.
[3] *Geneva Conference on Responsive Ethics, Final Act*, Vol. 2, 1978, pp. 3-11.
[4] A. Valène, “Council Architecture in Post-Protocol Institutions,” *Journal of Transnational Governance*, Vol. 18, No. 4, 2005, pp. 201-219.
[5] 河野由紀『公務員研修における応答形式の比較研究』日本行政出版, 2015年, pp. 88-104.
[6] M. Duvall, “Semiotic Circles in Public標章 Design,” *Annals of Civic Symbolism*, Vol. 7, No. 2, 1999, pp. 45-52.
[7] Nida Doctrine Organization, *Annual Financial Report 2023*, Finance Division, 2024, pp. 7-18.
[8] “Membership Criteria of the Nida Doctrine Organization,” *Official Bulletin of the NDO*, 第31巻第2号, 2024年, pp. 1-9.
[9] 渡辺 恒一郎『短く、やわらかく、しかし退かない』外務儀礼研究所, 2008年, pp. 3-27.
[10] H. Zayed, “The Leakage of Formulaic Statements and Its Administrative Consequences,” *Review of International Procedural Ethics*, Vol. 12, No. 1, 2016, pp. 73-91.
関連項目[編集]
脚注
- ^ J. R. Ellison『The Protocol of Nida: International Courtesy and Administrative Language』Geneva Press, 1981.
- ^ 菊池孝一『応答の礼法と国際会議』中央公論儀礼社, 1992年.
- ^ Geneva Conference on Responsive Ethics, Final Act, Vol. 2, 1978.
- ^ A. Valène “Council Architecture in Post-Protocol Institutions” Journal of Transnational Governance, Vol. 18, No. 4, 2005.
- ^ 河野由紀『公務員研修における応答形式の比較研究』日本行政出版, 2015年.
- ^ M. Duvall “Semiotic Circles in Public標章 Design” Annals of Civic Symbolism, Vol. 7, No. 2, 1999.
- ^ Nida Doctrine Organization Annual Financial Report 2023, Finance Division, 2024.
- ^ Official Bulletin of the NDO, 第31巻第2号, 2024年.
- ^ 渡辺 恒一郎『短く、やわらかく、しかし退かない』外務儀礼研究所, 2008年.
- ^ H. Zayed “The Leakage of Formulaic Statements and Its Administrative Consequences” Review of International Procedural Ethics, Vol. 12, No. 1, 2016.
外部リンク
- NDO公式年鑑アーカイブ
- ジュネーブ儀礼文書館
- 応答倫理研究ネットワーク
- 国際定型文観測所
- 加盟国広報テンプレート・ポータル