『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』
| タイトル | ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲 |
|---|---|
| ジャンル | SF、ギャグ、メカアクション |
| 作者 | 三枝 朔太郎 |
| 出版社 | 白鳳社 |
| 掲載誌 | 月刊ミスティック・アーク |
| レーベル | ミスティック・アークコミックス |
| 連載期間 | 1989年4月号 - 1994年11月号 |
| 巻数 | 全9巻 |
| 話数 | 全57話 |
『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』(ねおあーむすとろんぐさいくろんじぇっとあーむすとろんぐほう)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』は、からにかけてのに連載されたの代表作である。巨大兵器の設計思想をめぐる設定と、毎話のように無意味なまでに精密な整備描写が話題となり、後年のにおける過剰ディテール表現の源流の一つとされている[2]。
作品名に含まれる「ネオ」「サイクロン」「ジェット」といった要素は、いずれも劇中の兵器仕様を示す正式な分類名であり、読者の間では略称のとして知られている。なお、連載初期は単なる一発ネタ的な名称であったが、で兵器の規格化が物語の中核に据えられて以降、設定資料の厚さが異常に増したと指摘されている。
制作背景[編集]
作者のは、もともとの機械設計事務所に勤めていた経歴を持ち、に退職後、独学で漫画制作に転じた人物である。白鳳社編集部が持ち込んだ「少年向けの巨大機械もの」という要望に対し、三枝が提出した企画書の表紙に、すでに「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲」とだけ書かれていたことが、企画成立の決め手になったと伝えられている[3]。
当時の編集長だったは、のちに「タイトルを変えない条件で連載を認めた」と回想しているが、これは半ば編集部の伝説として語られる逸話でもある。実際には、末の社内プレゼンで試作ネームが3本提出され、そのうち最も読者の理解を拒む案として本作が採用されたとされる。
あらすじ[編集]
起動編[編集]
では、工業都市に住む少年が、祖父の遺した設計図から謎の兵器「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲」を発見する。砲身は通常の金属ではなく、を主材とする可変式冷却筒で構成され、組み上げにはのレンチが必要であるとされる。
第1話の時点で既に完成していたように見えるが、実際には毎回少しずつ部品が増えていく構造であり、読者アンケートでは「どこが本体なのか分からない」という意見が多かった。もっとも、作中ではその曖昧さこそが砲の強さの源泉であると説明される。
蒸気海戦編[編集]
では、に酷似した海域を舞台に、帝国艦隊が砲の試射を奪取しようとする。ここで初めて「ジェット」機構が作動し、砲身後部から相当の蒸気噴流が放たれるが、実際には推進力よりも周囲の帽子を飛ばす効果の方が大きい。
この編では、敵将が「兵器は火力ではなく命名権で勝敗が決まる」と語る場面が名高い。該当回は単行本収録時に3ページ増補され、砲のネジ規格についての注釈だけで2ページを費やしたことから、後年の読者には「整備マニュアル漫画」と誤解されることもあった。
砲身解放編[編集]
では、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が真の姿を現し、外装の二重回転機構が開放される。ここで明かされるのは、砲の威力の正体がエネルギー兵器ではなく、都市伝説級の気圧差を利用したにあるという設定である。
最終盤、は砲の照準を敵ではなく自分の影に向けることで暴走を止めるが、この演出は編集部の都合で急遽追加されたもので、後に作者本人が「第3案の没ネームを救済しただけ」と述べている。結果として、終盤3話はファンの間で『影撃ち三部作』と呼ばれるようになった。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、年齢は。機械修理の腕は天才的である一方、砲の正式名称を最後まで正確に言えなかったため、作中ではほぼ毎回友人に遮られる。
はの首席生徒で、砲の設計理論を理解できる唯一の人物として描かれる。彼女は第7巻で「この兵器は戦争のためではなく、都市の騒音を整える装置である」と発言し、作品のテーマを一段階だけ格調高くした。
はの技師長で、敵役でありながら毎回非常に丁寧な整備を行うことで人気を博した。なお、彼の乗る機関車型指令車は全長とされるが、作画上はコマごとに長さが違うため、読者の間で「最も伸縮する乗り物」として知られている。
用語・世界観[編集]
作中世界では、砲や機械の性能がではなくによって認定されるとされている。これは、ある街で「一度でも住民が見上げた兵器は正式装備として登録される」という奇妙な制度に基づくもので、で主人公たちが市役所の窓口で書類を揃える場面が異様に長い。
また、「サイクロン」は回転圧縮機構、「ジェット」は噴射補助装置、「アームストロング」は初期試作の設計者であるに由来すると説明される。もっとも、同名の人物が作中に3人おり、誰が本当の設計者なのかは最後まで曖昧なままである。
という兵器制限条約も登場するが、これは実在の国際条約を思わせる名称でありながら、内容は「半径2キロ以内での砲身磨き禁止」という極めて局所的な規定しか持たない。このため作中では、外交官よりも研磨職人の方が重要人物として扱われている。
書誌情報[編集]
単行本はより全9巻で刊行された。第1巻はに発売され、初版部数はであったが、砲の名称だけを目的に購入する読者が続出し、2か月で重版がかかったとされる[4]。
はに全5巻で再編集され、作者による新規描き下ろしとして、砲身内部のネジ山断面図が18ページ追加された。なお、のみ装丁が異常に重く、書店員から「辞書より凶器に近い」と評されたという逸話が残る。
メディア展開[編集]
には製作によるテレビアニメ化が行われ、深夜帯ながら平均視聴率を記録した。アニメ版では砲の名称が毎回異なる字幕で表示される演出が加えられ、放送後には録画機器の予約ミスが続出したとされる。
また、にはで実写特別映像『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲 -THE MOVIE-』が先行上映された。制作費の大半が砲のミニチュア模型に充てられたため、出演者の衣装はほぼのままであったが、これが逆に高い評価を受けた。
さらに、、、砲の整備説明書を模したなど、メディアミックス展開は多岐にわたる。特にの舞台版では、砲を象徴する小道具が毎公演少しずつ長くなり、千秋楽では舞台袖に収まらなくなったことが報告されている。
反響・評価[編集]
本作は連載当初、タイトルの長さばかりが注目されたが、次第にその異様なまでの設定密度が評価され、を突破したと発表された。読者層は中高生だけでなく、やの愛好家にも広がり、大学のゼミで取り上げられた例もある。
一方で、名称の反復が過剰であるとして一部読者から批判もあった。特に収録の「砲名再帰回」では、登場人物の台詞の半分が作品名の朗読に費やされるため、編集部に対し「可読性の改善を求める投書」が届いたという。ただし、作者はこれを「音読すると最も映える漫画」として受け止めたとされる。
今日では、インターネット上で長大な名称の代名詞として引用されることが多く、の創作文化における“長い語感の快楽”を象徴する作品として再評価されている。
脚注[編集]
[1] 実在の掲載誌・出版社とは無関係の架空設定である。 [2] 連載期の編集資料『月刊ミスティック・アーク』1989年6月号別冊付録による。 [3] 鷺沢恒一『夜の編集室で起きたこと』白鳳社、2002年、pp. 41-44。 [4] 白鳳社販売局『1990年度コミックス販売統計報告』内部資料、1991年、p. 17。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 鷺沢 恒一『夜の編集室で起きたこと』白鳳社, 2002年.
- ^ 三枝 朔太郎『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲 設定資料集』白鳳社, 1995年.
- ^ 黒川 透『巨大兵器漫画論: 1980年代後半の機械表現』東都書房, 2010年.
- ^ Margaret L. Henson, “Compressed Steam and Narrative Excess in Popular Manga,” Journal of Imaginary Media Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 88-117, 2014.
- ^ 高瀬 仁『月刊ミスティック・アークの研究』港湾出版, 2011年.
- ^ A. J. Whitfield, “Naming Conventions in Post-Industrial Fiction,” The Review of Fictional Engineering, Vol. 7, No. 1, pp. 5-29, 2008.
- ^ 白鳳社販売局『1990年度コミックス販売統計報告』内部資料, 1991年.
- ^ 霧島 由紀『アニメ化されなかった実写化の系譜』新潮工学社, 2016年.
- ^ 中村 亮介『作品名が長すぎる問題』幻想文化研究所, 2019年.
- ^ Pierre Dufour, “Les armes impossibles et les lecteurs japonais,” Revue des Arts Imaginaires, Vol. 4, No. 2, pp. 201-219, 2012.
- ^ 『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲 完全版第4巻』白鳳社, 2011年.
- ^ 渡辺 精一郎『砲身解放の美学』帝都学術出版, 1998年.
外部リンク
- 白鳳社デジタルアーカイブ
- 月刊ミスティック・アーク公式年表
- 東洋映像作品資料室
- 架空漫画研究会アーカイブ
- ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ファン倶楽部