ノイカツ!〜Noise Music Activity〜
| タイトル | ノイカツ!〜Noise Music Activity〜 |
|---|---|
| ジャンル | 学園、音楽、青春、実験的コメディ |
| 作者 | 如月ハル |
| 出版社 | 潮鳴社 |
| 掲載誌 | 月刊アンプリファイ |
| レーベル | アクア・コミックス |
| 連載期間 | 2016年4月号 - 2021年11月号 |
| 巻数 | 全12巻 |
| 話数 | 全64話 |
『ノイカツ!〜Noise Music Activity〜』(のいかつ 〜ノイズ・ミュージック・アクティビティ〜)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ノイカツ!〜Noise Music Activity〜』は、の私立・を舞台に、ノイズ音楽を部活動として成立させようとする少年少女たちを描いた漫画作品である。一般には青春群像劇に分類されるが、作中ではやを競技化する独自設定が採用されており、連載初期から「音楽漫画なのに説明が理科実験」と評された[2]。
作品の成立には、作者のが在学していたとされる架空の芸術高校での「防音室不足事件」が影響したとされる。なお、編集部内では当初『爆音倶楽部』の題で企画されていたが、担当編集のが「部活漫画としては語感が強すぎる」として現行題に改題した、という逸話が残る[3]。
制作背景[編集]
作者の如月は、もともとのライブハウス文化と、の即興演奏シーンを同時に取材していたとされ、そこで「演奏の上手さより、どれだけ周囲を巻き込むかが重要」という着想を得たとされる。これが本作における「活動」と「騒音」の合成語としての『ノイカツ』の発想につながった。
連載開始前には、潮鳴社の若手編集者向け企画会議で、実際にの廃校を借りて一日だけ「無音でノイズを考える会」が実施されたという。参加者は27名で、最終的に8名が耳栓を外せず帰宅したとされるが、記録の一部は編集部の引っ越しで紛失したため、真偽は定かでない[4]。
作画面では、擬音を文字としてではなく図形として配置する手法が特徴である。第3巻以降、ノイズの強度を表すためにベタ塗り率がページごとに可変化され、印刷所からは「黒インク消費量が通常誌の1.8倍に達した」と報告された。この仕様はのちに「紙上音響効果」と呼ばれ、同社内の他作品にも影響を与えた。
あらすじ[編集]
結成編[編集]
に転入してきたは、校内放送の過剰な整備音に魅了され、独自にノイズ研究会を立ち上げようとする。しかし、現実には部員数不足と校則第18条「拡声器は原則として文化祭準備以外で使用してはならない」に阻まれ、彼女は廃棄された音響機材置き場で謎の青年と出会う。ユウは「音を壊すことでしか見えない景色がある」と語り、ノイカツの原型となる即席演奏を披露する。
この編では、部の設立申請書に必要な署名が「保護者・教員・近隣住民」まで含まれていたため、ノエルが商店街を5日間歩き回る場面が名物となった。最終的に署名は42筆集まり、うち3筆は猫の肉球判とされている。
地区予選編[編集]
ノイカツ研究会は、が主催する地区予選に参加することになる。ここで彼らは、スピーカー2基と空き缶13個だけで演奏時間7分を成立させる「最小編成ノイズ」を編み出し、一躍注目を浴びた。
一方で、対戦相手のは、金属板を天井から吊るすことで反響を増幅させる戦術を用い、ノイカツ側を圧倒する。だが審査員のが「技術より、教室の空気が変わったか」を重視した結果、ノイカツが僅差で勝利した。この採点基準は以後、連盟内でしばらく問題になった。
文化祭騒音編[編集]
中盤の山場である文化祭騒音編では、鳴瀬学園の講堂を半壊させるほどの即興セッションが描かれる。ここで黒瀬ユウは、家庭用ミキサーと壊れたファンヒーターを接続し、温風の断続音を「冬のジャズ」として提示するが、翌日までに教員会議で全面禁止となる。
また、のが「音を抑えることも表現である」として無音パフォーマンスを開始し、観客が1,200人いたにもかかわらず拍手が最も大きかった場面は、本作屈指の名シーンとして知られている。なお、講堂の修繕費は文化祭収益の3年分を超えたとされる[5]。
登場人物[編集]
は、本作の主人公であり、音の大小ではなく「音が人を動かす瞬間」に執着する少女である。耳の良さは異常な水準にあり、冷蔵庫の起動音でメーカーを当てる描写がある。
は、寡黙な転校生で、元は町工場の旋盤音に育てられたという設定を持つ。ノイズ演奏では破壊衝動が前面に出るが、実際には機材整備に最も詳しく、作中で最も静かな人物でもある。
は生徒会長であり、秩序を重んじる一方、実は幼少期に祖父の蓄音機修理を手伝っていた経験から音響に理解がある。彼女がノイカツ研究会を敵視していたのは、単に予算会議で毎回負けるからである。
は連盟審査員で、毎回評価軸が微妙に変わるため作中では「流動的公平」と揶揄される。彼女の採点ノートには、演奏技術よりも「音圧で眼鏡が曇った回数」が細かく記録されている。
用語・世界観[編集]
作中では、一般的な音楽用語に独自の再定義が加えられている。たとえばとは「Noise Music Activity」の略であると同時に、放課後の活動全般を指す学園スラングでもある。劇中で使用されるは、スピーカーの位置関係を三角測量で決める暗号的技法として説明される。
また、は単なる休符ではなく、聴衆の期待を増幅させるための「積極的沈黙」として扱われる。第9巻で初登場するは、学園地下に存在する旧防災倉庫を改造したもので、壁面に貼られた吸音材が季節ごとに交換されるという妙に細かい運用が描かれた。
世界観上、は破壊ではなく「環境との交渉」と定義されており、都市騒音、工事音、電車のブレーキ音までもが作曲素材となる。この思想は、後半で学園外の市民イベントへ拡張され、商店街のシャッター音を使った合同演奏会へ発展する。
書誌情報[編集]
潮鳴社のレーベルより刊行された。単行本は2016年10月に第1巻が発売され、最終第12巻は2022年2月に発売された[6]。
各巻の帯には、実在の音楽評論家を想起させる架空の推薦文が掲載され、特に第5巻は「ここまで音がうるさいのに、心が静かになる漫画は珍しい」と評されている。初版の一部には、再生ボタン風のしおりが封入されたが、読み込んでも何も起こらない仕様であった。
なお、累計発行部数は2024年時点で420万部を突破したとされ、学園音楽漫画としては異例の数字である。ただし、この部数には電子版で誤って配布された「試し読み増刷分」も含まれるとの指摘がある。
メディア展開[編集]
2019年には化され、全24話で放送された。アニメ版では、原作の黒ベタ表現を再現するために、画面の一部に意図的な圧縮ノイズを残す演出が採用され、SNS上で「画質が悪いのに音が良すぎる」と話題になった。
また、2021年にはも実施され、客席中央に実際のノイズ機材が設置された。上演中に客席で1回だけ警報が誤作動した回があり、観客アンケートの満足度は97.4%だったが、再演希望率は100%を超えたと報告された。
そのほか、作中楽曲を再現した、校内放送風ドラマCD、商店街コラボスタンプラリーなどが展開され、いわゆるメディアミックス作品として社会現象となった。特にとで実施された「無音で聴く試聴会」は、予約開始3分で満席になったとされる。
反響・評価[編集]
本作は、音楽漫画でありながら実際には「集団活動の熱量」を描いた作品として評価された。漫画評論では、ノイズを抽象化しすぎず、かといって実在の音楽史に寄せすぎない中間地帯を切り開いたとされる。
一方で、専門家の間では「高校生が自作した爆音装置で体育館の床鳴りが同調するのは物理的に難しい」との指摘もあった。ただし本作は、その無理を勢いで押し切るタイプの作品であるため、むしろその一点が支持の理由になったともいわれる。
読者投票企画では、黒瀬ユウの「五分間の無言演奏」が人気回第1位を記録し、キャラクター人気では白石ノエルが3年連続首位となった。なお、2020年に行われた架空の全国人気調査では、「一番うるさいのに一番青春している漫画」として選出された。
脚注[編集]
[1] 作品紹介欄では、作者名の表記揺れがしばしば見られる。 [2] 連載初期の編集後記による。 [3] 単行本第1巻あとがきより。 [4] 潮鳴社社内記録「2015年度企画会議議事録」より。 [5] 鳴瀬学園文化祭実行委員会報告書、ただし数値は修繕見積もりベースである。 [6] 初版帯および奥付に基づく。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 如月ハル『ノイカツ!〜Noise Music Activity〜 第1巻』潮鳴社, 2016.
- ^ 三枝俊介「学園漫画におけるノイズ表現の受容」『月刊アンプリファイ評論』Vol. 12, No. 4, pp. 44-51, 2017.
- ^ 真鍋玲子『反響室の教育学』アクア文庫, 2018.
- ^ K. Moriyama, "Youth, Feedback, and the Politics of Loudness," Journal of Fictional Media Studies, Vol. 8, No. 2, pp. 113-129, 2019.
- ^ 鳴瀬学園文化祭実行委員会『講堂修繕費精算報告書』潮鳴社出版部, 2020.
- ^ 佐伯ひかり「高校生ノイズ文化の再編集」『サウンド・カルチャー季報』第19巻第1号, pp. 5-18, 2020.
- ^ Harold D. Quinn, "Amplification as Community Practice," Osaka Review of Pop Fiction, Vol. 3, No. 1, pp. 22-39, 2021.
- ^ 千堂アオイ『無音は拍手を呼ぶ』鳴瀬出版, 2021.
- ^ 編集部編『ノイカツ!公式設定資料集 Noise and Beyond』潮鳴社, 2022.
- ^ 渡辺精一郎「黒ベタの音響的機能について」『漫画技法研究』第7巻第3号, pp. 77-90, 2023.
- ^ M. A. Thornton, "The Very Loud Silence Problem," East Asia Comics Quarterly, Vol. 5, No. 4, pp. 201-214, 2024.
外部リンク
- 潮鳴社公式作品ページ
- 月刊アンプリファイ作品紹介
- 鳴瀬学園オフィシャルアーカイブ
- ノイカツ!ファン資料室
- アクア・コミックス特設棚