パクパクデスワ
| 品種 | サラブレッド |
|---|---|
| 性別 | 牝 |
| 生誕 | 2011年3月14日 |
| 毛色 | 鹿毛 |
| 生産者 | 北海道日高郡新ひだか町・北栄ファーム |
| 馬主 | 有限会社ミント商事 |
| 調教師 | 西園寺 恒一 |
| 通算成績 | 24戦9勝 |
| 主な勝鞍 | 北洋スプリント、三春牝馬特別 |
パクパクデスワは、のである。口元を絶えず動かす癖と、レース後に「ですわ」と鳴くように聞こえる独特の呼気音から名付けられたとされる[1]。
概要[編集]
パクパクデスワは、前半にので生産されたで、短距離戦を中心に活躍したとされる馬である。特にので異様に強く、最後の直線で口を大きく開ける仕草が実況アナウンサーの間で話題になった。
一方で、関係者の証言によれば、デビュー前から飼葉桶の前で必ず2回だけ足踏みする習性があり、これが「パクパク」の由来になったという。また、装鞍所で首を振るたびに厩務員へ向けて「ですわ」と聞こえる息を吐いたため、現場では半ば敬称のように扱われたとされる[2]。
来歴[編集]
誕生と命名[編集]
2011年春、の北栄ファームで、母と父の仔として誕生した。命名は当初『ミントプリンセス』の案が有力であったが、仔馬が哺乳のたびに口を大きく動かすことから、育成担当のが冗談半分に『パクパクデスワ』と呼んだことが定着したという。
なお、名称の後半は当初『ですわ』ではなく『ですぞ』であったが、馬房を見回っていた調教師が「この馬はなぜかお嬢さま気質である」と主張し、最終的に現行名に落ち着いたとされる。命名会議は7月12日、内の料理店個室で行われ、出席者6人のうち4人がカレーを食べながら案を出していたという記録が残る[3]。
デビューから条件戦時代[編集]
デビューはのであったが、スタート直後にゲート内で三度首を振り、出遅れて6着に敗れた。しかしその後、の短期滞在調整でフォームが安定し、戦では連続して上がり3ハロン最速を記録した。
この時期の特徴として、直線で騎手が追い出しを始めると、観客席に向かって鼻を鳴らすような音を出し、これが『応援を要求している』として一部のファンに受けた。2014年秋にはで3連勝を飾り、パドック解説では『走法は地味だが、終いの迫力が妙に高貴である』と評された[4]。
重賞制覇と異名の定着[編集]
転機となったのはのである。重馬場ので外枠から進出し、最後は首差で差し切って重賞初制覇を果たした。この勝利で『口開けの貴婦人』という異名が定着し、週刊競馬誌『サラブレッド往来』は表紙で『パクパクはなぜ喋るのか』という特集を組んだ。
同年のでは、ゴール前で口を開けた瞬間に舌が白く見えたため、実況が誤って『白旗を上げた』と表現し、放送席が10秒間沈黙したという逸話がある。この出来事以後、陣営はレース前に口元を湿らせる専用の霧吹きを導入し、これが後にの装鞍所マナー改善例として紹介された[5]。
特徴[編集]
走法[編集]
パクパクデスワの走法は、一般に『顎先主導型スプリントフォーム』と呼ばれる。首差しをやや高く保ちながら、4完歩ごとに口角が左右へ開くのが特徴で、の一部調教助手のあいだでは『餌を見つけた時の最終局面』とも形容された。
が2016年に行った計測では、同馬の直線加速時の前肢回転数は平均毎秒3.8回で、同条件の同世代平均を0.6回上回っていた。ただし、呼吸数については同世代牝馬より15%高く、調教主任のは『走るというより会議に遅刻しそうな勢いである』とコメントしている[6]。
気性[編集]
気性面では非常に繊細で、馬房の乾草が1割減るだけで耳を伏せる反面、パドックに赤い花飾りが置かれると落ち着きを取り戻した。これを受け、陣営は以降、勝負服の袖口に小さな赤い刺繍を入れるようになった。
また、レース当日の朝に限り、人が帽子を脱ぐ動作を見ると歩様が整うことが知られていた。これはの関係者会議で『礼儀正しさへの反応』として報告され、のちに観客がパドックで一斉にお辞儀をする奇妙な習慣を生んだという[7]。
ファン文化[編集]
ファンの間では、同馬の出走時に『パクパク、今日は静かにですわ』と短く唱和する応援が広まった。特にの一部スタンドでは、出走馬券と一緒にミント飴を掲げる習慣があり、これが『甘い息の儀式』と呼ばれていた。
2016年末には、非公式グッズとして口元を模したフェルトマスクがネット上で流通し、年間販売数は約2万4,000枚に達したとされる。もっとも、公式には一切認可されておらず、の広報は『馬の表情を過度に擬人化したものである』と注意喚起を行った[8]。
社会的影響[編集]
パクパクデスワは、単なる競走成績以上に、競馬ファンの会話様式へ影響を与えたとされる。実況や新聞評で馬名の末尾を丁寧に読む文化が一部で流行し、同世代の馬まで『〜ですわ』調で呼ばれる現象が生じた。
また、内の競馬バーでは同馬の出走日に限り、店員が注文を「お待たせしましたですわ」と言い換えるサービスが行われた。これは売上向上に寄与したが、アルコール度数の高い『パクパクサワー』が常態化し、翌朝の苦情件数が前年比18%増えたという指摘もある[9]。
引退後[編集]
引退後は秋にの療養牧場へ移り、繁殖牝馬としての生活を送ったとされる。初年度の産駒『パクパクリーベ』は、母と同様に食欲が強く、離乳前から牧柵の留め具を覚えたため、牧場では『教育が早すぎる』として話題になった。
一方で、同馬の引退式で披露された蹄鉄には、厩務員が勝手に小さく『ですわ』と彫り込んでおり、これが後年の記念品市場で高値を付けた。2020年にはの地方博物館で『パクパクデスワ展』が開催され、来場者数は3日間で1万1,300人に達したという[10]。
批判と論争[編集]
パクパクデスワをめぐっては、その愛称が過度に擬人化であるとして、当初は『競走の品位を損なう』との批判が一部にあった。また、命名経緯における会議の記録が曖昧で、出席者の証言が『カレーを食べていた』『ラーメンを食べていた』で食い違っており、研究者のあいだでは要出典扱いとされている。
ただし、こうした議論自体が同馬の人気を押し上げた面もある。とりわけのファン投票では、競走成績が上位でないにもかかわらず3位に入ったことから、『愛嬌は実績を補完するのか』という論点がの定番になった。なお、同馬の鳴き声を録音したとされるCDは現在までに7版を重ねているが、2版と5版では収録時間がなぜか11秒ずつ異なる[11]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 西園寺 恒一『北海道短距離競馬史における擬音馬名の研究』日本競馬史研究会, 2019, pp. 44-61.
- ^ 藤堂 美和『パドックで鳴る呼気音——パクパクデスワ育成日誌』北栄ファーム資料室, 2018, pp. 12-29.
- ^ 高橋 三郎『顎先主導型スプリントフォームの計測』競走馬科学, Vol. 18, No. 2, 2017, pp. 101-118.
- ^ M. A. Thornton, “On the Semiotic Function of Equine Honorifics,” Journal of Comparative Turf Studies, Vol. 7, No. 4, 2020, pp. 233-249.
- ^ 佐久間 友里『三春牝馬特別における実況表現の逸脱』実況文化研究, 第4巻第1号, 2016, pp. 55-70.
- ^ Kenji Morita, “Feed Bucket Rituals in Hokkaido Training Yards,” The Equine Review, Vol. 12, No. 1, 2018, pp. 9-22.
- ^ 日本中央競馬会広報部『装鞍所マナー改善事例集 2016年度版』JRA出版, 2017, pp. 88-93.
- ^ 長谷川 玲子『競馬ファン文化における「ですわ」語尾の拡張』地方競馬論壇, 第11巻第3号, 2021, pp. 140-156.
- ^ S. Whitmore, “Mint Candy and Crowd Participation in Urban Race Bars,” International Journal of Sport Anthropology, Vol. 9, No. 2, 2019, pp. 77-90.
- ^ 北海道日高馬文化館 編『パクパクデスワ展 図録』日高地方文化振興会, 2020, pp. 3-48.
外部リンク
- 日本架空競走馬アーカイブ
- 日高馬文化研究所
- サラブレッド口元観察会
- 北洋スプリント資料館
- 競走馬擬音辞典