ブルーノ(きかんしゃトーマス)
| タイトル | 『ブルーノ(きかんしゃトーマス)』 |
|---|---|
| ジャンル | 鉄道コメディ×友情譚 |
| 作者 | 柿原ユイ |
| 出版社 | 潮鳴出版社 |
| 掲載誌 | 蒼緑タイムズ |
| レーベル | 潮鳴コミックス |
| 連載期間 | 2013年〜2020年 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全204話 |
『ブルーノ(きかんしゃトーマス)』(ぶるーの)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ブルーノ(きかんしゃトーマス)』は、機関車たちの小さな決断が路線全体の気分を変えていくという発想を、児童向けの笑いと大人向けの手触りで両立させた漫画である。
本作では主人公のが、毎回“ほぼ同じ失敗”をしながらも、なぜか毎回違う救われ方をしていく。その一見単純な反復は、読者が自分の生活にも置き換えやすい構造として評価されたとされる[1]。
連載開始当初から、作中の駅名・車両番号・点検記号がやたらと具体的に設定されており、鉄道好きだけでなく、文具メーカーの学習用マーカーまで売上を伸ばしたと噂されるほどであった[2]。
制作背景[編集]
作者のは、以前から「子どもは“正解探し”より“言い訳探し”が好き」という持論を公開していたとされる。そこで編集部は、失敗を隠すより、失敗の説明を物語化する方向でプロットを組む方針を採った[3]。
制作上の特徴として、全編にわたり“分岐条件”が細かく設定されている。たとえば、湿度がを超えるとのブレーキの鳴きが変化する、といった具合である。これらはファンタジーとして扱われつつ、作中の点検簿(のような紙片)として提示されるため、読者には科学っぽく見える仕掛けになっていた[4]。
また、舞台の基礎モデルには実在の鉄道会社の設備が部分的に参照されていると噂されるが、駅周辺の地形や行政界は一部改変されているとされる。具体的には、の海沿い地域を想起させる「潮返し地区」が登場し、そこにが影響したような描写が置かれた[5]。ただし、作中の制度は架空のため、現実との対応は“雰囲気止まり”であるという指摘もあった[6]。
一方で、放送局とのコラボを見越したフォーマット設計も早期から進んだ。各エピソードのオチは“3コマ目で予告、最終コマで回収”に統一され、後の映像化でも編集しやすい構造になったとされる[7]。
あらすじ[編集]
では、島の小さな操車場でが初めて貨車を押し出す。しかし、その瞬間に“押し出し係数”が想定より大きく、列車はほんの少しだけ遠回りに誘導される。主人公はそれを「運命の迂回路」と呼び、観客席にいる子どもたちはなぜか拍手するのであった[8]。
以下、主要なごとに内容をまとめる。各編では、登場する駅やルールが変化し、の失敗の種類も“微妙に”変わっていく点が特徴である。
一走目:潮返し支線編[編集]
で貨車が一両だけ遅れたことで、操車の担当係が慌てる。だがは、遅れの原因を「レールの気分」に結びつけ、駅員に“気分点検”を提案する。点検では磁石の色が赤→青へ変わる瞬間があり、その色変化が湿度と連動していると語られる[9]。
この編のオチは、湿度の数値が当たっているのに肝心の原因だけ外れるという逆転である。読者の間では「嘘なのに数字が正しい」「やけに細いのが怖い」と評され、以後の巻で“数字の怪しさ”が名物化した[10]。
二走目:青空整備工場編[編集]
では、車輪の傷を“歌の拍”で数える文化があるとされ、の足回りがぶんだけズレていると診断される。工場長はで、彼は「ズレは悪ではない。遅れを許可する権利がある」と豪語する[11]。
ただし、ズレを許可すると列車は遅れる。そこでは、遅れを隠すのではなく、駅の掲示板に「遅れの予告」を書き、利用者の予定を“先に”ズラす作戦に出る。結果として、遅れが逆に信頼へ変わったとされ、読者投稿では「嘘みたいに大人の解決法だった」との声が多かった[12]。
三走目:金庫島トンネル編[編集]
では、列車が通過するたびに一度だけ“過去の音”が鳴る。技師のは、それを防ぐ鍵として「秘密鍵」を要求するが、現場は大混乱になる。するとは、鍵の場所を当てるのではなく、鍵が“探されていること”を利用してトンネルの鳴き声を変える[13]。
この編の象徴は、探している人の数がになった瞬間にだけ鳴き声が静まるという描写である。細かな人数設定は読者の考察を呼び、「作中が数学みたいになってきた」と笑われつつも、次の編で回収される伏線として機能した[14]。
四走目:冬の運賃掲示改修編[編集]
冬季、運賃表の掲示が毎朝にだけ差し替わるという噂が広がる。主人公チームは、運賃表を“固定”するのではなく、揺れる情報を前提にした掲示を試すことになる。
は「間違いは悪じゃない、更新が遅いのが悪だ」と唱え、運賃掲示の差し替えを“音で知らせる”方式を提案する。結果として、利用者の混乱が減り、工事の担当部署から感謝状が届く…はずだったが、実際には届く宛先がではなく「架空の“海馬出張所”」だったため話題になった[15]。
登場人物[編集]
は、基本的にまじめで、しかし原因説明がしばしば過剰な比喩になる機関車として描かれる。言葉のクセは「〜という気持ちがあるのだ」といった定型で、作中の読者(子ども)にもその癖が移るため、連載後半では“言い方が伏線”になる構成が導入された[16]。
は工場長で、整備を“芸術”として扱う人物である。彼は点検簿に必ず天気欄を設け、「晴れの日だけ直るもの」をあえて作中に持ち込むことで、現実的な整備描写とのギャップを狙ったとされる[17]。
また、監督役としての若手職員が登場する。彼女は制度や手順に厳格だが、なぜかの存在だけは“知っているようで知らない”ため、読者の疑いを集めた[18]。
さらに、島の常連として小動物の団体が出るが、名前が回ごとに微妙に変わる。これは作者のこだわりで「毎回同じだと嘘がバレる」と編集部が語った記録があるとされる。なお、その記録自体は当時の社内掲示板にしか残っていないとされ、真偽は定かではない[19]。
用語・世界観[編集]
本作の世界は、島の路線網と、各駅の“感情システム”によって成り立つとされる。レールやトンネルにはそれぞれ固有の「鳴き癖」があり、通過する車両の“意図”に反応するという設定が採用されている[20]。
代表的な用語としてが挙げられる。これは列車が押し出される際に増減する推進の目安であり、作中では湿度と連動するものの、実際の測定手順は語られない。したがって、読者は「統計っぽいけど測れない」と感じる一方で、数字が毎回出ることで納得もしてしまう仕掛けになっていた[21]。
次にである。駅員が磁石や記号板を使って“機嫌”を読み取る作法として描かれ、結果が翌日の運行計画に影響する。作中の掲示では、気分が→へ移るとされるが、最終的に“青でも遅れる”ことが示され、単純な因果ではない印象を残した[22]。
また、は“物理的な鍵”でありながら、探される人数によって挙動が変わるとされる。これにより、現実の鍵とは違う原理が導入され、読者はファンタジーを受け入れながらも、同時に社会の情報錯綜を連想するよう促されたと指摘されている[23]。
書誌情報[編集]
本作はのレーベルにてまとめられ、全18巻で完結したとされる[24]。
巻ごとの特徴は「駅の制度が一段ずつややこしくなる」ことである。初期のでは親切なルールのみが提示されるが、終盤のでは“数値の意味”が二重化され、説明されないまま読者に読解を要求する。これが一部の読者には“通な楽しさ”として受け止められた[25]。
累計発行部数は、連載終了の翌年までにを突破したと報じられている。ただし、実数は複数の媒体で表記が揺れており、説もあるとされる[26]。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化は、に枠で行われたとされる。アニメでは漫画版より“駅名の読み上げ”が丁寧になり、各回冒頭での鐘が鳴る演出が定番となった[27]。
その後、ゲーム化として「線路を育てるパズル」と称するアプリがに配信され、プレイヤーはを模したミニゲームでポイントを獲得する仕様だったとされる。ポイントの算出式にが登場し、プレイヤーの間で“式だけ合ってる不気味さ”が話題になった[28]。
また、雑誌付録として「秘密鍵K-19風のマスキングテープ」が配布された時期があり、文具店では実際の鍵ではないにもかかわらず「鍵みたいに使える」と売り場が拡張されたという。社会現象となったのは、幼児がテープを“運賃掲示の差し替え”に見立てたためだと説明されている[29]。
反響・評価[編集]
読者からは「失敗が毎回違うのに、どこか救われ方が同じ」と評され、友情譚としての温度が長く保たれたとされる[30]。
一方で、作中の数値設定が“実在の測定に基づく”ように見える点について、批判も出た。たとえばやが、鉄道工学の実務と無関係だと指摘されている。とはいえ作者は「数値は世界観の匂いであり、再現性の保証ではない」と述べたとされる[31]。
評価面では、児童部門の受賞は多かったが、読書会では“社会の情報更新”の比喩として読む層も増えた。特には、行政と広報のずれを笑いながら扱うとされ、読後に「自分の生活の掲示も更新が遅いのでは」と感じる読者がいたと報告されている[32]。
その結果、作品は単なる鉄道コメディとしてではなく、言葉の更新速度や説明責任を考える入口としても位置づけられたとされる。編集担当のまとめでは「笑って読んで、帰りに掲示を見直す」と表現された[33]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 柿原ユイ『ブルーノ(きかんしゃトーマス) 潮返し支線編 公式読本』潮鳴出版社, 2014年.
- ^ 山門カナ「押し出し係数と感情反応の物語設計」『鉄路文芸研究』第12巻第3号, pp. 45-62, 2016年.
- ^ 早川ミナ「掲示更新のずれと“説明”の技法」『都市広報と物語』Vol.8 No.1, pp. 101-118, 2019年.
- ^ 篠塚ハルオ『金庫島トンネルの鳴き癖—数値はなぜ嘘に見えるか』青緑学術出版, 2020年.
- ^ 鳴戸テツ朗『工場長が語る青空整備工場の儀式』潮鳴出版社, 2018年.
- ^ 田名部オサム「湿度67%伝説の系譜と編集者の癖」『児童メディア論叢』第5巻第2号, pp. 77-84, 2017年.
- ^ Kisarawa Yui, “K-19 Key Mysteries and Narrative Physics,” Journal of Fictional Systems, Vol.14, No.2, pp. 210-229, 2018.
- ^ 青緑テレビ編『2017年春アニメ相関図:ブルーノの鐘と視聴者の記憶』青緑テレビ出版, 2019年.
- ^ 小島ユリカ『海馬出張所の奇妙な届出事例—掲示先の誤差研究』潮鳴総務研究所, 2021年.
- ^ Edited by M. T. Thornton, “Railway Comedy and Semiotic Numbers,” Proceedings of Imaginary Transit Studies, 第3巻第1号, pp. 1-19, 2015年.(書名が一部誤記されているとされる)
外部リンク
- 蒼緑タイムズ 公式サイト
- 潮鳴出版社 特設ページ
- 青緑テレビ ブルーノ公式アニメ頁
- K-19 記号研究会
- 潮返し支線 フォトブック(図録)