ブレイカムグランツァー
| タイトル | ブレイカムグランツァー |
|---|---|
| ジャンル | ダークファンタジー、近未来バトル、学園伝奇 |
| 作者 | 霧島ユウ |
| 出版社 | 白桐書房 |
| 掲載誌 | 月刊クロッカス |
| レーベル | クロッカス・コミックス |
| 連載期間 | 2008年6月号 - 2014年11月号 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全173話 |
『ブレイカムグランツァー』(ぶれいかむぐらんつぁー)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ブレイカムグランツァー』は、の湾岸再開発地区を思わせる架空都市・を舞台に、巨大な結晶兵装を操る少年少女たちの戦いを描いた漫画である。作中では「破壊」を意味するという語が、都市の再生と個人の赦しを示す逆説的な鍵として扱われ、連載中から独特の台詞回しが話題になった。
本作は、2000年代後半のにおける看板作品として位置づけられ、初期は地味な学園伝奇として始まったものの、後半で全域を巻き込む戦争譚へ拡大した。単行本の累計発行部数は2024年時点で約860万部を突破したとされ、深夜帯のテレビアニメ化や舞台化を通じて展開が行われた[2]。
制作背景[編集]
作者の霧島ユウは、もともとのデザイン専門学校で都市構造論を学んでいたとされ、卒業制作で「壊れた橋と意思を持つ武器」というモチーフを扱った短編を発表している。この短編が編集者・の目に留まり、後に『ブレイカムグランツァー』の原型になったという経緯が知られている[3]。
連載開始当初、作品名の「グランツァー」は造語としての意味が不明瞭で、編集部内でも複数案が検討された。最終的には、霧島が「輝きながら壊れるもの」というイメージを優先し、ドイツ語風の響きを残したまま採用したとされる。なお、当初の企画書には「主人公は変身後に身長が17センチ伸びる」という設定があり、これは流石に没にされたという逸話が残る。
作画面では、背景美術に実在のの工業地帯を参考にしたとされる一方で、結晶兵装の描写には3D下書きをほとんど使わず、手描きのハイライトで硬質感を出したことが特徴である。連載3年目には作業効率の低下から1話あたりの掲載ページが一時的に28ページへ削減され、読者アンケートの回復とともに32ページへ戻された[4]。
あらすじ[編集]
学園起動編[編集]
物語は、綾瀬特区のに転入した少年が、地下保管庫で封印されていた結晶兵装グランツァーに偶然接触する場面から始まる。カムイは「壊すほど強くなる」特性を持つ適合者として覚醒するが、その代償として記憶の一部を失い、毎朝パンの食パンを何枚食べたか思い出せないという妙な後遺症を抱える。
この編では、学園内での模擬戦や実技試験を通じて、、ら主要人物が揃う。とくに第9話で描かれた体育倉庫爆破事件は、単行本1巻の帯にも採用され、以後のシリーズ全体の「何かが爆発するたびに人間関係が進む」作風を決定づけた。
環状戦争編[編集]
中盤では、綾瀬特区を支配すると、反政府組織の対立が本格化し、物語は一気に政治劇へ転じる。カムイたちは環状線の各駅に眠る「駅守の結晶」を回収する任務に就き、、、を模した架空駅区で激闘を繰り広げる。
この編の終盤、第78話でグランツァーが一度完全崩壊し、翌話で何事もなかったかのように「自己修復完了」と表示される演出は賛否を呼んだ。だが、編集部によればこの展開は当初から予定されており、単行本8巻の初版にのみ「修復後の姿」の設定画が付属したため、古書市場では同巻だけ相場が妙に高騰したという。
最終覚醒編[編集]
終盤では、グランツァーの真の機能が「都市そのものの記憶を保存する器」であることが判明し、カムイは綾瀬特区の崩壊を止めるため、自身の存在を半分だけ都市へ預ける決断をする。ここで登場するは、実在の高層ビル群を連想させつつも、内部が六層の反転空間で構成されるという無茶な設定で、作中最大の見せ場となった。
最終話では、カムイが「壊すことは、なおすことの第一歩だ」と述べ、グランツァーを砂へ還す。だが、最後のコマで砂粒の中から小さな光が3つだけ残る描写があり、これにより続編を示唆していたのではないかと長年議論されている。作者は後年のインタビューで「続編の予定はなかったが、砂の粒数は勘で決めた」と語ったとされる[5]。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、無口だが戦闘になると急に長文を喋る。両親をで失ったという重い設定を持つ一方、好物がカレーうどんであることが作中屈指の親しみやすさにつながった。
は星岬学園の風紀委員長で、グランツァーの整備知識に異様に詳しい。第23話で彼女が工具箱から取り出したのが実はティースプーンだった場面は、作画ミスか演出かを巡って読者の間で小さな論争になった。
は灰翼協会側に属する少年で、当初は敵役として登場したが、連載4年目以降は「協力するが謝らない」準レギュラーとなった。ほかに、、、など、役職名が妙に長い人物が多く、読者からは「肩書きの圧が強い作品」とも呼ばれた。
なお、人気投票では一度だけ、脇役のが5位に入る珍事が起きた。これは単行本11巻のおまけ4コマで、端末が唯一まともにツッコむ存在として描かれたためとされる[6]。
用語・世界観[編集]
は、都市の地下に眠る結晶機構であり、搭乗者の感情変動によって形状が変わる兵装である。作中では剣、盾、列車、鳥籠の4形態を基本としているが、設定資料集では「理論上は湯沸かし器にもなりうる」とされ、ファンを困惑させた。
は破壊衝動を司る概念語で、綾瀬特区では幼少期にこの語を口にすると学校から保護観察がつくという珍しい制度がある。実際には都市再開発に伴う危険物管理の隠語だったという説が有力だが、作中では神話的な重みを持って描かれている。
また、世界観の中心には「駅が記憶を食べる」という独自設定があり、の各駅には過去の戦争、恋愛、落とし物の記憶が蓄積されるとされる。この仕組みはかなり唐突であるが、単行本14巻の解説ページでは「実際の鉄道保全記録に着想を得た」と書かれており、もっともらしさだけは非常に高い。
書誌情報[編集]
単行本はから刊行され、全18巻で完結した。通常版のほか、第7巻以降には初回限定の「結晶箔カバー」が存在し、角度によってカムイの目線が3度だけずれる仕様がコレクターに好評だった。
また、2012年にはが上下巻で刊行され、未収録の短編「グランツァー・ゼロの夜」が追加された。この短編では、主人公が未来の自分とラーメン屋で会話するだけの内容が1話分続くが、編集部は「シリーズ全体を理解する上で必要」と説明している。
関連書籍としては、設定資料集『ブレイカムグランツァー 機構記録簿』、公式ファンブック『綾瀬特区通信』、小説版『ブレイカムグランツァー 灰翼前夜』がある。小説版は作者本人ではなく、によるノベライズであり、なぜか第2章だけ文体が急に硬くなることで知られる。
メディア展開[編集]
2015年には化され、全24話が深夜帯で放送された。アニメ版はが制作し、戦闘シーンの一部で結晶反射を再現するために、毎話ごとに約1,200枚のハイライト原画が描かれたとされる。
さらに、2018年にはされ、回転舞台の中央に高さ4.8メートルの「壊れる塔」が設置された。千秋楽では塔が予定より2秒早く崩落し、演出陣が青ざめたという逸話が残っているが、観客には逆に大好評だった。
ゲーム化企画も進んだが、格闘ゲームとしてではなく「駅を修復する経営シミュレーション」に変更されたため、原作ファンの一部が困惑した。ただし、この版でのみ登場するミニゲーム「パンの厚さを0.5ミリ単位で合わせる」が異様に人気を博し、結果的に新規層の流入につながった。
反響・評価[編集]
本作は、連載後半における急激なスケール拡大にもかかわらず、緻密な都市設定と感情描写が評価され、の部数を一時的に前年同月比17.4%押し上げたとされる。特に20代後半から30代前半の読者に支持され、「仕事で壊れたものを、帰宅後に読む漫画」として口コミが広がった。
一方で、専門家からは「説明の8割が勢いで押し切られている」「駅の数と人物の数がほぼ同じで把握しづらい」との指摘もあった。また、単行本13巻のあとがきで作者が「グランツァーの色は気分で決めた」と明言したため、設定考証の熱心な読者が一時的に沈黙したという。
しかし総じて、2010年代のダークファンタジー漫画の中でも、都市破壊と再生をテーマ化した代表作として扱われている。2020年の企画展『破壊と整備のあいだ』では、原画34点のうち11点が本作から出展され、入口で流れていたテーマ曲だけで泣いた来場者がいたと報告されている。
脚注[編集]
[1] 霧島ユウ『ブレイカムグランツァー 1』白桐書房、2008年。初版帯の記述による。
[2] 〈特集〉「綾瀬特区と都市伝奇漫画の2000年代」『コミック文化年鑑』第12巻第3号、2016年、pp. 44-51。
[3] 芦原誠二「新人原稿に見る結晶兵装表現」『月刊編集技法』第8巻第2号、2009年、pp. 12-19。
[4] 白桐書房編集部「連載中のページ数変動と読者反応」『出版統計メモランダム』第5巻第1号、2011年、pp. 88-90。
[5] 霧島ユウ・聞き手「終わり方は砂の粒数で決めた」『クロッカス・インタビューズ』第2号、2015年、pp. 3-7。
[6] 井瀬和真「キャラクター人気投票における機械端末の台頭」『サブキャラ研究』第4巻第4号、2014年、pp. 101-109。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島ユウ『ブレイカムグランツァー 1』白桐書房, 2008.
- ^ 芦原誠二「新人原稿に見る結晶兵装表現」『月刊編集技法』Vol. 8, 第2号, pp. 12-19, 2009.
- ^ 白桐書房編集部「連載中のページ数変動と読者反応」『出版統計メモランダム』Vol. 5, 第1号, pp. 88-90, 2011.
- ^ 霧島ユウ『ブレイカムグランツァー 機構記録簿』白桐書房, 2012.
- ^ 堂島アキラ『ブレイカムグランツァー 灰翼前夜』白桐文庫, 2013.
- ^ 井瀬和真「キャラクター人気投票における機械端末の台頭」『サブキャラ研究』Vol. 4, 第4号, pp. 101-109, 2014.
- ^ 霧島ユウ・聞き手「終わり方は砂の粒数で決めた」『クロッカス・インタビューズ』Vol. 2, pp. 3-7, 2015.
- ^ 高森玲子『都市伝奇漫画の結晶構造』白桐大学出版会, 2016.
- ^ 久住慎一「反射材としての涙と結晶」『現代コミック論集』第11巻第2号, pp. 54-63, 2017.
- ^ 佐伯ミドリ『深夜アニメと原作改変の倫理』港北文化研究所, 2019.
外部リンク
- 白桐書房 作品特設ページ
- 月刊クロッカス 連載アーカイブ
- 綾瀬特区資料館 デジタル展示室
- グランツァー設定保管委員会
- クロッカス・アニメーション公式ポータル