ペンネ=ゴロンニ
| 名称 | ペンネ=ゴロンニ |
|---|---|
| 別名 | ゴロンニ管発酵煮パスタ |
| 発祥国 | イタリア |
| 地域 | エミリア=ロマーニャ州北部(特に周辺) |
| 種類 | 発酵仕立ての管状パスタ料理 |
| 主な材料 | ペンネ状生地、卵粉、塩漬けチーズ、発酵オイル |
| 派生料理 | 黒胡椒ゴロンニ、海藻ゴロンニ、祝祭ゴロンニ包み |
ペンネ=ゴロンニ(よみはぺんね ごろんに)は、をしたのである[1]。
概要[編集]
ペンネ=ゴロンニは、管状のパスタ生地に卵粉を薄くまとわせ、乾燥と発酵を挟んだ後に短時間で煮戻すことを特徴とする料理である。一般に「通常の茹で上げ」よりも香りの保持が重視されるとされ、食感は外側が僅かに乾き、内側が滑らかになると説明される。
この料理は周辺の家庭料理として語られる一方、19世紀末には「時間の読めない街の市場」に向けた保存食としても扱われ、屋台や列車の食堂へと広がったとされる。現在では、観光客向けの短期講習にも組み込まれ、作り方が地域の“作法”として保存されている点が特徴である[2]。
語源/名称[編集]
名称の「ゴロンニ」は、現地方言で「ころがる泡」という意味があったとする説が有力である。卵粉コーティング後の発酵工程で、表面に微細な気泡が現れては消える現象が、当時の職人によって比喩的にそう呼ばれたのだという[3]。
また、「ペンネ=」の記号部分は、帳簿記法から来たとする指摘がある。すなわち、(管状パスタ)と風味番号を結合するために、倉庫係が「品目=工程」を書き分けていたことが語頭に残ったというのである。実際の文献では、手書きの伝票が拡大解釈された結果、記号が半ば固有名詞化したと推定される[4]。
なお、同名に「ペンネ・ゴロンニ(ハイフン表記)」が併記される場合があるが、これは後世の観光パンフレットが表記を統一しようとした名残とされる。表記揺れが多いこと自体が、料理の“学習熱”を刺激する要素になっているとも指摘される。
歴史(時代別)[編集]
初期(18世紀後半〜1820年)[編集]
18世紀後半、の内陸交易で、粉麺の品質が季節により不安定になる問題があったとされる。そこで小麦粉に混ぜる目的で余剰卵を乾燥粉へ変え、管状に成形した生地へ均一に纏わせる工夫が広まったという[5]。
この頃のゴロンニは、実は「食べ物」よりも「湯に浮かべて戻す素材」として扱われ、厨房の外で乾燥工程を管理するために、家の壁際に温湿度計が置かれたと語られる。ある記録では、湿度を「63%」に固定していたとされるが、当時の測定器の誤差を考慮すると「体感で水分が逃げない状態」を数値化したものだったのではないかと推定される[6]。
市場拡散期(1821年〜1890年)[編集]
1821年にへ鉄道貨物が延びたことで、長距離輸送中に麺が“縮む”問題が顕在化したとされる。そこで、卵粉コーティングと発酵を「短期でも香りが残る」方向へ最適化し、煮戻し時間を「12分前後」に定める流派が現れたという[7]。
この時期にはの屋台連合が、同一工程を守ることを条件に“名乗り”を許可したとされる。連合の規約では、箸で持ち上げた際に落下までの秒数が「3.2秒以内」であることが望ましい、といった過剰に細かい指示まで残っている[8]。もちろん、現在の家庭再現ではばらつくが、細則があったからこそ伝承が残ったと解釈される。
制度化と大衆化(1891年〜1945年)[編集]
1891年、市参事会の衛生係が、乾燥・発酵を伴う麺類の“管理手順”を統一するための指針を出し、その中でペンネ=ゴロンニが「工程の記録性が高い事例」として引用されたとされる[9]。
ただし指針は、料理の味を固定する意図ではなく、むしろ逸脱の検査を可能にする目的だったとも指摘される。現在残る資料では、鍋温度の目安が「79℃」、発酵樽の回転が「1日7回」と書かれているが、これが実務に即していたかは不明である[10]。一方で、これらの数値が噂として独り歩きし、後の大衆化を後押しした面があるとされる。
戦後の再解釈(1946年〜現在)[編集]
戦後、食材が統制解除されると同時に、塩漬けチーズの供給が安定し、ゴロンニは「塩気と発酵香のバランス料理」として再定義されたとされる。現在では、家庭では保存性よりも“香りの出方”が重視され、煮戻しの直前に発酵オイルを数滴垂らす手順が一般に採用されている。
また、観光客向けには「作り置きしない」ことが売りにされ、当日炊き上げが推奨されることが多い。ただし、当初から作り置き文化があった点を踏まえれば、これは“体験設計”としての後付けである可能性も指摘される。なお、食べる際の合図(後述)が地域のイベントに組み込まれ、文化的記号として定着しているとされる[11]。
種類・分類[編集]
ペンネ=ゴロンニは、一般に工程と風味の違いにより、いくつかの系統へ分類されるとされる。第一に「硬さ重視型」があり、煮戻し時間が短いほど外側の乾きが残るため、食感が“割れる”ように感じられると説明される。
第二に「香り強調型」があり、発酵オイルの種類が焦点となる。たとえば由来の発酵オイルを使う系統では、香りが上に立つとされる一方、酸味が強いこともあるとされる。第三に「祝祭型」があり、祝祭の日にだけ提供される厚めの塩漬けチーズを用いる点で特徴づけられる。
分類表では、色・粘度・食後の余韻でさらに細かく分かれるが、現場では「黒胡椒ゴロンニ」「海藻ゴロンニ」などの通称で運用されることが多い。ここでの通称は、味の差よりも提供タイミングの差を反映する場合があるとされる[12]。
材料[編集]
ペンネ=ゴロンニの材料は、基本的に「管状パスタ生地」「卵粉」「塩漬けチーズ」「発酵オイル」「塩」「胡椒」で構成されるとされる。管状パスタは、一般の乾麺よりも表面が滑らかで、コーティングの歩留まりが高いものが好まれる。
卵粉は“卵そのもの”ではなく、卵黄と卵白を別工程で乾燥した後に混合する手法が語られることが多い。また、塩漬けチーズは系のものが使われることがあるが、厳密な定義はなく、地域の乳業組合の銘柄が採用される場合もあるとされる。
発酵オイルは、低温で香り成分を抽出するという説明がなされるが、具体的な抽出法については流派差が大きい。ある家庭の伝承では、オイルを瓶に入れて「夜の窓際に置く」ことが指定されるという[13]。そのため、材料表は正確であっても、運用は“天候と気分”に左右されるとされる。
食べ方[編集]
ペンネ=ゴロンニは、煮戻しの直後にソースを絡めるのが一般的とされる。食べる直前に発酵オイルを数滴追加し、香りが立つタイミングを合わせることで、外側の乾きと内側の滑らかさを同時に味わえると説明される。
また地域では、最初の一口の前にフォークを左右どちらかへ三度だけ回し、「合図」を作る儀礼が語られる。これは“泡が消える前に食べよ”という経験則に由来するとされるが、実際には統一された動作があるわけではなく、見た目が揃うイベント的要素もあると指摘されている[14]。
飲み物は、苦味の少ない発泡飲料が合わせられることが多い。ただし、発泡によって香りが逃げるという批判もあり、近年は白ワインを少量だけ添える派も増えているとされる。
文化[編集]
ペンネ=ゴロンニは、味よりも“工程を語る”文化と結びついているとされる。たとえばの料理教室では、レシピカードに加え、工程の記録欄(乾燥開始時刻、煮戻し開始までの待ち時間など)が配布されるという[15]。
この料理が社会に与えた影響としては、家庭での食品管理意識を高めたことが挙げられる。乾燥・発酵を扱うため、温湿度や手順のばらつきが可視化され、料理が“家計簿”のように管理されるようになったと説明される。
一方で、制度化の流れが「数値で語れる人ほど上手い」といった評価へつながり、家庭の味の多様性を損なう面もあったとされる。現在ではそれを反省し、数値目標を“目安”として扱う指導も増えたとされるが、依然として「79℃」のような象徴数字は人気を保っている[16]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ ルイージ・ファブリオ『ボローニャ屋台年代記:麺の工程と記憶』エルマ出版社, 1932.
- ^ マルゲリータ・コスタ『発酵麺の温度管理:79℃神話の検証』Instituto di Gastronomia Applicata, 1978.
- ^ Giovanni Rinaldi『La Cucina del Corridoio: Penney-Golonni の実践』Vol.3, 編集工房リーノ, 1986.
- ^ Sofia Bianchi『Egg Dust Confections and the Golonni Technique』Journal of Mediterranean Food Studies Vol.12 No.4, pp.41-58, 1994.
- ^ 田中澄人『伝統麺の“見える化”と地域経済』青灯書房, 2001.
- ^ Ettore Marini『Markets, Rails, and Microbubbles: A History of Coated Pasta』Culinary Archives Review Vol.7 No.1, pp.9-27, 2008.
- ^ クラウディア・ヴェルデ『祝祭パスタの社会学的装置』Università di Parma Press, 2013.
- ^ 藤堂真琴『数字で語る料理:家庭レシピ文化の転換点』淡緑堂, 2019.
- ^ R. W. Halstead『Encyclopedia of Fermented Traces』(第◯巻第◯号の体裁), 1961.
- ^ 【要出典】『ペンネ=ゴロンニの起源に関する未確認文書集』ボローニャ市参事会, 1891.
外部リンク
- ゴロンニ工程記録センター
- ボローニャ麺資料館(仮想)
- 家庭発酵レシピ掲示板「卵粉の夜更かし」
- エミリア=ロマーニャ州食文化アーカイブ
- 市場屋台連合デジタル規約庫