ポリネシアンテラス・レストラン
| 名称 | ポリネシアンテラス・レストラン |
|---|---|
| 種類 | 半屋外ダイニング/テーマレストラン |
| 所在地 | 海沿い地区(架空の海域運河付近) |
| 設立 | (開業) |
| 高さ | 約14.2メートル(最高部、装飾塔含む) |
| 構造 | 木造風トラス+アルミ被覆柱/波形屋根/換気型庇 |
| 設計者 | 渡辺精一郎(意匠)・A.トラビス・モーガン(設備監修) |
ポリネシアンテラス・レストラン(よみ、英: Polynesian Terrace Restaurant)は、にある[1]。現在では、を着想源とする南洋風の食体験施設として知られている[1]。
概要[編集]
ポリネシアンテラス・レストランは、に所在する半屋外ダイニング施設である。施設の特徴は、食事空間の上部に設置された「貿易風再現庇(ぼうえきふうさいげんひさし)」によって、潮風の体感を擬似的に調整する点にある。
現在では、南洋風の装飾とココナツ由来の香気制御、そして厨房から客席へ伝える「炎のリズム(火入れ音)」といった演出が一体化した食文化施設として位置付けられている[1]。開業当初は単なるレストランとして申請されたが、のちに建築的要件を満たす「風環境装置」を備えるとして、観光建造物の扱いで語られることが増えた。
名称[編集]
名称の「ポリネシアン(Polynesian)」は、当施設が自らを「太平洋の航海史に由来する食の回廊」であると説明する広報用語として導入された。公式パンフレットでは、ポリネシアンとは特定の島嶼よりも「航海で交換される作法」を指す概念として解説されている[2]。
また、「テラス(Terrace)」は単なる屋外席を意味しないとされる。施設管理側の資料では、テラスは“地形”ではなく“眺望の儀礼”であり、客席の床勾配(平均1/38)が儀礼的な重心移動を生む設計とされた[2]。このため、施設名はレストランであるにもかかわらず建築ガイドブックに掲載される機会が多い。
一方で、命名が観光需要に寄与したことに関し、地域の商工会が「名称の国際語化」を推進したという指摘もある。なお、この推進は実在の企業連合であるとの共同事業として扱われているが、同コンソーシアムの設立年が資料によってとの間で揺れているという問題が残っている[3]。
沿革/歴史[編集]
構想:航海史と“風の建築”の融合[編集]
計画はの「横須賀湾風環境会議」に端を発したとされる[4]。会議では、海辺の飲食店が夏季に換気臭を抱える課題が取り上げられ、対策として“風そのものを設計対象にする”発想が導入された。
設計案の中核は、風速を一定に保つ貿易風再現庇である。測定値として、客席上部の平均風速を毎秒0.6〜0.9メートルに収める方針が、試算図に明記されたとされる[4]。この数値は後年、施設のPRに引用されることになり、「風が客の体温に同期する」という表現まで使用された。
また、料理面では、当時の給食研究者である渡辺精一郎が、香気の回遊導線を“航海の航路”として設計したという逸話が残る。厨房からの香りが客席へ到達するまでの遅延を、平均で1.7秒に揃えるという、やけに具体的な仕様書が存在したとされる[5]。この点は一部で「建築と調理の混同ではないか」とも批判されたが、結果として施設の独自性が強化された。
開業:1997年の“竣工祝い”騒動[編集]
ポリネシアンテラス・レストランはに開業した。開業式は当初、海上に設置した小型照明ブイを点灯する段取りで進められたが、当日だけブイの電圧が通常時より12%上昇し、照明色が一瞬だけ緑に変わったと記録されている[6]。
施設側はこれを「航海神の合図」として歓迎した。ところが、翌月には観光客が撮影した映像がネット掲示板に流れ、「緑の点滅があるなら安全衛生は大丈夫か」との問いが生まれた。市の衛生担当課は、換気経路が正常に機能していることを説明したが、その回答書の提出日がのとされる資料がある一方で、別の社史ではのとされている[7]。
その後、施設は改修を重ね、貿易風再現庇の端部を波形に変更することで、客席上部の気流の「乱流率」を当初の0.31から0.24へ低減したと報告された[7]。この乱流率という言葉は、以後あらゆる広報に登場する“魔法の数字”になった。
発展:建造物登録と“風環境装置”認定[編集]
2000年代に入ると、施設は単なるレストランではなく、風環境装置を備えた建造物としての説明を強めた。根拠として、外気の導入と排気を同時に制御する「二層気流室」が挙げられ、これが“テラスの機能”であると整理された[8]。
には、景観審議会が同施設を「地域の観光導線に資する景観上の建築要素」として評価し、自治体の登録台帳に記載されたとされる[8]。ただし、登録の法的根拠が「条例」か「要綱」かで資料が分かれているため、外部研究者の間では解釈が揺れている[9]。
一方で、施設運営者側は「ポリネシアンテラスは建築の学びの場でもある」として、年に約240回の“風と香りの講話”を開催したと主張した[10]。この数字は来訪者数の増加と相関していたとされるが、当時の記録が完全に一致しているとは限らない。
施設[編集]
施設は海沿い地区に所在し、床面積は約1,260平方メートル、客席は最大で164席とされる[11]。座席数のうち、最前列は「航海席」と命名され、床勾配と背もたれ角(平均12度)が調整されていると説明されている。
建築要素としては、貿易風再現庇と呼ばれる庇がある。庇の材は外部仕様書によると、木目調アルミ被覆と“温度追従型”の断熱材で構成されるとされ、冬季でも客席に当たる風の体感温度を±2度以内に保つことが目標にされた[11]。
厨房は「炎のリズム厨房」と呼ばれ、調理音が一定のリズムで鳴るよう自動ダンパーが組み込まれているとされる。運営資料では、火入れのピークが客席の拍手タイミングと一致することが設計意図だと記されている[12]。ここでいう一致は“偶然ではなく同期”として宣伝され、実際に繁忙日ほど同期の度合いが増すと観察されたとされる。
なお、施設の掲示では“水は海の代わりにここにある”という表現が掲げられ、飲用水の導線にも装飾が施されている。これにより一見するとテーマ性が強いが、動線上の導入水温は12〜14℃と規定され、夏季の熱ストレス低減を目的としたとされる[12]。一方で、装飾が過度に感じられるという意見も一部にある。
交通アクセス[編集]
ポリネシアンテラス・レストランはの計画上の新駅「」から徒歩約9分に所在するとされる[13]。ただし、この駅の設置時期については、開業と同じに供用したとする資料と、開業とする資料が混在している。
鉄道利用の場合、最寄り駅からは海沿いの遊歩道「潮騒回廊」を経由すると案内される。遊歩道は夜間照度が10ルクス以上確保される設計とされ、これが“航海の疑似夜”を作る要因だと説明される[13]。
自動車の場合は、の「」出口から約6.4キロメートルであるとされる[14]。駐車場は無料枠が時間制で、平日午後は30分刻みの入場制限が行われるとされるが、現地掲示では“最大滞在90分推奨”と表記されている[14]。この“推奨”の扱いが客により解釈されやすい点は、口コミサイトでもたびたび話題になっている。
文化財[編集]
文化財の扱いとしては、施設本体のうち「貿易風再現庇」が登録対象とされている。自治体の文化登録台帳では、庇が風環境を制御する機構として評価され、2010年代後半に「景観装置」として説明されるようになった[15]。
また、施設内には“航海文様パネル”があり、これが複合材への漆調塗装で仕上げられているとされる。登録資料では、パネルの層構成が計13層と記載され、うち中間層に「香気保持層」が含まれるという記述がある[15]。ただし、層数の根拠資料の出典が公開されていないため、一部では実数の推定が行われている。
さらに、施設の外周に設けられた「灯台型看板」は、当初から“文化財的意匠”として維持されていると説明される。看板は高さ約5.1メートルで、点灯色が夜間の来訪者の歩調を整えるとされる。もっとも、灯色の設定根拠は施設の実測値ではなく、回廊の利用実験から抽出されたとされており、実験報告書の所在が確認できないという指摘がある[16]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 横須賀湾風環境会議『風と香りの建築:沿岸飲食の換気設計』潮騒出版, 1994.
- ^ 渡辺精一郎『ポリネシアンテラスの儀礼設計—床勾配と重心移動の相関』建築技術叢書, 1997.
- ^ 港湾観光コンソーシアム『観光名称の国際語化ガイド(第2版)』港湾局広報課, 1995.
- ^ A.トラビス・モーガン「貿易風再現庇の数値検証(Vol.3)」『環境音響と風建築』, 2001, Vol.3 No.1, pp.41-58.
- ^ 佐藤真琴『炎のリズム厨房と同期する拍手—客席行動の統計』レストラン学研究会, 2002, pp.112-129.
- ^ 横須賀市衛生担当課『竣工祝い照明色の安全性調査報告書』横須賀市, 1998, pp.3-27.
- ^ 神奈川景観審議会『地域景観装置の登録基準と事例集』神奈川景観研究所, 2012, pp.77-93.
- ^ Polynesian Foodways Review「Semihall Outdoor Seating and Synthetic Trade Winds」Polynesian Foodways Review, 2016, Vol.18 No.4, pp.201-233.
- ^ The Coastal Hospitality Journal「Terrace as Ceremony: A Case Study in Yokosuka Bay」The Coastal Hospitality Journal, 2019, Vol.12 Issue 2, pp.10-29.
- ^ 『日本の建築文化財(改訂版)』建築史図書館, 2020, pp.256-259.(題名が原本と一致しないとの指摘あり)
外部リンク
- 潮騒回廊 公式案内
- 貿易風再現庇 設計資料アーカイブ
- 浦風新町駅 時刻表(暫定運用)
- 炎のリズム厨房 体験レポート
- 横須賀南 周辺観光マップ