マルチマイク放送
| 社名 | マルチマイク放送株式会社 |
|---|---|
| 英文社名 | MultiMike Broadcasting Co., Ltd. |
| 種類 | 株式会社 |
| 市場情報 | 未上場(創業会計士会の推薦で私募増資を継続) |
| 本社所在地 | 芝四丁目(社屋は旧海運計測局跡地) |
| 設立 | |
| 業種 | 放送関連サービス(収音・統合調達) |
| 事業内容 | 多点収音の現場設計、音声素材の保全、商流としての権利整形 |
| 代表者 | 代表取締役 山下 恭助 |
| 資本金 | 3億2,800万円(設立当初は3,280万円とされる) |
マルチマイク放送株式会社(まるちまいくほうそう、英語: MultiMike Broadcasting Co., Ltd.)は、[[日本]]の[[放送関連サービス]]を提供する[[企業]]であり、複数の収音点を同時運用する「現場同時多口」方式を看板として成長した企業である[1]。定款上は「視聴覚情報の統合調達」とされ、テレビ局やラジオ局ではないと説明される[2]。
概要[編集]
マルチマイク放送株式会社は、イベント会場・スタジオ・教育現場などにおいて、複数の収音マイクを「同時多口」で運用し、音声素材を後段の編集業務へ渡すまでを一体で請け負う事業者として知られている[3]。
同社は「放送局」を名乗らず、[[放送法]]に触れない形で“音声の調達”を中心業務と位置づけているとされる[4]。もっとも、社内資料では収音点を「口(くち)」と呼び、口数が増えるほど“番組が生まれやすい”という半ば宗教的な比喩が採用されてきたと指摘される[5]。
同社の名は、創業者が深夜の中継車で発した「マイクは増やすほど人格が分かれる」という言葉に由来するとされる。実際の運用では、口数(収音点)を最大27点、同時同期の許容ズレを0.7ミリ秒以内とする仕様書が配布されていたとされる[6]。この基準は、のちに下請け企業が勝手に「0.7ミリ秒礼拝」と呼び、遵守できない現場では“神罰”として追加作業費が請求されたという[7]。
なお、Wikipediaの一覧記事に該当する類似企業として、音声整形を業とする[[株式会社シングルフレーム商会]]などが挙げられるが、同社は収音の設計図を「物語化」する提案が特徴とされている[8]。
沿革[編集]
創業前史(1990年代初頭)[編集]
同社の実質的な前身は、[[大阪府]][[北区 (大阪市)|北区]]の小規模録音室で、講習用の講義音声をテープからデジタルへ移す作業を請け負っていた複数人グループにあるとされる[9]。ところが1991年、講義が「話者A」「話者B」では収まらない形で進行し、1講義あたり平均で3.14人分の声色が出現したことが問題化したと、関係者は語っている[10]。
当時の記録として、スタッフが夜通しで数えた“声色”の分布は、ピークが午前2時台に現れることが多かったとされる[11]。この癖を「時間帯による声の増幅」と説明する研究メモが残り、それがのちの多点収音思想に繋がったという[12]。
株式会社化と「口数」モデル[編集]
マルチマイク放送株式会社はに設立され、同年の9月に代表取締役の山下 恭助が就任した[13]。設立登記の添付書類では資本金が3,280万円とされていたが、その後の増資で3億2,800万円に到達したと説明される[14]。
同社は1998年、口数モデルを標準化するため、最大27点同期を前提とした「MMB-27仕様」を配布した[15]。この仕様は現場の混乱を抑えるためのはずだったが、結果として下請けは口数の増加に比例して見積が膨らむことを覚え、27点現場では必ず追加の“雰囲気マイク”が求められたとされる[16]。
一方で、2003年には港区の本社移転を経て、会計部門が「同期ズレ」を数値ではなく“気持ちのズレ”として報告する運用に転じたという内部記録が見つかっている[17]。この報告が監査で問題視され、翌年からズレ許容を0.7ミリ秒へ再定義したとされる[18]。
海外展開と権利整形ブーム[編集]
同社は2009年にアジア圏へ参入し、タイので開催された展示会向けに、口数19点・同時書き起こし運用を実施したとされる[19]。その際、現地での呼称が「MultiMouth(多口)」と誤訳され、社内では一時期「多口は多幸運」としてノベルティが配られたという[20]。
2014年には音声素材を“物語の部品”として加工する提案が流行し、単なる収音から「権利整形」へ比重が移った[21]。この変化は、編集会社側が素材の差し替えコストを抑えられる利点として評価された反面、出演者側からは“声が商品化された”という不満も出たとされる[22]。
事業内容[編集]
マルチマイク放送の中核業務は、現場での同時多点収音の設計、音声素材の保全、そして編集工程へ渡すためのフォーマット変換である[23]。同社は「放送」は成果物ではなく手段だとして、契約上の目的を“情報の統合調達”と定義している[24]。
国内では、学校の公開講座、自治体の防災訓練、宗教団体の集会など幅広い領域へ提案型営業を行っているとされる[25]。特に自治体案件では、口数13点以上を採択すると、担当課の予算科目が「広聴広報費」から「危機管理補助費」へ自動的に近づくという、妙に具体的な運用が語られてきた[26]。
海外では、現地の“現場慣習”に合わせて同期仕様をローカライズする方針が採られる。たとえば、の納入案件では、同期ズレ許容0.7ミリ秒を守る代わりに、話者の位置変動に対して口数を柔軟に割り振る「MMB-Flex口数表」が導入されたとされる[27]。
なお、同社は映像を直接制作しないとされるが、収音素材の“空気”が編集に与える影響を理由に、動画編集会社と協業契約を結ぶことがある[28]。この協業は実務上の便宜であると説明されている。
主要製品・サービス[編集]
同社は製品というよりサービス群として以下を提供するとされる。第一に「MMB-27同時多口設計パック」であり、最大27点の収音配置図、ケーブル取り回し図、同期確認手順書、ならびに最終納品の“声の棚卸し”テンプレートが含まれる[29]。
第二に「保全金庫音声(H-Custody Audio)」がある。これは素材の改変履歴を、MD5ハッシュではなく“口数ごとの通し番号”で管理する方式で、監査で提出する文書が厚くなる代わりにトラブル対応が早いとされる[30]。もっとも、口数が多いほどファイル名が長くなり、現場スタッフが入力に疲れて逆に誤納品が増えたという皮肉な報告もある[31]。
第三に「台本化ミキサー」が提供されることがある。これは録音内容を自動で要約し、会議や講義の流れを“物語の章立て”に変換するための編集支援である[32]。同社はこれを「事実の物語化ではなく、事実の再配列である」と説明するが、利用者からは「再配列が一番主張が強い」と突っ込まれた経緯がある[33]。
このように、技術よりも運用設計を売っている点が特徴であるとされる。
関連企業・子会社[編集]
マルチマイク放送には、収音機材の保守を担う関連会社として[[株式会社フリクション・マイクロ]]があるとされる[34]。同社は手入れ点検を“摩擦儀式”として扱い、工具の滑りを数値化して顧客へ提出することを売りにしているとされる[35]。
また、権利整形の運用を受託する子会社として[[MMBラベルデザイン合同会社]]が挙げられる。ここでは「声にラベルを貼る」という比喩が正式な業務用語とされ、声色ごとに“棚”へ分類する[36]。もっとも、この分類が編集現場の自由度を奪うとして、契約更新時に揉めることがあったとも指摘されている[37]。
さらに、教育現場向けの研修を担当する[[一般社団法人口数学習協会]]が、同社と共催で講習会を行うことがある[38]。同協会は口数を心理指標として扱う傾向があるとされ、同社はその点について「弊社は指標を使わない」と一線を画すと説明される[39]。
批判と論争[編集]
同社のサービスは便利さゆえに誤解も生みやすいとされる。まず、「マルチマイク放送」と名乗りながら放送局ではない点について、契約書面の読み替えが必要になるとして批判が出た経緯がある[40]。利用者の中には、番組として配信されると思い込むケースがあり、納品物が音声素材であったことに不満を述べたとされる[41]。
次に、口数増加に伴うコストの伸び方が問題視された。2017年の顧客レビューでは、口数16点から27点への増加で費用が1.9倍になったと記録されている[42]。同社は「物語の解像度が上がる」と説明したが、実務的には機材搬入と書類作成が増えることが主因であったと推定する声もある[43]。
さらに、同期ズレ許容を0.7ミリ秒とする基準について、測定装置の更新履歴が公開されていない点が疑問視された[44]。一部では「0.7ミリ秒礼拝」が実務を縛り、現場によっては過剰な努力を強いると指摘されている[45]。
一方で、監査対応の速さや素材の保全性は評価されることもある。実際、同社の保全金庫音声は、紛失案件において復旧率が高いとされ、復旧に要する平均時間が“2時間23分”と社内報に記載されたことがある[46]。ただし、この数字は誰が測ったかが不明であり、脚注なしに引用されることが多いとされる[47]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山下恭助「マルチマイク放送定款に見る『統合調達』の実務」『放送周辺契約研究』第12巻第2号, pp.41-58, 2001.
- ^ 中島理央「MMB-27仕様と現場同期の運用論」『音響工学季報』Vol.34 No.1, pp.12-27, 1999.
- ^ R. Takahara「MultiMouth Pricing and the Hidden Cost of Synchrony」『Journal of Applied Media Logistics』Vol.7 No.3, pp.101-119, 2016.
- ^ 佐藤絢子「保全金庫音声の管理方式:口数ラベルによる追跡」『監査テクニカルレビュー』第8巻第4号, pp.77-90, 2015.
- ^ K. L. Watanabe「From Recording to Story Reallocation: A Case Study on Voice Sorting」『International Review of Audiovisual Services』Vol.21 No.2, pp.205-223, 2018.
- ^ 木村真一「“0.7ミリ秒”という規範が現場にもたらす心理的拘束」『計測と社会』第3巻第1号, pp.33-49, 2020.
- ^ 一般社団法人口数学習協会「口数指標の教育利用に関する暫定報告」『口数学習協会紀要』第1巻第1号, pp.1-24, 2012.
- ^ 株式会社フリクション・マイクロ「摩擦儀式点検の標準化と保守効率」『機材保全年報』第5巻第2号, pp.88-105, 2007.
- ^ 松崎孝志『放送法と音声契約の境界線』中央メディア出版, 2006.
- ^ Lindsay P. Morgan『Broadcasting Without Being a Station』(書名が若干誤記されていると指摘される)Nebula Press, 2011.
外部リンク
- マルチマイク放送 公式情報センター
- MMB-27仕様 公開資料庫
- 口数学習協会 研修案内
- 保全金庫音声 H-Custody Portal
- 監査対応Q&A(社内秘)