ランゲルハンス諸島
| 名称 | ランゲルハンス諸島(Langelhans Archipelago) |
|---|---|
| 種類 | 人工島群・海洋観測施設群 |
| 所在地 | 沖合 |
| 設立 | 12年(1913年)〜29年(1954年)にかけて段階的整備 |
| 高さ | 最高塔:海抜62 m(観測塔) |
| 構造 | 玄武岩風被覆コンクリート+桟橋・海中ケーブル |
| 設計者 | 田中廉治郎(海洋構造監修)/R. Langfeld(計測塔意匠) |
ランゲルハンス諸島(よみ、英: Langelhans Archipelago)は、にある[1]。
概要[編集]
ランゲルハンス諸島は、現在ではの沖合に所在する観光・研究複合施設群として知られている[1]。複数の人工島と海上桟橋、気象・潮流の常設観測塔、さらに「聴く海図(サウンド・チャート)」と呼ばれる音響測深体験装置で構成される[2]。
「諸島」という名称であるが、実際には島ごとに役割が割り当てられており、北から南へ向けて、、、、そしてが連なる配置が採られている[3]。なお、諸島全体が「海の研究官吏の訓練場」であった時期があり、その名残として行動規範の掲示が随所に残されている[4]。
本施設は、国際的な海上観測網の空白を埋める目的で計画され、計測手順が文化観光として転用された経緯を持つとされる[5]。一方で、当時の設計図にだけ存在した「幽霧回避ループ(幽霧を避けるための航行教育)」が、のちに一般公開用の演出として残ったとも指摘されている[6]。
名称[編集]
名称の「ランゲルハンス」は、明治末期に海洋計測用の標準器を整備したとされる技師・に由来するという説がある[7]。もっとも、諸島の公式記録では、当該人物の実名が「L. H.」として伏せられたままになっており、同時期に同姓同名の文献が2種類残っている点がしばしば話題にされる[8]。
なお、地図上の正式表記は「ランゲルハンス諸島」であるが、現地では5島を中心に「五灯(いつとう)群」と呼ばれることも多い[9]。この通称は、各島に設置された灯標が“合図としても使える周波数帯”を持っていたという説明に由来し、見学者には「灯りを数えると潮が読める」と冗談めいた案内が行われる[10]。
さらに、観測塔の内壁に貼付された「塔の周りでは必ず3歩停止すること」という規約が、のちに観光用の“儀礼”として定着したとされる[11]。旅行者の間では「諸島の名前を覚えるより、停止の秒数を覚える方が難しい」とも言われている[12]。
沿革/歴史[編集]
計画の背景:潮流を“音”で測る[編集]
10年(1911年)、海域での測量事故が相次ぎ、船舶は「霧の中では方位よりも沈黙が重要」とする航海教育を強化されたとされる[13]。この教育の延長で、音響測深と気象観測を統合する計画が立ち上がり、ランゲルハンス諸島の前身となる「海上訓練棚(てっぱん)」が設計された[14]。
このとき、海中ケーブルの耐久試験には合計で1,284回の引張試験が実施され、記録は「切断寸前を避けるため、毎回“切断の手前で止める”」という手順書として残された[15]。さらに霧室では、外気の湿度を期の研究所が独自に再現し、体感湿度を“人間が話をやめたくなる程度”まで上げたとされる[16]。
戦後整備と観光化:官側の余剰設備が転用された[編集]
29年(1954年)、沿岸警備と研究の両方に必要とされた観測塔が再整備され、各島の桟橋が一般見学可能な形へ改修された[17]。この改修の際、旧来の“官吏用通路”が細すぎたため、幅は規格の1.6倍に拡張されたが、手すりの高さだけは昔のまま維持されたとされる[18]。
また、観測塔の表示には本来「風向—風速—気圧」の三段表示が採用されていた。しかし一般来訪者が数字を読まず“点滅の癖”を楽しむ傾向が統計的に確認され、点滅パターンは年間で317通りに整理されたとも記録される[19]。この数字の細かさは、当時の技師が「見学者の飽きは、季節より先に来る」と考えたことに由来すると説明されている[20]。
施設[編集]
ランゲルハンス諸島では、島ごとの機能が明確に分担されている。まずには、舵角学習用の“斜め湾曲レール”が残されており、海面上での誤差が最小になる操船姿勢を体験できるとされる[21]。
次には、見学者が透明な壁越しに霧の濃度変化を観察する構造となっている。濃度は段階的に切り替えられ、案内では「第3段階は合図の声が届きにくいが、声量を上げると逆に誤認が増える」と説明される[22]。この説明は安全上の一般論とされつつ、なぜか“演出としての言い回し”が強いことが特徴である[23]。
では、測深結果が画面表示されるだけでなく、床面の共鳴スピーカーが深度に応じて音階を鳴らす。深さを「ド(D)から始め、増すほど高くなる」とする案内は、研究者による技術文書に見られない独自の比喩であり、現地スタッフの創作として語られている[24]。
には、凍結に強いとされる海岸植物が隔離栽培され、島の“匂い”そのものが気象データの補助として記録されたとされる[25]。なお、この隔離庭の床は、凍結膨張を抑えるために「直径12 mmの排水孔」を所定格子で配置したとされるが、なぜ12 mmなのかは資料によって記述が異なる[26]。
最後には、夜間に周波数帯を変える灯りとして整備され、近距離の見学用には「点滅を数えると帰りの桟橋が見つかる」と説明される[27]。実際には、訪問者が点滅を数え間違えても桟橋へ戻れるよう冗長設計になっているとされる[28]。
交通アクセス[編集]
ランゲルハンス諸島への到達は、通常の指定桟橋から出る定期便により行うとされる[29]。便は海況に応じて変動するが、夏季には1日につき4往復、冬季には2往復に縮小される傾向があるとされる[30]。
空路からは方面の小型空港へ移動したのち、陸路でを経て桟橋に至るルートが推奨される。所要時間は「乗換込みで約3時間」と案内されることが多いが、実際には霧室の見学枠で待機が発生し、結果として4時間前後になることがある[31]。
現地では、島内の移動は徒歩ではなく短距離の“観測カート”が基本となっている。観測カートは安全のため速度制限が設けられ、記録上の標準速度は時速7.5 kmとされるが、雨天時だけ時速6.8 kmへ落とす運用があると説明される[32]。なお、観測カートの呼称は部署間で異なり、「測員車(そくいんしゃ)」と呼ぶ人もいる[33]。
文化財[編集]
ランゲルハンス諸島のうち、特にとは保存価値が高いものとして、登録文化財相当の扱いで整備されているとされる[34]。指定の理由は、海洋観測施設の“機能美”が一体として残っている点にあると説明される[35]。
また、各島の観測塔内壁にある当時の手順書は、教育資料としても評価されている。そこには「停止は3歩」「復帰は合図音から7拍後」「潮の回復は観測者の息継ぎが基準」といった、技術文書にしては冗長な表現が残っているとされる[36]。この表現は一部で「儀礼化による風紀統制」との批判も受けたが、のちに“体験学習”として再解釈された経緯がある[37]。
なお、観測カートの通路に設置された古い点字は、規格よりも細いリズムで打刻されていることがあり、研究者の間で「当時の通信技術の名残」と言及される[38]。この点字は現在でも保存され、見学者には触ってよい範囲が掲示されている[39]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中廉治郎「ランゲルハンス諸島整備報告(海上訓練棚の改修案)」『海洋構造年報』第12巻第3号, pp. 41-79, 1921年.
- ^ R. Langfeld「On the Rhythm of Lighthouse Signals for Non-Professional Mariners」『Journal of Maritime Acoustics』Vol. 7, No. 2, pp. 101-136, 1938.
- ^ 北海道庁編『北方海域観測と教育訓練の記録』北海道庁, 第1版, 1956年.
- ^ 小西栄一「霧室の体感再現と安全運用」『気象装置研究』第4巻第1号, pp. 9-33, 1962年.
- ^ Sato, M.「Sound-Chart Navigation in Early Facility-Based Surveying」『Proceedings of the Pacific Cartography Society』Vol. 19, No. 4, pp. 220-248, 1971.
- ^ 根室観光課『ランゲルハンス諸島見学案内(改訂・点滅パターン表を含む)』根室観光課, 1978年.
- ^ 内海測器株式会社『観測カート速度規程の制定経緯』内海測器, 第2版, 1984年.
- ^ 林文之「登録文化財としての海洋観測施設——教育資料化の試み」『文化財工学』第10巻第2号, pp. 55-88, 1999年.
- ^ K. O’Brien「Training Rituals and Infrastructure Remembrance」『International Review of Heritage Studies』Vol. 33, No. 1, pp. 12-40, 2006.
- ^ 斎藤みや「灯標群の周波数運用——誤読を前提とした冗長設計」『交通安全と視覚標識』第21巻第1号, pp. 77-112, 2015年(※題名中の“視覚”が誤記されているとの指摘がある).
外部リンク
- ランゲルハンス諸島公式見学案内
- 根室海上博物資料館(資料閲覧)
- 北海道海洋観測アーカイブ
- 霧室体験レポート集
- 音響測深サウンドチャート研究会