劇場版ドラゴンボールZ 逆襲の猛血虎
| 作品名 | 劇場版ドラゴンボールZ 逆襲の猛血虎 |
|---|---|
| 監督 | 中西健二郎 |
| 脚本 | 北条澄人 |
| 原作 | 鳥山明 |
| 製作 | 東映アニメーション |
| 公開 | 1993年7月17日 |
| 上映時間 | 58分 |
| 興行収入 | 約14億8,300万円 |
| 前作 | 劇場版ドラゴンボールZ 激突!!100億パワーの戦士たち |
| 次作 | 劇場版ドラゴンボールZ 銀河最終防衛線 |
劇場版ドラゴンボールZ 逆襲の猛血虎は、と監修のもと、に公開されたとされる日本の劇場アニメ映画である。血中の戦闘因子を増幅する「猛血虎」現象をめぐり、たちが由来の古代文書を追う作品として知られている[1]。
概要[編集]
『劇場版ドラゴンボールZ 逆襲の猛血虎』は、前半の東映系劇場アニメ路線のなかでも、特に異様な題名と過剰な生体設定で知られる作品である。公開当時は夏休み興行の一環として配給され、同時上映の短編とともに、の一部劇場で先行的に音響テストが行われたとされる[2]。
作品の中心にある「猛血虎」は、単なる怪獣名ではなく、戦闘時に体内へ赤外線状の気を蓄積し、怒りの閾値を超えると筋繊維が虎縞状に変化するという架空の現象である。のちに一部のファンの間では、同作の設定が内の放送局で行われた深夜会議の産物だとする説が広まり、半ば都市伝説として扱われている。
成立の経緯[編集]
企画は社内の「劇場版強化検討会」から生まれたとされ、当初は単なる強敵名として「猛血虎」が置かれていた。しかし、脚本会議で秋に提出された第4稿において、敵側の科学者が虎の交配実験ではなく「闘気の血中保存」に成功したという設定に変更され、以後の資料で不可解に整合性が取られていく[3]。
監督の中西健二郎は、武道映画と海洋ドキュメンタリーを併読する癖があったとされ、画面上の赤い煙や筋肉表現に執着した。なお、主題歌の録音時にのスタジオで起きた停電事故が、作中の停電する研究施設の描写に流用されたという逸話が残る。
あらすじ[編集]
では、正体不明の赤い獣影が各地の格闘大会会場を襲い、会場跡にだけ虎の爪痕のような焦げ跡を残していた。悟空たちは現地調査のための沿岸研究都市に向かい、そこに建てられた民間生命工学施設で、血液を触媒にして戦闘力を保存する「猛血虎炉」を発見する。
施設の設計者であるドクター・ジンナイは、かつてで流通していた高純度鉱石「紅虎晶」を研究していたが、偶然にも戦士の闘気と反応する性質を見いだしたとされる。悟飯とトランクスは冷却塔内で分断され、悟空は「虎の血統式」と呼ばれる不可解な数式に追われることになる。
終盤では、猛血虎が虎型の戦闘生物ではなく、都市全域の血管網を模した巨大エネルギー装置であることが判明する。悟空がかめはめ波を放つと、施設全体が赤い霧に包まれ、最後はの底へ沈降するが、翌週には跡地から同じロゴの警備会社が現れたとされる。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
孫悟空は、猛血虎の「血中増幅波」に対して唯一自然耐性を示す戦士として描かれる。作中では珍しく、戦闘よりも調査と会話に比重が置かれているが、これはの北条澄人が「殴る前に仕組みを理解する主人公」を志向したためとされる。
ベジータは、猛血虎炉を「下品だが精密な発明」と評し、研究データを奪うため単独潜入を行う。なお、彼が着用する防熱装甲の腹部には、実在の工業規格を思わせる刻印があるが、編集者の間では当時の美術班がの配管図を誤ってトレースしたものだと見られている。
ドクター・ジンナイは、白衣に虎紋の裏地を縫い込んだ中年科学者で、声優収録時に妙に説得力があったため、公開後にファンレターが多数届いたという。彼の最期の台詞「血は逆襲する」は、後年の同人誌やバラエティ番組で頻用された。
脇役・敵側[編集]
紅虎晶の採掘責任者である田宮サエは、当初は事務職員にすぎなかったが、第2稿で突然、施設全体の動力炉を停止できる立場へ引き上げられた。この不自然な昇進は、制作進行表に記された「田宮→重要」の誤記がそのまま採用されたためだといわれる。
猛血虎の外殻を構成する「虎血兵」は、赤い筋肉と金属骨格が混ざった半生体兵器で、作画枚数の節約のため同じポーズが7回も反復使用された。にもかかわらず、特定のファンの間ではその反復が「怒りの周期」を表現しているとして高く評価されている。
製作[編集]
制作はのスタジオ群を中心に進められたが、背景美術だけは異様に緻密で、の埋立地との造船所を混ぜたような都市風景が描かれている。これは背景担当の加藤ミツルが、現地取材の代わりに夜行列車で見た港湾照明を記憶だけで再構成したためとされる。
音響面では、猛血虎炉の起動音として、実在の心電図モニターの信号を逆再生したものが使われたとされる。制作記録には「虎鳴き処理:3回目で採用」とあり、試験音源のうち1本はあまりに不気味だったため、ながら社内で「深夜の自販機音」と呼ばれていた。
なお、セル画の総枚数は約41,600枚とされ、夏休み映画としてはやや多い部類である。特にクライマックスの赤霧シーンでは、1カットに対し背景色だけで12層が使われたという。
公開・興行[編集]
公開は7月中旬で、では初週から家族連れと中高生が混在する珍しい客層を形成した。配給資料によれば、公開第1週のスクリーン稼働率は92.4%に達し、地方館では立ち見客のために上映回数が1日7回へ増やされた劇場もあった。
また、とでは、上映館周辺の玩具店で「猛血虎メンコ」が突然売れ始め、翌月には未使用在庫が市場価格の3倍で取引されたという。興行収入は約14億8,300万円とされるが、再上映分や併映イベントを含めるかで数字が揺れている。
社会的影響[編集]
本作は、血液や生体反応を戦闘演出へ持ち込む流れを加速させた作品として、一部のアニメ批評家に引用されている。とりわけ「猛血虎」という語は、のちにゲーム雑誌や健康食品の広告で流用され、筋力増強を誇張する比喩として定着した。
さらに、には内の中学校で、理科部が「血中増幅の再現実験」を行い、赤い寒天培地を虎縞状に着色して問題になった事例がある。これは教育委員会の記録にも残っているとされるが、当時の担当者は「映画の影響ではなく生徒の自由研究である」とコメントしたという。
一方で、作品の後半に登場する港湾沈降シーンは、防災アニメとして再評価され、の一部の地域放送で津波避難訓練の前座映像に使われたという珍しい経歴を持つ。
批判と論争[編集]
批判の主眼は、物語後半の科学説明が急に専門用語へ寄りかかりすぎる点にある。特に「血統式指数」「虎血圧」「赤霧臨界」などの語は、辞書風に言い切る一方で定義が章ごとに微妙に変わるため、公開当初から整合性を疑問視する声があった。
また、猛血虎のデザインが実在の獣医学ポスターに酷似しているとの指摘もあり、に一度、の非公式会合で話題になったとされる。ただし、当時の資料は一部欠損しており、真相は曖昧である[4]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北条澄人『劇場版アニメ脚本術と生体演出』映像文化出版社, 1996.
- ^ 三輪晴彦「1990年代東映劇場アニメにおける赤色表現」『アニメーション研究』Vol.12, No.3, pp. 41-58, 1998.
- ^ Y. Kanda, "Blood-Based Power Systems in Japanese Feature Animation," Journal of Popular Media Studies, Vol. 8, No. 2, pp. 113-129, 2001.
- ^ 中西健二郎『劇場版ドラゴンボールZ 逆襲の猛血虎 制作ノート』東映資料室, 1994.
- ^ 田辺修一「港湾都市と破壊表現の相互作用」『映像工学年報』第7巻第1号, pp. 5-22, 1995.
- ^ Margaret A. Thornton, "Tiger Motifs and Industrial Sound Design," Quarterly Review of Anime Studies, Vol. 4, No. 1, pp. 77-90, 2002.
- ^ 北村礼子『夏休み映画と少年観客の変容』青葉書房, 1997.
- ^ 東映アニメーション編『劇場アニメ史料集 1990-1994』第2巻, pp. 201-248, 1999.
- ^ 石黒潤一「猛血虎現象の社会言語学的分析」『言語と大衆文化』第19号, pp. 88-101, 2004.
- ^ Simon H. Vale, "The Curious Case of the Bloody Tiger Counterattack," East Asian Film Review, Vol. 15, No. 4, pp. 9-31, 2010.
外部リンク
- 東映アニメーション資料館
- 劇場版ドラゴンボールZ非公式年表アーカイブ
- 猛血虎研究会
- アニメ港湾史データベース
- 昭和平成アニメ音響資料室