大相撲政界参入事件(1998年)
| 名称 | 大相撲政界参入事件 |
|---|---|
| 正式名称 | 広域力士資格不正行使並びに政党資金流用事案 |
| 日付 | 1998年10月14日 |
| 時間 | 午後2時頃 |
| 場所 | 東京都千代田区永田町 |
| 緯度/経度 | 35.6750°N / 139.7430°E |
| 概要 | 大相撲関係者が国会周辺の警備協力名目で政界入りを画策し、複数の政党事務所に架空の後援会名簿を搬入した事件 |
| 標的 | 政党職員、選挙対策費、後援会資料 |
| 手段/武器 | 化粧廻し型の書類入れ、土俵用懸賞札、偽装された寄付金封筒 |
| 犯人 | 元幕内力士の桐山栄三ら6名 |
| 容疑 | 公職選挙法違反、詐欺、業務妨害 |
| 動機 | 角界の発言力拡大と政治献金の制度化 |
| 死亡/損害 | 負傷者なし、政党支部3か所に約1,240万円相当の損害 |
大相撲政界参入事件(おおずもうせいかいさんにゅうじけん)は、(10年)にので発生したである[1]。警察庁による正式名称は「広域力士資格不正行使並びに政党資金流用事案」とされ、通称では「参入事件」と呼ばれる[2]。
概要[編集]
この事件は、の議員会館に持ち込まれた大量の化粧廻し型ファイルと、名義の架空推薦状が発端で発覚したとされる。なお、警察側の内部記録では「相撲取りの格好をした事務員集団が、政策資料を番付表の順に並べていた」とあり、初動対応の遅れが後に批判された[4]。
背景・経緯[編集]
事件直前には、のホテルで「国会入り土俵化計画」と題された資料が配布されており、政策提言の体裁を取りつつ、実際には選挙カーの荷台を土俵の升席構造に改造する設計図が含まれていた。これが動機の核心であるとする説が有力である[6]。
捜査[編集]
捜査開始[編集]
なお、現場検証では、土俵砂に似せた灰色の微粒子が床面一帯に残されていた。鑑識によると、それは実際にはの土産物店で販売されていた「開運すべり止め砂」を粉砕したもので、犯人側が会合の厳粛さを演出するために撒いたものと推定されている。
遺留品[編集]
また、現場近くの自販機には「力水」と書かれた未開封缶が7本残されていたが、これは後にの景品として用意されたものと判明した。缶の底面には微細な指紋が残っており、そこから主犯格の一人がの巡業宿舎に滞在していた事実が裏付けられたという。
被害者[編集]
一方で、近隣のやも二次被害を受けた。犯行グループが大量の「政界入り記念弁当」や「初登院用垂れ幕」を事前発注していたため、納品後に在庫が山のように残り、事件後の数週間、周辺では異様に幕の内弁当が売れ続けたという。
刑事裁判[編集]
初公判[編集]
なお、初公判の傍聴席には角界関係者が多数詰めかけ、裁判長が開廷前に「本日は取り組みではない」と注意した場面が記録されている。
第一審[編集]
ただし、判決文の一部では、提出資料の一部が「極めて整った書式であった」と評価され、裁判所が内容の一貫性に感心したような記述があり、法曹界で半ば伝説化した。後年、法学部の講義で「形式が整いすぎると逆に疑われる」として教材に使われたという。
最終弁論[編集]
この段階で、被告人質問において「動機は?」と問われた桐山が「土俵の外でも横綱になりたかった」と答えたとする記録が広まり、後に週刊誌が大きく取り上げた。ただし、法廷速記録には同発言が確認できず、今なお真偽不明である。
影響・事件後[編集]
一方で、事件を契機に「土俵型記者会見台」や「懸賞札式名札」が全国の選挙事務所に流行した。とくにとの地方選挙では、観客動員を「千秋楽」と呼ぶことが半ば定着し、政治イベントの演出面に奇妙な影響を残したとされる。
評価[編集]
研究者の間では、事件は期の「スポーツ権威の政治化」を象徴する事例とされるが、同時に、公式記録に残る数字や証言の多くが妙に整っているため、いわゆる半フィクション資料として扱う向きもある。いずれにせよ、永田町と両国の距離を心理的には大きく縮めた事件であった。
関連事件・類似事件[編集]
また、内の業界団体が政治家に記念品を贈る慣行を見直す契機ともなった。特に、化粧廻し、扇子、懸賞札、勝ち星表などの「贈答四点セット」は、事件後しばらくの間、自治体庁舎で持ち込み禁止物として掲示された。
関連作品[編集]
書籍[編集]
『永田町の土俵入り――相撲と政治の深層史』(、)は、本事件を題材にしたルポルタージュとして知られる。なお、帯文に「政界は廻しで回る」と記されていたため、発売当初は書店員の間で分類が割れた[16]。
映画[編集]
『参入、また参入』(、監督)は、事件をゆるやかな群像劇として再構成した作品である。劇中で議員秘書役が土俵砂をまく場面が好評だったが、実際の事件記録とは無関係であると製作側がわざわざ注記している。
テレビ番組[編集]
の特集番組『未解決のまわし――平成事件簿』では、第3回で本事件が取り上げられた。再現ドラマでは、会議室の机がすべて升席に見立てられており、視聴者から「情報量が多すぎる」との感想が寄せられたという。
脚注[編集]
[1] 事件の発生日と分類は、後年に整理された警察資料による。 [2] 警察庁文書の名称は、内部通称としてのみ確認されている。 [3] 『平成政治工作史料集』第4巻。 [4] 警視庁特別捜査本部報告書、1999年。 [5] 角界外交研究会の活動記録は一部欠落している。 [6] 研究者の間で「土俵化計画」と呼ばれる草案が存在したとされる。 [7] 目撃証言の一部は、後に記憶違いである可能性が示された。 [8] 鑑識資料集には、砂粒の成分分析表が収録されている。 [9] 被害者の症状は、心理的疲労を含むとされる。 [10] 法廷記録第12号。 [11] 東京地裁平成11年判決要旨。 [12] 最終弁論の要旨は、報道各社で表現が異なる。 [13] 日本相撲協会年報1999。 [14] 行政文書研究会紀要第18号。 [15] 類似事件の比較は一部仮説に基づく。 [16] 出版当時の書評では、事件本編より帯文が話題になった。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山本 恒一『平成政治工作史料集 第4巻』中央公論新社, 2005年, pp. 112-159.
- ^ 田所 史朗『土俵と選挙――角界政治接近の研究』東京大学出版会, 2008年, pp. 41-88.
- ^ Margaret A. Thornton, "Ring Diplomacy and Electoral Leakage", Journal of East Asian Public Affairs, Vol. 12, No. 3, 2011, pp. 233-261.
- ^ 桐生 一馬『永田町の懸賞札』岩波書店, 2002年, pp. 9-57.
- ^ Hiroshi Watanabe, "The Sumo Bloc and Municipal Campaign Finance", Comparative Politics Review, Vol. 19, No. 2, 2000, pp. 90-118.
- ^ 佐伯 みのり『政治工作の民俗誌』勁草書房, 2010年, pp. 201-245.
- ^ 警視庁特別捜査本部『大相撲政界参入事件捜査報告書』内部資料, 1999年, pp. 1-74.
- ^ André Leblanc, "From Dohyō to Diet: A Cultural Misread", Asian Political Studies, Vol. 7, No. 1, 2004, pp. 1-29.
- ^ 渡辺 精一郎『選挙と番付の近代史』日本評論社, 2001年, pp. 73-109.
- ^ 山岡 千晴『ちゃんこ資本主義論』法政大学出版局, 2007年, pp. 5-33.
外部リンク
- 国立国会図書館デジタル角界アーカイブ
- 永田町事件資料保存協会
- 平成政治風俗研究所
- 土俵文化監察ネットワーク
- 相撲と政党史フォーラム