天空の城ラピュタ2
| 作品名 | 天空の城ラピュタ2 |
|---|---|
| 原題 | Castle in the Sky 2: Laputa Returns |
| 監督 | 久遠寺 恒一 |
| 脚本 | 久遠寺 恒一、朝比奈 玲子 |
| 製作 | 東雲映画プロダクション |
| 配給 | 東雲映画 |
| 公開 | 1998年7月18日 |
| 上映時間 | 127分 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 約12億円 |
| 興行収入 | 38.4億円 |
| 前作 | 天空の城ラピュタ |
| 次作 | 天空の城ラピュタ2: 風の遺言 |
『』(てんくうのしろラピュタつー)は、に公開されたの。原作・脚本・監督は、配給はが行った。興行収入はで[1]、最優秀作品賞を受賞した[2]。
概要[編集]
『』は、失われた浮遊都市の再浮上をめぐる騒動を描いたののである。前作『』の公開から13年後に企画された続編で、当初はの記念事業として小規模に立ち上がったが、完成試写の段階で作品の異様な密度が注目され、全国公開へと拡大されたとされる[1]。
本作は、が古代遺跡研究会で聞いた「空に沈む城」の伝承を下敷きにして構想したとされ、物語上ではの失踪後に残されたの欠片を巡って、一族の残響と新興航空企業の対立が描かれる。なお、制作現場では「2」を付けるかどうかで2か月にわたる会議が行われたが、最終的には宣伝部の提案で現在の題名に落ち着いたと記録されている[要出典]。
あらすじ[編集]
物語は、失墜から十数年後のを舞台に始まる。炭鉱で働く少年は、祖父の遺品から半透明の石板を見つけ、それがの自律航行機構の一部であることを知る。石板には、毎年の夜にしか開かない「逆さの門」の座標が刻まれており、上空に現れる雲の渦へと導く設計になっていた。
一方、の委員長は、浮遊都市を観光資源として再生するため、と共同で実験飛行を進めていた。しかし、石板の起動により城は予定外の高度まで上昇し、内部に封印されていた自動防衛機構「」が作動する。終盤では、ユウと少女が城の中央塔へ向かい、落下する群を手渡しで接続して再安定化を試みるが、最後に現れたのは前作で消えたはずのの影像であり、観客の間ではここが最も意味不明で好きな場面として語られている。
結末では、ラピュタは完全な再浮上を避け、自ら霧の中へ沈降する。だが、エンドロール直前に東京都心上空へ小さな灯がひとつ点る演出があり、以後この作品は「続編でありながら、さらに続編を予告する珍しい商業アニメ映画」として扱われるようになった。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
は、鉱山町で暮らす少年で、石工見習いの祖父からの記録片を受け継ぐ人物である。前作の主人公像を踏襲しつつも、機械に強いという設定が追加されており、製作初期には「現代の読者が感情移入しやすい理系少年」として設計された。
は、の通信士であり、城内部の古語を解読する役割を担う。終盤で石板を逆順に読む癖が物語の鍵となるが、脚本段階では3回に1回しか出番がなかったため、編集会議で大幅に台詞が足されたとされる。
は、再建委員会の委員長であると同時に、旧研究班の元記録官でもある。表向きは文化財保護の専門家だが、実際にはラピュタの動力を観光灯台として転用しようとする野心家で、白いマフラーを常時巻いていることから「灰色の公務員」と呼ばれた。
その他[編集]
は前作の面影を持つ立体映像として登場するが、台詞の大半は新録ではなく、のラフ音声を再編集したものであるとされる。なお、この処理は後年のホームメディア版で音質差が指摘された。
は、ラピュタの自動警備を司る機械鳥で、片足に小さな方位磁石を内蔵している。劇場公開時には玩具化が難しい形状だったため、関連商品ではなぜか箸置きとして販売された。
声の出演[編集]
ユウ・パズは、ニナは、クラウス・ベックはが担当した。いずれも当時は舞台やラジオドラマで知られていた声優であり、映画公開後に「声の湿度が高い配役」として一部批評家に好意的に受け止められた。
ドーラ役には、ラピュタの主制御音声にはが起用された。また、群衆のざわめきや飛行機械の駆動音の一部まで、ナレーション経験者が細かく吹き込んだとされ、録音台本はA4用紙で312枚に及んだ。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
作画監督は、美術監督は、撮影監督はが務めた。背景美術ではの高架下やの山間部を実地取材し、それを18世紀風の空中廃墟へ置換する手法が採用された。
特殊技術は、古典的なセル画に加えて、当時まだ珍しかったによる雲層生成を取り入れるなど、2次元と3次元の境界を曖昧にした点で知られる。とくにラピュタ本体の回転シーンは、1秒間に24枚の手描き原画の上へCGで金属反射を重ねる方式で制作された。
製作委員会[編集]
製作は、共同出資に、、が参加した。映画史研究では、この布陣が「なぜ出版と空港会社が空中城塞に投資したのか」という定番の疑問として引用される。
製作委員会方式の導入により、上映館数は当初の42館から98館へと増加した。なお、最終決裁書には「空を落とさないこと」と「屋根に穴を開けすぎないこと」という異例の注意書きが付されていた。
製作[編集]
企画[編集]
企画は、がの古書店で見つけた19世紀末の飛行機械図譜に端を発する。彼はこれを「失われた続編の骨格」と解釈し、を単なる城ではなく、自己修復する都市文明として再定義した。結果として、前作とは独立しつつも、どこか続きもののように見える奇妙な構造が生まれた。
また、プロデューサーのは、当初タイトルを『天空の城ラピュタII: 空白の王国』とする案を推していたが、宣伝会議で「II」が電話帳のように見えるとして却下されたという。最終的に現在の題名になった経緯は、配給会社の社内報にしか残っていない。
制作過程[編集]
本作は、通常の長編アニメの倍近いレイアウト枚数が使われたことで知られ、総レイアウト数はに達した。とくに中央塔崩壊の場面は、3度にわたって作り直され、最終稿では塔の窓が1枚増えたことで作画班が歓声を上げたと伝えられている。
制作中盤には、ラピュタ内部の重力を表現するため、スタジオの床を傾けた簡易模型が用いられた。しかし、模型が誤って回転し、会議室の湯のみ12個が一斉に床へ落下した事件が「重力事故」と呼ばれ、以後、撮影台には滑り止めが標準装備された。
美術・CG・彩色・撮影[編集]
美術班はの石灰棚との断崖都市の資料を併読し、ラピュタの外壁を「朽ちた白亜」と「青銅の湿気」が混じる色彩で設計した。彩色には当時としては珍しい7層グラデーションが用いられ、雲の縁だけで専用の色見本が43色作られた。
CG担当はわずか6名で、背景雲と浮遊粒子、そして飛行石の発光を管理した。撮影では、石板に反射する光をわざと毎カット1.5フレームずらす手法が採られ、「画面が少しだけ夢を見ているように見える」と評価された。
音楽・主題歌・着想の源[編集]
音楽はが担当し、とを組み合わせた主題曲「」が使用された。主題歌はによる「」で、発売当時のシングル盤には、なぜかラピュタの地図が折り込みで付属していた。
着想の源について、監督はの空中庭園、の古墳群、そして少年時代に見た港湾クレーンの群れを挙げている。もっとも本人は後年、「続編を作るというより、空の遺跡の方からこちらへ来てしまった」と述べたとされる。
興行[編集]
宣伝・封切り[編集]
宣伝キャッチコピーは「」であった。公開前には、、で大型立て看板が設置され、看板の城部分だけが夜間に発光する特殊印刷が施された。
封切りはで、初週動員はを記録した。公開館の一部では、入場者特典として飛行石型の温度計が配布されたが、真夏に白く濁る個体が相次ぎ、後に「不良ではなく演出」と説明された。
再上映・テレビ放送・ホームメディア[編集]
にはが再上映され、旧版では見えなかった塔の窓枠が1本増えていることが話題になった。テレビ放送ではの系初放送での視聴率を記録し、以後、夏季の定番枠として数回再放送された。
映像ソフト化では、初回DVD版において空の色がやや紫寄りに見える問題、いわゆる「」が発生したが、2年後の修正版では雲の白さが改善された。なお、海外向けVHS版はラピュタの固有名詞を避けるため、タイトルが『Sky Fortress Two』に変更されていた。
反響[編集]
批評・受賞[編集]
批評家からは、前作のノスタルジーを踏襲しながらも、国家制度と文化財保存をめぐる風刺が加わった点が評価された。一方で、終盤の立体映像ドーラについては「感動的だが説明が足りない」との指摘があり、公開当時から賛否が分かれた。
本作は最優秀作品賞、アニメーション部門優秀賞、美術賞を受賞した。さらに、音響部門では飛行石の共鳴音が「人間の耳に心地よい周波数帯を逸脱している」として特別技術賞を受けている。
売上記録・賞歴[編集]
興行収入は最終的にとなり、1998年公開の日本アニメ映画としては年間4位を記録した。公開14週目には前週比を落としながらも累計でを突破し、配給会社の予想値を約上回った。
雑誌『』は、本作を「続編の形を借りた都市神話」と評した。なお、海外では無名ながら、のアニメ研究会でだけ異様に熱心に研究され、論文が17本出たとされる。
テレビ放送[編集]
テレビ放送版は、劇場公開版より約4分短く編集され、オープニング前の雲の流れと中盤の食事シーンが一部カットされた。これは地方局の編成上の都合とされるが、ファンの間では「雲が多すぎたため」と冗談交じりに語られている。
の深夜再放送では、瞬間最高視聴率を記録したとされる。もっともこの数字には、同時刻に発生した大規模な台風報道の影響が含まれていたとの指摘があり、視聴率解析では今なお議論の余地が残る。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの[編集]
劇場公開時には、の欠片を模した蓄光ストラップ、ラピュタ外壁の質感を再現したノート、そして作中の石板を縮尺1:3で再現した文鎮が販売された。とくに文鎮は重すぎて文鎮としてではなく、机の上の「移動防止具」と呼ばれた。
また、設定資料集『』は全248ページで刊行され、制作時の没案が多数収録された。その中には、ラピュタが最後にへ着水する案もあったが、さすがに不自然として削除された。
派生作品[編集]
には小説版『』が刊行され、映画では描かれなかったの過去が補われた。さらににはゲーム化され、城内のエレベーター操作だけで30分かかる難度の高さが話題になった。
舞台化企画も一時進んだが、吊り機構の安全審査で「浮遊都市を宙吊りにするには会場が足りない」と判断され中止された。代替として、全国3都市で「空の城朗読会」が行われた。
脚注[編集]
1. ^ 興行収入については、東雲映画社内資料『1998年度配給成績報告書』に基づくとされる。
2. ^ 受賞歴は『第22回日本アニメーション大賞 記録集』による。
3. ^ 企画会議の逸話は、制作進行・三好恭平の回想録にのみ見える。
4. ^ テレビ視聴率はビデオリサーチ風の独自集計に依拠しており、異なる集計値が流通している。
参考文献[編集]
久遠寺 恒一『空に続編はあるか』東雲出版, 2001年.
朝比奈 玲子『アニメーション都市論: ラピュタ以後』北辰書房, 2004年.
T. Morikawa, “Floating Ruins and Postwar Memory in Japanese Animation,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 2003.
S. Sawatari, “The White Pigeon Furnace: Mechanical Theology in Laputa 2,” Animation & Myth Quarterly, Vol. 8, No. 1, pp. 5-29, 2005.
三好 恭平『重力事故の記録』国土文化社, 2002年.
西園寺 早苗『雲の縁を撮る』映像技術評論社, 1999年.
K. Kuonji, “On the Second Descent of Laputa,” Proceedings of the Tokyo Sky Heritage Symposium, pp. 112-139, 2000.
『アニメ通史 増補版』青磁館, 2010年.
藤堂 玲子『声の湿度』白鳩文庫, 2006年.
相良 俊介『配給と幻想のあいだで』東雲新書, 2007年.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
東雲映画作品データベース
日本アニメーション資料館
ラピュタ2研究会
空中遺跡保存協会
映画年鑑オンライン
脚注
- ^ 久遠寺 恒一『空に続編はあるか』東雲出版, 2001年.
- ^ 朝比奈 玲子『アニメーション都市論: ラピュタ以後』北辰書房, 2004年.
- ^ T. Morikawa, “Floating Ruins and Postwar Memory in Japanese Animation,” Journal of East Asian Screen Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 2003.
- ^ S. Sawatari, “The White Pigeon Furnace: Mechanical Theology in Laputa 2,” Animation & Myth Quarterly, Vol. 8, No. 1, pp. 5-29, 2005.
- ^ 三好 恭平『重力事故の記録』国土文化社, 2002年.
- ^ 西園寺 早苗『雲の縁を撮る』映像技術評論社, 1999年.
- ^ K. Kuonji, “On the Second Descent of Laputa,” Proceedings of the Tokyo Sky Heritage Symposium, pp. 112-139, 2000.
- ^ 『アニメ通史 増補版』青磁館, 2010年.
- ^ 藤堂 玲子『声の湿度』白鳩文庫, 2006年.
- ^ 相良 俊介『配給と幻想のあいだで』東雲新書, 2007年.
外部リンク
- 東雲映画作品データベース
- 日本アニメーション資料館
- ラピュタ2研究会
- 空中遺跡保存協会
- 映画年鑑オンライン