我々だ帝国
| 成立 | 2008年頃 |
|---|---|
| 発祥地 | 東京都杉並区のレンタル会議室と大阪市北区の深夜配信スタジオ |
| 公用語 | 日本語、旧式の実況スラング、儀礼的な複数形表現 |
| 統治形態 | 合議制帝政 |
| 首都 | 架空首都「第七編集区」 |
| 主要機関 | 編集評議会、寝言省、字幕院 |
| 象徴 | 仮面、赤い封蝋、録画ボタン |
| 人口 | 約18万名と推定される(2023年時点) |
| 通貨 | W-円(ワン円) |
我々だ帝国(われわれだていこく、英: Warewareda Empire)は、のインターネット文化圏において、複数の話者が単一の「我々」名義で行動するために編成された擬似国家組織である[1]。主に後半の動画掲示文化から発展したとされ、後に独自の官制・税制・儀礼を持つ言語圏共同体として知られる[2]。
概要[編集]
我々だ帝国は、動画配信・実況・二次創作・内輪儀礼が相互に干渉して形成された、半ば自発的な共同体である。一般には単なるファン文化の一変種とみなされることが多いが、帝国側の史料では「複数の発話主体が単一の国家人格を共有する政治実験」と定義されている。
その成立はの「匿名発言の集団化」に端を発するとされる。発端となったのは内の小規模配信室で行われた定期実況会で、参加者が互いの発言をすべて「我々」で引き受ける形式を採ったことが、後に帝国制度の原型になったとされている[3]。
起源[編集]
実況共同体からの分化[編集]
初期の我々だ帝国は、系の実況文化に強く依拠していたとされる。特に前後、編集担当のが「個人名義では炎上が分散しない」という理由で複数名義の統一を提案したことが、制度化の契機になったという。なお、この逸話は当時の配信ログに直接残っていないため、後年の帝国史編纂局によって補われた可能性が高い[4]。
帝国の名称は、参加者が台本外の発言でも「我々は〜である」と言い続けたことに由来するとされる。これがいつしか敬称ではなく国家名として扱われ、字幕内の表記が「我々だ」から「我々だ帝国」へ固定された。
杉並会議と帝国憲章[編集]
の貸会議室「西荻文化センター別館」で行われたとされる第3回定例会議では、わずか42分の議論で帝国憲章が起草された。ここで「発言は自由だが、編集権は字幕院に帰属する」「遅刻者は外交官として扱う」「お菓子は税ではなく供出である」など、きわめて実務的な条文が採択されたと伝えられる。
この憲章は後に全17条・附則9項へ拡張され、最終的に所蔵の非公式資料集にも引用されたとする説があるが、確認は取れていない[要出典]。
制度[編集]
編集評議会[編集]
編集評議会は、我々だ帝国の事実上の内閣に相当する組織である。構成員は通常7名から11名で、奇数に保たれるのは「決裂が起きても字幕で解決できる」という経験則による。議事録は毎回、台本の余白に赤ペンで追記され、後から見ると会議なのか漫才なのか判別しにくい。
2014年には、評議会の採決方法が「拍手の秒数」で決められたことがあり、以上の拍手が可決、以下が保留とされた。この規定は後に音響機材の誤作動で廃止されたが、帝国法学では今なお「拍手憲法事件」として研究対象になっている。
寝言省と字幕院[編集]
寝言省は、深夜の雑談や思いつき発言を政策化する役所である。元は単なるメモ係であったが、の大型企画会議で「寝不足のほうが世界観の整合性が高い」と判断され、正式な省庁に昇格した。ここが出す通達は往々にして意味不明だが、後年になるほど実行率が高まる傾向にある。
一方の字幕院は、我々だ帝国の憲法解釈を担う機関である。字幕の行分け、色分け、改行位置がそのまま法的効力を持つため、句点一つの差で外交文書の意味が変わることがある。実際、の「赤字幕事件」では、感嘆符の有無をめぐって三日間の臨時閉廷が続いた。
財政と通貨[編集]
帝国の通貨はW-円と呼ばれ、実体はポイント制である。購入力はおおむね「限定缶バッジ1個=120W-円」「深夜配信への出席権=450W-円」とされ、年度ごとのインフレ率は前後で推移する。なお、税は金銭でなくコメント率で徴収されるため、閲覧数が高いほど納税義務が増すという逆説的な制度になっている。
この仕組みは、外部からは非合理に見える一方で、帝国内部では「関心が最も高い者が最も負担する」という公平原理として受け入れられている。財務局の2021年報告では、供出されたお菓子は年間に達したとされるが、袋菓子と空箱の区別が曖昧であるため、数値の信頼性には疑義がある。
歴史[編集]
拡張期[編集]
からにかけて、我々だ帝国は外縁部へ急速に拡張した。特にとにおける上映会の成功は、地方総督制の導入を促し、各地に「視聴府」が設置された。視聴府は映画館のロビーを臨時庁舎として使うことが多く、終演後の掃除が最も重要な行政行為とされた。
この時期、帝国は「我々語」と呼ばれる独自の表現様式を整備した。主語が常に複数であるため、個人の責任が文法上あいまいになることが特徴で、これが帝国の急成長を支えたともいわれる。
大字幕改革[編集]
に起きた大字幕改革は、帝国史上最大の制度変更である。従来は発言内容をそのまま字幕化していたが、この年からは「意図」「温度」「寝不足度」を別々に表記する三層字幕が導入された。視聴者は一度に三本の情報を読むことになり、平均視聴集中率は一時的に低下したものの、考察文化は爆発的に増えた。
改革の裏では、字幕院と編集評議会の間で激しい権限争いがあったとされる。もっとも、最終的には「どちらも面倒なので共同で決裁する」という日本的妥協に落ち着いた。
国際承認と凍結[編集]
、我々だ帝国は一部の海外ファンコミュニティから「ファンダム国家」として半ば承認され、英語圏の掲示板では Warewareda Empire の名称が定着した。これにより、帝国の外務局は翻訳外交に追われることになり、特に「我々」と「We」のニュアンス差を巡って無数の誤訳が発生した。
一方で、同年の長期配信中断により帝国は事実上の凍結状態に入ったとされる。だが帝国史ではこれを「休眠期」と呼び、冬眠中に制度が熟成したという形で説明している。研究者の間では、この説明は美しすぎるとして懐疑的に扱われている[5]。
社会的影響[編集]
我々だ帝国は、ネット文化における「共同名義」の可能性を拡張した点で評価されている。個人崇拝を避けつつ、集団としての物語性を維持するモデルは、後の実況グループ、配信班、二次創作サークルに広く模倣された。
また、帝国式の会議運営は、深夜の即興性と事務的文書管理を両立させる手法として一部のサークルで採用された。もっとも、外部からは「会議のたびに内輪ネタが増殖する」と批判され、特にの同人イベントでは、導入後に周辺ブースまで巻き込む混乱が複数回報告されている。
教育分野への影響も指摘されている。ある私立高校では、グループ課題の名義を「我々」に統一したところ提出率が向上したが、責任所在が消失したため最終評価が大きく揺れた。これを受けて学校側は翌年度から禁止したが、生徒会の議事録には今も「帝国式協働の試み」として残されている。
批判と論争[編集]
我々だ帝国に対する批判として最も多いのは、その制度が内輪で閉じており、外部の参加者に不親切であるという点である。特に初見者に対し、説明なしに年表・用語集・派閥相関図を要求する傾向があり、これが「帝国の入国審査は動画の文脈を3本見ないと始まらない」と揶揄される要因になった。
また、帝国の史料はしばしば後追いで整備されるため、起源神話の多くが編纂過程で増幅された可能性がある。これについて帝国史学会は「神話の誤差こそが共同体の真正性を示す」と反論しているが、の一部研究者は、少なくとも拍手憲法事件の一部は脚色であると指摘している[6]。
さらに、帝国の外務省が発行した『我々対外要覧』には、存在しない島嶼部を「字幕保護地域」として記載していた箇所があり、後に地図帳出版社から訂正を求められた。これが唯一、帝国が現実の地理と本気で衝突した事件とされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『我々だ帝国成立史序説』字幕文化研究会, 2019年, pp. 14-39.
- ^ 中村沙織『複数形主語の政治学――実況共同体の制度形成』株式会社青燈社, 2021年, pp. 88-117.
- ^ Harold P. Mercer, "Collective Narration and the Warewareda Model," Journal of Digital Folklore, Vol. 12, No. 3, 2022, pp. 201-229.
- ^ 佐伯みどり『字幕院と法の可視化』東都出版, 2018年, pp. 55-74.
- ^ Eleanor V. Shaw, "Empire by Caption: Administrative Humor in Japanese Online Communities," Media and Ritual Studies, Vol. 8, Issue 1, 2020, pp. 33-60.
- ^ 田所一馬『拍手憲法事件の研究』関西現代文化叢書, 2023年, pp. 9-28.
- ^ Michael R. Dent, "The Economy of W-円 and Comment Taxation," Internet Polities Review, Vol. 5, No. 4, 2021, pp. 144-169.
- ^ 杉山智也『我々語の文法と共同責任』白林館, 2020年, pp. 101-126.
- ^ 北川久美子『大字幕改革後の視聴集中率に関する統計的考察』映像共同体学会誌, 第14巻第2号, 2024年, pp. 77-95.
- ^ Andrew K. Bell, "An Island Called Subtitle: Boundary Errors in Fandom Cartography," Cartographic Miscellany, Vol. 19, No. 2, 2022, pp. 5-18.
外部リンク
- 我々だ帝国史料館
- 字幕院アーカイブ
- 帝国外務局対外要覧
- W-円流通監視局
- 第七編集区記念博物館