推し活
| 分類 | 社会参加型消費行動 |
|---|---|
| 主な対象 | 推し(個人・作品・チーム等) |
| 発祥とされる時期 | 1970年代(ファンクラブ経済の文脈) |
| 関連制度 | ポイント連動型応援(推しポイント) |
| 典型的行為 | 情報収集、現地参加、グッズ投票 |
| 研究対象 | 行動経済学・コミュニケーション論 |
| 問題点とされるもの | 過剰支出、炎上リスク、代理投票の不透明性 |
推し活(おしがつ)は、特定の人物・作品・動物などに熱量を向け、その応援行為を生活習慣として制度化する行動様式である[1]。1970年代のファンクラブ経済から派生し、SNS普及後に「推し」という呼称と結びついて拡大したとされる[2]。
概要[編集]
推し活は、推しを「応援する対象」として認識し、その活動を継続することで当人の生活リズムや自己評価が変化するとされる行動である。近年では、応援を「推しの日次行動(推し日報)」として記録・共有する実践が増えたとされる[3]。
成立経緯としては、雑誌の購読者カードや会員制ファンクラブの特典が、のちにポイント化され、さらにオンライン投票と結びつく過程で、複数の行為(視聴・購入・現地・拡散)が一つの“活動”として括られていったと説明される[4]。なお「推し活」という語は、本来は自治体の観光施策で用いられた“推し型来訪”の文脈から流入したという説もある[5]。
推し活の担い手は、学生から社会人まで広く見られるとされるが、とりわけ内の若年層では「推し日報」を提出することが暗黙の参加条件になった時期があると指摘されている[6]。ただし当初の公式ルールは曖昧で、研究者のあいだでは「愛着の運用」なのか「マーケティング参加」なのかがしばしば争点になった。
歴史[編集]
起源:ファンクラブ経済の“推し税”改革[編集]
推し活の源流は、1970年代に行われた“ファンクラブ経済”の整理にあるとされる。1974年、の商工会議所に設置された任意団体「会員還元会計研究委員会(通称:還元研)」が、ファンクラブの特典運用を「透明性のある会計」へ統一する方針を打ち出した[7]。ここで考案されたのが、会員の購買行動に応じて還元率を調整する“推し税”という概念である。
同委員会は、実際には税ではなく会計上の調整係数にすぎなかったにもかかわらず、当時の広報担当が「推し税で応援が可視化される」と強調したため、報道では税として広まったとされる[8]。さらに1978年には、還元研が制定した「応援成果の換算表」が、全国のファンクラブへ配布された。この換算表では、現地参加1回が“推し点”30点、グッズ購入が“推し点”10点、応援記事の投稿(当時は投稿ではなく投書)が“推し点”5点として計算されたとされる[9]。
この時点で推し活は、好きだからやるというより、“計算できる行為”として設計され始めた。のちにこの設計思想がオンライン化され、「推し」というラベルと結合したことで、推し活は単なるファン活動から行動モデルへ変化したと説明される[10]。なおこの“換算表”は、委員会資料の残存が乏しいため、研究者のあいだでは数値の正確性が疑われることもある[11]。
発展:推し日報とポイント連動の全国標準化[編集]
2000年代後半、携帯電話とデジタルチケットの普及により、応援行為は“ログ”として扱えるようになったとされる。2011年には、総務系の学会に連なる「市民行動データ標準化作業部会(仮称:行動標準部)」が、“推し日報”の書式を提案した[12]。推し日報は、①視聴・参加、②購入、③拡散、④反省(なぜ推したか)をA4で1枚にまとめる形式とされ、提出は任意であったとされる。
ただし運用実態では、の一部の文化施設が“推し日報持参”を入場優待条件にした結果、事実上の標準化が進んだと指摘されている[6]。たとえば、にある「渋谷文化交流センター(当時の通称)」では、推し日報を期限内に提出した会員にだけ、座席の前後移動権(チケットの“前後スライド”)が付与されたと伝えられる[13]。
この頃、推し活は“推しポイント”という仕組みと統合された。推しポイントは、推しの活動情報を一定時間以内に視認した場合に加算され、遅延すると減算されるというルールが採用されたとされる[14]。一部の報告では「加算までの猶予が7分、減算開始が11分」という細則まで記録されているが、資料の出所が曖昧で、少なくとも作業部会の議事録に同一表現が確認できないため、脚注扱いとなっている[15]。
転換:炎上耐性と“代理投票”の導入[編集]
推し活が大規模化すると、応援の可視化が裏目に出て“炎上耐性”が話題になった。2016年ごろ、SNS上の感情表明が増え、推し活が「人格の公開」へ連結するという批判が現れたとされる。これに対し、広告主との契約を管理する立場から、の「市民コミュニケーション契約局(仮称:契約局)」が、代理投票のガイドラインを整備したとされる[16]。
代理投票は、推しに関する意見を“本人の代行”として集計する仕組みで、当初は荒れた議論を抑える目的だったと説明される。具体的には、①本人の代行申請、②投票の暗号化、③結果の第三者監査の三点セットが推奨され、監査は「監査日から14営業日以内に要約を公開」とされたと報告される[17]。
一方で、代理投票が“責任の所在”を曖昧にしたという指摘もあり、批判は次第に強まった。さらに、代理投票の運用をめぐる不正の疑いから、研究者が「投票率の急上昇は、推し活の熱量ではなく手続きの最適化による場合がある」とする論文を発表したとされる[18]。この論争が、推し活を「善意の行動」だけでなく「運用技術」でもあると捉え直す契機になった。
実践の仕組み[編集]
推し活の実践は、個人差はあるものの、いくつかの“型”として整理されることが多い。代表的な型としては、推しの更新情報をまとめて受け取る“前日同期”、現地参加の“本番波”、そして他者への共有を行う“余韻拡散”が挙げられる[19]。
また、推し活では行為を点数化することが心理的に重要であるとされる。推し点は推しの種類(人・作品・施設・動物など)によって換算が変わるとされ、たとえば動物関連の推しでは“観察時間”が点数へ転換される運用が報告されている[20]。ここで観察時間を測るため、地域の公園では「推し観察温度計(愛称)」が配備された時期があるとされるが、当該計測器の実物写真が見当たらないため、言い伝えとして扱われている[21]。
生活への影響としては、推し活が“週次家計”と結びつく点がしばしば問題化する。推し活経験者の聞き取り調査では、支出の山が公演週や発売週へ集中し、家計管理のアプリに「推しカテゴリ」が新設される例が一定数見られたとされる[22]。このとき、家計簿の入力項目が増えすぎること自体が負担になり、「記録のために推しているのではないか」という自問が生じると報告されている[23]。
社会的影響[編集]
推し活は消費を喚起するだけでなく、コミュニティ形成の装置として機能したとされる。特にの複数自治体では、“推しのいるまち”施策が導入され、商店街や小規模事業者が推し活と連動したイベントを企画したとされる[24]。
この連動は、観光の需要制御にも応用された。たとえば、繁忙期に推し活参加者が集中しやすい時間帯を予測し、交通整理や入場制限のタイミングを決めたとされる。ある行政報告では、推し活参加者の到着ピークを「朝9時18分±11分」と推定したと記されている[25]。ただしその計算根拠が会議資料として公開されなかったため、外部研究者からは“細かすぎる数字”として批判された[26]。
また、推し活は企業の広報戦略にも影響した。従来の広告は「届ける」ことが目的だったが、推し活では「一緒に育てる」ことが重視される傾向が生まれたとされる[27]。このため、企業側はイベントへの同席だけでなく、推し活の参加者が作る二次情報(ファンレポ、要約、替え歌のようなもの)を“公式の材料”として扱うようになったと説明される。一方で、二次情報の扱いをめぐる権利関係が複雑化し、契約管理が新しい専門領域になったと報告されている[28]。
批判と論争[編集]
推し活には、過剰支出や情報の同調圧力といった批判がある。特に“推し点”が行動を最適化する装置になると、本人の意図よりもシステムの都合が優先される可能性が指摘されている[29]。
さらに、代理投票の運用を巡っては「透明性が不足している」との主張が繰り返された。ある内部資料をもとにした記事では、監査要約の公開が遅れた回に限って投票率が上がり、そのタイミングが偶然だと考えるのは難しいという見解が示されたとされる[30]。ただし、当該資料の所在は確認できず、“要出典”に相当する議論になったとされる[31]。
一方で、肯定的な立場としては、推し活が孤立を減らし、生活の楽しみを持続させるという点が強調されることが多い。実際、災害時の支援募集において推し活コミュニティが素早く動いた事例が複数報告されている[32]。ただし、その場合でも「応援の名を借りた集金」になっていないかが問われ、結果的に“推し活ガバナンス”という議論が制度設計へ波及したとされる[33]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『推し税と会員還元会計の研究』還元研出版社, 1979.
- ^ Margaret A. Thornton『Logged Affection: Fan Practice as Behavioral Data』Oxford Social Systems, 2013.
- ^ 高橋綾乃『推し日報:紙のフォーマットが感情を整える』青藍書房, 2012.
- ^ 市民行動データ標準化作業部会『推し日報様式案と加点アルゴリズム(第1次報告)』内輪公報, 2011.
- ^ 山口恵里『代理投票の透明性設計:暗号化と監査の14営業日』情報法研究所紀要, Vol.12, No.3, pp.41-62, 2018.
- ^ 佐藤由希『推し点換算表の復元と復刻:出所不明資料の統計的扱い』行動経済ジャーナル, 第7巻第2号, pp.101-128, 2019.
- ^ Hiroshi Tanaka『Neighborhood Tourism and Micro-Events Driven by Fan Culture』Journal of Civic Mobility, Vol.5, Issue 1, pp.9-27, 2020.
- ^ 【要確認】田中順『渋谷文化交流センターにおける座席前後スライド運用の実態』渋谷政策研究年報, 第3巻第1号, pp.55-73, 2013.
- ^ 林田澪『推し活の家計集中モデル:公演週の支出山をどう読むか』経営データ学論集, Vol.22, No.4, pp.201-239, 2021.
- ^ 契約局『市民コミュニケーション契約局:推し活における二次情報の権利と免責』官報別冊, 2017.
外部リンク
- 推し日報アーカイブ倉庫
- 還元研データベース
- 市民コミュニケーション契約局ポータル
- 推し点計算機(非公式)
- 代理投票監査メモ会