新井の18球
| 読み | あらいのじゅうはっきゅう |
|---|---|
| 発生国 | 日本 |
| 発生年 | 1978年 |
| 創始者 | 新井 恒一郎 |
| 競技形式 | 個人戦・団体戦併用 |
| 主要技術 | 18球連続投射、間合い制御、回収判定 |
| オリンピック | 非正式競技 |
新井の18球(あらいのじゅうはっきゅう、英: Arai's Eighteen Balls)は、・で生まれたのスポーツ競技である[1]。
概要[編集]
は、18個の球を一定のリズムで投射し、標的帯の中心線に最も近い配置を作ることを目的とする競技である。発祥地はの旧とされ、当初は倉庫作業員の娯楽として始まったと伝えられている[2]。
競技名は、創始者とされるが試作した「18球連続投射法」に由来する。なお、18という数字は偶然ではなく、会館の蛍光灯が18本だったために決まったとされるが、この説明には異論もある[3]。
のちにの外郭団体であるが採録し、1980年代末にはを中心に競技化が進んだ。競技人口は2024年時点で約4万8,000人と推定され、学校教育への導入例も散見される[4]。
歴史[編集]
起源[編集]
1978年、の臨港地区で、が荷役用の木箱を転用した「18区画投射盤」を考案したのが起源とされる。彼は当初、球を投げるのではなく滑走させる方式を試していたが、海風で軌道が乱れたため、翌週から手投げ式に切り替えたという。
創始の場にはの実務研修が重なっており、参加者が昼休みに「1人18球までなら集中が保つ」と言い出したことが発展の契機になったとされる。これにより、競技は単なる遊戯から、反復精度を競う形式へと移行した[5]。
国際的普及[編集]
1986年、のにおいて、の運動学者が「低速反復競技の認知負荷研究」として紹介したことを契機に、欧州へ波及した。とりわけの室内競技団体が、球の数を18から16に減じた「ライト18」を提唱したが、原理主義派からは強い反発を受けた。
1994年にはが模範種目として採択し、、、で展示試合が行われた。1998年の大会では、雪害に備えて球を発泡樹脂製へ変更した結果、選手の「投射音が軽すぎて集中できない」との苦情が相次いだという[6]。
ルール[編集]
試合は縦12メートル、横8メートルの「投射床」で行われる。中央には18個の標的環が等間隔に配置され、選手はの制限時間内に18球を投射する。各球は落下地点だけでなく、着地後の静止角度までも採点対象となるのが特徴である。
勝敗は、得点合計のほか、18球すべてを投射し終えた時点の「余韻点」によって決まる。余韻点は、観客の拍手が2秒以上続いた場合に加算されるが、はこれを「競技の精神性を保つための装置」と説明している。なお、同協会の規定では、投射中に選手が一度でも自分の呼吸を数え直した場合、1球あたり0.25点の減点が発生する[7]。
試合場の床材には、産の圧縮杉材が用いられることが多く、床鳴りの周波数が成績に影響するとの報告がある。もっとも、2011年の公式実験で「床の鳴り方と勝率の相関」はほぼ否定されたが、現場ではいまなお信じられている。
技術体系[編集]
新井の18球における技術は、主に「初速制御」「回転抑制」「終球整位」の3系統に分かれる。初速制御は1球目から6球目にかけての加速を滑らかに保つ技法で、の分析では、熟練者ほど投射前の肩回しが7回ではなく9回に収束する傾向が示されたという。
代表的な技として、「港風返し」「十八連弧」「新井止め」がある。「港風返し」は海沿いの会場で用いられる反転投射であり、最後の球だけ軌道を内側へ曲げる。「十八連弧」は18球の弧をほぼ同一半径に揃える高等技術で、成功率は上級者でも17%前後とされる。「新井止め」は、投射後に腕を完全に止めず、微小な震えを残して余韻点を稼ぐ技である。
また、指導理論としてが発達しており、選手は球の数よりも「球と球の間の沈黙」を重視する。これに基づき、国内の強豪校では試合前に無音のまま90秒間立ち尽くす訓練が行われることがある。
用具[編集]
公式球は直径62ミリメートル、重量128グラムを基準とし、表面に微細な溝を18本刻む。材質は当初、産の白樺と樹脂の混合だったが、1989年以降は反発係数の安定化のため、の工業製法に基づく複合素材が標準化された。
標的盤は真鍮製の外輪と紙圧縮内核から成り、中心に「A-0」と呼ばれる基準点がある。新井の18球では、用具の微差が試合結果に直結するため、球の湿度を測る「指腹計」が重視される。これを試合前に選手が親指で2回なぞるのが慣例である。
なお、の認可を受けた球には、製造番号の末尾に「18」が付される。2022年には番号の偽装球がで流通し、2日間で34箱が回収されたが、回収作業員の間では「むしろ正規品より転がりが良い」と評された。
主な大会[編集]
国内大会[編集]
国内ではが最高峰とされ、毎年7月にとの交互開催で行われる。2017年大会では、決勝戦が台風接近により屋内のへ移され、天井の反響が強すぎて「球が泣く」と報じられた。
また、は教育的意義が重視される大会であり、出場校の半数以上が「朝練で集中力が上がる」と回答している。もっとも、審判補助員の確保が難しく、2021年には1試合だけ自治会長が判定を兼任した。
国際大会[編集]
国際大会としてはとが知られている。前者はでの運営合理化を契機に持ち回り制が整えられ、後者はので始まったが、標的盤の寸法が各国で微妙に異なり、初回は全7チームが採点に抗議した。
2019年のでは、イタリア代表のが18球中17球を同一ライン上に並べ、観客席から拍手が3分続いた。この記録は「美しすぎて競技性を損なう」として一時保留扱いとなったが、のちに正式記録として認定された。
競技団体[編集]
(International Arai Eighteen Federation, IAEF)は、1988年にで設立された国際統括団体である。本部はのに置かれ、規則制定、審判認定、球の材質管理を所管する。
日本国内ではが中心組織であり、後援のもとで学校普及事業を行っている。連盟内には「技術部」「床材部」「沈黙文化班」の3部門があり、特に沈黙文化班は試合前の礼法を細かく定めることで知られる[8]。
2023年には、競技の国際化に伴ってが加盟し、で初の公認講習会が開かれた。講習会では、球を投げる代わりにココナッツで代用した練習が行われたが、これはあくまで高地訓練の一種として説明されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 新井 恒一郎『十八球投射法の基礎と応用』港湾体育研究社, 1981.
- ^ 横浜反復競技史編纂委員会『臨港遊戯から公式競技へ』神奈川スポーツ出版, 1992.
- ^ Lars E. Nyqvist, "Cognitive Load in Low-Velocity Repetition Sports," Journal of Applied Kinetics, Vol. 14, No. 2, pp. 88-109, 1987.
- ^ 山根 俊夫『床鳴りと集中の相関に関する実地調査』日本運動文化学会誌, 第22巻第4号, pp. 41-67, 1995.
- ^ A. M. Hartwell, "Standardization of Eighteen-Object Throwing Systems," International Review of Sports Mechanism, Vol. 6, No. 1, pp. 12-35, 1991.
- ^ 国際新井協会編『IAEF Rules and Rituals 2020』Basel Office Press, 2020.
- ^ 田口 みちる『沈黙文化班の成立と審判補助の変遷』スポーツ社会学評論, 第31巻第1号, pp. 5-29, 2008.
- ^ Giulia Bianchi, "The Aesthetic Excess in Competitive Repetition," Rivista Europea di Sport Minori, Vol. 9, No. 3, pp. 201-219, 2019.
- ^ 東野 進『新井の18球と都市空間の再編』都市運動史研究, 第18巻第2号, pp. 73-96, 2016.
- ^ M. R. Feldman, "Humidity Calibration in Board-Based Ball Sports," Proceedings of the Basel Institute of Games, Vol. 2, pp. 143-158, 2004.
外部リンク
- 国際新井協会 公式記録室
- 日本18球連盟 デジタルアーカイブ
- 横浜臨港スポーツ資料館
- 世界連弧選手権 実行委員会
- 新井十八球競技規程集