曖昧さ回避のためのページ
| 分類 | 情報整理・索引学 |
|---|---|
| 主な用途 | 同名項目の選択補助 |
| 成立 | 1967年ごろ |
| 提唱者 | ヘレン・J・マクローリー |
| 中心地 | ロンドン、ボストン、名古屋 |
| 関連組織 | 国際目録標準化委員会 |
| 特徴 | 短文項目の列挙、区別語の付記 |
| 別名 | 曖昧語選別表 |
| 利用媒体 | 紙媒体、端末画面、共同編集型百科事典 |
曖昧さ回避のためのページ(あいまいさかいひのためのページ、英: Disambiguation page)は、同じ表記を持つ複数の項目を整理し、読者を適切な項目へ誘導するための形式のページである。現在では系サイトに広く見られるが、その成立にはの目録学と文化が深く関わっているとされる[1]。
概要[編集]
曖昧さ回避のためのページは、同一の表記に複数の意味が存在する場合、それらを一覧化して読者の誤選択を防ぐためのページである。たとえば地名、人物名、作品名、技術用語が偶然同じ文字列になった場合に用いられ、見出しの下に簡潔な説明を添える形式が一般的である。
本来は図書館のと放送局のを折衷したもので、の欧米学術界では「選択ページ」とも呼ばれていた。ただし、日本語圏ではの『目録実務便覧・補遺版』で「曖昧さ回避」の訳語が採用され、以後この名称が定着したとされる[2]。
歴史[編集]
前史[編集]
起源はの分館に勤務していた司書、ヘレン・J・マクローリーの業務メモにあるとされる。彼女は、同名の著作が棚に三冊並んだ際に閲覧者が毎回「海軍の戦記」「詩集」「競馬新聞」を取り違える事例を記録し、これを防ぐために灰色の付箋を本文とは別に設けた。付箋の右上に「choose carefully」と書かれていたことから、後年の研究者はこれを最初の曖昧さ回避ページの原型とみなしている[3]。
端末時代への移行[編集]
、米国の共同研究チームは、英数字端末では同名検索が著しく非効率になるとして、短い案内文を一画面に集約する方式を導入した。ここで重要だったのは、項目を長く書くほど操作が遅くなるという当時の技術的制約であり、結果として一項目あたり平均27語以内という「26語規則」が生まれた。なおこの数値は当時の端末が1画面に表示できる行数から逆算されたもので、のちにほとんどの編集ガイドがこれを追認した[4]。
共同編集文化との結合[編集]
後半になると、共同編集型百科事典の運営者たちは曖昧さ回避のためのページを「争いを減らす装置」として重視するようになった。特にの会議では、ある編集者が「同名のアニメ作品と天文学用語を同列に並べるのは不公平である」と主張し、議論が6時間に及んだという。これを契機に、区別語の付記、括弧書き、誘導文の定型化が整備されたが、一方で「何を曖昧と見なすか」は現在も地域差があると指摘されている[5]。
構成と作法[編集]
曖昧さ回避のためのページは、通常、冒頭に定義文が置かれ、その後に同名項目が箇条書きで並ぶ。各項目は1〜2文で要点のみを示し、詳細説明は個別記事へ委ねられるのが原則である。
また、編集規範上は「読者が最初に探していた可能性が高い項目」を上位に置くことが推奨されるが、この優先順位づけはしばしば議論を呼ぶ。特に、人気のある人物名と古い地名が衝突する場合、人口統計、アクセス回数、旧称の使用頻度を加重平均するが使われるとされる。
なお、古い媒体では見出しの右端に手書きの矢印を付けるだけで済ませることも多かったが、共同編集サイトではカテゴリ、曖昧さ区分、関連リンクを厳格に統一する必要が生じた。これにより、曖昧さ回避のためのページは単なる一覧ではなく、編集文化を可視化する場へと変化したのである。
主要な運用方式[編集]
地域名優先方式[編集]
やのような広域地名が個人名と衝突した場合、行政利用の頻度を理由に地名を先に置く方式である。1998年の協議では、利用者の82.4%が駅名を探していたという内部調査が示され、以後この方式が一部の案内ページで標準化された。
話題性優先方式[編集]
映画、楽曲、テレビ番組など露出の多い項目を上位に置く方式で、の「週刊編集者会議」で提案された。もっとも、話題性は時期で変動するため、年末だけ順位が入れ替わるという珍事がたびたび起きた。ある編集者はこれを「順位が季節で熟す」と表現したが、出典不明のため要出典とされている。
中立配列方式[編集]
意味の強弱に関係なく五十音順またはアルファベット順に並べる方式である。見た目は公平であるが、実際には最初の項目だけが読まれやすいため、利用者の視線誘導をめぐって細かな調整が行われる。の研究所では、ページ末尾のクリック率が1.8倍に上がるという実験結果も報告された。
社会的影響[編集]
この種のページの普及により、検索者は「求めるものが一つとは限らない」という認識を早い段階で身につけるようになった。教育現場では、同音異義語の学習補助として使われる例もあり、小学校の国語教材に「曖昧さ回避表」が掲載されたことがある。
また、放送・出版・Web制作の現場では、同名企画の衝突を避けるため、企画会議の冒頭で必ず仮題の曖昧性を確認する慣行が生まれた。これにより、会議時間が平均14分短縮されたという調査もあるが、逆に案内文の作成に手間がかかるため総労働量は増えたとの指摘もある。
一方で、曖昧さ回避のためのページが増えすぎると「世界は同名だらけである」という印象を与え、百科事典全体の威厳を損なうとの批判もある。もっとも、批判者の多くも結局はそのページ経由で目的の記事に到達しているため、実害は限定的であるとみられている。
批判と論争[編集]
最大の論点は、「どこまでを曖昧とみなすか」である。たとえば、でも読みが異なる場合をまとめるべきか、あるいは関連性が薄いからと切り離すべきかについては、編集者の間で長年見解が割れてきた。
の会議では、ある参加者が「選択肢が7件を超えると利用者は読む気を失う」と主張したのに対し、別の参加者は「9件目に真の目的地がある場合もある」と反論した。最終的に折衷案として「7〜12件を標準、13件以上は複数ページ化」という暫定基準が採用されたが、これは現在でも厳密には守られていない[要出典]。
なお、一部の研究者は曖昧さ回避のためのページを「検索失敗の痕跡を芸術化したもの」と位置づけるが、編集実務の現場では単なる安全装置として扱う意見が根強い。両者の見方は対立しているようで、実際には同じ現象を別の角度から見ているだけだとする説もある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ McCrawley, Helen J. "Choosing the Grey Tab: Early Disambiguation Practice in Public Catalogues". Library Systems Quarterly, Vol. 12, No. 3, 1969, pp. 44-61.
- ^ 田辺義彦『曖昧語選別表の理論』東都出版, 1978.
- ^ Bennett, Charles R. "Terminal-Limited Lists and the 26-Word Rule". Journal of Information Navigation, Vol. 8, No. 1, 1984, pp. 11-29.
- ^ 木下由紀子『見出し語の衝突とその回避』中央目録研究所, 1991.
- ^ Sakamoto, Irene & Patel, N. "Consensus Editing in High-Ambiguity Entries". Proceedings of the International Conference on Cooperative Encyclopedics, Vol. 5, 2005, pp. 203-219.
- ^ 『百科事典のための曖昧さ整理ガイドライン』日本情報編集学会誌, 第14巻第2号, 2008, pp. 7-18.
- ^ Wheeler, Jonathan P. "Hierarchy of Names: Place, Person, and Title Collisions". Archivaria & Reference Studies, Vol. 19, No. 4, 2011, pp. 88-104.
- ^ 南雲香織『曖昧な項目のためのページ設計』港北書房, 2014.
- ^ Mori, Elaine T. "When the Reader Chooses Wrong: A History of Redirect Aids". Information and Society Review, Vol. 27, No. 2, 2017, pp. 155-173.
- ^ 『三重係数法による優先順位決定の実際』名古屋編集大学紀要, 第22巻第1号, 2019, pp. 31-49.
- ^ Pritchard, Owen S. "The Page That Cannot Decide Itself". Cataloguing Today, Vol. 31, No. 6, 2021, pp. 5-12.
外部リンク
- 国際曖昧語目録協会
- 編集者協議ネットワーク
- 索引設計研究センター
- 曖昧さ回避実務アーカイブ
- 同名項目整理データベース