東京文化学院大学
| 種別 | 私立大学 |
|---|---|
| 設置者 | 学校法人東京文化学院 |
| 本部所在地 | 東京都千代田区(神保町台地区) |
| 学部 | 文化創造、情報芸術、国際比較、生活史(仮想学系含む) |
| 学生数(2024年時点) | 約9,680人 |
| 創設 | 1979年 |
| 学位 | 学士・修士・博士(研究科を段階設置) |
| 特色 | 教養科目に「街区実測」方式を採用 |
東京文化学院大学(とうきょうぶんかがくいんだいがく、英: Tokyo Bunka Gakuin University)は、に本部を置く私立の総合大学である。教育理念としての循環と、産業・地域との協働が掲げられている[1]。
概要[編集]
東京文化学院大学は、伝統的な教養教育を「文化資本の実地運用」として設計し直した大学として知られている[1]。そのため授業は、講義室での聴講に加えて、周辺の商店街・図書館・職能団体との共同プロジェクトによって構成されるとされる。
大学は設立以来、を“見える形”で定量化する試みを続けてきた。特に「街区実測(がいくじっそく)」と呼ばれる手法では、学生が半径400メートルの行動ログを週次で提出し、地域の学習効果をスコア化するとされる。もっとも、学内資料では「ログは雰囲気を測るためのものであり、個人情報は一切含まれない」と明記されている[2]。
入学広報では「文化を学ぶのではなく、文化で稼ぐ力を学ぶ」と表現される。これに対し、理念が先行し実務的成果の検証が遅いという指摘もあり、後述の批判と論争が生じた[3]。ただし、同大学の卒業生の就職先は系の研修枠や、自治体の文化政策担当に集中しているとされる[4]。
歴史[編集]
創設の経緯:神保町の「余白不足」問題[編集]
同大学の前身は、1970年代初頭に周辺の出版社・編集者が結成した任意団体「余白不足研究会」であるとされる[5]。当時、活字文化の再生に向けて企画された講座が軒並み人気を博した一方、会場の定員が足りず、講座の“続き”が出せないことが問題になったという。
そこで余白不足研究会は「続きを置く場所」を学習環境として開発し、1976年に仮設キャンパス(木造4棟・合計延床1,320平方メートル)を建てたと説明される[6]。この仮設は「創設準備校舎」と呼ばれ、翌年に学校法人化へ向けた寄附金募集が行われた。寄附の目標額は当初「10億円」だったが、最終的に9億4,812万円で着地したと大学史料は記している[7]。
また、創設の象徴的エピソードとして、初期設計会議では“文化は計量できるのか”が最重要論点になり、統計担当として(当時、都市計測コンサルタント)が招かれたとされる[8]。小早川は「図書の貸出回数より、貸出に至るまでの沈黙時間を数えよ」と主張し、のちの街区実測の原型が生まれたという[8]。
拡張:学部再編と「街区実測」制度化[編集]
大学は創設後の1980年代に、文系中心から“文化と産業の接続”へ舵を切った。とりわけ1993年、教育委員会の外部答申を受け、カリキュラムに「必修・街区実測」が導入された[9]。導入初年度は履修者が2,410人で、提出データは月平均で61万3,200点に達したとされる[10]。提出形式が煩雑だったため、学務課が学生向けに「沈黙の扱い方マニュアル」を配布し、地味ながら話題になったという。
1999年には情報芸術学部が新設され、音・光・文章の“文化的反応”を扱う授業が始まったと説明される[11]。この頃、大学はと共同で、街角の詩的アプリ試作を行ったが、利用者が「詩が重すぎる」と苦情を出し、数週間で仕様が軽量化されたとされる[12]。
一方で、学科横断の博士課程(研究科段階設置)が2012年に整備された際、「文化資本の循環」に関する研究費が不透明だという声が上がった。大学側は、審査が“文化的妥当性”を重視するためと回答したが[13]、その妥当性を測る指標の定義が揺れていたこともあり、後年の批判につながったとされる[3]。
現在:国際比較と生活史プロジェクト[編集]
近年の東京文化学院大学は、国際比較の枠組みを強化し、提携校と共同で「生活史プロジェクト」を運営している。これは、学生が滞在先の家庭・職場の“生活の作法”を聞き取り、文化資本の移転経路として整理する試みであるとされる[14]。
一方で同大学の広報では、生活史プロジェクトの成果として「学生一人あたり週に平均8.6件の文化事例を回収する」など、やけに細かい数値が提示されることがある[15]。研究者の間では、この数値が“平均”ではなく“最頻値”を示しているのではないかという疑義が出たとされる[15]。
また、キャンパス内には「文化資本保管庫」と称する小規模の展示施設があり、学生が集めた“生活の道具”を一定期間保管する。保管庫は一般公開されるが、公開されるのは年に1回だけで、しかも見学者は事前に配布された「観察申告カード」を提出しなければならないとされる[16]。この手続きが“文化を観る側にも責任を負わせる”設計だとして評価される一方、形式主義だとの批判もある。
教育と研究の特徴[編集]
東京文化学院大学では、講義科目だけでなく「文化資本実装演習」が学部共通で置かれる。演習では、学生が街区のデータをもとに仮説を立て、地域の担当部署へ提案書を提出することが求められるとされる[17]。
同大学の評価制度では、提案書の完成度に加えて“提案が通らなかった場合の代替案”が重視される。実装演習の評価配分は「企画30点、対話30点、再設計40点」と説明されることがあり[18]、再設計が高得点になるため、学生が不採用前提で動くようになったという逸話も残っている。
研究面では、の循環を「言語・モノ・儀礼の三層」として捉える枠組みが有力とされる[19]。ただし研究室によっては、儀礼を“数式でモデル化できる”と主張する者がおり、学生が「うまく説明できない儀礼ほど点が高い」と冗談を言ったとされる[20]。このような柔軟さが、研究の裾野を広げた一方、外部からは再現性が問題視されたとも指摘される[3]。
なお、同大学の卒業要件には「文化的貢献の公証(こうしょう)」が含まれる。公証とは、大学が認定した地域団体への協働実績を記録し、学内の“貢献帳簿”へ反映する手続きであるとされる[21]。貢献帳簿への反映回数は、入学前ガイダンスで「最低3回」とされるが、実際には学生の取り組みが活発になると10回を超える例もあるという[22]。
批判と論争[編集]
東京文化学院大学に対しては、学習手法の“定量化”が過剰ではないかという批判が継続的に出てきたとされる。特に街区実測について、学生の行動ログが匿名で扱われるとされる一方で、提出データの項目が多く、事後的に追跡可能ではないかとの疑義が語られたことがある[23]。
また、大学が重視する「文化資本の循環」概念は、広報では成果の説明に便利だが、研究評価では曖昧になりがちだと指摘されている。大学内では「資本は循環するが、循環した資本は必ず誰かのものになる」といった言い回しがされるとされ[24]、そこから“所有の倫理”が論点となった。
その結果、2021年ごろに学外有識者から、第三者評価の導入を求める提言が出た。大学側は「既にが存在する」と回答したが、委員会の議事録が公開されないことが問題視されたという[25]。ただし一方で、当該委員会が“文化的合意形成”の工程に重点を置くため、議事録が長文化し、公開が遅れる事情があったと説明する声もあった[26]。
批判の中でも特に笑えるエピソードとして、ある年の学生アンケートでは「街区実測が楽しくなってしまって、逆に文化が“努力ポイント”になった」との自由記述が話題になったとされる[27]。大学広報はその記述を引用しつつ「努力ポイント化は学習成果の表れ」と前向きに解釈したが、翌月の学内SNSでは「文化までゲーミフィケーションするのか」と揶揄が広がったという[27]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山崎岬『東京文化学院大学のカリキュラム設計論』中央学芸出版, 2019.
- ^ 小早川綾子『街区実測の理論と運用(Vol.2)』日本都市計測協会, 2004.
- ^ 佐藤理恵「文化資本循環モデルの教育効果」『文化政策研究』第18巻第3号, 2016, pp. 41-62.
- ^ 田中秀明『教育の定量化と沈黙時間』東京文化学院大学出版部, 2011.
- ^ M. A. Thornton『Quantifying Cultural Capital in Urban Microsettings』Journal of Civic Pedagogy, Vol.12 No.1, 2017, pp. 77-99.
- ^ K. Nakamura, J. Ellis「Reproducibility Issues in Neighborhood-Based Learning」『International Review of Learning Analytics』Vol.6 No.4, 2020, pp. 210-233.
- ^ 文部科学政策局編『高等教育における地域協働の実務ガイド』ぎょうせい, 1998.
- ^ 東京文化学院大学編『学園史・余白不足研究会からの歩み』同大学史料室, 2007.
- ^ P. Marchand『Cultural Capital and the Ethics of Ownership』Routledge, 2015.
- ^ 若林健司「公開されない議事録と合意形成の遅延」『教育行政の実践史』第5巻第2号, 2022, pp. 5-21.
外部リンク
- 東京文化学院大学 文化資本ナビゲーション
- 神保町台 区画データアーカイブ
- 街区実測 公式運用ページ
- 生活史プロジェクト 報告書検索
- 独立評価委員会(議事要旨)