殺人伝説(さつじんでんせつ)
| コンビ名 | 殺人伝説 |
|---|---|
| 画像 | ― |
| キャプション | 漫才中に必ず黒板を持ち込む(本人談) |
| メンバー | ボケ担当:渡辺ユルシ; ツッコミ担当:相馬カキマゼ |
| 結成年 | 1997年 |
| 解散年 | 活動継続 |
| 事務所 | 滑稽庁・民間芸能局(滑稽庁) |
| 活動時期 | 1997年 - 現在 |
| 芸種 | 漫才、コント、ラジオ |
| ネタ作成者 | 主に相馬カキマゼ(ただし共同修正) |
殺人伝説(さつじんでんせつ)は、を拠点とする架空のお笑いコンビである。結成。社会風刺を基調としつつ、ネタの題材には「殺人」を“単語として”扱う独特の作法がある[1]。
概要[編集]
殺人伝説は、社会の“凶事”を直接描くのではなく、言葉としてのを「手続き」「統計」「用語集」のように扱うことで笑いへ転換するコンビとして知られている[1]。
結成当初はネタの方向性が物議を醸し、特に「殺人」という語をタイトルに据えるだけで苦情が来ることもあったが、彼らは“現場”ではなく“辞書”に向かう姿勢を貫いたとされる[2]。なお、放送局側は「犯罪の助長につながる表現の有無」をたびたび点検したと報じられており、殺人伝説自身は「我々は凶器ではなく、語尾を扱っている」と説明している[3]。
メンバー[編集]
ボケ担当の(わたなべ ゆるし、通称ユルシ)は、説明口調で畳みかける“用語オタク”型の話芸である。彼の持ちネタは、ニュース原稿を読んでいるのにいつの間にか料理レシピに置き換わるという構造で、客席がついてこられないタイミングであえてゆっくりになることで間を支えるとされる。
ツッコミ担当の(そうま かきまぜ、通称カキマゼ)は、計算用ホワイトボードと「注釈が先」という独特の作法を武器にする。たとえばネタ終盤に突然「今の数字、どこから来た?」と観客に問いかける形が定番で、本人は『殺人は“件数”ではなく“疑問”の量で決まる』と語っていたとされる[4]。
来歴/略歴/経歴[編集]
出会いと結成の経緯[編集]
2人の出会いは、にある即席の落語研究会「夜間名簿談義(やかんめいぼだんぎ)」の打ち上げであるとされる[5]。渡辺はそこで配布された用語カードを勝手に並べ替え、相馬は「並べ替えるのは人生だけでいい」と言って笑いが起きたという。
その後、1997年、当時のアルバイト先であった行政関連の派遣事務で知り合い、2人は“統計から逃げない漫才”を掲げてに売り込んだとされる。滑稽庁は「民間芸能局(みんかんげいのうきょく)」の別称で、彼らの活動が“笑いの公益性”として扱われた背景があるとされる[6]。
東京進出と初期の炎上[編集]
東京進出は1999年の春とされ、彼らは「第1回 夜間辞書杯(やかんじしょはい)」で即興漫才を披露した。そこで渡辺が「を“殺す”ではなく“殺すように整える”と考えたらどうなる」と言い、観客が一斉に困った顔をしたことが記録に残っている[7]。
ただし、この時期は放送審査の担当者が“語の取り扱い”を厳格にチェックしていたと噂される。ある編集者は「笑いの意図は分かるが、視聴者が“手順書”のように受け取らないか」を問題視したとされ、殺人伝説はその指摘を受けて「手続き」を必ず“崩す”方向へ改稿したとされる[8]。
芸風[編集]
漫才:注釈で笑いを組み立てる[編集]
殺人伝説の漫才は、まず“辞書の定義”を読み上げ、次に定義の周辺語(例:、、)を整然と並べる。ところが、最後に渡辺が「そして注釈が長いほど、犯人は少しだけ弱くなる」と短絡させるのが特徴である[9]。
この手法は、視聴者の脳内で「理解→危険→訂正」が高速で起きることを狙っているとされる。相馬は『笑いは“訂正”の形をしている』と語っており、台本には必ず「よみ間違い」として3種類の同音異義語が仕込まれると報じられている[10]。
コント:現場ではなく“書類”に向かう[編集]
コントでは架空の公的機関「証拠整理庁(しょうこせいりちょう)」が登場し、殺人事件の代わりに『殺人に見える書類の提出』をめぐるドタバタが描かれる。たとえば書類の提出期限が「締切:16時13分(延長不可)」と妙に具体的な数値で設定され、誰もがその時間の意味を説明できないまま走り回る構造になっている[11]。
さらに、黒板に「ではなくです」とチョークで書いてから、渡辺がなぜか“スープの温度”を確認し始める。相馬がツッコミで「それは証拠じゃなくて鍋!」と叫ぶことで、重い題材を“生活の異常”へ押し戻すとされる[12]。
エピソード[編集]
最も有名な逸話は、2008年の地方ローカル番組収録で起きたとされる。殺人伝説はネタ冒頭で、なぜかスタジオの床に「目撃者:0人」「記録:1ファイル」「再生:3回」を書き、観客が拍手をするまでの沈黙時間を“33秒”に固定したとされる[13]。司会者が笑うより先に沈黙を維持したことが伝説になった。
また、2014年に彼らは「語源研究会」という冠企画を立ち上げ、渡辺が『語の起源は太古の合議制で、議事録が短いほど無罪になりやすい』と真顔で説明した。相馬は「それ、統計じゃなくて願望」と返し、会場から盛大なツッコミが出たという[14]。
このような“真顔の転倒”が、殺人伝説の評価を底上げしたとされる一方で、放送倫理の観点から台本確認に通常より2週間余分な時間がかかった年もあったとされる[15]。
出囃子[編集]
出囃子は、奇妙に明るい公募曲「ホシノウタ(星のうた)」であるとされる。由来は、相馬が図書館の視聴ブースで偶然流れていたBGMを気に入り、『事件のBGMは暗いほど損をする』という信条から採用したとされる[16]。
渡辺は本番前に毎回、星のうたを“逆再生”してリズムだけ合わせるという。スタッフの間では「逆再生してる時の渡辺は、笑いより責任者っぽい」と言われていたとされる[17]。
賞レース成績・受賞歴など[編集]
殺人伝説は、M-1グランプリにおいて2006年にファイナリストへ進出したとされる。結果として準優勝ではなく、公式には「審査員特別支持(特別支持枠)」として扱われたが、当時の新聞コラムでは実質的な上位評価として言及されたこともある[18]。
一方で、キングオブコントでは“殺人”という語の扱いが審査で論点になり、彼らはネタの最後に必ず「辞書は人を傷つけない」と書いた紙を客に配る演出を追加したとされる。その紙が会場で行方不明になる事故(回収率:97.4%と推定)があり、次年度は回収用ひもが付け加えられたという[19]。
なお、2019年には即興ラジオ部門で「音声注釈大賞」を受賞し、以後ラジオ企画が増えたとされる。受賞理由は「危険な語を、手続き上の違和感へ変換し続けた点」と記されたとする記事がある[20]。
出演[編集]
テレビ番組(現在)[編集]
現在は系のバラエティ「用語の向こう側」(架空)にレギュラー出演しており、毎回テーマ語を1つ指定し、その語の“誤解のされ方”を笑いとして検証する。殺人伝説の場合、テーマ語がに近いほど、司会側が先に“言い換えチェック”を行う段取りになっているとされる[21]。
過去の代表番組(テレビ/ラジオ/特番)[編集]
過去の代表番組としては、テレビの「証拠は持って帰れる」(2004年-2009年)や、ラジオの「注釈は最後に」(毎週木曜23:15-24:00)が知られている。ラジオでは“深夜の訂正”という企画があり、リスナーが送ってきた勘違い定義を2人が淡々と直す形式が人気を博したとされる[22]。
また特番「数字で謝る漫才」(2012年)は、彼らが“訂正用”の数字だけを読み上げる構成であった。たとえば「昨年の訂正回数:114回(訂正率:0.83)」のように、笑いとしては成立するが、冷静に見ると不気味な数値が続いたという記録が残っている[23]。
作品[編集]
CDとしては『の前後関係(さつじんのぜんごかんけい)』(2007年)があるとされ、初回盤には黒板チョーク風のリスニングカードが封入された。さらにDVD『用語オチは辞書の裏』(2016年)では、全ネタに“注釈読み上げ”が付随している点が売りとされた[24]。
単独ライブは「第1回 失礼な定義会議」(2005年)から始まり、以後「第12回 注釈が先」(2018年)まで続いたとされる。会場の入り口で配られる紙には「笑っても辞書は閉じないでください」と書かれており、観客が困った顔をすることで開演の空気が安定すると言われた[25]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 滑稽庁・民間芸能局編『笑いの公益手続:第3巻』滑稽出版, 2003年.
- ^ 相馬カキマゼ『訂正のリズム—注釈で転倒させる漫才—』第九書房, 2010年.
- ^ 渡辺ユルシ『用語オタクの現場主義ではない実践』港湾叢書, 2012年.
- ^ 『月刊コント鑑定』編集部「殺人伝説の“辞書アプローチ”はどこまで許されるか」第41巻第2号, pp.12-29, 2015年.
- ^ 田中ユカリ『放送倫理と語の取り扱い—沈黙33秒の効果—』日本放送研究所, 2017年.
- ^ Margaret A. Thornton『Comedy as Administrative Language』Kōben Academic Press, Vol.9 No.4, pp.77-95, 2019.
- ^ 山田昌人『数字で謝る構文:笑いの統計学』文芸理科舎, 第1巻第1号, pp.31-46, 2021年.
- ^ 『地方ローカル番組年鑑』「夜間辞書杯の記録」第23号, pp.201-214, 2001年.
- ^ 佐伯シオン『黒板芸の系譜:チョークが運ぶ間』宇宙文庫, 2006年.
- ^ Eiko Müller『From Definition to Disaster: A Linguistic Approach to Stagecraft』Berlin Joke Studies, pp.55-68, 2018年.
外部リンク
- 滑稽庁・民間芸能局 公式アーカイブ
- 用語の向こう側(公式番組ページ)
- 殺人伝説 単独ライブ記録台帳
- 注釈は最後に(ラジオ局ページ)
- 星のうた 逆再生ファイル共有所