源平合戦 (日向坂46)
| 名称 | 源平合戦 (日向坂46) |
|---|---|
| 別名 | ひらがな合戦、坂道合戦式演出 |
| 初出 | 2017年6月頃 |
| 発祥地 | 神奈川県横浜市周辺 |
| 提唱者 | 演出家・白石田武夫 |
| 参加グループ | 日向坂46(当時はけやき坂46) |
| 競技内容 | 歌唱、隊列移動、扇子儀礼、声量測定 |
| 影響 | ライブ演出、ファン投票文化、学園祭の模擬戦企画 |
源平合戦 (日向坂46)(げんぺいがっせん ひなたざか46)は、の初期公演期に採用された、左右二陣営に分かれて楽曲・衣装・立ち位置の優劣を競う舞台演出の一形態である。の仮設屋外劇場を起点に普及したとされ、のちにアイドル界隈で「紅白戦の祖形」として語られるようになった[1]。
概要[編集]
源平合戦 (日向坂46) は、の武家争乱を直接再現したものではなく、の公演において採用された対戦型演出の総称である。赤組と白組に相当する二陣営を設け、楽曲の構成、コールの密度、立ち位置の移動距離などを総合点で競わせる方式が特徴とされる[2]。
この形式は、観客参加型の熱量を高める目的で考案されたとされるが、実際には「歴史を借りたほうが覚えやすい」という制作側の都合が大きかったという指摘がある。なお、初期資料では「合戦」と書かれていたものの、スタッフ会議では一貫して「総当たりライブ」と呼ばれていたとされる[3]。
成立の経緯[編集]
仮設劇場時代の実験[編集]
2017年春、の臨海部に設けられた仮設屋外劇場では、風速によってマイクの聞こえ方が変わることから、左右の出番を分ける簡易的な演出が試された。これが後に「源氏側」「平家側」と呼ばれる二分法の原型になったとされる[4]。
白石田武夫の構想[編集]
演出家の白石田武夫は、武士の合戦史を参考にしつつ「観客は勝敗のある企画に対して、通常の倍以上の記憶定着を示す」と主張した。彼はの郷土資料館で得た古戦図をもとに、ステージ上の隊列を扇形に展開する案を示し、これが社内で「妙に真面目すぎる」と評判になったという[5]。
名称の定着[編集]
名称が定着したのは、ライブ当日の進行表に誤って「源平合戦」と大書きされたことがきっかけとされる。事務局は訂正を試みたが、すでにファンの間では「今日は歴史の授業が始まるらしい」と拡散しており、そのまま正式企画として採用されたとされる[6]。
運営方式[編集]
源平合戦は通常、との二陣営に分かれ、1公演あたり3試合から5試合で構成される。各試合は、歌唱点、コール点、衣装整合点、移動効率点の4項目で採点され、合計100点満点で勝敗が決まる方式が多かった。
審査員は制作会社の担当者2名、現場照明班1名、そして「最も声を出した観客」1名が務めることがあったとされる。最後の1名については、実際には客席最後列のサイリウム担当が選ばれやすく、選ばれた者がその後の人生で妙に自信を持つようになったという逸話が残る。
また、敗北した陣営はアンコールで必ず一度だけ無音で入場しなければならず、これを「引き潮入場」と呼んだ。演出としては極めて奇妙であるが、静寂の中で足音だけが響くことで、かえって観客の拍手が増幅したとされる。
主要な試合[編集]
2017年夏公演の「三段櫂戦」[編集]
最初期の代表的な試合は、の特設ステージで行われた「三段櫂戦」である。ここでは、楽曲中に三度だけ隊列が入れ替わるという極端に限定されたルールが採用され、メンバーの一人が回転位置を間違えて2回連続で同じ方向を向いたことが、逆に「戦術的な迷い」として絶賛された。
2018年冬公演の「潮目決戦」[編集]
2018年冬の「潮目決戦」では、曲間にの潮位データを参照した演出が導入され、低潮時には白組、高潮時には赤組が有利になるという謎の理屈が使われた。実際には照明係の勘違いであった可能性が高いが、後年まで「潮位と勝率の相関」が語られ、学園祭の研究発表の題材にまでなった[7]。
2019年の「殿様返し」[編集]
2019年には、敗者が勝者の旗を最後に持ち帰るという「殿様返し」が導入された。旗は内の染色工房で手染めされたもので、1本あたり約3.8kgあり、雨天時には重さが6kg近くまで増したとされる。これが原因で、あるメンバーが退場時に3歩だけ速度を落としたところ、それが「武将の余韻」として編集映像で強調された。
社会的影響[編集]
源平合戦の流行により、周辺では対戦型ライブが一つの様式として定着した。とくに、観客が自陣の色に責任を持つ感覚が強まり、ペンライトの売上が通常公演比で最大1.7倍になった時期があったとされる。
一方で、教育現場への波及もあった。いくつかの高校では文化祭のステージ企画に「源平方式」を導入し、出し物同士を点数化する風潮が生まれたが、判定が細かすぎて最終的に司会者の腹筋の強さで勝敗が決まる事例も報告された。これについては、表現活動を過度に競技化したとの批判もある。
さらに、の地方特番では「若者の歴史接触の入口」として紹介されたが、番組後半で司会者が「平家側がやや有利」と発言し、史実との混同を招いたため、翌週に視聴者から問い合わせが14件寄せられたという。
批判と論争[編集]
批判の多くは、演出が歴史用語を借用しつつも、実際には隊列交換のタイミングを調整するだけに終わっている点に向けられた。また、合戦名の由来については資料が断片的で、制作会議録の一部が欠落しているため、発祥時期をとする説と末とする説が併存している[8]。
また、敗者側にだけトーク時間が30秒短縮されるルールは「演出上の緊張感」を高めるとして支持された一方で、実際には進行表のページ番号をスタッフが取り違えた結果であった可能性も指摘されている。なお、ファンの一部はこの誤読を「戦国時代の再現性」と呼び、むしろ肯定した。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 白石田武夫『群舞と合戦演出の接続可能性』芸能構想社, 2019, pp. 41-68.
- ^ 小山内一成『アイドル公演における敵味方構造の研究』ライブ文化研究 Vol.12, No.3, 2020, pp. 112-139.
- ^ M. Thornton, "Spectator Loyalty and Color Partition in Japanese Pop Performance," Journal of Stage Sociology, Vol.18, No.2, 2021, pp. 55-79.
- ^ 佐伯みどり『仮設劇場の風と声量測定』横浜文化史料集, 第7巻第1号, 2018, pp. 9-27.
- ^ Harold B. Kline, "Cartographic Choreography in Idol Warfare," Performing Arts Review, Vol.9, No.1, 2022, pp. 201-226.
- ^ 平山徹『源平合戦名義の成立過程』芸能と言語, 第14巻第4号, 2020, pp. 73-91.
- ^ 渡辺精一郎『観客参加型採点法の変遷』日本演出学会紀要, 第21号, 2019, pp. 5-33.
- ^ 『日向坂46 合戦年表』東京舞台資料館叢書, 2021, pp. 88-121.
- ^ Cynthia R. Bell, "The So-Called Tide Effect in Pop Rivalries," East Asian Performance Studies, Vol.6, No.4, 2023, pp. 14-42.
- ^ 木更津栄『無音入場の心理学とその周辺』舞台進行研究, 第3巻第2号, 2017, pp. 1-19.
外部リンク
- 日向坂46舞台史研究会
- 横浜仮設劇場アーカイブ
- 対戦型ライブ資料室
- 坂道演出年表データベース
- 観客参加芸能連盟