爆竹伝TAKERU(漫画)
| ジャンル | バトル冒険・武術活劇(音圧ファンタジー) |
|---|---|
| 作者 | 三廻(みまわり)ハルキ |
| 出版社 | 株式会社港星出版(みなとぼししゅっぱん) |
| 掲載誌 | 週刊ガスライト・フロンティア |
| 連載期間 | 1997年 - 2004年 |
| 話数 | 全312話(増補分10話を含む) |
| 単行本 | 全37巻+公式副読本『爆竹技帳』 |
| 作中の主題技 | 爆裂衝撃(ばくれつしょうげき)・音圧掌底(おんあつしょうてい) |
| 公的監修(作中設定) | 内閣府 味覚・危険度調整局(監修:架空) |
(ばくちくだん たける、英: Bakuchikuden TAKERU)は、火薬の「音圧」をめぐる少年冒険譚として1997年に連載が始まった日本の漫画である[1]。主人公TAKERUが“爆竹相撲”と呼ばれる武術を修得していく物語として知られている[2]。
概要[編集]
は、爆竹に含まれる“炸裂核”の代わりに、音圧が相手の身体構造を一時的に再配列するという理屈でバトルを成立させた作品である[1]。そのため、単なる派手さだけではなく、音の「当て方」を戦術として学ぶ体裁が特徴とされる。
連載当初は、の下町祭礼サークル出身の漫画家が「花火や爆竹は危険というだけでは語れない」と主張したことから、学習漫画に近い読者層を獲得したとされる[2]。一方で、物語は次第に“爆竹相撲”という競技体系へ拡張され、相手の呼吸リズムを破ることで勝敗を決める設定が人気を博した。
作品内では、爆竹の筒に施す紙の織り目や、鳴らす角度の偏差、点火までの待機時間といった細部が繰り返し描写された。とりわけ「TAKERUが一日に必ず3回、竹炭を湿らせた上で点火線の硬度を測る」という描写は、のちにファンの間で“儀式”として広まったと報じられている[3]。
成立と選定基準[編集]
本作がで扱われるようになった経緯は、編集部が「生活防災の啓発」と「熱量のある少年漫画」を両立できる題材を探索していたためとされる[4]。当時、学園バトル漫画が飽和しつつあった一方、生活圏の“音”に着目した作品は少なかったため、編集者は爆竹の社会的経験値を利用できると判断したという。
また、作者の三廻ハルキは取材として、内の祭礼実行委員会ではなく、なぜか“音響機材の貸出業者”に密着したとされる[5]。このため作中でも、爆竹を直接語るより先に、音の反射、床材の吸音率、点火後の減衰曲線などが先行して語られる傾向がある。
このような方針は単なる奇抜さではなく、編集部が掲載基準として「事故を連想させない説明」「勝敗の再現性」「専門用語の誤用を許容する温度感」の3条件を定めた結果とされる[6]。なお、この3条件は後年、実物の規制文書を“漫画向けに翻訳したもの”としてネット上で拡散し、真偽をめぐる議論を呼んだ[7]。
物語の展開[編集]
爆竹相撲編(1997年〜1999年)[編集]
最初の大きな山場は、TAKERUがで“爆竹相撲”の流派に出会う場面である[8]。流派名は(らいらくかん)とされ、勝負は「音圧の回転数」「呼気の硬さ」「尻尾の位置」という3指標で判定されると説明された。
とりわけ第19話では、判定員が“反射板の裏に置いた紙片が、点火後0.37秒で何枚ほどめくれるか”を数えていたと描写される。のちにファンブックでは、この0.37秒は実験室での平均値として計算されたと書かれたが、編集部のインタビューでは「平均値というより、編集会議の冗談が元」とも語られた[9]。
赤錆運河編(2000年〜2002年)[編集]
第二の転機として、TAKERUはの“赤錆運河”で、爆竹の音圧が腐食の進行速度に影響するという怪異を追うことになる[10]。作中では、音圧が金属表面の微細な再配列を促し、結果として赤錆の発生面積が拡大するという理屈が提示された。
ここで登場する敵役“サイレン教官ベリィ・ホルスト”は、爆竹を鳴らす前に必ず「沈黙の学習」を3分間行うとされる。沈黙の学習は“ゼロ周波数の体内保持”と説明され、TAKERUは第77話で「自分の鼓膜が最後に笑ったのは何時か」を記録するよう迫られる[11]。
衛星寺院編(2003年〜2004年)[編集]
連載終盤では、TAKERUが衛星通信の観測所と結びつけられ、爆竹の音圧が遠隔地で“再点火”されるという極端な展開へ進む[12]。舞台はの“衛星寺院”とされ、寺院は落雷の多い季節に、鐘ではなく爆竹の連打で祈りを送ると説明された。
この編では、1回の再点火につき必要とされる“校正プリズム”が全12種類あるとされる。公式副読本『爆竹技帳』では、種類ごとの減衰率が表形式で掲載され、ファンが自作していたとされる。ただし作中で一度だけ、TAKERUが「減衰率は“だいたい”でいい」と言い切るコマがあり、読者が“物語世界の理屈が折れた瞬間”として注目した[13]。
制作背景と社会的影響[編集]
の社会的影響として、最初に語られがちなのは“音圧”という語が生活用語に滑り込んだことである[14]。作中で頻発した「音圧掌底」のような表現が、祭礼の手伝いをする若者のあいだで合言葉化し、のちに“地元の音を守る”という行動規範に変換されたとされる。
また、港星出版は連載中に全国で「爆竹相撲練習会」なるイベントを企画したが、実際には爆竹を使わない“安全版練習”が基本だったとされる[15]。それでも参加者が持ち帰ったのは、競技の採点シートと、点火ではなく拍手で音圧を測る練習メニューであったという。
一方で、の“危険度調整”を名目とした圧力が編集部にかかったという噂もある。監修として作中に登場する「味覚・危険度調整局」は架空の組織名として知られるが、実在の委員会名を改変したのではないかと見る指摘があった[16]。この指摘は、作品の巻末コメントにしばしば入る“官庁文体の謝意”のせいだとされている。
批判と論争[編集]
批判の中心は、作品が爆竹の危険性を“音圧の理屈”へ置き換えてしまった点である[17]。特に、赤錆運河編で描かれた“音圧が腐食を促進する”設定が、危険を軽視していると解釈されたことがあった。
この点については、作中の講釈を担当したという「元音響技師の助監修」が、読者向けの対談で「危険度は線形じゃない」と発言したとされる[18]。ただしその対談は、後に“イベントの台本がそのまま掲載された”とも言われ、真偽が揺れた。
また、衛星寺院編で登場する校正プリズムの分類が、実在の光学測定の方式と一致しているように見えることが論争の種になった。編集部は「一致は偶然」と説明したが、当時のネット掲示板では“12種類が多すぎて、むしろ誰かが参照したのでは”という疑いが出た[19]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三廻ハルキ『爆竹伝TAKERU 1巻』港星出版, 1997.
- ^ 伊藤玲子『音圧という記号:少年漫画の戦術化』メディア言語研究所, 2001.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton『Sound-Pressure Myths in Popular Manga』Journal of Imaginary Acoustics, Vol.12 No.3, 2003.
- ^ 佐伯成道『祭礼と物語の安全設計』防災コミック学会誌, 第4巻第2号, 1999.
- ^ 浅香ユウ『爆竹相撲の採点表はなぜ流行したか』都市生活文化研究会紀要, pp.33-58, 2002.
- ^ 港星出版編集部『週刊ガスライト・フロンティア最前線:連載企画の舞台裏』港星出版, 2004.
- ^ Li Wei『Fictional Calibrators and the Logic of Cheats』Proceedings of the Workshop on Story Mechanics, pp.101-119, 2005.
- ^ 『爆竹技帳:公式副読本』港星出版, 2004.
- ^ 内閣府広報室『安全啓発の表現ガイド(試案)』内閣府, 2000.
- ^ 上野カナ『誤用される専門語の快感:音響用語と誤差』マンガ編集技術叢書, 第7巻, pp.201-226, 2006.
外部リンク
- 爆竹伝TAKERUファン記録庫
- 港星出版アーカイブ
- 音圧相撲マニアックス
- 赤錆運河の伝承集
- 衛星寺院ウォッチ