爆裂愛してる
| 名称 | 爆裂愛してる |
|---|---|
| 読み | ばくれつあいしてる |
| 別名 | 爆愛、BA式告白、過飽和ラブコール |
| 発祥 | 1987年頃・東京都渋谷区 |
| 主な担い手 | ライブハウス従業員、コピーライター、応援団系サークル |
| 目的 | 感情の過密伝達と群衆同調の誘発 |
| 流行期 | 1994年 - 2008年 |
| 関連分野 | パフォーマンス論、声援研究、都市民俗学 |
| 特徴 | 反復、過剰修飾、擬音の挿入 |
爆裂愛してる(ばくれつあいしてる)は、の若者文化において、過剰な好意表明を音響的・視覚的に増幅するための表現技法、またはそれを核とした一連のを指す語である[1]。1980年代後半ので成立したとされ、のちに、、へと拡散した[2]。
概要[編集]
爆裂愛してるは、単なる強い好意の表明ではなく、・・・を組み合わせ、相手に「感情の密度」を物理的に誤認させることを目的とした表現であるとされる。初期には周辺の深夜イベントで、音響スタッフがマイクのゲインを上げすぎた結果、語尾が割れて聞こえたことが起点とされている[3]。
語義と用法[編集]
爆裂愛してるの「爆裂」は、破壊ではなく拡散を意味する専門語である。すなわち、語彙を一点に集約せず、とによって周囲へ波及させることを指す。また「愛してる」は必ずしも恋愛感情を示さず、対象への敬意、驚嘆、あるいは場の一体感に対する確認として用いられる。
用法には「爆裂愛してる!!」「爆裂に愛してる」「愛してる、しかも爆裂である」などの変種があり、特に最後の形はの即興芸で多用されたとされる。一方で、文末にを多用する「静かな爆裂愛してる」派も存在し、こちらはに強かった。
歴史[編集]
成立期[編集]
1987年夏、道玄坂の小規模ライブ会場「ムーン・バルブ」において、観客がアンコール時に「愛してる」を叫んだところ、PA機材の故障で「ばくれつ」と聞こえた出来事が語源であるとされる。これを偶然ではなく再現可能な技法として整理したのが、コピーライターのと、当時に在籍していたであった。
普及期[編集]
に入ると、爆裂愛してるはからへ移植された。特にとのイベントでは、サークル参加者が新刊の背表紙に「爆裂愛してる」の4文字を印刷し、差し入れのクッキーにまで焼き印を入れる事例が確認されている。
には、が「過度な感情表現による通行妨害の恐れ」に関する注意書きを掲示したが、逆にこの警告が宣伝効果を生み、都内での使用率が前年比147%増になったとする調査がある[5]。ただし、調査主体のは会員数12名の任意団体であり、信頼性にはやや疑義がある。
制度化と衰退[編集]
には、の外郭研究班が「爆裂愛してるの場面分類」を試み、A型(祝福型)、B型(懇願型)、C型(破格型)の3類型を提示した。しかし、分類会議の議事録には「C型が最も拍手を取る」という一文しか残されておらず、学術的には未完に終わったとされる。
その後、の普及により、長文の熱量を要する爆裂愛してるは一時的に衰退したが、代わりに絵文字と記号を大量に埋め込む「圧縮型爆裂愛してる」が広まった。2020年代には、のイベント制作会社が演出名として再商品化し、再評価の機運がある。
主要な作法[編集]
爆裂愛してるには、少なくとも4つの基本作法があるとされる。第一に、対象を直接名指しする前に「本当に」「かなり」などの副詞を2回以上挿入すること。第二に、語尾を破裂音で終えること。第三に、手振りを大きくし、右手で左胸を押さえること。第四に、終了後に1.5秒沈黙し、周囲の感情を吸収したように見せることである。
特筆すべきは「逆爆裂」で、これは嫌悪や困惑を示すために用いられるが、見た目は通常の爆裂愛してるとほぼ同じである。そのための公演では、ファン同士が互いに称賛し合っていたのに全員が退場処分になったという珍事が起きた[6]。
社会的影響[編集]
爆裂愛してるは、の発達に先行するかたちで、感情を公的に表明することへの心理的障壁を下げたと評価される。企業の販促、自治体の観光キャンペーン、さらにはの演出にまで応用され、2004年頃には「愛の可視化産業」という言葉が一部メディアで使われた。
一方で、過度な爆裂化が「相手に考える隙を与えない」と批判され、の旧報告書では「情緒の強制力が高い」と指摘されている。また、地方の学校祭で模倣が増え、拡声器の電池消費が例年の1.8倍になったことから、教育現場では一時的に禁止対象となった。
批判と論争[編集]
批判の中心は、爆裂愛してるが「愛情表現」の衣をまといながら、実際にはとを利用している点にある。とりわけの路上パフォーマンス事件では、出演者が通行人に向けて「爆裂愛してる」を連呼し、通行人のうち3名が感動ではなく方向感覚を失って交差点を横断したとして、主催者が注意を受けた。
また、学術界では「爆裂」はの口語変化に見られる過剰強調の一種にすぎないという説と、に由来する古層語だとする説が対立している。前者は実証性に欠け、後者はそもそも学会名が存在しないのではないかと指摘されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 篠原冬馬『爆裂愛してるの成立と変容』東京情動言語研究所, 2009.
- ^ 宮原澄子「1980年代後半の声援増幅表現に関する一考察」『都市民俗学紀要』第14巻第2号, pp. 33-58, 2011.
- ^ 高見沢一郎『応援の音響史:マイクロフォンと感情の拡散』青弓社, 2014.
- ^ Laura Bennett, "Excessive Affection as Performance in Urban Japan," Journal of Contemporary Rituals, Vol. 22, No. 4, pp. 201-229, 2016.
- ^ 松浦礼子「同人即売会における感情語の流通」『日本サブカルチャー研究』第8巻第1号, pp. 5-27, 2003.
- ^ K. H. Ellison, "The Semantics of Overheated Endearment," East Asian Media Review, Vol. 11, No. 3, pp. 144-166, 2008.
- ^ 東京都生活文化局『過度な歓声表現に関する参考資料集』東京都公文書館, 1996.
- ^ 日本広告審査協会編『情緒過多表現の事例と対応』第3巻, pp. 77-102, 2005.
- ^ 佐伯由香『爆裂愛してる入門——静かな破裂のために』晶文社, 2020.
- ^ Robert J. Halloway, "When Love Becomes Audible: Notes on the Bakuretsu Boom," Popular Expression Studies, Vol. 9, No. 1, pp. 1-19, 2019.
外部リンク
- 東京情動言語研究会
- 渋谷ポップカルチャー資料室
- 都市声援アーカイブ
- 爆愛年表データベース
- 過剰表現文化フォーラム